Power Automate Desktop(PAD)でブラウザ操作を自動化している時に、こんなエラーメッセージが表示されて困っていませんか?
「Chrome を使用したファイルのダウンロードはサポートされていません。オートメーション ブラウザーの使用を検討してください」
この記事では、このエラーが表示される原因と、実用的な解決方法を詳しく解説していきます。
このエラーが表示される原因

このエラーメッセージは、Power Automate Desktopで特定のダウンロードアクションを使用した際に表示されます。
具体的には、以下のアクションを使用してChromeでファイルをダウンロードしようとした場合に発生します。
エラーが発生するアクション:
- 「Webからダウンロードします」アクション
- 「Webページのダウンロード リンクをクリックします」アクション
これらは、Internet Explorer(IE)向けに設計された古いアクションで、Chrome、Edge、Firefoxなどのモダンブラウザでは正常に動作しないんです。
なぜChromeで使えないの?
Internet ExplorerとChrome/Edgeでは、ブラウザの内部構造や動作方式が大きく異なります。
古いダウンロードアクションは、IEの特殊な機能に依存して作られていたため、他のブラウザでは互換性がありません。
実際、これらのアクションの説明にも「Internet Explorerライフサイクルの終わりに達したもののみで動作します」と明記されています。
解決方法1:通常のブラウザ操作でダウンロードする【推奨】
最も確実で汎用性が高い方法は、通常のブラウザ操作アクションを使ってダウンロードボタンをクリックする方法です。
手順
ステップ1:Chromeを起動する
- アクショングループ「ブラウザー自動化」を開く
- 「新しいChromeを起動します」アクションをフローに追加
- 起動するURLを設定
アクション: 新しいChromeを起動します
起動モード: 起動する新しいインスタンス
初期URL: https://example.com/download-page
ステップ2:ダウンロードボタンをクリック
- 「Webページ上の要素をクリックします」アクションを追加
- UI要素ピッカーを使用してダウンロードボタンを指定
アクション: Webページ上の要素をクリックします
ブラウザー インスタンス: %Browser%
UI要素: ダウンロードボタン
ステップ3:ダウンロード完了を待つ
ダウンロードには時間がかかるため、適切な待機時間を設定します。
アクション: Wait
待機時間: 5秒(ファイルサイズに応じて調整)
ステップ4:ダウンロードフォルダからファイルを取得
- 「フォルダー内のファイルを取得します」アクションを追加
- ダウンロードフォルダのパスを指定
- 最新のファイルを取得
アクション: フォルダー内のファイルを取得します
フォルダー: C:\Users\[ユーザー名]\Downloads
ファイルフィルター: *.xlsx(拡張子に応じて変更)
並び替え基準: 更新日時
並び替え順序: 降順
この方法のメリット
- Chrome、Edge、Firefoxすべてで動作する
- 実際のユーザー操作と同じなので、サイトの制約を受けにくい
- ダウンロード先を自由に指定できる
- デバッグがしやすい
注意点
ダウンロードボタンの要素が正しく取得できない場合は、以下を確認してください。
- ページが完全に読み込まれるまで待機する
- ボタンがiframe内にある場合は、iframe内の要素として指定
- JavaScriptで動的に生成されるボタンの場合は、表示されるまで待機
解決方法2:オートメーションブラウザーを使用する
エラーメッセージで推奨されている「オートメーションブラウザー」を使う方法です。
オートメーションブラウザーとは?
