「売上と利益率、同じグラフで見たいのに…」「数値のスケールが違って比較しにくい」
そんなときに便利なのが2軸グラフです。Excelでは、異なる単位や桁数のデータを1つのグラフに表示することができ、データの関係性を視覚的にわかりやすく伝えられます。
この記事では、Excelで2軸グラフを作成する基本手順と、実務での活用例、注意すべきポイントまで丁寧に解説します。
急いでいる人は、データを選択して「挿入」→「おすすめグラフ」→「すべてのグラフ」→「組み合わせ」で2軸グラフを素早く作成できます。
2軸グラフの基本概念

2軸グラフとは何か
基本的な定義
2軸グラフとは、1つのグラフ内に**「主軸(左軸)」と「第2軸(右軸)」**の2つの縦軸を設定し、それぞれ異なる指標を同時に表示できるグラフ形式です。
構成要素
2軸グラフの主要部分:
- 主軸(第1軸):通常は左側の縦軸
- 第2軸:右側の縦軸
- 横軸:共通の時間軸や項目軸
- データ系列:それぞれの軸に対応するデータ
2軸グラフが必要な理由
データスケールの問題
単軸グラフの限界:
- 異なる単位のデータを同じ軸で表示すると比較困難
- 桁数の大きな差があると小さな値が見えなくなる
- データの変動幅が異なると関係性が把握しにくい
具体的な問題例
売上(万円)と利益率(%)の場合:
- 売上:1000万円(値が大きい)
- 利益率:15%(値が小さい)
- 同じ軸では利益率の変動が見えない
2軸グラフのメリット
視覚的な理解の向上
2軸グラフの利点:
- 異なる指標の関係性が一目で把握できる
- トレンドの比較が容易になる
- 意思決定のスピードが向上する
- プレゼンテーション効果が高まる
データ分析の効率化
分析面でのメリット:
- 相関関係の発見が容易
- 異常値の特定がしやすい
- 複数の視点からの分析が可能
Excelで2軸グラフを作る詳細手順
事前準備:データの整理
データ構成の基本
推奨するデータレイアウト:
A列 B列 C列
1 日付 売上 利益率
2 1月 1000 12%
3 2月 1200 15%
4 3月 1100 10%
データ品質の確認
チェックすべき項目:
- 欠損データがないか確認
- データ型が適切か確認(数値、日付など)
- 単位の統一ができているか確認
基本的な作成手順
手順1:データ選択
- グラフにしたいデータ範囲を選択
- 見出し行も含めて選択することが重要
- 連続した範囲での選択を推奨
手順2:グラフの挿入
方法1:おすすめグラフから作成
- 「挿入」タブをクリック
- 「おすすめグラフ」をクリック
- 「すべてのグラフ」タブを選択
- 「組み合わせ」カテゴリを選択
- 「集合縦棒と折れ線(第2軸)」を選択
方法2:直接グラフを選択
- 「挿入」タブ →「グラフの挿入」
- 「組み合わせグラフ」をクリック
- 「集合縦棒と折れ線(第2軸)」を選択
手順3:系列の軸設定
- 作成されたグラフをクリック
- 第2軸にしたいデータ系列を右クリック
- 「データ系列の書式設定」を選択
- 「第2軸」にチェックを入れる
手順4:グラフの調整
軸の設定調整:
- 各軸を右クリック
- 「軸の書式設定」を選択
- 最小値・最大値・目盛間隔を調整
グラフタイトルとラベルの設定:
- グラフタイトルをダブルクリックして編集
- 軸タイトルを追加(「グラフ要素の追加」→「軸ラベル」)
- 凡例の位置を調整
高度な設定とカスタマイズ
グラフの種類の組み合わせ
よく使われる組み合わせ:
主軸(左軸) | 第2軸(右軸) | 使用場面 |
---|---|---|
縦棒グラフ | 折れ線グラフ | 売上と利益率 |
面グラフ | 折れ線グラフ | 累積値と比率 |
縦棒グラフ | 縦棒グラフ | 異なる単位の実数値 |
色とスタイルの設定
視認性向上のための調整:
- データ系列の色を変更
- 線の太さや種類を調整
- マーカーの形状や大きさを設定
- グラフエリアの背景色を調整
軸の詳細設定
軸の書式設定オプション:
- 軸の位置:左・右の配置
- 目盛線:主目盛線・補助目盛線の表示
- 数値形式:通貨、パーセント、小数点以下桁数
- 軸の交点:0点での交差設定
2軸グラフの効果的な活用場面
ビジネス分析での活用
売上分析
売上と利益率の推移分析:
- 左軸:売上金額(万円、千万円)
- 右軸:利益率(%)
- 目的:収益性と売上規模のバランス確認
活用メリット:
- 売上増加時の利益率変動を把握
- コスト管理の効果を視覚化
- 戦略変更のタイミングを特定
人事・組織分析
従業員数と生産性の関係:
- 左軸:従業員数(人)
- 右軸:1人当たり売上(万円/人)
- 目的:組織拡大と効率性のバランス分析
財務分析
売上と財務指標の推移:
- 左軸:売上高(百万円)
- 右軸:自己資本比率(%)
- 目的:成長と財務健全性の両立確認
マーケティング分析での活用
Webマーケティング
アクセス数とコンバージョン率:
- 左軸:サイト訪問者数(人)
- 右軸:コンバージョン率(%)
- 目的:集客効果と成果効率の分析
