新しいスマートフォンを買うとき、「このスマホって本当に速いの?」「ゲームはサクサク動くかな?」と気になりますよね。
スペック表を見ても、CPUの名前や数字が並んでいるだけで、実際にどれくらい快適に使えるのかイメージしにくいものです。
そんなとき役立つのが「AnTuTu Benchmark」(アンツツ ベンチマーク)です。
AnTuTuは、スマートフォンやタブレットの性能を数値化して測定できる、世界で最も有名なベンチマークアプリです。CPUやGPU、メモリなど、端末の総合的な性能を一つのスコアで表してくれます。
この記事では、AnTuTu Benchmarkの基本から使い方、スコアの見方、注意点まで、わかりやすく解説していきます。
AnTuTu Benchmarkとは
基本情報
AnTuTu Benchmark(安兔兔、アンツツ ベンチマーク)は、中国・北京の朝陽区に本部を置くソフトウェア企業が開発したベンチマークアプリです。
開発元: Beijing AnTuTu Technology Limited(北京安兔兔科技有限公司)
創業者: Shào Yīng(邵英)とLiáng Bīn(梁斌)
設立: 2011年
ベンチマークとは?
ベンチマークとは、コンピュータやスマートフォンの性能を測定し、数値化すること
です。
例えるなら、車の「0-100km/h加速タイム」のようなもの。実際の使用感とは完全に一致しないけれど、性能を客観的に比較できる指標になります。
なぜAnTuTuなのか?
スマートフォンのベンチマークアプリはいくつかありますが、AnTuTuが特に人気な理由は:
1. 総合的な測定
- CPU、GPU、メモリ、ストレージ、UX(ユーザー体験)など、端末全体の性能を測定
2. わかりやすい
- 一つの総合スコアで性能が一目でわかる
- 測定も簡単で、ボタン一つで開始できる
3. 世界標準
- スマートフォンメーカーや技術系メディアが性能指標として採用
- 製品レビューなどで頻繁に引用される
4. 幅広い対応
- Android、iOS、Windows、Linuxに対応
- 最新機種から古い機種まで測定可能
AnTuTuが測定する項目
AnTuTu Benchmark(バージョン10以降)は、主に4つの項目を測定し、その合計が総合スコアとして表示されます。
1. CPU(中央処理装置)
測定内容:
- プロセッサの演算能力
- マルチスレッド性能
- 整数演算・浮動小数点演算の速度
影響する使用シーン:
- アプリの起動速度
- 複数アプリの同時実行(マルチタスク)
- データ処理の速さ
- 一般的なアプリの動作
スコアの目安:
CPUスコアが高いほど、アプリの反応が速く、複数の作業を同時にしてもスムーズです。
2. GPU(グラフィックス処理装置)
測定内容:
- 3Dグラフィックスの描画性能
- Vulkan API(Android)やMetal API(iOS)を使った処理速度
- 高負荷な3Dシーンのレンダリング
影響する使用シーン:
- 3Dゲームの動作
- 動画編集
- ARアプリ
- グラフィックが綺麗なアプリ
スコアの目安:
GPUスコアが高いほど、ゲームがヌルヌル動いたり、綺麗なグラフィックスでも快適に動作します。
3. MEM(メモリ)
測定内容:
- RAM(メインメモリ)の読み書き速度
- ROM(内蔵ストレージ)の読み書き速度
- シーケンシャルアクセス(連続したデータの処理)
- ランダムアクセス(ランダムなデータの処理)
影響する使用シーン:
- アプリの切り替え速度
- ファイルのコピー・移動
- 写真や動画の保存
- データの読み込み速度
スコアの目安:
MEMスコアが高いほど、アプリ間の切り替えがスムーズで、データの保存や読み込みが速くなります。
4. UX(ユーザー体験)
測定内容:
- 実際の使用感に近いテスト
- 画像の表示速度
- データセキュリティ関連の処理
- アプリ切り替えのスムーズさ
影響する使用シーン:
- 日常的な操作全般
- 画面のスクロール
- Webブラウジング
- SNSアプリの使用
スコアの目安:
UXスコアが高いほど、実際に使ったときの「サクサク感」が高くなります。
総合スコアの計算方法
総合スコア = CPU + GPU + MEM + UX
この4つのスコアを合計したものが、AnTuTuの総合スコアとして表示されます。
