データ分析をしていて、こんなことを思ったことはありませんか?
- 「データのばらつきをグラフでわかりやすく見たい」
- 「平均や最大・最小だけじゃなく、全体の分布も示したい」
- 「複数のグループを比較して、どちらが安定しているか知りたい」
- 「外れ値がどの程度あるのか視覚的に確認したい」
そんなときに最適なのが**箱ひげ図(ボックスプロット)**です。
箱ひげ図は:
- 中央値(メジアン)
- 四分位数(Q1・Q3)
- 最小値・最大値(外れ値を除く)
- 外れ値の分布
を視覚的にまとめた統計グラフです。
この記事では:
- そもそも箱ひげ図とは何かの基本説明
- Excelで箱ひげ図を作る方法(Excel 2016以降)
- 古いバージョンでの作成方法
- 外れ値を含む形の出し方とカスタマイズ
- 実際のビジネスでの活用例
を初心者にもわかりやすく解説します。
これを読めば、アンケート分析や品質管理、テスト結果の分析にすぐ役立ちます!
そもそも箱ひげ図ってどんなグラフ?

データの分布を箱と線で表す統計グラフ
箱ひげ図(ボックスプロット)は、データの分布を箱(四分位範囲)とひげ(最大・最小)で表す統計グラフです。一つのグラフで多くの統計情報を同時に表示できる優れた可視化手法です。
箱ひげ図の構成要素
要素 | 意味 | 見方のポイント |
---|---|---|
箱の中央の線 | 中央値(メジアン) | データの中心傾向を示す |
箱の下端 | 第1四分位数(Q1) | データの25%がこの値以下 |
箱の上端 | 第3四分位数(Q3) | データの75%がこの値以下 |
下のひげ | Q1から下方向の範囲 | 最小値まで(外れ値除く) |
上のひげ | Q3から上方向の範囲 | 最大値まで(外れ値除く) |
点(ドット) | 外れ値 | 通常の範囲を大きく外れたデータ |
普通のグラフとの違い
棒グラフや折れ線グラフの場合
- 平均値や合計値は分かる
- しかし、データのばらつきや分布は見えない
箱ひげ図の場合
- データの散らばり具合が一目で分かる
- 中央値と平均値の違いも把握できる
- 外れ値の存在も同時に確認できる
テスト点数の分布での例
クラスの数学テストの点数を箱ひげ図で表すと:
分かること
- 平均的な点数はどこか(中央値)
- 上位25%・下位25%の学生の点数範囲
- 特に高得点や低得点の外れ値がいるか
- クラス全体の点数のばらつき具合
従来のグラフでは見えなかった情報
- 平均点は75点でも、実際は二極化していた
- 上位層と下位層の差が予想以上に大きい
- 特別に優秀(または課題のある)学生の存在
箱ひげ図は「ただの棒グラフや平均値」では見えないデータの奥行きを見せられるグラフです。
Excelで箱ひげ図を作る|基本のやり方(Excel 2016以降)

箱ひげ図は標準機能で簡単作成
Excel 2016以降(Microsoft 365、Excel 2019、Excel 2021を含む)なら、箱ひげ図が標準搭載されています。複雑な計算は一切不要です。
基本的な作成手順
ステップ1:データの準備
- データを縦一列に入力(例:A列にテスト点数)
- 見出しがある場合は最上行に入力
- 空白セルがないように整理
ステップ2:データ範囲の選択
- データが入力されている範囲を選択
- 見出しも含めて選択(自動でラベルとして認識)
ステップ3:グラフの挿入
- 「挿入」タブをクリック
- 「統計グラフの挿入」アイコンをクリック
- 「箱ひげ図」を選択
これだけで自動的に以下が計算されてプロットされます:
- 中央値・四分位数の計算
- 外れ値の判定と表示
- 適切な軸の範囲設定
具体的な活用例
営業成績の分析
- A列:各営業担当者の月間売上
- 箱ひげ図作成で全体の分布を把握
- 外れ値として表示される高業績者・低業績者を特定
品質管理での応用
- A列:製品の寸法測定値
- 品質のばらつき具合を視覚化
- 外れ値(不良品の可能性)を早期発見
アンケート結果の分析
- A列:顧客満足度スコア(1-10点)
- 回答の分布傾向を把握
- 極端に低い・高い評価の頻度を確認
複数グループの比較
データの準備方法
- A列:グループ1のデータ
- B列:グループ2のデータ
- C列:グループ3のデータ
この形式でデータを準備すれば、複数のグループを同時に比較できる箱ひげ図が作成されます。
Excelなら難しい統計計算なしで一発で箱ひげ図を作れます。
箱ひげ図をカスタマイズ|デザイン・外れ値の調整

