パソコンが突然起動しなくなったとき、BIOSすら表示されないとき、「CMOSクリアを試してみて」とアドバイスされたことがあるかもしれない。
CMOSクリアは、BIOS設定の破損やハードウェア変更後の起動不能など、さまざまなトラブルの解消に有効なリセット手段だ。
この記事では、CMOSとは何か・CMOSクリアで解決できる症状・デスクトップ/ノート別の具体的な手順を、Intel・ASUS・Dellなどのメーカー公式情報をもとに解説する。
CMOSとは何か
CMOSとは、マザーボード上に搭載された小型の揮発性メモリのことだ。
BIOSの設定情報(起動順序・日時・ハードウェア構成など)を保存する役割を持っており、電源を切っても設定が消えないよう、マザーボード上のボタン電池(CR2032)から常に電力を供給している。
「CMOSをクリアする」とは、このメモリに蓄積された情報を消去してBIOS設定を初期状態(工場出荷時のデフォルト)に戻すことを意味する。
BIOS設定が消えるだけで、BIOSそのもの(ファームウェア)は消えない。
OSのデータやファイルにも影響はない。
CMOSクリアで解決できる症状
CMOSクリアが有効なのは、主に以下のような状況だ。
- パソコンが起動しない・BIOSすら表示されない(BIOS設定の破損が原因の場合)
- ハードウェアを交換・増設した後から起動しなくなった(新パーツとBIOS設定の不整合)
- オーバークロック設定後に不安定・フリーズするようになった
- BIOSにパスワードが設定されていて入れない(機種によって有効)
- 日時が頻繁にリセットされる(CMOS電池の消耗が原因の場合)
逆に、物理的なハードウェア故障(マザーボード・電源・メモリの物理破損)が原因の場合、CMOSクリアでは解決しない。
CMOSクリアの方法は3種類ある
マザーボードによって、CMOSクリアの手段が異なる。
自分の環境でどの方法が使えるか、マザーボードのマニュアルで確認しておこう。
方法① CLR_CMOSボタン(ボタン式・最も簡単)
ハイエンドやミドルレンジのマザーボードには、「CLR_CMOS」「CLEAR CMOS」と書かれた専用ボタンが搭載されていることがある。
背面のI/Oパネル部分か、マザーボード基板上に配置されている。
手順:
- PCをシャットダウンし、電源ケーブルを抜く
- CLR_CMOSボタンを5〜10秒間押し続ける
- 電源ケーブルを挿し直してPCを起動する
- 起動後にBIOS設定がリセットされた旨のメッセージが表示されるので、F1(または機種に応じたキー)を押してBIOSに入り設定を保存して終了する
方法② ジャンパーピンをショートさせる(デスクトップ向け)
多くのデスクトップPC向けマザーボードには、「JBAT1」「CLR_CMOS」「CLRTC」などと印字された2〜3ピンのジャンパーピンがある。
CMOS電池の近くに配置されていることが多い。
手順(IntelリファレンスをもとにASUS公式情報と照合):
- PCをシャットダウンし、電源ケーブルを抜く(電源ユニット背面のスイッチもOFFにする)
- 電源ボタンを数回押して、基板内の残留電力を放電させる
- ケースのサイドパネルを取り外す
- マザーボード上のCMOSクリア用ジャンパーピンを探す(マニュアルで位置を確認)
- 金属製のもの(付属のジャンパーキャップ、またはマイナスドライバーの先端など)で2つのピンを5〜10秒間短絡(ショート)させる
- 短絡を解除し、ケースを閉じて電源ケーブルを挿し直す
- PCを起動してBIOS設定をリセットする
※ 3ピン式の場合は、IntelのリファレンスではポジションA(1-2番ピン)がデフォルト、ポジションB(2-3番ピン)がクリア用とされている場合が多い。ショート後は必ず元のポジションに戻すこと。
参照:Intel公式「How to Clear CMOS to Reset BIOS Settings」
方法③ CMOS電池(CR2032)を取り外す(デスクトップ・ノート共通)
ジャンパーピンもCLR_CMOSボタンもない場合に使う方法で、ローテクだが確実だ。
