「このパソコン、本当に速いの?」
「競合他社と比べて、うちの会社の業績はどうなんだろう?」
こうした疑問に答えてくれるのが「ベンチマーク」です。
ベンチマークは、ITからビジネスまで幅広い分野で使われる言葉。
この記事では、ベンチマークの基本的な意味から、IT分野での具体的な使い方、代表的なソフトウェア、ビジネスでの活用方法まで、わかりやすく解説します。
ベンチマークとは?

ベンチマークとは、何かを評価する際の「基準」や「指標」を意味する言葉です。
英語では「benchmark」と書き、もともとは測量の分野で使われていた用語でした。
語源
測量では、土地の高低差や建築物の高さを測る際に、基準となる点を設定します。
この基準点のことを「ベンチマーク」と呼んでいたのが語源です。
そこから転じて、「比較や評価の基準となるもの」という意味で、様々な分野で使われるようになりました。
分野によって意味が異なる
ベンチマークという言葉は、使われる分野によって少しずつ意味が変わります。
IT分野
コンピュータやソフトウェアの性能を測定する指標、またはそのテストのこと。
ビジネス分野
自社を分析する際に比較対象とする優良企業や、目標とする指標のこと。
投資分野
市場全体の動向を示す株価指数(日経平均株価、S&P 500など)のこと。
この記事では、特にIT分野とビジネス分野でのベンチマークについて詳しく解説します。
IT分野でのベンチマーク
IT業界では、パソコンやスマホのハードウェア・ソフトウェアの性能を測定し、比較するための指標をベンチマークと呼びます。
ベンチマークテストとは
ベンチマークテストは、コンピュータの性能を数値化して評価するテストです。
専用のプログラム(ベンチマークソフト)を実行し、その結果を「ベンチマークスコア」として表します。
例えば、CPUの処理速度を測定したり、GPUのグラフィック性能を評価したりします。
このスコアを他の製品と比較することで、どちらが高性能かを客観的に判断できるわけです。
何を測定できるのか
ベンチマークテストでは、様々な性能を測定できます。
CPU(プロセッサ)
計算処理の速度やマルチコア性能を評価。
動画編集やプログラミングなど、負荷の高い作業がスムーズにできるか判断できます。
GPU(グラフィックカード)
3Dグラフィックスやゲームの描画性能を測定。
最新ゲームが快適に動くか、4K映像を滑らかに表示できるかなどが分かります。
メモリ(RAM)
データの読み書き速度や帯域幅を計測。
複数のアプリを同時に動かしたときの快適さに影響します。
ストレージ(SSD/HDD)
ファイルの読み込み・書き込み速度を測定。
OSやアプリの起動速度、大容量ファイルの転送速度が分かります。
総合性能
システム全体のバランスや実用性能を評価。
実際の使用感に近い形で性能を把握できます。
なぜベンチマークが必要なのか
パソコンやスマホのスペック表には、CPUの型番やメモリ容量などが書かれています。
でも、専門知識がないと「Core i7とRyzen 7、どっちが速いの?」みたいな比較が難しいんです。
ベンチマークスコアがあれば、数値で一目瞭然。
「このパソコンは総合スコア10,000点、あっちは8,000点だから、こっちの方が速い」と簡単に判断できます。
代表的なベンチマークソフト
2025年現在、よく使われているベンチマークソフトを紹介します。
CPU・総合性能
Cinebench R23
Maxonが開発した無料ツール。
Cinema 4Dというプロ向け3Dソフトのレンダリングエンジンを使って、CPUのシングルコア・マルチコア性能を評価します。
業界標準として広く使われています。
Geekbench
Windows、Mac、Linux、さらにiPhoneやAndroidでも使える万能ベンチマーク。
クロスプラットフォームで比較できるのが魅力です。
無料版と有料のPro版があります。
PassMark PerformanceTest
CPU、GPU、メモリ、ストレージを総合的にテスト。
100万件以上のベンチマーク結果がデータベース化されており、他のユーザーと比較できます。
CPU-Z
ハードウェア情報の確認ツールとして有名ですが、簡易的なベンチマーク機能も搭載。
シングルコア・マルチコアの性能を手軽にチェックできます。
GPU・グラフィック性能
3DMark
GPU性能測定の定番中の定番。
ゲーマーやオーバークロッカー、システムビルダーに最も人気のあるツールです。
DirectX 11、DirectX 12、レイトレーシングなど、様々なテストが用意されています。