スコアの目安(2025年時点)
AnTuTu v11(バージョン11)を基準とした、総合スコアのおおよその評価目安です。
| スコア範囲 | 評価 | 性能レベル | 用途 |
|---|---|---|---|
| 200万点以上 | 最高級 | フラッグシップ | 最高設定での3Dゲーム、プロ級動画編集 |
| 150~200万点 | 超高性能 | ハイエンド | 高設定での3Dゲーム、動画編集 |
| 100~150万点 | 高性能 | アッパーミドル | 中~高設定でのゲーム、軽い動画編集 |
| 70~100万点 | 中の上 | ミドルレンジ+ | 軽めのゲーム、日常使用は快適 |
| 50~70万点 | 中程度 | ミドルレンジ | 軽いゲーム、日常使用 |
| 30~50万点 | 中の下 | エントリー+ | ブラウジング、SNS、軽いアプリ |
| 30万点未満 | 低性能 | エントリー | 基本的な操作のみ |
注意: バージョンによってスコアの基準が変わるため、同じバージョン同士で比較する必要があります。
具体的な使用目安
軽い使用(ブラウジング、SNS、動画視聴):
→ 30万点以上あれば十分
一般的な使用(写真撮影、軽いゲーム):
→ 50万点以上が目安
ヘビーな使用(3Dゲーム、マルチタスク):
→ 100万点以上を推奨
プロレベル(動画編集、最高設定ゲーム):
→ 150万点以上が理想
AnTuTuのダウンロード方法
Android版
重要: Android版AnTuTuは、Google Playストアからは配信されていません。
2020年3月、AnTuTu Benchmarkは突然Google Playストアから削除されました。これについてAnTuTuは誤解によるものだと主張しています。
ダウンロード方法:
- 公式サイトにアクセス
- AnTuTu公式サイト(https://www.antutu.com/)にアクセス
- APKファイルをダウンロード
- 「AnTuTu Benchmark」と「AnTuTu 3DBench」の2つをダウンロード
- インストール
- ダウンロードしたAPKファイルを開く
- 「提供元不明のアプリ」のインストール許可が必要
- 警告が表示されるが、公式サイトからのダウンロードであれば基本的に安全
セキュリティ上の注意:
- 必ず公式サイトからダウンロードする
- 非公式のミラーサイトからのダウンロードは避ける
- インストール前にウイルススキャンを推奨
iOS版
ダウンロード方法:
iOS版は、App Storeから直接ダウンロードできます。
- App Storeを開く
- 「AnTuTu Benchmark」で検索
- インストール
注意:
- iOS版は更新頻度が低い
- バージョン10には対応していない場合がある
- Android版とスコアは比較できない
その他のプラットフォーム
Windows版:
- 公式サイトからダウンロード可能
- レイトレーシング対応
Linux版:
- x86版が公式サイトから入手可能
AnTuTuの使い方
基本的な測定手順
ステップ1:アプリを起動
AnTuTu Benchmarkアプリを開きます。
ステップ2:利用規約に同意
初回起動時は利用規約が表示されるので、読んで同意します。
ステップ3:測定開始
「Start Testing」または「テスト」ボタンをタップします。
ステップ4:測定中
測定が自動的に進行します。所要時間は約10~15分です。
測定中の流れ:
- GPU(グラフィックス)テスト
- 3Dシーンのレンダリング
- CPU(プロセッサ)テスト
- 演算処理のテスト
- MEM(メモリ)テスト
- RAMとROMの速度測定
- UX(ユーザー体験)テスト
- 実使用に近いテスト
ステップ5:結果確認
測定が完了すると、総合スコアと各項目のスコアが表示されます。
測定時の注意点
1. 他のアプリを閉じる
- バックグラウンドで動作中のアプリを終了する
- 正確な測定のため、測定中は他の操作をしない
2. 充電する
- バッテリー残量が十分あることを確認
- できれば充電しながら測定
3. 冷却する
- 端末が熱くなっていない状態で測定
- 連続して何度も測定しない
4. 安定した環境で
- Wi-Fiやモバイルデータの接続は不要
