Excelは「表計算ソフト」という名前の通り、数値を使った計算が得意なツールです。
四則演算(+−×÷)だけでなく、累計・平均・割引・税計算・パーセンテージなど、あらゆる数値処理が可能です。
Excelで計算する利点
手計算と比べて:
- 計算ミスが減る
- 大量のデータを一度に処理できる
- データが変わったら自動で再計算
- 複雑な計算も簡単に
計算が活用される場面
- 家計簿:収入と支出の管理
- 売上管理:商品別・月別の集計
- 成績表:平均点や順位の計算
- 在庫管理:入出庫の計算
- 予算管理:予算と実績の比較
計算式の基本ルール

数式の書き方
重要: すべての計算式は=
(イコール)で始めます
=A1+B1 # 正しい書き方
A1+B1 # 間違い(=がない)
セル参照の基本
例:
A1: 100
B1: 200
C1: =A1+B1 # 結果:300
セルC1に=A1+B1
と入力すると、A1とB1の値を足した結果が表示されます。
セルを使った基本の四則演算
演算子一覧
演算子 | 意味 | 使用例 | 結果(A1=10, B1=3の場合) |
---|---|---|---|
+ | 足し算 | =A1 + B1 | 13 |
– | 引き算 | =A1 - B1 | 7 |
* | 掛け算 | =A1 * B1 | 30 |
/ | 割り算 | =A1 / B1 | 3.33… |
実際の計算例
例1:商品の合計金額
データ:
A1: 商品A価格 500
A2: 商品B価格 300
A3: 商品C価格 200
合計を計算:
=A1+A2+A3
結果: 1000
例2:売上の計算
データ:
A1: 単価 1000
B1: 数量 5
売上を計算:
=A1*B1
結果: 5000
例3:粗利の計算
データ:
A1: 売上 5000
B1: 原価 3000
粗利を計算:
=A1-B1
結果: 2000
例4:平均単価の計算
データ:
A1: 総売上 10000
B1: 総数量 50
平均単価を計算:
=A1/B1
結果: 200
合計・平均などの集計関数

SUM関数(合計)
基本的な使い方
=SUM(A1:A5)
例:
A1: 100
A2: 200
A3: 150
A4: 300
A5: 250
結果: 1000
複数範囲の合計
=SUM(A1:A5, C1:C3)
離れたセルの合計
=SUM(A1, A3, A5, B2)
AVERAGE関数(平均)
基本的な使い方
=AVERAGE(B2:B10)
例:
B2: 80
B3: 90
B4: 85
B5: 75
B6: 95
結果: 85
空白セルがある場合
AVERAGE関数は空白セルを無視して計算します。
MIN/MAX関数(最小値・最大値)
最小値
=MIN(C1:C10)
最大値
=MAX(C1:C10)
例:
C1: 150, C2: 200, C3: 100, C4: 300, C5: 250
MIN(C1:C5) = 100
MAX(C1:C5) = 300
COUNT関数(数値の個数)
=COUNT(A1:A10)
説明: 数値が入力されているセルの数をカウント
COUNTA関数(空白以外の個数)
=COUNTA(A1:A10)
説明: 文字・数値問わず、何かが入力されているセルの数をカウント
パーセンテージ(%)の計算

基本的な割合計算
例:テストの正答率
データ:
A1: 正答数 8
B1: 総問題数 10
正答率を計算:
=A1/B1
結果: 0.8
パーセント表示にする方法
方法1: 数式で100を掛ける
=A1/B1*100
結果: 80
方法2: 表示形式を変更(推奨)
- セルを選択
- ホーム → % ボタンをクリック
- または、セルを右クリック → セルの書式設定 → パーセンテージ
増減率の計算
前年比の計算
データ:
A1: 昨年売上 1000000
B1: 今年売上 1200000
増減率を計算:
=(B1-A1)/A1
結果: 0.2 → 20%増
達成率の計算
データ:
A1: 目標 1000000
B1: 実績 850000
達成率を計算:
=B1/A1
結果: 0.85 → 85%
消費税計算・税込価格の算出

基本的な税込価格計算
=税抜価格 * (1 + 消費税率)
例:消費税10%の場合
データ:
A1: 税抜価格 1000
税込価格を計算:
=A1*1.1
結果: 1100
消費税額を求める
消費税額のみ:
=A1*0.1
結果: 100
または:
=A1*1.1-A1
結果: 100
税率が変更される場合の対応
税率をセルで管理
データ:
A1: 税抜価格 1000
B1: 税率 0.1
税込価格を計算:
=A1*(1+B1)
この方法なら、B1の税率を変更するだけで全体に反映されます。
割引計算
基本的な割引計算
=定価 * (1 - 割引率)
例:20%割引の場合
データ:
A1: 定価 1000
B1: 割引率 0.2
割引後価格:
=A1*(1-B1)
結果: 800
段階的割引
会員割引 + セール割引
データ:
A1: 定価 1000
B1: 会員割引率 0.1
C1: セール割引率 0.15
最終価格:
=A1*(1-B1)*(1-C1)
結果: 765
累計・累積計算

