「Chromiumベース」という言葉を聞いたことはありますか?
現在、世界中で使われているWebブラウザの70%以上が「Chromiumベース」です。Google Chrome、Microsoft Edge、Opera、Braveなど、多くの有名ブラウザがこのChromiumをベースに開発されています。この記事では、Chromiumとは何か、どんなブラウザがあるのか、そしてあなたに最適なブラウザの選び方まで、わかりやすく解説します。
Chromiumとは?

まず、Chromiumの基本を理解しましょう。
Chromiumの定義
Chromium(クロミウム)とは、Googleが中心となって開発している、オープンソースのWebブラウザプロジェクトです。
「オープンソース」とは、ソースコード(プログラムの設計図)が一般に公開されており、誰でも自由に利用・改変できることを意味します。
Chromiumの歴史
2008年
Googleが、Google Chromeと同時にChromiumプロジェクトを開始しました。
2013年
Chromium独自のレンダリングエンジン「Blink」が誕生しました(それまではAppleのWebKitを使用)。
現在
世界中の企業や開発者が、Chromiumをベースに独自のブラウザを開発しています。
Chromiumの特徴
オープンソース
誰でも自由にソースコードを閲覧・利用できます。
高速なレンダリング
「Blink」エンジンと「V8」JavaScriptエンジンにより、高速なページ表示を実現しています。
豊富な拡張機能
Chrome Web Storeの拡張機能がそのまま利用できます(ブラウザによって一部制限あり)。
クロスプラットフォーム対応
Windows、macOS、Linux、Android、iOSなど、さまざまなプラットフォームで動作します。
ChromiumとGoogle Chromeの違い
「ChromiumとGoogle Chromeは何が違うの?」という疑問にお答えします。
基本的な関係
Chromium
オープンソースのプロジェクト。基本的なブラウザ機能を提供。
Google Chrome
Chromiumをベースに、Googleが独自機能を追加して製品化したブラウザ。
主な違い
1. 自動更新機能
Chromium
- 自動更新機能なし
- 手動でダウンロード・インストールが必要
Google Chrome
- 自動更新機能あり
- 常に最新版が保たれる
2. Googleサービスとの連携
Chromium
- Googleアカウントとの同期機能が限定的
- 一部のGoogle独自機能が使えない
Google Chrome
- Googleアカウントと完全同期
- Gmail、Google Drive、Google翻訳などとシームレスに連携
3. 動画再生コーデック
Chromium
- 一部の動画形式(H.264、MP3など)に標準では非対応
- ライセンスの関係で制限がある
Google Chrome
- 主要な動画・音声形式にすべて対応
- YouTubeなどの動画サイトで問題なく再生できる
4. Adobe Flash Player
Chromium
- Flash Player非搭載(現在はFlash自体がサポート終了)
Google Chrome
- かつてはFlash Playerを内蔵していた
5. プライバシー
Chromium
- Googleへのデータ送信が少ない
- プライバシー重視のユーザーに好まれる
Google Chrome
- 使用統計や閲覧履歴の一部をGoogleに送信
- ユーザー体験の向上に利用される
6. ロゴとブランディング
Chromium
- シンプルな青いロゴ
- Google商標なし
Google Chrome
- カラフルな円形ロゴ
- Google商標あり
Chromiumベースのブラウザ一覧
Chromiumをベースに開発された主要なブラウザを紹介します。
1. Google Chrome【最も人気】
開発元:Google
特徴
- 世界シェア1位(約65%)
- 高速で安定した動作
- Googleサービスとの完璧な連携
- 豊富な拡張機能(200,000以上)
こんな人におすすめ
- Googleサービスを頻繁に使う人
- 最も安定したブラウザを求める人
- Web開発者(開発者ツールが充実)