デスクトップPCの手順:
- PCをシャットダウンし、電源ケーブルを抜く(電源ユニットのスイッチもOFF)
- 電源ボタンを数回押して残留電力を放電させる
- ケースを開けてマザーボード上のCR2032電池を探す
- 電池ホルダーのラッチ(爪)を押しながら電池を取り外す
- そのまま1〜5分放置する(コンデンサに残った電荷が放電されるまで待つ)
- 電池を元に戻し、ケースを閉じて電源ケーブルを挿し直す
- PCを起動してBIOS設定をリセットする
⚠️ 電源ケーブルを抜かずに電池だけ取り外しても、コンデンサに残った電力でCMOSが保持されてしまうことがある。必ず電源ケーブルを抜いてから作業すること。
ノートPCの手順:
ノートPCはCMOSクリアが難しい場合が多い。
薄型モデルや一体型モデルでは電池がはんだ付けされていて取り外せないことがある。
- 電源ケーブルとバッテリーを取り外す
- 裏蓋のネジを外してマザーボードにアクセスする
- CMOS電池を取り外して1〜5分放置する
- 電池を戻し、バッテリーを取り付けて起動する
ノートPCで裏蓋が開けられない場合、CMOSクリアは困難なため、メーカーのサポートに相談することを推奨する。
CMOSクリア後にやること(重要)
CMOSクリアが成功すると、起動時にBIOS設定がリセットされた旨のメッセージが表示される。
これが表示されれば成功のサインだ。そのまま放置せず、以下の設定を行う。
ASUS系マザーボードの場合(他メーカーも概ね同様):
- 表示されたメッセージに従い、F1キーを押してBIOS設定画面に入る
- F5キーを押して「Load Optimized Defaults(最適化されたデフォルト設定を読み込む)」を選択する
- 日付と時刻を正しく設定する
- F10キーで設定を保存してBIOSを終了する
CMOSクリアが成功したかどうかの確認方法
- 起動時にBIOSリセットのメッセージが出た → 成功
- 日付・時刻のリセットを求められた → 成功
- BIOSの設定が初期値に戻っていた → 成功
逆に、CMOSクリアを行っても症状が変わらない場合は、BIOS設定の問題ではなくハードウェアの物理的な故障が原因の可能性が高い。
CMOSクリアで解決しない場合に確認すること
CMOSクリアを正しく行っても起動しない場合は、以下を順番に確認しよう。
メモリ(RAM)の再挿し:
メモリが正しく刺さっていないと映像すら出ない。
一度スロットから抜いて、カチッとロックされるまでしっかり差し直す。
最小構成での起動テスト:
グラフィックボードや増設カードをすべて外し、必要最低限の構成(マザーボード・CPU・RAM1枚・電源)で起動を試みる。
この状態で起動できれば、外したパーツのいずれかが原因だ。
CMOS電池の交換:
電池の電圧が低下していると設定が保持されなくなる。
CR2032電池は家電量販店や100円ショップで入手でき、数百円で交換できる。
BIOSのアップデート:
一部の起動不能はBIOSのバグが原因のことがある。
起動できる状態になってから、マザーボードメーカーの公式サイトで最新のBIOSバージョンを確認しよう。
まとめ
CMOSクリアとは、マザーボードのBIOS設定を初期状態に戻す操作だ。
OSのデータには一切影響しないため、ハードウェアトラブルの切り分けで最初に試す有効な手段のひとつとなっている。
| 方法 | 必要なもの | 難易度 |
|---|---|---|
| CLR_CMOSボタン | 専用ボタン搭載のマザーボード | ★☆☆ |
| ジャンパーピンのショート | ドライバーorジャンパーキャップ | ★★☆ |
| CMOS電池の取り外し | マイナスドライバー | ★★☆(ノートは★★★) |
作業前は必ず電源ケーブルを抜くこと、電池取り外し後は1〜5分放置してから戻すことが正しい手順の要点だ。
CMOSクリアで解決しない場合は、メモリの再挿しや最小構成テストに進んで原因をさらに絞り込もう。
参考情報源:

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