「Chromeでスマホ版のサイトを確認したい」「特定のブラウザでしか見られないページにアクセスしたい」そんなときに役立つのが、ユーザーエージェントの変更です。
この記事では、Chromeでユーザーエージェントを変更する方法を、初心者の方にも分かりやすく解説していきますね。
ユーザーエージェントって何?

ユーザーエージェント(User Agent、UAと略されることもあります)は、あなたが使っているブラウザやデバイスの情報をWebサイトに伝えるための文字列です。
例えば、「私はWindows 10でChrome 131を使っています」といった情報を、あなたのブラウザが自動的にWebサイトに送っているんです。
ユーザーエージェントの文字列例:
Mozilla/5.0 (Windows NT 10.0; Win64; x64) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/131.0.0.0 Safari/537.36
一見すると暗号のようですが、この中には以下のような情報が含まれています。
- オペレーティングシステム(Windows、Mac、Linuxなど)
- ブラウザの種類とバージョン
- 使用しているデバイスの種類(PCかスマホか)
Webサイトはこの情報を見て、「このユーザーはスマホからアクセスしているからモバイル版を表示しよう」とか、「古いブラウザだから互換性のあるページを表示しよう」といった判断をしています。
なぜユーザーエージェントを変更するの?
ユーザーエージェントを変更する主な理由は、以下の通りです。
Webサイト制作者やテストを行う人の場合:
- スマホ版サイトの表示確認をPCで行いたい
- 異なるブラウザでの見え方をチェックしたい
- 特定の環境でのみ発生するバグを調査したい
- レスポンシブデザインのテストを効率的に行いたい
一般ユーザーの場合:
- PCでモバイル専用コンテンツを見たい
- 特定のブラウザでしか動作しないサイトにアクセスしたい
- 古いブラウザ用のページを確認したい
ちなみに、ユーザーエージェントを変更しても、ブラウザの内部動作は変わりません。あくまでも「Webサイトに送る情報を変える」だけなので、安心してくださいね。
方法1:開発者ツールの「Network conditions」で変更する【推奨】
最も簡単で推奨される方法が、Chrome標準の開発者ツールを使う方法です。拡張機能のインストールも不要で、手軽に試せます。
手順
1. 開発者ツールを開く
変更したいWebページを開いた状態で、以下のいずれかの方法で開発者ツールを起動します。
- Windowsの場合:
F12キーを押す - Macの場合:
Control + Option + Iを押す - 右クリックして「検証」を選ぶ
2. Network conditionsを開く
開発者ツールが表示されたら、右上にある縦に3つ並んだ点(︙)をクリックします。
メニューが表示されるので、以下の順に選択してください。
- 「その他のツール(More tools)」をクリック
- 「ネットワーク条件(Network conditions)」をクリック
すると、開発者ツールの下部に「Network conditions」パネルが表示されます。
3. ユーザーエージェントを変更する
「User agent」セクションで、「Use browser default」のチェックを外します。
すると、ドロップダウンメニューが選択可能になります。ここから以下の選択ができますよ。
- プリセットから選択:Chrome、Safari、Firefox、各種スマートフォンなど
- カスタム入力:自分で任意のユーザーエージェント文字列を入力
4. ページを更新する
設定が完了したら、ページを再読み込み(リロード)します。これで、変更したユーザーエージェントが適用されます。
この方法のメリット
- 拡張機能のインストールが不要
- Chromeの公式機能なので安定している
- 細かいカスタマイズが可能
- 開発者ツールの他の機能と併用できる
方法2:デバイスツールバーでモバイル表示に切り替える
スマホやタブレットでの表示を確認したいだけなら、デバイスエミュレーション機能が最も簡単です。
手順
1. 開発者ツールを開く
先ほどと同様に、F12キー(Windowsの場合)またはControl + Option + I(Macの場合)で開発者ツールを起動します。
2. デバイスツールバーを表示する
開発者ツールの左上にある、スマートフォンのアイコンをクリックします。
または、以下のショートカットキーでも切り替えられます。
- Windowsの場合:
Ctrl + Shift + M - Macの場合:
Command + Option + M
3. デバイスを選択する
画面上部に表示されるデバイスツールバーから、エミュレートしたいデバイスを選びます。
プリセットには以下のようなデバイスが用意されています。
- iPhone各種(iPhone 14 Pro、iPhone SE など)
- iPad各種
- 各種Androidスマートフォン
- カスタムサイズ設定
デバイスを選ぶと、自動的にそのデバイスのユーザーエージェントに切り替わります。
この方法のメリット
- 操作が非常に簡単
- 画面サイズも同時にエミュレートされる
- レスポンシブデザインのテストに最適
- タッチイベントもシミュレートできる
方法3:Chrome拡張機能を使う