見やすさを向上させる調整方法
作った箱ひげ図をクリックすると、「グラフデザイン」や「書式」タブが表示されます。これらを使って、より効果的な箱ひげ図にカスタマイズできます。
主要な調整項目
色とスタイルの調整
- 箱の色:グループごとに色分け
- 枠線の太さ:強調したい場合は太く
- 外れ値の色:注意を引きたい場合は赤色
- 背景色:プレゼン資料に合わせて調整
サイズと配置の調整
- グラフ全体のサイズ
- 軸の範囲とスケール
- タイトルとラベルの配置
- 凡例の表示・非表示
レポート資料用の実践的カスタマイズ
ビジネス用途での調整例
- 企業カラーに合わせた配色
- 箱の色を会社のブランドカラーに
- 背景は白またはライトグレー
- 外れ値の強調
- 外れ値を赤色にして注意喚起
- サイズを大きくして視認性向上
- 軸とタイトルの最適化
- 軸の数値は分かりやすい間隔に
- タイトルは内容が一目で分かるように
外れ値の定義と調整
Excelの自動計算基準 Excelの箱ひげ図では、以下の基準で外れ値を判定します:
- 下限外れ値:Q1 – 1.5 × IQR(四分位範囲)より小さい値
- 上限外れ値:Q3 + 1.5 × IQR(四分位範囲)より大きい値
IQR(四分位範囲) = Q3 – Q1
この計算は自動で行われるため、手動で数式を作る必要はありません。
外れ値表示のカスタマイズ
- 点の大きさ:重要度に応じて調整
- 点の色:種類別に色分け
- 点の形:丸、四角、三角などを選択
プレゼンテーション向けの調整
会議資料での効果的な見せ方
- タイトルを具体的に
- 「箱ひげ図」→「月間売上の分布比較」
- 軸ラベルを明確に
- 単位を明記(万円、点数、%など)
- 色の意味を統一
- 良い結果:青・緑系
- 注意が必要:黄・オレンジ系
- 問題:赤系
見やすく強調することで「データの傾向や問題点」が伝わる箱ひげ図になります。
Excel 2013以前や詳細分析したいときは?

