ARP(Address Resolution Protocol)とは?ネットワーク通信の裏側にある重要な仕組みを徹底解説

Web

インターネットで動画を見たり、メッセージを送ったりするとき、私たちは当たり前のようにデータをやり取りしていますよね。

でも実は、その裏側では「ARP」という技術が、あなたの知らないところで大活躍しているんです。

ARPは「Address Resolution Protocol(アドレス解決プロトコル)」の略称で、ネットワーク上でデータを正しい相手に届けるために必要な「住所変換」の役割を果たしています。

この記事では、ARPの仕組みから実際の動作プロセス、さらにはセキュリティ上の注意点まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

ネットワークの基礎を理解したい方、IT系の勉強をしている方、セキュリティに興味がある方は、ぜひ最後まで読んでみてください!

スポンサーリンク

ARPの基本的な役割とは

ネットワークには2種類の「住所」がある

ネットワーク通信を理解するうえで、まず知っておきたいのが「2種類の住所」の存在です。

IPアドレスは、インターネット上での住所のようなもの。
「192.168.1.1」のような数字の組み合わせで表現され、ネットワーク上のどのデバイスに送るかを指定します。

一方、MACアドレスは、ネットワーク機器そのものに割り振られた固有の識別番号です。
「AA:BB:CC:DD:EE:FF」のような16進数で表現され、製造時に機器に焼き付けられています。

パソコンやスマートフォン、ルーターなど、ネットワークに接続されるすべての機器には、このMACアドレスが付いているんですね。

ARPが解決する問題

ここで疑問が生まれます。

「IPアドレスがあれば通信できるんじゃないの?」

実は、IPアドレスだけでは不十分なんです。

なぜなら、同じLAN(ローカルエリアネットワーク)内でデータを送る際には、最終的にMACアドレスが必要になるからです。

イメージとしては、こんな感じ:

  • IPアドレス = 「東京都渋谷区○○町1-2-3」という住所
  • MACアドレス = その住所にある建物の「部屋番号」

住所だけ分かっていても、建物内のどの部屋にいるか分からなければ、荷物は届けられませんよね。

ARPは、このIPアドレスからMACアドレスを調べる(変換する)ための仕組みなんです。

ARPの動作プロセスを分かりやすく解説

それでは、ARPが実際にどのように動作するのか、具体的な流れを見ていきましょう。

ステップ1:ARP要求(ARP Request)の送信

あなたのパソコン(仮にIPアドレス:192.168.1.10)が、同じネットワーク内の別のパソコン(IPアドレス:192.168.1.20)にデータを送りたいとします。

このとき、送信側のパソコンは相手のMACアドレスを知りません。

そこで、ネットワーク全体に向けて「192.168.1.20のMACアドレスを知っている人はいますか?」というメッセージを送信します。

これが「ARP要求」です。

この要求は、ネットワーク上のすべての機器に届く「ブロードキャスト」という方法で送られます。

ステップ2:ARP応答(ARP Reply)の返信

ネットワーク上のすべての機器がこのメッセージを受け取りますが、反応するのは該当するIPアドレスを持つ機器だけです。

「192.168.1.20」のIPアドレスを持つパソコンが、「それは私です!私のMACアドレスは○○です」と返信します。

これが「ARP応答」です。

この応答は、要求を送ってきた特定の機器にだけ送られます(ユニキャスト)。

ステップ3:情報の保存と通信開始

MACアドレスを受け取った送信側のパソコンは、この情報を一時的に記憶します。

そして、受け取ったMACアドレスを使って、実際のデータ通信を開始できるようになるんです。

この一連のやり取りは、わずか数ミリ秒で完了します。

ARPテーブル(ARPキャッシュ)とは

毎回問い合わせるのは非効率

先ほどのARP要求とARP応答のやり取りを、通信のたびに毎回行っていたら、ネットワークが混雑してしまいます。

そこで、各機器は一度調べたIPアドレスとMACアドレスの対応関係を「ARPテーブル」(ARPキャッシュとも呼ばれる)に保存しておきます。

ARPテーブルの内容

ARPテーブルには、以下のような情報が記録されています:

  • IPアドレス:通信相手のIPアドレス
  • MACアドレス:対応するMACアドレス
  • インターフェース:どのネットワークインターフェースを経由するか
  • 有効期限:この情報をいつまで保持するか

