Web会議やオンライン通話で、「自分の声が遅れて聞こえる」「キーンという不快な音がする」といったトラブルに遭遇したことはありませんか?
これらはエコーとハウリングと呼ばれる現象で、どちらもスピーカーとマイクの関係が原因で起こります。似ているようで実は違うこの2つの現象、混同している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、エコーとハウリングの違いを初心者にもわかりやすく解説します。発生原因や具体的な対策方法も紹介するので、Web会議のトラブル解決にぜひ役立ててください。
エコーとハウリングの違い【比較表】

まずは、エコーとハウリングの違いを表で確認しましょう。
| 項目 | エコー | ハウリング |
|---|---|---|
| 音の特徴 | 声が遅れて反響する(やまびこのような音) | 「キーン」「ピー」という不快な高音 |
| 聞こえ方 | 同じ音が何重にも繰り返し聞こえる | 一定の周波数の音が鳴り続ける |
| 発生の仕組み | スピーカーの音をマイクが拾い、遅れて出力 | 音がループして増幅され、発振する |
| 身近な例 | やまびこ、カラオケのエコー機能 | カラオケでマイクをスピーカーに近づけた時 |
| 不快度 | 会話しにくい | 非常に不快で耳が痛くなることも |
簡単に言うと:
- エコー = 声が「ワンワンワン…」と反響する現象
- ハウリング = 「キーン!」という金属音が鳴り続ける現象
どちらも「スピーカーから出た音をマイクが拾ってしまう」ことが原因ですが、音の出方や発生の仕組みが異なります。
エコーとは?
エコーの意味
エコー(Echo)とは、音が反響して繰り返し聞こえる現象のことです。
身近な例で言えば、山に向かって叫ぶと「ヤッホー…ヤッホー…ヤッホー…」と声が返ってくるやまびこがエコーの代表例です。カラオケで歌声に残響をつける「エコー機能」も同じ原理を利用しています。
Web会議でのエコー
Web会議やオンライン通話でエコーが発生すると、自分の声が遅れて聞こえてきます。
例えば、Aさんが「こんにちは」と話すと、その声がBさんのスピーカーから出力されます。Bさんのマイクがその音を拾い、Aさんのスピーカーから再生されることで、Aさんには自分の声が遅れて聞こえるのです。
エコーが発生する流れ:
- Aさんが「こんにちは」と話す
- Aさんの声がBさんのスピーカーから出力される
- Bさんのマイクがスピーカーの音を拾う
- その音がAさんのスピーカーから出力される
- Aさんには「こんにちは…こんにちは…」と遅れて聞こえる
エコーが起こるとどうなる?
エコーが発生すると、以下のような問題が起こります:
- 自分の声が返ってきて話しにくい
- 相手の声と自分の声が混ざって聞き取りにくい
- 会議の進行が妨げられる
- 重要な商談や面接で支障が出る
エコー自体は「キーン」という不快音ではないものの、会話のリズムが乱れてコミュニケーションが取りづらくなります。
ハウリングとは?
ハウリングの意味
ハウリング(Howling)とは、スピーカーから出た音をマイクが拾い、それが増幅されることで「キーン」「ピー」「ブー」といった不快な音が鳴り続ける現象です。
「Howling」は英語で「遠吠え」という意味があり、その名の通り、遠吠えのような不快な音が発生します。日本では「ハウる」「音が回る」と表現されることもあります。
ハウリングの仕組み
ハウリングは、音のループ(正帰還)によって発生します。
ハウリングが発生する流れ:
- スピーカーから音が出る
- その音をマイクが拾う
- 拾った音がスピーカーから出力される
- その音をまたマイクが拾う
- 2〜4が繰り返され、特定の周波数の音が増幅される
- 「キーン」という発振音が鳴り響く
つまり、音がスピーカー→マイク→スピーカー→マイク…とぐるぐる回り続けることで、特定の周波数の音だけが増幅されてハウリングになるのです。
ハウリングが起こるとどうなる?