- 静かな場所で測定
その他の機能
AnTuTuには、ベンチマーク以外にも便利な機能があります。
1. Storage Test(ストレージテスト)
内蔵ストレージの読み書き速度を個別に測定できます。
2. LCD Test(画面テスト)
ディスプレイの不具合をチェックできます:
- ピクセル抜けの確認
- 色の表示確認
- タッチパネルの反応確認
3. Multi-Touch Test
画面が同時に何点のタッチを認識できるかテストできます。
4. Battery Test
バッテリーの消費速度や健全性を確認できます。
5. CPU温度モニター
リアルタイムでCPUとバッテリーの温度を監視できます。
スコアの活用方法
1. 機種選びの参考に
新しいスマートフォンを買うとき、候補機種のAnTuTuスコアを比較することで、性能の違いを客観的に判断できます。
例:
- 機種A:総合スコア 150万点
- 機種B:総合スコア 100万点
→ 機種Aの方が約1.5倍の性能
2. 自分のスマホの状態チェック
定期的に測定することで、端末の経年劣化を確認できます。
正常な変化:
- スコアが徐々に下がる(ソフトウェアの肥大化など)
異常な変化:
- 急激にスコアが下がる → 何らかの問題がある可能性
3. 他機種との比較
AnTuTu公式サイトには、各機種のランキングが公開されています。自分のスマホが全体でどれくらいの位置にいるか確認できます。
4. 中古購入時の確認
中古スマホを買うとき、AnTuTuで測定することで:
- スペック通りの性能があるか確認
- 偽物や改造品ではないか確認
AnTuTuの注意点と限界
1. あくまで参考値
ベンチマークスコアは万能ではありません。
高いスコアでも:
- ソフトウェアの最適化が悪ければ、実際の使用感は悪い
- 発熱管理が悪ければ、長時間使用で性能が落ちる
- バッテリー持ちが悪いかもしれない
- カメラ性能はわからない
総合的に判断する必要があります:
- ベンチマークスコア
- 実機レビュー
- カメラ性能
- バッテリー持ち
- ソフトウェアの使いやすさ
- アップデート対応
- 価格
2. 不正(チート)の問題
過去に、一部のスマートフォンメーカーが、AnTuTu測定時だけ性能を一時的にブーストして、実際より高いスコアを出す不正を行っていました。
対策:
- AnTuTuは「AnTuTu X」という不正対策版をリリース
- 不正が発覚したメーカーは、ランキングから一時的に除外
- 継続的な監視体制
見分け方:
- 公式ランキングと大きく異なるスコア → 疑わしい
- 実使用感とスコアが合わない → 不正の可能性
3. バージョンの違い
AnTuTu v9とv10では測定内容が異なるため、スコアを直接比較できません。
比較のルール:
- 同じバージョン同士で比較する
- バージョンが違う場合は、参考程度に留める
4. プラットフォーム間の比較
AndroidとiOSではAPIが異なるため、スコアを直接比較できません。
- Android:Vulkan API
- iOS:Metal API
結論: AndroidとiPhoneのスコアは比較不可
他のベンチマークツールとの比較
AnTuTu以外にも、有名なベンチマークツールがあります。
Geekbench
特徴:
- CPUとGPUの性能に特化
- クロスプラットフォーム対応
- シングルコア・マルチコアを個別測定
違い:
- AnTuTu:総合的な性能
- Geekbench:CPUとGPUに特化
入手方法:
- Google PlayやApp Storeから入手可能
3DMark
特徴:
- GPU性能に特化
- ゲーミング性能の測定に最適
- 「Steel Nomad」「Wild Life」など、複数のテスト
違い:
- AnTuTu:総合性能
- 3DMark:GPU(ゲーム性能)に特化
向いている人:
- ゲーマー
- GPU性能を重視する人
どのベンチマークを使うべきか?
一般ユーザー:
→ AnTuTu(総合的でわかりやすい)
ゲーマー:
→ 3DMark(ゲーム性能がわかる)
CPU性能重視:
→ Geekbench(CPU性能が詳しくわかる)
理想:
→ 複数のベンチマークを組み合わせて総合判断
よくある質問(FAQ)
Q1. AnTuTuスコアが高ければ高いほど良い?