2. Microsoft Edge【Windows標準】
開発元:Microsoft
特徴
- Windows 10/11の標準ブラウザ
- 2020年にChromiumベースに移行
- Microsoftアカウントとの連携
- IEモードでレガシーサイトにも対応
- 無料VPN(月5GB)
こんな人におすすめ
- Windowsユーザー
- Microsoft 365を使用している人
- バッテリー持続時間を重視する人
3. Brave【プライバシー重視】
開発元:Brave Software
特徴
- 広告とトラッカーを標準でブロック
- プライバシー保護が最強クラス
- 広告を見ることで仮想通貨(BAT)を獲得できる独自システム
- ページ読み込みが高速(広告がないため)
こんな人におすすめ
- プライバシーを最重視する人
- 広告をブロックしたい人
- 仮想通貨に興味がある人
4. Opera【多機能】
開発元:Opera Software(中国の奇虎360傘下)
特徴
- 2013年以降、Chromiumベース
- 無料VPN内蔵
- 広告ブロッカー標準搭載
- サイドバーでメッセンジャーアプリにアクセス可能
- バッテリーセーバー機能
こんな人におすすめ
- VPNを手軽に使いたい人
- 多機能なブラウザを求める人
- バッテリー持続時間を重視する人
5. Vivaldi【カスタマイズ重視】
開発元:Vivaldi Technologies(元Opera共同創業者が設立)
特徴
- 圧倒的なカスタマイズ性
- タブスタッキング、タブタイリング
- ワークスペース機能(作業ごとにタブをグループ化)
- メール、カレンダー、RSSリーダー、メモ機能を内蔵
- マウスジェスチャー
こんな人におすすめ
- ブラウザを細かくカスタマイズしたい人
- パワーユーザー
- 大量のタブを開く人
6. Arc【新世代UI】
開発元:The Browser Company
特徴
- 革新的なユーザーインターフェース
- サイドバーによるタブ管理
- スペース機能(アカウントごとに環境を分離)
- 自動アーカイブ機能(古いタブを自動整理)
- スプリットビュー、ミニウィンドウ
こんな人におすすめ
- 新しいUI体験を求める人
- タブの整理に悩んでいる人
- MacやiOSユーザー
7. Sleipnir(スレイプニル)【国産】
開発元:フェンリル(日本)
特徴
- 日本製のブラウザ
- マウスジェスチャー
- キーボードショートカットのカスタマイズ
- タブの自動保存
- 日本語サポートが充実
こんな人におすすめ
- 国産ブラウザを使いたい人
- マウスジェスチャーを多用する人
- 日本語の細かいサポートが必要な人
8. Kinza(キンザ)【国産】
開発元:Dayz(日本)
特徴
- 日本製のブラウザ
- マウスジェスチャー標準搭載
- スーパードラッグ機能
- ページ内検索の強化
- 軽量で高速
こんな人におすすめ
- 国産ブラウザを使いたい人
- シンプルで軽量なブラウザを求める人
9. Sidekick【生産性重視】
開発元:PushPlayLabs
特徴
- サイドバーにアプリを固定
- セッション管理(作業ごとにタブをグループ化)
- 集中モード
- AIによるメモリ管理で軽快動作
- アカウント切り替え機能
こんな人におすすめ
- 仕事で複数のWebアプリを使う人
- 生産性を高めたい人
- 複数アカウントを管理する人
10. DuckDuckGo Browser【プライバシー特化】
開発元:DuckDuckGo
特徴
- プライバシー保護に特化
- トラッキングを完全ブロック
- Fire Button(ワンタップで全データ削除)
- DuckDuckGo検索エンジンを使用
こんな人におすすめ
- 完全なプライバシーを求める人
- 検索履歴を一切残したくない人
その他の注目ブラウザ
Blisk:Web開発者向け、PC/スマホの同時プレビュー
Yandex Browser:ロシア製、データ圧縮機能
Comodo Dragon:セキュリティ重視
SRWare Iron:プライバシー重視のChrome代替
Torch Browser:トレント機能内蔵
Chromiumベースのブラウザを使うメリット

なぜこれほど多くのブラウザがChromiumをベースにしているのでしょうか?
