「OSをインストールしたいけど、USBから起動できない…」
「起動順序って何?どうやって変更するの?」
「間違って設定を変えたら、パソコンが起動しなくなった!」
パソコンのトラブルや新しいOSのインストールで、「起動順序(Boot Order)」という言葉を聞いたことはありませんか?
実は、これはパソコンが電源を入れてからOSを読み込むまでの「道順」を決める重要な設定なんです。この記事では、起動順序の基本から具体的な設定方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
読み終わる頃には、あなたも自信を持って起動順序を変更できるようになりますよ!
起動順序(Boot Order)とは?OSを探す「順番」

起動順序とは、パソコンの電源を入れたとき、どのデバイス(記憶装置)からOSを読み込むかを決める優先順位のこと。
英語では「Boot Order」または「Boot Priority」(ブート優先度)と呼ばれます。
ブート(Boot)って何?
ブートとは、パソコンが起動してOSを読み込む一連の処理のこと。「立ち上げる」という意味です。
正式には「ブートストラップ」と呼ばれ、「自力で立ち上がる」という意味から来ています。
具体的にどういうこと?
パソコンには、複数の記憶装置が接続されていることがあります:
- 内蔵SSD/HDD(通常ここにWindowsやLinuxがインストールされている)
- USBメモリ
- 光学ドライブ(DVD/CDドライブ)
- 外付けHDD
- ネットワーク(PXEブート)
電源を入れると、パソコンは「どこからOSを読み込めばいいの?」と探します。この探す順番が「起動順序」なんです。
実例:
1番目:USBメモリ
2番目:内蔵SSD
3番目:DVDドライブ
この設定だと、まずUSBメモリを確認し、何もなければ内蔵SSD、それでもなければDVDドライブという順で探します。
なぜ起動順序が重要なのか?
起動順序を理解することは、以下のような場面で役立ちます。
理由1:OSのインストール
新しいOSをインストールするとき、インストールメディア(USBやDVD)から起動する必要があります。
実例:
Windowsを再インストールする場合、通常は内蔵SSDから起動しようとします。でも、インストール用USBから起動しないと、インストール作業が始まりません。
理由2:トラブルシューティング
パソコンが正常に起動しないとき、回復メディアから起動して修復作業を行います。
実例:
Windowsが起動しなくなったとき、回復ドライブ(USBメモリ)から起動して修復ツールを実行できます。
理由3:複数OSの使い分け
複数のOSをインストールしている場合、どのOSから起動するかを選べます。
実例:
一つのパソコンに、WindowsとLinuxの両方をインストールしている場合(デュアルブート)、起動順序で優先するOSを決められます。
理由4:セキュリティ対策
外部メディアからの起動を無効にすることで、不正なOSの起動を防げます。
実例:
USBメモリからの起動を無効にすれば、第三者が勝手にUSBから起動してデータを盗むことを防げます。
BIOS/UEFIと起動順序
起動順序の設定は、BIOSまたはUEFIという場所で行います。
BIOSって何?
BIOS(Basic Input/Output System)は、パソコンの基本的な動作を制御するプログラムのこと。
OSよりも先に起動し、ハードウェアの初期化やOSの読み込みを担当します。
UEFIって何?
UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)は、BIOSの後継となる新しい仕組みです。
UEFIの特徴:
- グラフィカルな画面(マウスが使える場合も)
- 高速起動
- 2TB以上のディスク対応
- セキュアブート機能
違い:
- 古いPC(2010年以前):BIOS
- 新しいPC(2012年以降):UEFI
どちらの場合も、起動順序の設定方法は似ています。
起動順序の設定画面に入る方法
BIOS/UEFI設定画面への入り方は、メーカーによって異なります。
一般的な手順
ステップ1:パソコンの電源を入れる
完全にシャットダウンした状態から電源を入れます。
ステップ2:特定のキーを連打
メーカーのロゴが表示されたら、すぐに特定のキーを連打します。
ステップ3:BIOS/UEFI画面が表示される
設定画面が開きます。
メーカー別の起動キー
| メーカー | キー |
|---|---|
| Dell | F2、F12 |
| HP | F10、Esc |
| Lenovo | F1、F2、Enter |
| ASUS | Del、F2 |
| Acer | F2、Del |
| Toshiba | F2、F12 |
| Sony | F2、F3、Assist |
| 富士通 | F2 |
| NEC | F2 |
| Panasonic | F2、Del |
| 自作PC(多くのマザーボード) | Del、F2 |
ヒント:
画面の下部に「Press F2 to enter Setup」のような表示が一瞬出ることがあります。これが目印です。
Windowsから入る方法(UEFI限定)
Windows 10/11の場合、OSから直接UEFI設定に入れます。
手順:
- 「設定」→「更新とセキュリティ」→「回復」
- 「今すぐ再起動」(PCの起動をカスタマイズする)
- 「トラブルシューティング」→「詳細オプション」
- 「UEFIファームウェアの設定」
- 「再起動」
起動順序の具体的な変更方法
実際に起動順序を変更してみましょう。
