Arch Linuxを使い始めたばかりの方が、まず覚えるべきコマンドのひとつがpacman(パックマン)です。
これは、Arch Linuxに最初から入っているパッケージ管理ツールで、ソフトウェアのインストール・更新・削除などを一括で行えます。
ただ、pacman
はオプションが多く、最初は何をどう使えばいいのか迷うことも。
この記事では、pacmanの基本的な使い方から応用技、トラブル対策まで詳しく説明します。
pacmanとは?Arch Linuxの心臓部

pacmanって何?
pacman
は、Arch Linux公式のソフトウェア倉庫からアプリを管理するためのコマンドラインツールです。
普通のソフトインストールとの違い:
- 普通:ウェブサイトからファイルをダウンロード → 手動でインストール
- pacman:コマンド一つで自動インストール → 依存関係も自動解決
pacmanの特徴
高速かつ軽量
- インストールやアップデートが超高速
- メモリをあまり使わない
- 古いパソコンでもサクサク動く
依存関係を自動処理
- 必要な他のソフトも一緒にインストール
- バージョンの整合性をチェック
- 壊れないようにシステム全体を管理
キャッシュ管理も簡単
- ダウンロードしたファイルを保存
- 再インストール時に高速化
- 不要になったら簡単に削除
例え話: pacmanはArch Linuxのソフトウェア配達員のような存在。正確に、必要なパッケージだけを届けてくれて、いらなくなったら片付けもしてくれます。
まずはこれ!pacmanの基本操作一覧

日常的によく使うコマンド
やりたいこと | コマンド | 説明 |
---|---|---|
ソフトを探す | pacman -Ss firefox | 「firefox」という名前のソフトを検索 |
ソフトを入れる | sudo pacman -S firefox | firefoxをインストール |
ソフトを消す | sudo pacman -R firefox | firefoxを削除(設定は残る) |
完全に消す | sudo pacman -Rns firefox | 設定も含めて完全削除 |
システム更新 | sudo pacman -Syu | OS全体を最新にアップデート |
入ってるソフト一覧 | pacman -Q | インストール済みソフトの一覧表示 |
コマンドの覚え方
-S系(Sync): インストール・更新関連
-S
:単体でインストール-Ss
:検索(Search)-Syu
:システム全体を更新
-R系(Remove): 削除関連
-R
:普通に削除-Rs
:依存関係も一緒に削除-Rns
:設定ファイルも含めて完全削除
-Q系(Query): 情報確認関連
-Q
:インストール済み一覧-Qi
:詳細情報表示
実際の使用例
ソフトを探してインストール
# 1. ブラウザを探す
pacman -Ss browser
# 2. firefoxをインストール
sudo pacman -S firefox
# 3. インストールできたか確認
pacman -Q firefox
システムを最新にアップデート
# システム全体を更新(推奨:定期的に実行)
sudo pacman -Syu
不要なソフトを削除
# 普通に削除
sudo pacman -R firefox
# 設定も含めて完全削除
sudo pacman -Rns firefox
知っておくと便利なpacman応用技
応用テクニック集
インストール済みソフトの管理
# インストール済みソフトの一覧表示
pacman -Q
# 詳細情報付きで表示
pacman -Qi firefox
# インストール済みの数を数える
pacman -Q | wc -l
不要なソフトの一括削除
# 孤立したパッケージ(いらない依存関係)を削除
sudo pacman -Rns $(pacman -Qdtq)
# 確認してから削除したい場合
pacman -Qdtq # まず一覧表示
sudo pacman -Rns パッケージ名 # 個別削除
キャッシュ(保存ファイル)の管理
# 古いバージョンのファイルを削除
sudo pacman -Sc
# キャッシュを完全にクリア(注意:再ダウンロードが必要)
sudo pacman -Scc
# 保存するバージョン数を制限(paccacheツール使用)
sudo pacman -S pacman-contrib # ツールをインストール
sudo paccache -r # 3世代だけ残して削除
パッケージの詳細確認
# どのファイルがインストールされたか確認
pacman -Ql firefox
# このファイルはどのパッケージのもの?
pacman -Qo /usr/bin/firefox
# パッケージのサイズ確認
pacman -Qi firefox | grep "Installed Size"
なぜこれらが便利なの?
キャッシュ管理:
- ハードディスクの容量を節約
- システムを軽快に保つ
- 必要なときだけファイルを保存
孤立パッケージの削除:
- 使われていない依存関係を削除
- システムをクリーンに保つ
- セキュリティ向上
pacmanトラブル対策とエラー解決法

よくあるエラーと対策
エラー1:鍵の検証失敗
症状:
error: パッケージ名: signature from "..." is invalid
原因: パッケージの署名を確認するための鍵が古い
解決方法:
# キーリングを初期化
sudo pacman-key --init
# Arch Linuxの公式キーを追加
sudo pacman-key --populate archlinux
# システムを更新
sudo pacman -Syu
エラー2:データベースがロックされている
症状:
error: failed to init transaction (unable to lock database)
原因: 他のpacmanプロセスが動いているか、異常終了した
解決方法:
# 他のpacmanプロセスが動いていないか確認
ps aux | grep pacman
# プロセスがなければロックファイルを削除
sudo rm /var/lib/pacman/db.lck
# 再度実行
sudo pacman -Syu
エラー3:依存関係の競合
症状:
error: failed to prepare transaction (conflicting dependencies)
原因: インストールしようとするソフトが既存のソフトと競合
解決方法:
# 競合するパッケージを先に削除
sudo pacman -R 競合するパッケージ名
# または強制的にインストール(注意が必要)
sudo pacman -Rdd 競合するパッケージ名
sudo pacman -S 新しいパッケージ名
トラブル時の基本チェック手順
- ログファイルを確認
sudo tail -50 /var/log/pacman.log
- Arch Wiki で情報収集
- 公式ドキュメント:https://wiki.archlinux.org/
- 日本語版:https://wiki.archlinux.jp/
- システムの状態確認
# ディスク容量確認 df -h # メモリ使用量確認 free -h
pacmanとAURの違いと使い分け