メリット1:高速なページ表示
Chromiumの「Blink」レンダリングエンジンと「V8」JavaScriptエンジンは、業界トップクラスの性能を誇ります。
ほとんどのWebサイトが快適に表示されます。
メリット2:圧倒的な互換性
Chromiumベースのブラウザは、世界シェアの70%以上を占めるため、ほぼすべてのWebサイトが正しく表示されます。
Web開発者も、Chromiumベースのブラウザでの動作を優先して開発しています。
メリット3:豊富な拡張機能
Chrome Web Storeには20万以上の拡張機能があり、ほとんどのChromiumベースのブラウザでそのまま利用できます。
メリット4:最新のWeb技術への対応が早い
Chromiumプロジェクトは、最新のWeb標準にいち早く対応します。
PWA(Progressive Web Apps)、WebAssembly、WebGPUなど、最新技術をすぐに体験できます。
メリット5:開発者ツールの充実
Chrome DevToolsは、業界標準の開発者ツールです。
Web開発を行う場合、Chromiumベースのブラウザは必須です。
メリット6:クロスプラットフォーム対応
Windows、macOS、Linux、Android、iOSなど、主要なプラットフォームすべてで動作します。
デバイス間の同期も簡単です。
Chromiumベースのブラウザのデメリット
メリットばかりではありません。デメリットも理解しておきましょう。
デメリット1:Googleへの依存
Chromiumプロジェクトは、Googleが主導しています。
Web標準の方向性がGoogleの意向に左右される可能性があります。
デメリット2:ブラウザの多様性の低下
世界のブラウザの70%以上がChromiumベースになることで、ブラウザエンジンの多様性が失われています。
現在、主要なブラウザエンジンは3つしかありません。
- Blink(Chromiumベース):Chrome、Edge、Opera、Braveなど
- Gecko(Firefox)
- WebKit(Safari)
デメリット3:メモリ消費が大きい
Chromiumベースのブラウザは、比較的メモリを多く消費します。
低スペックPCでは動作が重くなることがあります。
デメリット4:プライバシーへの懸念
Google Chromeは、ユーザーデータを収集することで知られています。
Chromiumベースの他のブラウザも、設定次第ではデータを送信する可能性があります。
デメリット5:一部の拡張機能が使えない
ブラウザによっては、Chrome Web Storeの拡張機能の一部が動作しないことがあります。
あなたに最適なChromiumベースのブラウザの選び方
たくさんのブラウザがありますが、どれを選べばいいのでしょうか?
目的別おすすめブラウザ
プライバシーを重視するなら
おすすめ:Brave、DuckDuckGo Browser
広告とトラッカーを自動ブロックし、プライバシーを最大限保護します。
仕事の生産性を高めたいなら
おすすめ:Sidekick、Vivaldi、Arc
タブ管理、セッション管理、ワークスペース機能で作業効率がアップします。
シンプルで使いやすいブラウザなら
おすすめ:Google Chrome、Microsoft Edge
標準的で使いやすく、ほぼすべての機能が揃っています。
国産ブラウザを使いたいなら
おすすめ:Sleipnir、Kinza
日本語サポートが充実しており、日本のユーザーに配慮された機能があります。
カスタマイズを楽しみたいなら
おすすめ:Vivaldi
ほぼすべての要素をカスタマイズできる、パワーユーザー向けブラウザです。
VPNを使いたいなら
おすすめ:Opera、Microsoft Edge
無料VPNが内蔵されており、追加ソフトが不要です。
Web開発者なら
おすすめ:Google Chrome、Blisk
Chrome DevToolsは業界標準。Bliskはスマホ/PC同時プレビューが可能です。
ゲーマーなら
おすすめ:Opera GX
ゲーマー向けに特化した機能(Twitch統合、CPU/RAM制限など)を搭載。
選ぶ際のチェックポイント
- プライバシーポリシーを確認する
- どのようなデータを収集するのか
- データはどこに送信されるのか
- メモリ使用量を確認する
- 低スペックPCの場合は軽量ブラウザを選ぶ
- 必要な機能があるか確認する
- VPN、広告ブロック、翻訳機能など
- 拡張機能の対応状況を確認する
- 必要な拡張機能が動作するか
- アップデート頻度を確認する
- セキュリティのため、定期的にアップデートされているか
Chromiumベースでないブラウザとの比較
参考までに、Chromiumベースでない主要ブラウザも紹介します。
Firefox(Gecko)
開発元:Mozilla Foundation
特徴
- Geckoエンジンを使用
- プライバシー保護が強い
- カスタマイズ性が高い
- メモリ使用量が比較的少ない
Safari(WebKit)
開発元:Apple
特徴
- WebKitエンジンを使用
- macOS/iOS専用
- バッテリー消費が少ない
- Appleエコシステムとの連携
Tor Browser(Gecko)
開発元:The Tor Project
特徴
- 匿名性に特化
- Torネットワークを経由
- 追跡をほぼ完全にブロック
なぜChromiumベースでないブラウザも重要か
ブラウザの多様性は、Webの健全性にとって重要です。
一つのエンジンだけに依存すると、以下のリスクがあります。
- 技術的な問題が広範囲に影響
- Webの標準化がGoogle主導になる
- イノベーションが停滞する可能性
よくある質問(FAQ)
Q1: Chromium自体をブラウザとして使えますか?