BIOS画面での設定
ステップ1:Boot(起動)メニューを探す
BIOS画面で「Boot」「起動」「Boot Order」などのタブやメニューを探します。
ステップ2:Boot Orderまたはプライオリティを選択
「Boot Priority」「Boot Order」「起動優先順序」などの項目を選びます。
実例:
Boot Priority Order:
1st Boot Device: [Hard Disk]
2nd Boot Device: [USB Storage]
3rd Boot Device: [CD/DVD Drive]
ステップ3:順序を変更
デバイスを選択して、矢印キーやEnterキーで順序を変更します。
多くの場合:
- 上下矢印キー:項目の選択
- +/-キー:優先順位の変更
- Enter:詳細設定
ステップ4:設定を保存して終了
通常は「F10」キーを押して保存し、再起動します。
画面に「Save & Exit」「保存して終了」などの項目もあります。
UEFI画面での設定
UEFIは画面がグラフィカルで、マウスが使える場合もあります。
ステップ1:Boot(起動)タブを開く
画面上部のメニューから「Boot」タブをクリック。
ステップ2:起動順序を確認
デバイスの一覧が表示されます:
Boot Option #1: [Windows Boot Manager]
Boot Option #2: [USB HDD]
Boot Option #3: [DVD Drive]
ステップ3:ドラッグ&ドロップで変更
マウスでデバイスをドラッグして、順序を入れ替えます。
キーボード操作の場合は、矢印キーと+/-キーで変更します。
ステップ4:保存して終了
「Save & Exit」「保存して終了」をクリックまたはF10キーを押します。
よくある起動デバイスの種類

起動順序で設定できる主なデバイスを紹介します。
1. Hard Disk / SSD
表示名の例:
- Hard Disk
- SATA HDD
- SSD
- Windows Boot Manager
- Samsung SSD 980
説明:
内蔵のハードディスクやSSD。通常、ここにOSがインストールされています。
2. USB Storage / Removable Device
表示名の例:
- USB HDD
- USB Storage Device
- Removable Devices
- USB Flash Drive
説明:
USBメモリや外付けHDD。OSのインストールメディアや回復ドライブとして使われます。
3. CD/DVD Drive
表示名の例:
- ATAPI CD-ROM
- DVD Drive
- Optical Drive
説明:
光学ドライブ。昔はOSのインストールにDVDが使われていました。
4. Network Boot / PXE
表示名の例:
- Network Boot
- PXE Boot
- LAN Boot
- Realtek Boot Agent
説明:
ネットワーク経由で起動。企業環境で一括インストールに使われます。
5. Disabled / 無効
特定のデバイスを起動順序から除外できます。
ワンタイムブートメニュー:一時的な起動順序変更
毎回BIOS設定を変更するのは面倒です。一時的に起動デバイスを選ぶ方法があります。
ブートメニューとは
起動時に特定のキーを押すと、その場で起動デバイスを選べるメニューが表示されます。
メリット:
- BIOS設定を変更しなくていい
- 一度だけUSBから起動したいときに便利
ブートメニューの起動方法
| メーカー | キー |
|---|---|
| Dell | F12 |
| HP | F9、Esc |
| Lenovo | F12 |
| ASUS | F8、Esc |
| Acer | F12 |
| Toshiba | F12 |
| 多くの自作PC | F11、F12 |
使い方:
- 電源を入れる
- メーカーロゴが表示されたらブートメニューキーを連打
- デバイス一覧が表示される
- 矢印キーで起動したいデバイスを選択
- Enterキーを押す
実例の表示:
Please select boot device:
1. Windows Boot Manager (SSD)
2. USB: SanDisk Cruzer (USB 2.0)
3. UEFI: ATAPI DVD Drive
起動順序のベストプラクティス
効果的な起動順序の設定方法です。
通常使用時の推奨設定
1位:内蔵SSD/HDD(OSがインストールされているドライブ)
2位:無効、または使わないデバイス
3位:無効、または使わないデバイス
理由:
- 起動が最速になる
- 誤って外部メディアから起動するのを防ぐ
OSインストール時の設定
1位:USBメモリまたはDVDドライブ(インストールメディア)
2位:内蔵SSD/HDD
注意:
インストール完了後は、元の設定に戻しましょう。
デュアルブート環境
1位:ブートローダー(GRUBなど)がインストールされているドライブ
2位:もう一方のOS
通常、GRUBなどのブートローダーが両方のOSを管理してくれます。
セキュリティ重視の設定
1位:内蔵SSD/HDD
2位以降:すべて無効
さらに、BIOS/UEFI設定にパスワードを設定します。
効果:
外部メディアからの不正起動を防げます。
トラブルシューティング

起動順序に関する問題と解決方法です。
問題1:USBメモリから起動できない
症状:
起動順序を変更したのに、USBメモリから起動しない。
原因と解決策:
原因1:USBメモリが起動可能でない