累計の基本
売上の累計を計算
データ:
A列: 月 B列: 月売上 C列: 累計売上
1月 100000
2月 120000
3月 110000
累計の計算式:
C2セル(1月累計):
=SUM($B$2:B2)
C3セル(2月累計):
=SUM($B$2:B3)
C4セル(3月累計):
=SUM($B$2:B4)
自動で累計を計算する方法
- C2に
=SUM($B$2:B2)
を入力 - C2をコピー
- C3以降に貼り付け
$マーク(絶対参照)の効果:
$B$2
は常にB2を参照B2
→B3
→B4
のように変化
結果:
A列: 月 B列: 月売上 C列: 累計売上
1月 100000 100000
2月 120000 220000
3月 110000 330000
移動平均の計算
3ヶ月移動平均
データ:
A列: 月 B列: 売上 C列: 3ヶ月移動平均
1月 100000
2月 120000
3月 110000 =AVERAGE(B2:B4)
4月 130000 =AVERAGE(B3:B5)
エラーを防ぐためのポイント
よくあるエラー
#DIV/0! エラー
原因: 割り算で分母が0
例:
=A1/B1 # B1が0の場合にエラー
対処法:
=IF(B1=0, "計算不可", A1/B1)
または
=IFERROR(A1/B1, "エラー")
#VALUE! エラー
原因: 文字列を数値として計算しようとした
例:
A1: "abc"
=A1*2 # エラーになる
対処法:
=IF(ISNUMBER(A1), A1*2, "数値ではありません")
#NAME? エラー
原因: 関数名の入力ミス
例:
=SUN(A1:A5) # SUMの入力ミス
エラー対策の実用例
安全な割り算
=IF(B1=0, 0, A1/B1)
空白セルへの対応
=IF(A1="", "", A1*1.1)
実用的な計算例

例1:家計簿の作成
データ構造:
A列: 項目 B列: 金額 C列: 累計
食費 30000 =SUM($B$2:B2)
光熱費 15000 =SUM($B$2:B3)
家賃 80000 =SUM($B$2:B4)
合計 =SUM(B2:B4)
例2:売上管理表
データ構造:
A列: 商品名 B列: 単価 C列: 数量 D列: 売上 E列: 税込売上
商品A 1000 5 =B2*C2 =D2*1.1
商品B 1500 3 =B3*C3 =D3*1.1
合計 =SUM(D2:D3) =SUM(E2:E3)
例3:成績管理表
データ構造:
A列: 生徒名 B列: 国語 C列: 数学 D列: 英語 E列: 合計 F列: 平均
田中 80 90 85 =SUM(B2:D2) =AVERAGE(B2:D2)
佐藤 75 85 80 =SUM(B3:D3) =AVERAGE(B3:D3)
クラス平均 =AVERAGE(B2:B3) =AVERAGE(C2:C3) =AVERAGE(D2:D3)
例4:在庫管理表
データ構造:
A列: 商品名 B列: 入庫 C列: 出庫 D列: 在庫 E列: 在庫金額
商品A 100 30 =B2-C2 =D2*単価
商品B 50 20 =B3-C3 =D3*単価
数式の効率的な入力方法
セル範囲の選択方法
マウスでの選択
- 開始セルをクリック
- 終了セルまでドラッグ
キーボードでの選択
- 開始セルを選択
- Shiftを押しながら矢印キー
- Ctrl+Shift+矢印キーで高速選択
数式のコピー
オートフィル機能
- 数式を入力したセルを選択
- セルの右下角をダブルクリック
- または、右下角をドラッグ
相対参照と絶対参照
相対参照: A1
- コピー時に自動で参照先が変わる
絶対参照: $A$1
- コピー時に参照先が固定される
混合参照: $A1
または A$1
- 列または行のみ固定
計算精度と表示形式
小数点の処理
ROUND関数(四捨五入)
=ROUND(A1/B1, 2) # 小数点第2位で四捨五入
ROUNDUP関数(切り上げ)
=ROUNDUP(A1/B1, 2) # 小数点第2位で切り上げ
ROUNDDOWN関数(切り捨て)
=ROUNDDOWN(A1/B1, 2) # 小数点第2位で切り捨て
表示形式の設定
数値の表示
- 小数点以下の桁数
- 桁区切りカンマ
- 負数の表示方法
通貨形式
- ¥マークの表示
- 桁区切りカンマ
パーセント形式
- %マークの自動表示
- 小数点以下の桁数
まとめ:数値計算の使い分け
計算方法の選択指針
やりたいこと | 推奨方法 | 使用場面 |
---|---|---|
単純な足し算 | =A1+B1 | 少数のセル |
範囲の合計 | =SUM(A1:A10) | 多数のセル |
平均を出す | =AVERAGE(A1:A10) | 成績、売上など |
累計を出す | =SUM($A$2:A2) | 月次推移など |
割合計算 | =B1/C1 + %表示 | 達成率、構成比 |
税込計算 | =価格*1.1 | 価格計算 |
割引計算 | =価格*(1-割引率) | セール価格 |
よく使う計算パターン
- 売上 = 単価 × 数量
- 粗利 = 売上 – 原価
- 粗利率 = 粗利 ÷ 売上
- 税込価格 = 税抜価格 × 1.1
- 割引後価格 = 定価 × (1 – 割引率)
- 達成率 = 実績 ÷ 目標
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