オートメーションブラウザーは、Internet Explorerベースの特殊なブラウザで、自動化のために最適化されています。
通常のブラウザと違い、以下の特徴があります。
- UI要素が最小限に削られている
- 古いダウンロードアクションが動作する
- 拡張機能のインストールが不要
手順
ステップ1:Internet Explorerを起動する
- 「新しいInternet Explorerを起動します」アクションを追加
- 起動モードで「オートメーションブラウザー」を選択
アクション: 新しいInternet Explorerを起動します
起動モード: オートメーションブラウザー
初期URL: https://example.com/download-page
ステップ2:ダウンロードアクションを使用
これでダウンロード専用アクションが使えるようになります。
アクション: Webからダウンロードします
ブラウザー インスタンス: %Browser%
URL: https://example.com/file.xlsx
この方法のデメリット
- Internet Explorerベースなので、モダンなWebサイトで動作しないことがある
- JavaScriptが複雑なサイトでは問題が発生しやすい
- UI要素が削られているため、一部の機能が使えない
- 将来的にIEのサポート終了により使えなくなる可能性がある
いつ使うべきか
オートメーションブラウザーは、以下の場合にのみ使用を検討してください。
- 非常にシンプルな静的ページからのダウンロード
- レガシーシステムで通常のブラウザが動作しない
- 一時的な対処として急いで実装する必要がある
解決方法3:HTTPアクションを使用する【上級者向け】
直接HTTPリクエストを送信してファイルをダウンロードする方法です。
手順
ステップ1:ダウンロードURLを取得
まず、ダウンロードしたいファイルの直接URLを特定します。
ブラウザの開発者ツール(F12)でネットワークタブを確認し、ダウンロードボタンをクリックした際のリクエストURLを確認してください。
ステップ2:Webサービスを呼び出すアクションを使用
アクション: Webサービスを呼び出します
URL: https://example.com/files/document.xlsx
メソッド: GET
保存先: C:\Downloads\document.xlsx
必要に応じて認証情報を追加:
サイトがログインを必要とする場合は、以下を設定します。
- Cookie情報
- 認証ヘッダー
- セッショントークン
この方法のメリット
- ブラウザを起動する必要がない
- 高速にダウンロードできる
- 複数ファイルの並列ダウンロードが可能
この方法のデメリット
- ダウンロードURLが動的に生成される場合は使えない
- 認証が複雑なサイトでは実装が困難
- エラーハンドリングが複雑
いつ使うべきか
- ファイルの直接URLが分かっている
- 大量のファイルを効率的にダウンロードしたい
- ブラウザのオーバーヘッドを避けたい
解決方法4:EdgeやFirefoxを使用する
ChromeではなくEdgeやFirefoxを使用することで、同じ問題を回避できる場合があります。
Edgeを使用する場合
アクション: 新しいMicrosoft Edgeを起動します
起動モード: 起動する新しいインスタンス
初期URL: https://example.com/download-page
その後は、解決方法1と同じように通常のブラウザ操作でダウンロードを実行します。
Firefoxを使用する場合
アクション: 新しいFirefoxを起動します
起動モード: 起動する新しいインスタンス
初期URL: https://example.com/download-page
注意点
Power Automate拡張機能のインストールが必要
Edge、Chrome、Firefoxを使用する場合は、それぞれのブラウザにPower Automate拡張機能をインストールする必要があります。
インストール方法:
- Power Automate Desktopのフローデザイナーを開く
- 「ツール」→「ブラウザー拡張機能」を選択
- 使用するブラウザの拡張機能をインストール
ダウンロードしたファイルを確実に取得する方法
どの解決方法を使う場合も、ダウンロード後にファイルを確実に取得することが重要です。
方法1:時間を置いて最新ファイルを取得
最もシンプルな方法です。
1. ダウンロード操作を実行
2. Waitアクション(5〜10秒)
3. フォルダー内のファイルを取得
- 並び替え基準: 更新日時
- 並び替え順序: 降順
- 取得するファイル数: 1
方法2:ファイル名を指定して待機する
ダウンロードするファイル名が事前に分かっている場合に有効です。
1. ダウンロード操作を実行
2. ループ(最大30回)
- ファイルが存在するか確認
- 存在する場合はループを抜ける
- 存在しない場合は1秒待機
3. ファイルが見つからない場合はエラー処理
実装例:
Loop
If [ファイルが存在する] C:\Downloads\document.xlsx
Break
End
Wait 1秒
End Loop
方法3:ダウンロード前後でファイルリストを比較する
最も確実な方法です。