→ブータブルUSBを正しく作成しましたか?Rufusなどのツールを使って作成しましょう。
原因2:セキュアブートが有効
→UEFI設定で「Secure Boot」を無効にしてみてください。
原因3:レガシーモードとUEFIモードの不一致
→USBがUEFI対応なら、BIOS設定も「UEFI」モードに。レガシーBIOSで作成したUSBなら「Legacy」モードに設定します。
原因4:USBポートの問題
→USB 3.0ポート(青色)ではなく、USB 2.0ポート(黒色)に挿してみてください。古いBIOSではUSB 3.0が認識されないことがあります。
問題2:起動順序を変更したら起動しなくなった
症状:
「Operating System not found」「No bootable device」などのエラーが出る。
解決策:
- もう一度BIOS/UEFI設定に入る
- Boot Orderを確認
- OSがインストールされているドライブを1位に設定
- 保存して再起動
問題3:設定が保存されない
症状:
起動順序を変更して保存しても、再起動すると元に戻る。
原因と解決策:
原因:CMOSバッテリーの消耗
→マザーボードのボタン電池が切れている可能性があります。電池を交換しましょう(CR2032という型番が一般的)。
問題4:起動デバイスが表示されない
症状:
接続したUSBメモリやSSDがBIOS/UEFIに表示されない。
解決策:
- ケーブルの接続を確認
- 別のポートに接続してみる
- BIOS/UEFIを最新版にアップデート
- CSM(Compatibility Support Module)を有効にする
CSM(レガシーモード)とUEFIモード
起動モードには2つの種類があります。
UEFIモード
現代的な起動方式。
特徴:
- GPTパーティション対応(2TB以上のディスクOK)
- セキュアブート対応
- 高速起動
- グラフィカルな設定画面
対応OS:
- Windows 8以降(64ビット)
- 新しいLinuxディストリビューション
レガシーモード(CSM)
古い起動方式(BIOS互換モード)。
特徴:
- MBRパーティションのみ対応(2TBまで)
- 古いOSと互換性あり
対応OS:
- Windows 7以前
- 古いLinuxディストリビューション
混在の問題
UEFIモードでインストールしたOSは、レガシーモードでは起動できません。逆も同様です。
注意:
OSをインストールするとき、BIOS設定とインストールメディアのモードを合わせる必要があります。
セキュアブート:安全性を高める機能
UEFI環境では、セキュアブートという機能があります。
セキュアブートとは
デジタル署名のないOSやブートローダーの起動を防ぐセキュリティ機能です。
目的:
悪意のあるソフトウェアによる不正起動を防ぐ。
対応OS:
- Windows 8以降
- Ubuntu、Fedoraなどの主要Linuxディストリビューション
セキュアブートを無効にする必要がある場合
- 古いLinuxディストリビューションをインストールする
- 一部のハードウェアドライバを使う
- 自作のブートローダーを使う
手順:
- UEFI設定に入る
- 「Security」タブまたは「Boot」タブ
- 「Secure Boot」を「Disabled」に変更
- 保存して再起動
よくある質問
Q1. 起動順序を変更すると、データは消える?
いいえ、消えません。起動順序の変更は、どのデバイスから起動するかの優先順位を変えるだけです。データには影響しません。
Q2. 間違えて設定を変えてしまった。どうすれば?
「Load Default Settings」「Load Optimized Defaults」「初期設定を読み込む」という項目を選べば、工場出荷時の設定に戻せます。
Q3. ノートPCでもBIOS設定に入れる?
はい、デスクトップと同じように入れます。メーカーによってキーが違うので、取扱説明書を確認しましょう。
Q4. MacでもBoot Orderは設定できる?
Macは独自の起動方式を使っています。「Option」キー(Intel Mac)または電源ボタン長押し(Apple Silicon Mac)で起動ディスクを選択できます。
まとめ:起動順序はパソコンの基本設定
起動順序(Boot Order)は、パソコンがどのデバイスからOSを読み込むかを決める重要な設定です。
起動順序の重要ポイント:
- OSを探す優先順位を決める
- BIOS/UEFIで設定する
- 通常は内蔵SSD/HDDを1位に設定
設定が必要な場面:
- OSのインストール
- システムの回復
- 複数OSの使い分け
- セキュリティ対策
BIOS/UEFI設定の入り方:
- 電源投入時に特定のキーを連打
- メーカーごとにキーが異なる(F2、Del、F12など)
- Windowsから入ることも可能(UEFI限定)
ワンタイムブートメニュー:
- 一時的にデバイスを選択
- F12やF11キーで起動
- BIOS設定を変更しなくていい
通常使用時の推奨設定:
1位:内蔵SSD/HDD(OSドライブ)
2位以降:無効または不使用
トラブル時のチェック項目:
- USBメモリが起動可能か
- セキュアブートの状態
- UEFIとレガシーの整合性
- USBポートの種類
起動順序の設定は、一見難しそうに見えますが、基本を理解すれば簡単です。OSのインストールやトラブル解決に必須の知識なので、ぜひマスターしてくださいね。
快適なPC環境を!


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