有効期限が切れると、情報は削除され、必要になったときに再びARP要求が送信されます。

一般的に、ARPキャッシュの有効期限は数分から数十分程度に設定されていることが多いですね。

ARPテーブルの確認方法

自分のパソコンのARPテーブルは、簡単に確認できます。

Windowsの場合:
コマンドプロンプトを開いて、「arp -a」と入力すると、現在のARPテーブルが表示されます。

macOS/Linuxの場合:
ターミナルを開いて、「arp -a」または「ip neigh」と入力すると確認できます。

ARPの種類と関連技術

標準的なARPの種類

ARPにはいくつかの種類があります。

通常のARP:
これまで説明してきた、IPアドレスからMACアドレスを調べる標準的なARPです。

Gratuitous ARP(グラチュイタスARP):
機器が自分自身のIPアドレスについてARP要求を送信する特殊なARPです。
主に、IPアドレスの重複チェックや、ネットワーク上の他の機器に自分の情報を更新させる目的で使用されます。

Proxy ARP(プロキシARP):
ルーターなどが、別のネットワークにある機器の代わりにARP応答を返す仕組みです。
異なるネットワーク間での通信を可能にする技術として使われることがあります。

関連する技術

RARP(Reverse ARP):
ARPとは逆に、MACアドレスからIPアドレスを調べる技術です。
現在ではほとんど使用されておらず、DHCPなどの技術に置き換わっています。

NDP(Neighbor Discovery Protocol):
IPv6環境では、ARPの代わりにNDPが使用されます。
基本的な役割は似ていますが、より高度な機能を持っているんです。

ARPに関連するセキュリティ問題

ARPスプーフィング(ARP Spoofing)

ARPには、残念ながら重大なセキュリティ上の弱点があります。

それがARPスプーフィング(ARPポイズニングとも呼ばれる)という攻撃手法です。

ARPは、応答の正当性を確認する仕組みを持っていません。
つまり、誰でも偽のARP応答を送信できてしまうんです。

攻撃者は、偽のARP応答を送ることで、本来あるべきIPアドレスとMACアドレスの対応関係を書き換えることができます。

攻撃の具体例

例えば、攻撃者が「ルーターのIPアドレスに対応するMACアドレスは、実は私(攻撃者)のMACアドレスです」という偽の情報を流したとします。

すると、ネットワーク上の他の機器は、インターネットに送るデータをルーターではなく攻撃者に送ってしまいます。

これにより、以下のような被害が発生する可能性があります:

  • 通信内容の盗聴:やり取りされるデータを攻撃者が傍受できる
  • 中間者攻撃:攻撃者が通信内容を改ざんしたり、偽の情報を挿入したりできる
  • サービス妨害:正常な通信を妨害し、ネットワークを使えなくする

ARPスプーフィングへの対策

完全に防ぐのは難しいですが、いくつかの対策方法があります。

静的ARPエントリの設定:
重要な機器については、ARPテーブルに手動で固定の情報を登録しておく方法です。
ただし、管理が煩雑になるデメリットがあります。

ARPスプーフィング検知ツールの使用:
ネットワーク上の不正なARP通信を監視し、警告を出すツールを導入する方法もあります。

スイッチのセキュリティ機能:
多くの企業向けネットワークスイッチには、「Dynamic ARP Inspection」という機能があり、不正なARP応答をブロックできます。

暗号化通信の利用:
HTTPSやVPNなど、データそのものを暗号化する通信を使用すれば、たとえ通信が傍受されても内容を読み取られにくくなります。

ARPとネットワーク階層モデル

少し技術的な話になりますが、ARPがネットワークのどの部分で働いているかも理解しておくと、より深く理解できます。

ネットワーク通信は、OSI参照モデルという7階層の構造で説明されることが多いです。

ARPは、このモデルの中でデータリンク層(第2層)とネットワーク層(第3層)の橋渡しをする役割を担っています。

  • ネットワーク層:IPアドレスを使って通信経路を決定する
  • データリンク層:MACアドレスを使って同じネットワーク内でデータを転送する

ARPは、この2つの層をつなぐ重要な存在なんですね。

まとめ:ARPはネットワーク通信の縁の下の力持ち

ARP(Address Resolution Protocol)は、IPアドレスからMACアドレスを調べるための技術です。

普段は意識することのない地味な存在ですが、ネットワーク通信には絶対に欠かせない仕組みなんです。

この記事の重要ポイントをおさらいしましょう:

  • ARPはIPアドレスをMACアドレスに変換するプロトコル
  • ARP要求とARP応答のやり取りで、必要な情報を取得する
  • 一度調べた情報はARPテーブル(ARPキャッシュ)に保存される
  • ARPスプーフィングというセキュリティリスクが存在する
  • 対策として、検知ツールや暗号化通信の利用が有効

ネットワークの仕組みを理解することは、ITの基礎知識として非常に役立ちます。

また、ARPスプーフィングのようなセキュリティリスクを知っておくことで、より安全にネットワークを利用できるようになるでしょう。

自宅やオフィスのネットワークを使うとき、目に見えないところでARPが働いていることを、少し思い出してみてくださいね!

コメント

タイトルとURLをコピーしました