A: はい、使えます。ただし、自動更新機能がなく、一部の動画形式が再生できないなど、Google Chromeに比べて不便な点が多いため、日常使いには向きません。Chromiumは主に開発者やテスト用途で使われます。
Q2: Chromiumベースのブラウザは、すべてGoogleにデータを送信しますか?
A: いいえ。Chromiumベースでも、BraveやVivaldiなど、Googleへのデータ送信を最小限に抑えたブラウザがあります。各ブラウザのプライバシーポリシーを確認しましょう。
Q3: Chrome Web Storeの拡張機能は、すべてのChromiumベースのブラウザで使えますか?
A: ほとんどの拡張機能は動作しますが、一部のブラウザでは制限があることがあります。例えば、Google特有のAPIを使用する拡張機能は、他のブラウザでは動作しない場合があります。
Q4: Chromiumベースのブラウザは、どれが一番軽いですか?
A: 一般的に、機能が少ないブラウザほど軽量です。Chromium(素の状態)、Kinza、SRWare Ironなどが比較的軽量です。ただし、メモリ使用量は、開いているタブの数や拡張機能の数にも大きく影響されます。
Q5: Microsoft EdgeはChromiumベースですが、Internet Explorerとは何が違いますか?
A: Internet Explorerは独自のTridentエンジンを使用していましたが、現在のEdgeはChromiumベースのBlinkエンジンを使用しています。両者はまったく別物です。EdgeはChromiumベースになったことで、高速化し、拡張機能も豊富になりました。
Q6: Operaは安全ですか?中国企業が所有していると聞きました。
A: Operaは中国の奇虎360の傘下ですが、ノルウェーの会社が開発を続けています。プライバシーポリシーを確認し、懸念がある場合は他のブラウザを検討してください。一般的な使用では問題ありませんが、機密情報を扱う場合は注意が必要です。
Q7: ブラウザを乗り換える際、ブックマークや設定は移行できますか?
A: はい、ほとんどのブラウザには、他のブラウザからブックマーク、パスワード、履歴などをインポートする機能があります。初回起動時にインポートウィザードが表示されることが多いです。
Q8: 複数のChromiumベースのブラウザを同時にインストールして使えますか?
A: はい、同時にインストールして使用できます。例えば、仕事用にEdge、プライベート用にBrave、開発用にChromeといった使い分けが可能です。
Q9: Chromiumベースのブラウザは、すべて同じ速度ですか?
A: 基本的なレンダリングエンジンは同じですが、追加機能や設定によって体感速度が変わります。例えば、Braveは広告をブロックするため、ページ読み込みが速く感じられます。
Q10: 将来、Chromiumベースでないブラウザはなくなりますか?
A: 現時点では、Firefox(Gecko)とSafari(WebKit)が存在し、独自の進化を続けています。多様性の重要性が認識されているため、すぐになくなることはないでしょう。ただし、シェアはChromiumベースに集中しています。
まとめ:自分に合ったChromiumベースのブラウザを見つけよう
Chromiumベースのブラウザは、高速で互換性が高く、豊富な拡張機能を利用できるのが大きな魅力です。
Chromiumベースのブラウザの特徴
- オープンソースのChromiumプロジェクトをベースに開発
- 世界のブラウザシェアの70%以上を占める
- Google Chrome、Microsoft Edge、Opera、Brave、Vivaldiなど多数
主な選択肢
- 万人向け:Google Chrome、Microsoft Edge
- プライバシー重視:Brave、DuckDuckGo Browser
- カスタマイズ重視:Vivaldi
- 生産性重視:Sidekick、Arc
- 国産:Sleipnir、Kinza
選ぶ際のポイント
- 何を重視するか(プライバシー、速度、機能)
- プライバシーポリシーの確認
- 必要な機能の有無
- メモリ使用量(PCスペックに合わせて)
ブラウザは、毎日使うツールです。自分の使い方に合ったブラウザを選ぶことで、快適なインターネット体験が得られます。
まずは気になるブラウザをいくつか試してみて、自分に最適なものを見つけましょう。ブラウザの乗り換えは簡単で、ブックマークや設定もすぐに移行できますよ!
Chromiumの発展により、私たちはこれまで以上に高速で便利なWebブラウジングを楽しめるようになりました。この恩恵を最大限に活用して、より快適なデジタルライフを送りましょう!

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