ハウリングは、エコーよりも深刻な問題を引き起こします:
- 「キーン」という耳をつんざくような不快音が鳴る
- 音量が大きいと耳が痛くなる
- 会議が一時中断される
- 機器やスピーカーを傷める可能性がある
- 参加者全員に不快感を与える
ハウリングが発生したら、すぐにマイクをミュートにするか、スピーカーの音量を下げる必要があります。
エコーとハウリングの関係
エコーとハウリングは、実は密接な関係があります。
エコーが繰り返されるとハウリングになる
エコーは「音が遅れて反響する」現象ですが、この反響が何度も繰り返され、特定の条件が揃うと、音が増幅されてハウリングに発展します。
イメージで言うと:
- エコー = 音がゆっくり往復している状態
- ハウリング = 音の往復が高速化・増幅され、発振している状態
つまり、エコーは「ハウリングの前段階」とも言えるのです。エコーを放置すると、条件が揃った瞬間にハウリングが発生する可能性があります。
エコー・ハウリングが発生する主な原因
Web会議でエコーやハウリングが発生する原因を詳しく見ていきましょう。
原因1:マイクとスピーカーが近すぎる
マイクとスピーカーの距離が近いと、スピーカーから出た音をマイクが直接拾いやすくなります。
特にノートパソコンの内蔵マイク・スピーカーを使っている場合、両者の距離が非常に近いため、エコーやハウリングが発生しやすくなります。
原因2:音量が大きすぎる
スピーカーの音量が大きすぎると、マイクが音を拾いやすくなります。同様に、マイクの感度が高すぎる場合も、周囲の音を拾いやすくなり、トラブルの原因になります。
原因3:同じ空間で複数の端末を使用
会議室で複数人が参加する際、それぞれが自分のパソコンでWeb会議に参加すると、各端末のマイクとスピーカーが干渉し合い、エコーやハウリングが発生しやすくなります。
原因4:部屋の反響
壁や床が反響しやすい素材(コンクリート、ガラスなど)でできた部屋では、音が反射してマイクに届きやすくなります。特に、カーペットやカーテンがない部屋は音が反響しやすい環境です。
原因5:エコーキャンセル機能がない・オフになっている
多くのWeb会議ツールやマイクには「エコーキャンセル機能」が搭載されていますが、この機能がオフになっていたり、性能が低かったりすると、エコーやハウリングが発生しやすくなります。
原因6:機器の設定ミス
パソコンの音声設定で、意図しないマイクやスピーカーが選択されていると、予期せぬトラブルが発生することがあります。
エコーの対策方法

エコーを防ぐための具体的な対策を紹介します。
対策1:イヤホンやヘッドセットを使う
最も効果的な対策は、イヤホンやヘッドセットを使用することです。
イヤホンを使えば、スピーカーからの音が外部に漏れにくくなり、マイクが音を拾うことがなくなります。特にマイク付きイヤホン(ヘッドセット)を使えば、エコーの発生をほぼ完全に防げます。
対策2:発言しない時はミュートにする
自分が発言しない時は、マイクをミュートにしておきましょう。これにより、自分の端末からエコーが発生することを防げます。
対策3:エコーキャンセル機能を確認する
使用しているWeb会議ツール(Zoom、Teams、Google Meetなど)のエコーキャンセル機能がオンになっているか確認しましょう。
Zoomの場合:
- 設定を開く
- 「オーディオ」を選択
- 「バックグラウンドノイズを抑制」を確認
対策4:同じ空間では1台の端末を使う
会議室で複数人が参加する場合、全員が個別の端末でマイク・スピーカーをオンにするのではなく、1台の端末のみでマイク・スピーカーをオンにしましょう。他の参加者はカメラのみオンにし、マイクと音声はオフにします。
対策5:スピーカーの音量を下げる
スピーカーの音量を適切なレベルに調整することで、マイクが音を拾いにくくなります。聞き取れる範囲で、できるだけ小さめの音量に設定しましょう。
対策6:エコーキャンセル機能付きのマイク・スピーカーを使う
PC内蔵のマイク・スピーカーではなく、エコーキャンセル機能付きの外付けマイクスピーカー(スピーカーフォン)を使用すると、エコーの発生を大幅に抑えられます。
ハウリングの対策方法
ハウリングを防ぐための具体的な対策を紹介します。
対策1:マイクとスピーカーの距離を離す
マイクとスピーカーの距離を1メートル以上離すことで、ハウリングの発生リスクを下げられます。外付けマイクを使用する場合は、スピーカーから離れた位置に設置しましょう。
対策2:マイクをスピーカーに向けない
マイクの向きをスピーカーと反対側に向けることで、スピーカーからの音を拾いにくくなります。指向性マイク(特定の方向の音を拾うマイク)を使う場合は、集音方向に注意しましょう。
対策3:音量を適切に調整する
スピーカーの音量とマイクの感度を適切なレベルに調整します。大きすぎる音量はハウリングの原因になるため、必要最小限の音量に設定しましょう。
対策4:イヤホンやヘッドセットを使う
エコー対策と同様、イヤホンやヘッドセットを使用することで、ハウリングの発生を防げます。
対策5:部屋の反響を抑える
カーペット、カーテン、吸音パネルなどを使って、部屋の反響を抑えましょう。音が反射しにくい環境を作ることで、ハウリングのリスクを下げられます。
対策6:発生したらすぐにミュートにする
ハウリングが発生したら、まずマイクをミュートにするか、スピーカーの音量を下げることで、音のループを断ち切れます。
エコーキャンセル機能とは?