1. ダウンロード前のファイルリストを取得
2. ダウンロード操作を実行
3. ダウンロード後のファイルリストを取得
4. リストを比較して新しいファイルを特定
実装例:
# ダウンロード前
フォルダー内のファイルを取得 → %FilesBeforeDownload%
# ダウンロード操作
Webページ上の要素をクリック
# ダウンロード後(待機しながら確認)
Loop
Wait 1秒
フォルダー内のファイルを取得 → %FilesAfterDownload%
If %FilesAfterDownload.Count% > %FilesBeforeDownload.Count%
# 新しいファイルを特定
Break
End
End Loop
注意:ファイルの作成時刻の問題
ダウンロードしたファイルの作成時刻は、実際のダウンロード時刻ではなく、サーバー上のファイルの作成時刻になることがあります。
そのため、「現在時刻より新しいファイル」という条件では正しく取得できない場合があります。
解決策:
- 更新日時ではなくファイルリストの比較を使用する
- ダウンロードフォルダを事前にクリアしておく
よくある問題と解決方法
Q: ダウンロードボタンをクリックしても何も起こらない
A: 以下を確認してください。
- JavaScriptの実行が必要な場合がある
- ボタンクリック後に少し待機する
- 「JavaScriptの実行」アクションを使用する
- ポップアップがブロックされている
- Chromeの設定でポップアップを許可する
- 別のウィンドウでダウンロードが開始されている可能性
- 認証が切れている
- ログイン処理を自動化に含める
- セッションタイムアウトを考慮する
Q: 拡張機能をインストールしたのにエラーが出る
A: 拡張機能のバージョンを確認してください。
Power Automate Desktopのバージョンによって、必要な拡張機能が異なります。
バージョン2.27以降:
- 「Microsoft Power Automate」拡張機能(Manifest V3)が必要
バージョン2.26以前:
- 「Microsoft Power Automate (レガシ)」拡張機能(Manifest V2)が必要
確認方法:
- Chromeで
chrome://extensions/にアクセス - インストールされている拡張機能を確認
- 古いバージョンがあれば削除して、正しいバージョンを再インストール
Q: ダウンロードフォルダにファイルが見つからない
A: 以下の可能性を確認してください。
- ダウンロード先が変更されている
- Chromeの設定→ダウンロード→保存先を確認
- ダウンロードに時間がかかっている
- 待機時間を増やす
- ファイルサイズを考慮する
- ファイル名が想定と異なる
- ダウンロードフォルダを手動で確認
- ファイルフィルターを「.」にして全ファイルを取得
- ダウンロードが失敗している
- ブラウザのダウンロード履歴を確認
- エラーメッセージを確認
Q: 「ブラウザーとの通信ができませんでした」エラーが出る
A: これは別のエラーですが、よく一緒に発生します。
解決方法:
- ブラウザ拡張機能を再読み込みする
- ブラウザとPower Automate Desktopを再起動
- 拡張機能を削除して再インストール
- Power Automate Desktopを最新バージョンに更新
詳しくはこちらの対処法を参照してください。
Q: 会社のPCで動作しない
A: 企業環境では追加の制約がある可能性があります。
考えられる原因:
- グループポリシーで拡張機能がブロックされている
- IT部門に確認する
- 必要な許可リストへの追加を依頼
- ネイティブメッセージングがブロックされている
- レジストリポリシーの確認が必要
- IT部門による設定変更が必要
- ダウンロードフォルダへの書き込み権限がない
- 別のフォルダを指定する
- 管理者権限での実行を検討
実践的な実装例
実際の業務でよくあるシナリオの実装例を紹介します。
シナリオ1:毎日同じサイトからCSVをダウンロード
# 1. Chromeを起動
新しいChromeを起動します
URL: https://example.com/reports
# 2. ログイン(必要な場合)
Webページのテキストフィールドに入力します
UI要素: ユーザー名入力欄
テキスト: user@example.com
Webページのテキストフィールドに入力します
UI要素: パスワード入力欄
テキスト: %Password%(変数で管理)
Webページ上の要素をクリックします
UI要素: ログインボタン
Wait 3秒
# 3. レポートページに移動
Webページに移動します
URL: https://example.com/reports/daily
Wait 2秒
# 4. ダウンロード実行
Webページ上の要素をクリックします
UI要素: CSVダウンロードボタン
Wait 5秒
# 5. ダウンロードフォルダから最新ファイルを取得
フォルダー内のファイルを取得します
フォルダー: C:\Users\%USERNAME%\Downloads
ファイルフィルター: *.csv
並び替え基準: 更新日時
並び替え順序: 降順
取得: 最初の 1 個
→ %DownloadedFiles%