もっと手軽に、ワンクリックでユーザーエージェントを切り替えたい場合は、拡張機能を使う方法もあります。
おすすめの拡張機能
User-Agent Switcher for Chrome
Chromeウェブストアで人気の拡張機能です。以下の特徴があります。
- ツールバーアイコンから簡単に切り替え可能
- よく使うユーザーエージェントをプリセットで用意
- 特定のURLに対して自動的にユーザーエージェントを変更できる
- カスタムのユーザーエージェントを追加できる
使い方
- Chromeウェブストアから拡張機能をインストール
- ツールバーに追加されたアイコンをクリック
- リストから使いたいユーザーエージェントを選択
- ページが自動的にリロードされて適用される
注意点
拡張機能を使う場合は、以下の点に注意してください。
- サーバーとの通信を傍受・変更するため、ブラウザのパフォーマンスに影響する可能性があります
- 使用しない時は無効化しておくことをおすすめします
- 信頼できる開発者の拡張機能を選びましょう
方法4:起動オプションで常に特定のユーザーエージェントを使う
Chromeを起動する際にコマンドライン引数を指定することで、常に特定のユーザーエージェントで起動できます。
Windowsでの手順
1. Chromeのショートカットを右クリック
デスクトップやタスクバーにあるChromeのショートカットを右クリックします。
2. プロパティを開く
表示されたメニューから「プロパティ」を選択してください。
3. リンク先を編集
「ショートカット」タブの「リンク先」欄の末尾に、以下のような形式で引数を追加します。
"C:\Program Files\Google\Chrome\Application\chrome.exe" --user-agent="Mozilla/5.0 (iPhone; CPU iPhone OS 16_0 like Mac OS X) AppleWebKit/605.1.15 (KHTML, like Gecko) Version/16.0 Mobile/15E148 Safari/604.1" --user-data-dir="c:\temp"
--user-agent=の後に、設定したいユーザーエージェント文字列を入力します。
--user-data-dir=は必ず指定してください。これを指定しないと、既に起動しているChromeの設定が読み込まれてしまいます。
4. 適用して起動
「OK」をクリックして設定を保存します。このショートカットから起動すると、指定したユーザーエージェントが適用されます。
この方法のメリット
- 拡張機能不要
- 起動時から特定のユーザーエージェントが適用される
- テスト用の環境を完全に分離できる
デメリット
- 毎回この設定が必要になる
- 通常のChromeと別プロファイルになるため、ブックマークなどは共有されない
ユーザーエージェントを元に戻す方法
変更したユーザーエージェントを元のChromeに戻したい場合は、以下の手順で簡単に戻せます。
開発者ツールを使った場合
Network conditions経由:
- Network conditionsパネルを開く
- 「Use browser default」にチェックを入れる
デバイスツールバー経由:
- デバイスツールバーのスマホアイコンをもう一度クリック
- または
Ctrl + Shift + M(Mac:Command + Option + M)を押す
拡張機能を使った場合
- 拡張機能のアイコンをクリック
- 「Default」または「Chrome」を選択
- 場合によってはCookieをクリアする必要があります
よくある問題と解決方法
Q: ユーザーエージェントを変更したのに、サイトの表示が変わらない
A: 以下を試してみてください。
- ページを完全にリロード(
Ctrl + F5またはShift + リロードボタン) - ブラウザのキャッシュをクリア
- サイトのCookieを削除
- シークレットモードで試してみる
一部のWebサイトは、ユーザーエージェント以外の情報(JavaScriptで取得できる情報など)も使って表示を切り替えているため、完全には騙せないこともあります。
Q: スマホのユーザーエージェントに変更したのに、元に戻せなくなった
A: 以下の手順で確実に戻せます。
- ユーザーエージェントをChromeに戻す
- 問題のサイトのCookieを削除する
- ブラウザを再起動する
これで通常のChromeとして認識されるようになります。
Q: 拡張機能を使うとブラウザが重くなる
A: 拡張機能は通信内容を傍受・変更する必要があるため、パフォーマンスに影響が出ることがあります。
普段使わない時は拡張機能を無効化するか、開発者ツールの方法を使うことをおすすめします。
ユーザーエージェント変更時の注意点
セキュリティについて
ユーザーエージェントを変更すること自体は危険ではありません。しかし、以下の点には注意してください。
- 信頼できない拡張機能は使わない
- 不正アクセスやなりすまし目的での使用は避ける
- 金融機関のサイトなどでは変更しない
プライバシーについて
ユーザーエージェントの変更は、プライバシー保護の手段としては効果的ではありません。
Webサイトは他の方法でもあなたのブラウザや環境を特定できるためです。プライバシー保護が目的なら、以下の方法を検討してください。
- プライバシーモード(シークレットモード)の使用
- VPNサービスの利用
- プライバシー重視のブラウザの使用
機能制限について
一部のWebサービスでは、特定のユーザーエージェント以外からのアクセスを制限していることがあります。
正規の使用範囲内で、サービスの利用規約に違反しないように注意しましょう。
Chromeのユーザーエージェント削減について
2023年以降、Googleはプライバシー保護の観点から、ユーザーエージェント文字列に含まれる情報を段階的に削減しています。
主な変更内容
Chrome 101以降:
- マイナーバージョン番号が「0.0.0」に固定
Chrome 107以降:
- デスクトップOSのバージョンと詳細なCPU情報が削減
Chrome 110以降:
- Androidバージョンとデバイスモデルがデフォルト値に固定
- 例:「Android 13, Pixel 7」→「Android 10, K」
この変更により、Webサイト側でユーザーの詳細な環境情報を取得しにくくなっています。
より詳細な情報が必要な場合は、「User-Agent Client Hints」という新しい仕組みを使う必要があります。
まとめ:用途に応じて最適な方法を選ぼう
Chromeでユーザーエージェントを変更する方法を4つご紹介しました。
おすすめの使い分け:
- 開発者ツール(Network conditions):細かい設定をしたい、正確なテストをしたい場合
- デバイスツールバー:スマホ表示を簡単に確認したい場合
- 拡張機能:頻繁に切り替える必要がある場合
- 起動オプション:特定の環境で常にテストしたい場合
Webサイトの制作やテストを行う方にとって、ユーザーエージェントの変更は非常に便利な機能です。
ただし、変更後は元に戻すことを忘れずに。そして、不正な目的では使用しないようにしてくださいね。
この記事が、あなたのWeb開発やサイト確認作業の助けになれば嬉しいです!

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