A: 基本的にはYESですが、用途によります。
日常使用(SNS、ブラウジング)なら30~50万点でも十分です。必要以上に高性能な機種は、価格も高く、バッテリー消費も多い傾向があります。
自分の使い方に合ったスコアの機種を選ぶのが賢明です。
Q2. 同じ機種なのにスコアが違うのはなぜ?
A: いくつかの要因があります:
- 端末の状態
- バックグラウンドアプリの数
- バッテリー残量
- 端末の温度
- ソフトウェアのバージョン
- OSのバージョン
- システムアップデートの有無
- 測定時の誤差
- ±5%程度の誤差は正常
- 最大15%程度の差が出ることもある
Q3. スコアは時間とともに下がる?
A: 一般的には、少しずつ下がる傾向があります。
原因:
- OSやアプリの肥大化
- バックグラウンドプロセスの増加
- ストレージの断片化
- バッテリーの劣化
対策:
- 定期的な再起動
- 不要なアプリの削除
- ストレージの整理
- 工場出荷状態への初期化(最終手段)
Q4. 測定中にスマホが熱くなるけど大丈夫?
A: 正常な現象です。
ベンチマークは、CPUやGPUに最大負荷をかけるため、発熱します。ただし:
正常: 熱くなるが、測定終了後に冷める
異常:
- 触れないほど熱い
- 測定が途中で止まる
- 測定後も長時間熱いまま
異常な場合は、端末に問題がある可能性があります。
Q5. AnTuTuは無料?
A: 基本機能は完全無料です。
広告が表示されることがありますが、測定機能は無料で使えます。
Q6. AnTuTuは安全?
A: 公式サイトからダウンロードすれば基本的に安全です。
ただし:
- 必ず公式サイトから入手
- 非公式のミラーサイトは避ける
- アクセス許可の内容を確認
中国企業が開発しているため、プライバシーを気にする人は、測定後にアンインストールするのも一つの方法です。
Q7. 中古スマホの確認に使える?
A: はい、とても有効です。
AnTuTuで測定することで:
- スペック通りの性能があるか確認
- 偽物や改造品でないか判断
- 経年劣化の程度を把握
中古購入前に、必ず実機でAnTuTuを測定することをおすすめします。
まとめ
AnTuTu Benchmarkについて、重要なポイントをまとめます。
1. AnTuTuとは:
- スマートフォンの性能を総合的に測定するベンチマークアプリ
- 世界で最も有名で、広く使われている
- CPU、GPU、MEM、UXの4項目を測定
2. スコアの目安(2025年時点):
- 200万点以上:最高級(フラッグシップ)
- 100~200万点:高性能(ハイエンド)
- 50~100万点:中程度(ミドルレンジ)
- 30~50万点:エントリークラス
- 30万点未満:低性能
3. ダウンロード方法:
- Android:公式サイトからAPKファイル
- iOS:App Storeから直接ダウンロード
4. 使い方:
- アプリを開いて「Start Testing」をタップするだけ
- 測定時間は約10~15分
- 他のアプリを閉じて、充電しながら測定
5. スコアの活用:
- 機種選びの参考に
- 自分のスマホの状態チェック
- 他機種との性能比較
- 中古購入時の確認
6. 注意点:
- スコアはあくまで参考値
- 実使用感とは完全には一致しない
- 不正(チート)の可能性もある
- バージョンが違うと比較できない
- AndroidとiOSは比較不可
7. 他のベンチマーク:
- Geekbench:CPU/GPU特化
- 3DMark:ゲーミング性能特化
- 用途に応じて使い分ける
8. よくある誤解:
- 「スコアが全て」→ NO。総合的に判断が必要
- 「高ければ高いほど良い」→ 用途による
- 「一度測れば十分」→ 定期的な測定が有効
AnTuTu Benchmarkは、スマートフォンの性能を客観的に知るための、とても便利なツールです。
ただし、ベンチマークスコアだけでスマホを選ぶのではなく、実際の使用感、カメラ性能、バッテリー持ち、ソフトウェアの使いやすさなど、総合的に判断することが大切です。
スコアは「性能の目安」として活用し、最終的には自分の使い方に合った機種を選びましょう。
新しいスマホを買う前、今使っているスマホの調子を確認したいとき、中古スマホを買うときなど、ぜひAnTuTu Benchmarkを活用してみてください!


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