# 6. ファイルを作業フォルダに移動
ファイルの移動
移動するファイル: %DownloadedFiles[0]%
移動先: C:\Work\Reports\daily_%DateTime.Now.ToString('yyyyMMdd')%.csv
# 7. ブラウザを閉じる
Webブラウザーを閉じます
シナリオ2:複数のファイルを順番にダウンロード
# 1. ダウンロードURLのリストを作成
変数の設定
%DownloadUrls% = ["https://example.com/file1.xlsx", "https://example.com/file2.xlsx", "https://example.com/file3.xlsx"]
# 2. Chromeを起動
新しいChromeを起動します
URL: https://example.com
# 3. 各URLからダウンロード
For Each %Url% in %DownloadUrls%
# ページに移動
Webページに移動します
URL: %Url%
# ダウンロードボタンをクリック
Webページ上の要素をクリックします
UI要素: ダウンロードボタン
# ダウンロード完了を待機
Wait 3秒
End For
# 4. ブラウザを閉じる
Webブラウザーを閉じます
# 5. ダウンロードしたファイルを整理
フォルダー内のファイルを取得します
フォルダー: C:\Users\%USERNAME%\Downloads
→ %AllFiles%
# 最新3件を取得して移動
Set %Counter% = 0
For Each %File% in %AllFiles%
If %Counter% < 3
ファイルの移動
移動するファイル: %File%
移動先: C:\Work\Downloads\
Set %Counter% = %Counter% + 1
End If
End For
シナリオ3:条件に応じて異なるファイルをダウンロード
# 1. 今日の曜日を取得
変数の設定
%Today% = %DateTime.Now.DayOfWeek%
# 2. 曜日に応じてダウンロードURLを設定
Switch %Today%
Case = "Monday"
Set %DownloadUrl% = "https://example.com/reports/weekly"
Case = "Tuesday", "Wednesday", "Thursday", "Friday"
Set %DownloadUrl% = "https://example.com/reports/daily"
Default
# 土日はダウンロードしない
フローの実行を停止します
End Switch
# 3. Chromeを起動してダウンロード
新しいChromeを起動します
URL: %DownloadUrl%
# (以降、通常のダウンロード処理)
Power Automate Desktopのバージョンアップ時の注意点
Power Automate Desktopは定期的にアップデートされ、ブラウザ自動化の機能も進化しています。
バージョン2.62以降の変更点
バージョン2.62以降では、WebDriverという新しい通信方法がサポートされています。
WebDriverの特徴:
- ブラウザ拡張機能が不要
- より安定した動作
- 標準化された技術に基づく
使用方法:
新しいChromeを起動します
通信方法: WebDriver(拡張機能の代わりに)
ただし、一部の高度な機能は拡張機能経由でしか使えない場合があるため、状況に応じて使い分けてください。
まとめ:状況に応じた最適な解決方法の選び方
このエラーの解決方法を状況別にまとめます。
初心者・汎用性重視の場合:
→ 解決方法1(通常のブラウザ操作)を使用
- 最も確実で分かりやすい
- Chrome、Edge、Firefoxで動作
- デバッグしやすい
レガシーシステム・一時的な対処の場合:
→ 解決方法2(オートメーションブラウザー)を使用
- 古いアクションがそのまま使える
- シンプルなサイトなら問題なし
- 長期的な運用には向かない
上級者・大量ダウンロードの場合:
→ 解決方法3(HTTPアクション)を使用
- 高速で効率的
- ブラウザ不要
- 直接URLが分かっている場合に最適
拡張機能の問題を回避したい場合:
→ 解決方法4(Edge/Firefox)+ WebDriver
- より安定した動作
- 新しい技術に基づく
- 長期的な運用に適している
最後に
「Chrome を使用したファイルのダウンロードはサポートされていません」というエラーは、古いアクションと新しいブラウザの互換性の問題です。
しかし、この記事で紹介した方法を使えば、確実にファイルのダウンロード自動化を実現できます。
重要なポイント:
- 古い「Webからダウンロードします」アクションは使わない
- 通常のブラウザ操作でダウンロードボタンをクリック
- ダウンロード完了を適切に待機する
- ファイルの取得方法を工夫する
- エラーハンドリングを忘れない
これらを押さえておけば、安定したダウンロード自動化フローを構築できますよ。
この記事が、あなたの自動化プロジェクトの助けになれば嬉しいです!

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