無料版もありますが、フル機能を使うにはAdvanced Edition(有料)が必要です。
Heaven Benchmark / Superposition Benchmark
Unigineエンジンを使ったGPUストレステスト。
美麗なグラフィックスで負荷をかけ、FPSや温度を測定します。
FurMark
GPUに極限の負荷をかける「拷問テスト」。
「ファーリードーナツ」と呼ばれる毛むくじゃらの物体をレンダリングし続けることで、GPUの安定性や冷却性能を確認できます。
MSI Afterburner
GPUのオーバークロックツールですが、リアルタイムモニタリング機能も優秀。
GPU温度、クロック速度、FPSなどを画面上に表示できます。
ストレージ
CrystalDiskMark
日本製の無料ツールで、SSDやHDDの読み書き速度を測定。
シンプルで使いやすく、国内で広く使われています。
3DMark Storage Benchmark
ゲーム用途に特化したストレージテスト。
ゲームのロード時間、セーブデータの書き込み、ゲームファイルのインストールなど、実際のゲームプレイに近い形で性能を測定します。
その他
UserBenchmark
CPU、GPU、SSD、HDD、RAM、USBまで、すべてのハードウェアを一括でテスト。
無料で使えて、結果を他のユーザーと比較できます。
ただし、評価方法に関して論争もあるため、参考程度に使うのが良いでしょう。
Novabench
Windows、Mac、Linuxに対応した無料ベンチマーク。
シンプルで使いやすく、初心者にもおすすめです。
ベンチマークテストの方法
ベンチマークテストには、主に2つの測定方式があります。
単位時間あたりの処理量
一定時間内に処理できる命令数やリクエスト数を測定します。
「1秒間に100万回の計算ができる」といった形で評価します。
この方式は、システムの負荷耐性や安定性を評価するのに適しています。
サーバーやデータベースの性能測定でよく使われます。
処理時間の測定
特定のタスクが完了するまでの時間を計測します。
「この3D画像のレンダリングに30秒かかった」といった形で評価します。
実際の作業にかかる時間が分かるため、ユーザーにとって分かりやすい指標です。
動画エンコードやゲームのロード時間などの測定に使われます。
2種類のベンチマーク
シミュレートベンチマーク(合成ベンチマーク)
専用のプログラムで、様々なソフトウェアの特性を再現してテストします。
結果はスコアやポイントで表示されます。
標準化されたテストなので、異なる製品を公平に比較しやすいのが利点。
ただし、実際の使用感とは若干ズレが生じることもあります。
実環境ベンチマーク(リアルワールドベンチマーク)
実際のゲームやアプリケーションを動かして性能を測定します。
結果はFPS(フレームレート)や処理時間で表示されます。
実際の使用感に近い結果が得られるため、ゲーマーなどに人気。
ただし、ゲームやアプリによって結果が大きく変わるため、複数のテストが必要です。
ビジネス分野でのベンチマーク
ビジネスの世界でも、ベンチマークは重要な概念です。
ベンチマーキングとは
自社の業績や業務プロセスを、優良な競合他社や業界トップと比較・分析する経営手法です。
この活動自体を「ベンチマーキング(benchmarking)」と呼びます。
比較対象となる優良企業や指標のことも「ベンチマーク」と呼ぶため、少しややこしいですね。
何を比較するのか
業績指標
売上高、利益率、成長率、市場シェアなど。
「業界平均の利益率は15%なのに、うちは10%しかない」といった分析ができます。
業務プロセス
生産性、品質管理、カスタマーサポートの対応時間など。
「A社は問い合わせ対応が平均1時間なのに、うちは3時間もかかっている」みたいな課題が見えてきます。
商品・サービス
機能、価格、顧客満足度など。
競合製品と自社製品を比較して、改善点を見つけます。
ベンチマーキングの手順
- ベンチマーク対象を選ぶ
業界トップ企業や、特定の分野で優れた実績を持つ企業を選びます。 - データを収集する
公開情報、業界レポート、顧客アンケートなどから情報を集めます。 - 比較・分析する
自社と比較対象を多角的に分析し、差の原因を探ります。 - 改善策を実行する
優れた手法を学び、自社に合わせて取り入れます。 - 継続的にモニタリングする
定期的に比較を繰り返し、進捗を確認します。
ベンチマークのメリット
IT分野
客観的な比較ができる
「速い」「遅い」という感覚ではなく、数値で明確に比較できます。
購入前に複数の製品を比較して、最適な選択ができます。
システムの問題を発見できる