Web会議でのエコーやハウリング対策として欠かせないのが「エコーキャンセル機能」です。
エコーキャンセルの仕組み
エコーキャンセル機能は、スピーカーから出た音とマイクが拾った音を比較し、エコー成分だけを除去する技術です。
仕組みの概要:
- スピーカーから出力された音声を記録
- マイクが拾った音声を分析
- スピーカー出力音と同じ成分(エコー)を特定
- マイク入力からエコー成分を差し引く
- クリアな音声だけが相手に送られる
エコーキャンセルの種類
エコーキャンセル機能には、主に2つの方式があります。
1. エコーサプレッサー方式
相手が話している間、自分のマイクをミュートにする方式です。単純な仕組みですが、同時に話すと片方の声が聞こえなくなるデメリットがあります。
2. 適応型エコーキャンセラー方式
エコー成分だけを除去する高度な方式です。同時発言が可能で、より自然な会話ができます。現在の多くのWeb会議システムや高性能マイクに採用されています。
エコーキャンセル機能付き機器の選び方
Web会議用のマイクやスピーカーを選ぶ際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- エコーキャンセル機能が搭載されているか
- ノイズキャンセル機能があるとさらに快適
- 対応人数が会議の参加人数に合っているか
- 接続方式(USB、Bluetooth、3.5mmジャックなど)
発生源の特定方法

Web会議中にエコーやハウリングが発生した場合、まず「どこが原因か」を特定することが重要です。
特定の手順
ステップ1:参加者のマイクを1人ずつミュートにする
会議の参加者に、1人ずつマイクをミュートにしてもらいます。ミュートにした時にエコーやハウリングが止まれば、その人の環境が原因です。
ステップ2:原因となっている参加者の環境を確認
原因が特定できたら、その参加者に以下を確認してもらいます:
- イヤホンやヘッドセットを使っているか
- スピーカーの音量が大きすぎないか
- マイクとスピーカーが近すぎないか
- 同じ空間に他の端末がないか
ステップ3:対策を実施
原因に応じた対策を実施します。多くの場合、イヤホンの使用やミュートの徹底で解決できます。
よくある質問(Q&A)
Q1:エコーとハウリングはどちらが深刻?
A:ハウリングの方が深刻です。エコーは会話しにくくなる程度ですが、ハウリングは「キーン」という不快音が鳴り続け、耳を傷める可能性もあります。ハウリングが発生したら、すぐに対処が必要です。
Q2:スマホでもエコーやハウリングは起こる?
A:はい、起こります。スマホでWeb会議に参加する場合も、スピーカーとマイクが近いため、エコーやハウリングが発生する可能性があります。イヤホンを使用することで防げます。
Q3:Zoom/Teams/Google Meetにエコーキャンセル機能はある?
A:はい、主要なWeb会議ツールにはエコーキャンセル機能が搭載されています。ただし、設定によってオフになっている場合や、PC内蔵マイクの性能が低い場合は効果が十分でないことがあります。
Q4:イヤホンを使えばエコーは絶対に起こらない?
A:ほぼ起こりません。イヤホンを使えば、スピーカーの音が外部に漏れにくくなるため、エコーの発生をほぼ完全に防げます。ただし、イヤホンの音量が大きすぎると、音漏れによってエコーが発生する可能性はあります。
Q5:カラオケの「エコー機能」とは違うの?
A:同じ原理ですが、意図的か否かが異なります。カラオケのエコー機能は、声に残響を加えて歌を聴きやすくするために「わざと」エコーを発生させています。一方、Web会議でのエコーは「意図せず」発生するトラブルです。
Q6:ハウリングを音楽で利用することはある?
A:はい、あります。エレキギターの演奏では、アンプの音とギターが共振して発生するハウリング(フィードバック)を意図的に利用する「フィードバック奏法」というテクニックがあります。ロックやメタルの演奏でよく使われます。
まとめ
エコーとハウリングの違いと対策について解説しました。
エコーとハウリングの違い:
| エコー | ハウリング |
|---|---|
| 声が遅れて反響する | 「キーン」という高音が鳴り続ける |
| やまびこのような現象 | 音がループして発振する現象 |
| 会話しにくくなる | 非常に不快で耳が痛くなることも |
共通の原因:
- スピーカーから出た音をマイクが拾ってしまうこと
効果的な対策:
✅ イヤホンやヘッドセットを使う(最も効果的)
✅ 発言しない時はミュートにする
✅ マイクとスピーカーの距離を離す
✅ 音量を適切に調整する
✅ エコーキャンセル機能付きの機器を使う
✅ 同じ空間では1台の端末のみマイク・スピーカーをオン
Web会議が日常化した今、エコーやハウリングのトラブルは誰にでも起こりうる問題です。この記事で紹介した対策を実践して、快適なオンラインコミュニケーションを実現してくださいね!


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