古いバージョンでの対応方法
Excel 2013以前には箱ひげ図の自動機能がないため、統計関数を使って手動で作成する必要があります。少し手間がかかりますが、より細かい制御が可能です。
必要な統計値の計算
基本統計値を関数で計算
最小値: =MIN(A:A)
Q1: =QUARTILE.INC(A:A, 1)
中央値: =MEDIAN(A:A)
Q3: =QUARTILE.INC(A:A, 3)
最大値: =MAX(A:A)
外れ値の判定
IQR: =QUARTILE.INC(A:A, 3) - QUARTILE.INC(A:A, 1)
下限値: =QUARTILE.INC(A:A, 1) - 1.5 * IQR
上限値: =QUARTILE.INC(A:A, 3) + 1.5 * IQR
擬似箱ひげ図の作成手順
手順1:データの整理
- 計算した統計値を表にまとめる
- グラフ用のデータ範囲を準備
- 外れ値を別途リストアップ
手順2:グラフの作成
- 積み上げ棒グラフを基本に使用
- 誤差線機能でひげを表現
- 散布図で外れ値をプロット
手順3:見た目の調整
- 棒グラフの色を透明または薄くする
- 枠線で箱の形を強調
- 軸とラベルを調整
より高度な分析での活用
カスタム外れ値基準
- 1.5 × IQRではなく、2 × IQRを使用
- 業界固有の基準を適用
- 複数の基準を同時に表示
統計的検定との組み合わせ
- t検定の結果と合わせて表示
- 信頼区間の追加表示
- 分散分析(ANOVA)の可視化
時系列データでの応用
- 月別・四半期別の箱ひげ図
- トレンドの変化を追跡
- 季節性の分析
実際のビジネスでの活用例
営業・マーケティング分野
売上分析での活用
- 月別売上の安定性確認
- 営業担当者間の成績比較
- 地域別パフォーマンスの分析
- キャンペーン効果の測定
顧客分析での応用
- 顧客満足度の分布把握
- 購入金額のセグメント分析
- リピート率の店舗間比較
品質管理・製造業
製品品質の監視
- 製造ロット間の品質比較
- 不良率のトラッキング
- 工程改善効果の測定
- 検査データの分析
プロセス改善での活用
- 作業時間のばらつき分析
- 歩留まり率の安定性確認
- 設備稼働率の比較
人事・組織管理
人材評価での応用
- 従業員満足度調査の分析
- 研修効果の測定
- 部署間パフォーマンス比較
- 離職率の要因分析
採用・教育での活用
- 面接評価の妥当性確認
- 新人研修の効果測定
- スキルテスト結果の分析
よくあるトラブルと解決方法

グラフが正しく表示されない場合
原因1:データに文字列が混在している
- 解決方法:数値データのみに整理
- VALUE関数で文字列を数値に変換
- フィルタで空白セルを除外
原因2:データ範囲の選択が間違っている
- 解決方法:必要なデータのみを選択
- 見出し行の扱いを確認
- 複数列選択時の列の対応を確認
原因3:Excelのバージョンが古い
- 解決方法:手動での作成方法を使用
- アドインソフトの活用を検討
- データのエクスポートと他ツール使用
外れ値が表示されない・多すぎる場合
外れ値の基準調整
- 1.5 × IQRから2.0 × IQRに変更
- 業界標準に合わせた基準設定
- 手動での外れ値判定
データの前処理
- 明らかな入力ミスの修正
- 測定単位の統一
- 欠損値の適切な処理
複数グループの比較がうまくいかない場合
データ形式の確認
- 各グループを別列に配置
- グループ名を適切に設定
- データ数の違いを確認
軸の調整
- 各グループで軸の範囲を統一
- スケールの最適化
- ラベルの重複回避
まとめ:Excelの箱ひげ図でデータの「分布」を見える化しよう!
Excelの箱ひげ図活用のポイント:
- Excel 2016以降:「統計グラフ」から簡単に作成可能
- 豊富な情報:中央値・四分位数・外れ値が一目で分かる
- カスタマイズ:色やスタイルを調整して資料を見やすく
- 比較分析:複数グループの同時比較が効果的
- ビジネス応用:品質管理、営業分析、顧客分析に活用
箱ひげ図を使うべき場面
データの分布を知りたいとき
- 平均値だけでは見えないばらつきを把握
- 外れ値の存在を確認
- データの偏りを視覚化
複数グループを比較したいとき
- 部署間・期間別の比較
- 改善前後の効果測定
- 競合他社との比較
統計的な説得力が必要なとき
- 科学的根拠に基づく資料作成
- 客観的なデータ提示
- 意思決定の支援材料
今日から始める3ステップ
- 基本操作をマスター:統計グラフ → 箱ひげ図で作成
- カスタマイズを試す:色や外れ値の表示を調整
- 実務に応用:自分の業務データで分布分析を実践
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