広告効果測定:
- 左軸:広告費(万円)
- 右軸:ROAS(広告費用対効果)
- 目的:投資対効果の最適化
商品・サービス分析
販売数と顧客満足度:
- 左軸:販売数量(個)
- 右軸:顧客満足度スコア(点)
- 目的:量的成長と質的評価のバランス
製造・在庫管理での活用
在庫最適化
在庫数と販売数の動向:
- 左軸:在庫数(個)
- 右軸:販売数(個/月)
- 目的:適正在庫レベルの維持
製造効率分析:
- 左軸:生産数量(個)
- 右軸:不良率(%)
- 目的:品質と生産性の両立
プロジェクト管理での活用
進捗管理
作業時間と進捗率:
- 左軸:累積作業時間(時間)
- 右軸:進捗率(%)
- 目的:効率性と計画達成度の監視
2軸グラフ作成時の注意点とベストプラクティス

よくあるミスとその対策
ミス1:軸のスケール設定が不適切
問題:
- 軸の範囲が広すぎて変動が見えない
- 0点がずれて関係性が歪んで見える
対策:
- 適切な最小値・最大値を設定
- 0点を基準にした軸設定を検討
- データの変動幅に応じた目盛間隔を調整
ミス2:系列が多すぎて見づらい
問題:
- 3つ以上の系列で複雑になりすぎる
- 色の区別が困難になる
対策:
- 2系列までに制限することを基本とする
- 重要な指標に絞り込む
- 複数のグラフに分割することを検討
ミス3:ラベルや凡例が不明確
問題:
- どの軸に対応するかわからない
- 単位が表示されていない
対策:
- 軸ラベルに単位を明記
- 凡例の位置を適切に配置
- グラフタイトルで内容を明確化
データの信頼性確保
データ品質の管理
確認すべき項目:
- データの出典と信頼性
- 測定方法の一貫性
- 時系列データの連続性
- 異常値の検証
誤解を招かない表現
注意すべきポイント:
- 因果関係と相関関係の混同を避ける
- グラフタイトルで関係性を正確に表現
- 注釈で必要な説明を追加
視覚的な改善テクニック
色使いの最適化
効果的な色選択:
- 対比の強い色を使用して区別を明確に
- カラーユニバーサルデザインへの配慮
- 企業・組織のカラーとの統一
レイアウトの改善
見やすさを向上させる工夫:
- グリッド線の適切な使用
- マーカーでの強調ポイント設定
- 背景色の調整で視認性向上
トラブルシューティング
よくある問題と解決法
問題1:第2軸が表示されない
原因と対処法:
- データ系列の設定確認:「データ系列の書式設定」で第2軸にチェック
- グラフの種類確認:組み合わせグラフが選択されているか
- Excelバージョン:古いバージョンでは機能が制限される場合
問題2:軸の数値がおかしい
原因と対処法:
- データ型の確認:文字列になっていないか確認
- 桁区切り設定:表示形式の調整
- 自動スケール:手動でスケールを設定し直す
問題3:グラフが正しく更新されない
原因と対処法:
- データ範囲の確認:グラフのデータ範囲が正しいか
- 動的範囲の設定:テーブル機能や名前定義の活用
- キャッシュのクリア:ファイルの再計算を実行
パフォーマンスの最適化
大量データでの対応
効率化のテクニック:
- データの集約:適切な期間単位での集計
- サンプリング:代表的なデータポイントの選択
- 分割表示:複数のグラフに分けて表示
ファイルサイズの管理
容量削減の方法:
- 不要なデータ系列の削除
- 画像として保存する場合の解像度調整
- 参照データの最適化
応用技術と高度な活用
動的な2軸グラフの作成
スライサーとの連携
インタラクティブなグラフ作成:
- データをテーブル化
- スライサーを挿入
- 期間や分類での絞り込み機能を追加
ピボットグラフでの2軸表示
ピボットテーブルを活用した2軸グラフ:
- ピボットテーブルを作成
- ピボットグラフを挿入
- 組み合わせグラフに変更
Power BIとの連携
より高度な可視化
Power BIでの2軸グラフ活用:
- リアルタイムデータの表示
- 複数データソースの統合
- インタラクティブな分析機能
ダッシュボードでの活用
統合ダッシュボードでの2軸グラフ:
- KPIとの組み合わせ表示
- ドリルダウン機能の活用
- 共有とコラボレーション機能
まとめ
Excelの2軸グラフは、複数の指標を一目で比較できる非常に便利な機能です。適切に活用することで、データの関係性や傾向を効果的に可視化し、意思決定の質を向上させることができます。
主要なポイント
基本的な作成手順:
- データを適切に準備
- 組み合わせグラフを選択
- 第2軸の設定を行う
- 軸とラベルを調整
効果的な活用のコツ:
- 異なる単位・スケールのデータ比較に使用
- 2系列までに制限して見やすさを保つ
- 軸ラベルと凡例を明確に設定
- 適切な色とスタイルで視認性を向上
品質向上のポイント:
- データの信頼性を確保
- 誤解を招かない表現を心がける
- 視覚的な改善で理解を促進
- 定期的な見直しで精度を維持
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