定期的にベンチマークテストを行えば、性能低下や異常を早期に発見可能。
「最近動作が遅いな」と感じたとき、具体的にどの部分が問題なのか特定できます。
オーバークロックの効果を確認できる
CPUやGPUをオーバークロック(定格以上の速度で動作させること)した際、どれだけ性能が向上したか数値で確認できます。
アップグレードの効果を測定できる
メモリを増やしたり、SSDに交換したりした後、どれだけ速くなったか実感できます。
ビジネス分野
自社の強みと弱みが明確になる
他社と比較することで、「製品の品質は高いけど、マーケティングが弱い」といった具体的な課題が見えてきます。
優れた手法を学べる
業界トップ企業の成功事例を分析し、自社に活かせる知見を得られます。
目標設定が具体的になる
「業界平均の利益率20%を目指そう」のように、明確な数値目標を立てられます。
継続的な改善が可能
定期的にベンチマーキングを行うことで、PDCAサイクルを回せます。
ベンチマークの注意点
IT分野
テスト環境で結果が変わる
同じハードウェアでも、使用するドライバーのバージョン、バックグラウンドで動いているプログラム、温度などによって結果が変動します。
できるだけ条件を揃えて比較する必要があります。
スコアが実用性能とは限らない
ベンチマークテストで高スコアでも、実際の使用場面では期待ほど速く感じないこともあります。
特定の処理に最適化されたハードウェアは、ベンチマークでは高得点でも、日常使いでは別の製品の方が快適、ということもあります。
ベンチマークの種類が多すぎる
CPU性能を測るテストだけでも、Cinebench、Geekbench、PassMarkなど、複数の種類があります。
それぞれ測定方法が違うため、1つのベンチマークだけで判断せず、複数の結果を参考にすべきです。
メーカーによる最適化
一部のメーカーは、特定の有名ベンチマークソフトで高得点が出るように、製品を最適化することがあります。
実用性能とベンチマークスコアに乖離が生じる可能性があるため、注意が必要です。
ビジネス分野
比較対象の選定が難しい
自社と業種や規模が大きく異なる企業をベンチマークにしても、あまり参考になりません。
適切な比較対象を選ぶことが重要です。
情報収集に限界がある
他社の詳細なデータ、特に社内の業務プロセスなどは、なかなか入手できません。
公開情報だけでは不十分な場合もあります。
そのまま真似しても成功するとは限らない
他社の成功事例をそのまま真似ても、自社の文化や顧客層に合わなければ効果が出ません。
自社に合わせてカスタマイズする工夫が必要です。
KPIとの違い
ビジネス分野では、ベンチマークと似た概念に「KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)」があります。
ベンチマーク
他社や外部の優れた事例を基準にする「外部志向の比較型手法」。
KPI
自社の目標達成のための中間指標を設定する「内部志向の経営手法」。
例えば、「売上高を前年比120%にする」という目標(KGI:Key Goal Indicator)があるとします。
これを達成するための中間目標として、「新規顧客を100人獲得する」「既存顧客へのメール配信を月2回行う」といったKPIを設定します。
一方、ベンチマークは「競合A社は売上高が前年比130%だから、うちも目標を上げよう」といった形で使います。
どちらが優れているというわけではなく、状況に応じて使い分けることが大切です。
まとめ
ベンチマークとは、何かを評価する際の「基準」や「指標」を意味する言葉です。
IT分野では、コンピュータやソフトウェアの性能を測定し、数値化して比較するために使われます。
Cinebench、3DMark、Geekbenchなど、様々なベンチマークソフトが存在します。
ベンチマークテストのメリットは、客観的な比較ができること、システムの問題を発見できること、アップグレードの効果を測定できることなどです。
ただし、テスト環境で結果が変わることや、スコアと実用性能が必ずしも一致しないことに注意が必要です。
ビジネス分野では、優良な競合他社を分析し、自社の課題を明確にして改善につなげる手法として活用されます。
自社の強みと弱みが明確になり、具体的な目標設定ができるのがメリットです。
IT分野でもビジネス分野でも、ベンチマークは「より良い選択」「より良い改善」をするための強力なツール。
適切に活用して、パソコン選びや経営改善に役立ててください。


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