AUR(Arch User Repository)とは?
AURは、公式ではないがコミュニティによって管理されている巨大な非公式ソフト集です。
pacman vs AUR
項目 | pacman(公式) | AUR(非公式) |
---|---|---|
管理者 | Arch Linux チーム | コミュニティユーザー |
安全性 | 高い(厳格にテスト済み) | 注意が必要 |
ソフト数 | 少ない(厳選されたもの) | 非常に多い |
インストール | 簡単 | ヘルパーツールが必要 |
AURの使い方
ヘルパーツールのインストール
# yay(人気のAURヘルパー)をインストール
cd /tmp
git clone https://aur.archlinux.org/yay.git
cd yay
makepkg -si
AURからソフトをインストール
# Google Chromeをインストール
yay -S google-chrome
# Visual Studio Codeをインストール
yay -S visual-studio-code-bin
# AURパッケージの検索
yay -Ss discord
使い分けのコツ
pacman(公式)を使う場面:
- システムの基本ソフト(ブラウザ、オフィスソフトなど)
- 安全性を重視するとき
- 初心者のうち
AUR を使う場面:
- 公式にないソフトが欲しいとき
- 最新版のソフトを使いたいとき
- Google Chrome、Discord、Spotifyなど
AUR使用時の注意点
セキュリティチェック:
- インストール前にPKGBUILDファイルを確認
- 信頼できる維持者(Maintainer)のパッケージを選ぶ
- レビューやコメントをチェック
例:
# PKGBUILDファイルを確認してからインストール
yay -S --editmenu google-chrome
pacmanの設定とカスタマイズ
設定ファイルの場所
pacmanの設定は /etc/pacman.conf
で管理されています。
基本的な設定例
# 設定ファイルを編集
sudo nano /etc/pacman.conf
# 有用な設定例:
# Color # コマンド出力をカラー化
# VerbosePkgLists # 詳細なパッケージ情報表示
# ParallelDownloads = 5 # 並列ダウンロード数
ミラー(ダウンロード先)の最適化
# ミラーリスト生成ツールをインストール
sudo pacman -S reflector
# 日本のミラーで速いものを自動選択
sudo reflector --country Japan --latest 10 --protocol https --sort rate --save /etc/pacman.d/mirrorlist
# pacmanデータベースを更新
sudo pacman -Syy
便利なエイリアス(短縮コマンド)設定
# ~/.bashrc または ~/.zshrc に追加
echo 'alias pacs="sudo pacman -S"' >> ~/.bashrc
echo 'alias pacr="sudo pacman -R"' >> ~/.bashrc
echo 'alias pacu="sudo pacman -Syu"' >> ~/.bashrc
echo 'alias pacq="pacman -Q"' >> ~/.bashrc
# 設定を反映
source ~/.bashrc
定期メンテナンスのベストプラクティス

週1回やるべきこと
# 1. システム全体を更新
sudo pacman -Syu
# 2. 孤立パッケージを削除
sudo pacman -Rns $(pacman -Qdtq)
# 3. キャッシュクリーンアップ
sudo pacman -Sc
月1回やるべきこと
# 1. パッケージキャッシュの詳細整理
sudo paccache -r
# 2. ログファイルのサイズ確認
sudo journalctl --disk-usage
# 3. システムのヘルスチェック
sudo pacman -Qkk # ファイルの整合性確認
システムバックアップ
# インストール済みパッケージリストを保存
pacman -Qqe > pkglist.txt
# 復元時に使用
sudo pacman -S --needed - < pkglist.txt
まとめ
pacmanは、Arch Linuxを支える重要なパッケージマネージャです。基本操作からトラブル対策、AURとの使い分けまでを知ることで、あなたのArchライフは格段に快適になるでしょう。
今日の学習まとめ
基本操作
sudo pacman -Syu
:システム全体を最新に保つpacman -Ss 名前
:ソフトウェアを検索sudo pacman -S 名前
:ソフトウェアをインストールsudo pacman -Rns 名前
:ソフトウェアを完全削除
メンテナンス
sudo pacman -Sc
:キャッシュ整理でディスク節約sudo pacman -Rns $(pacman -Qdtq)
:不要な依存関係を削除
トラブル対策
/var/log/pacman.log
でエラー原因を確認- Arch Wiki で解決方法を検索
- 基本的なシステム状態をチェック
AUR活用
yay
などのヘルパーツールで非公式ソフトも利用可能- セキュリティには十分注意
学習のステップ:
- 基本操作の習得:日常的に使うコマンドから覚える
- 応用技の習得:効率的なシステム管理方法を身につける
- トラブル対応:問題解決能力を向上させる
- カスタマイズ:自分好みの環境を構築
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