「会社や学校のWi-Fiに接続したら、プロキシ設定が必要と言われた」「プロキシサーバーって何?」と困っていませんか?
プロキシは、インターネット接続を中継するサーバーのことで、企業や学校などのネットワークでよく使われています。
この記事では、Androidスマホでプロキシを設定する方法を、Wi-Fi接続とモバイル回線の両方について詳しく解説します。また、認証が必要な場合のアプリの使い方も紹介します。
プロキシとは?なぜ必要?

プロキシサーバーの基本
プロキシ(Proxy)とは「代理」という意味で、インターネット接続を代理で行うサーバーです。
仕組み
- スマホ → プロキシサーバー → インターネット
- インターネット → プロキシサーバー → スマホ
直接インターネットに接続するのではなく、プロキシサーバーを経由します。
プロキシが使われる理由
セキュリティの向上
- 不正なアクセスをブロック
- ウイルスやマルウェアの検出
- アクセス履歴の管理
通信速度の改善
- よく使うサイトのデータをキャッシュ(保存)
- 同じサイトへのアクセスが高速化
アクセス制限
- 特定のサイトへのアクセス制限
- 利用状況の監視・管理
匿名性の確保
- IPアドレスを隠す
- 位置情報の秘匿
どんな場所で使われる?
プロキシが必要になる主な場所は以下の通りです。
企業のオフィス
- 社内ネットワークのセキュリティ管理
- 業務外サイトへのアクセス制限
大学・学校
- 学生のインターネット利用管理
- 教育に不適切なサイトのブロック
公共施設
- 図書館や公民館のWi-Fi
- セキュリティ確保
海外からのアクセス
- 地域制限のあるサービスへのアクセス
- プライバシー保護
Androidのプロキシ設定の種類
Androidでは、接続方法によって設定方法が異なります。
Wi-Fi接続のプロキシ
特徴
- Wi-Fiネットワークごとに個別設定
- 設定アプリから簡単に設定可能
- 他のWi-Fiには影響しない
設定できる内容
- プロキシサーバーのアドレス(IPまたはホスト名)
- ポート番号
- 除外リスト(プロキシを使わないサイト)
モバイルネットワーク(4G/5G)のプロキシ
特徴
- APN設定から設定
- キャリア回線やMVNOで使用
- 設定がやや複雑
制約
- 通常は設定不要
- 一部のキャリアでは設定を変更できない
- 認証には非対応(標準設定)
プロキシの種類
HTTP/HTTPSプロキシ
- 最も一般的なタイプ
- Webブラウジングに使用
- Android標準で対応
SOCKSプロキシ(SOCKS4/SOCKS5)
- より汎用的なプロキシ
- 様々な通信に対応
- アプリが必要(標準非対応)
PAC(自動構成)
- プロキシ設定を自動で取得
- 企業ネットワークで使用
- Android 9以降で一部対応
Wi-Fi接続でのプロキシ設定方法
最も一般的なWi-Fi接続時のプロキシ設定方法です。
基本的な設定手順
新しいWi-Fiに接続する場合
- 「設定」アプリを開く
- 「ネットワークとインターネット」をタップ
- 「Wi-Fi」を選択
- 接続したいWi-Fiネットワーク名をタップ
- パスワードを入力
- 「詳細設定」または「詳細オプション」をタップ(下にスクロール)
- 「プロキシ」の項目を探す
- 「手動」を選択
プロキシ情報の入力
- 「プロキシのホスト名」にプロキシサーバーのアドレスを入力
- 例:proxy.example.com または 192.168.1.1
- 「プロキシのポート」にポート番号を入力
- 例:8080、3128、80など
- 「プロキシをバイパス」に除外リストを入力(必要な場合)
- 例:localhost,127.0.0.1,192.168.*
- 「接続」をタップ
既に接続済みのWi-Fiを変更する場合
方法1:設定から変更
- 「設定」→「ネットワークとインターネット」→「Wi-Fi」
- 接続中のWi-Fi名をタップ
- 「編集」アイコン(鉛筆マーク)をタップ
- 「詳細設定」を展開
- プロキシを「手動」に変更
- 必要な情報を入力
- 「保存」をタップ
方法2:長押しから変更
- 設定→Wi-Fi
- 接続中のWi-Fi名を長押し
- 「ネットワークを変更」を選択
- 「詳細設定」を展開
- プロキシ設定を変更
- 「保存」をタップ
機種別の設定画面の違い
Google Pixel
- 設定→ネットワークとインターネット→インターネット
- Wi-Fi名の右の歯車アイコン→編集
- 詳細設定→プロキシ
Samsung Galaxy
- 設定→接続→Wi-Fi
- Wi-Fi名をタップ→詳細設定
- プロキシ設定
Xperia
- 設定→ネットワークとインターネット→Wi-Fi
- Wi-Fi名をタップ→詳細設定
- プロキシ
AQUOS
- 設定→Wi-Fi
- Wi-Fi名をタップ→詳細設定
- プロキシ設定
プロキシ除外リストの設定
プロキシを経由させたくないサイトを指定できます。
除外リストの書き方
- カンマ区切りで複数指定
- ワイルドカード(*)が使える
- 例:localhost,127.0.0.1,192.168.,.example.com
よく使う除外設定
localhost,127.0.0.1,10.*,192.168.*
これにより、ローカルネットワークへのアクセスはプロキシを経由しません。
モバイルネットワークでのプロキシ設定方法
キャリア回線やMVNOのSIMカードでプロキシを使う方法です。
APN設定からのプロキシ設定
手順
- 「設定」アプリを開く
- 「ネットワークとインターネット」をタップ
- 「モバイルネットワーク」を選択
- 「アクセスポイント名(APN)」をタップ
- 使用中の回線事業者名をタップ
- docomo、au、SoftBank、楽天モバイルなど
- 下にスクロールして「プロキシ」の項目を探す
- プロキシサーバーのアドレスを入力
- 「ポート」にポート番号を入力
- 右上のメニュー(⋮)→「保存」
APN設定の注意点
キャリアによる制限
大手キャリアでは、APN設定がロックされている場合があります。
- 設定を変更できない
- 変更しても保存できない
- すぐに元に戻る
この場合は、キャリアに問い合わせるか、Wi-Fi経由でプロキシを使ってください。
認証に非対応
標準のAPN設定では、ユーザー名とパスワードによる認証に対応していません。
認証が必要な場合は、後述するアプリ(Drony)を使う必要があります。
モバイルネットワークでプロキシが必要なケース
一般的には、モバイルネットワークでプロキシを設定する必要はありません。
設定が必要な場合
- 企業支給の端末で社内システムにアクセス
- 特殊なネットワーク環境
- 通信を監視・管理する必要がある場合
認証が必要な場合のアプリ利用
標準設定では、ユーザー名とパスワードによる認証に対応していません。
Androidの標準設定の制約
Android 8以前
- ユーザー名・パスワード欄がない
- 認証プロキシは使用不可
Android 9以降
- Wi-Fiでは認証欄が追加された(一部機種)
- しかし完全対応ではない
- アプリ全体をカバーできない
解決方法
- Dronyなどのアプリを使う(おすすめ)
- IPアドレスをホワイトリストに登録してもらう
- 端末をRoot化して対応(非推奨)
Dronyアプリの使い方
認証に対応した最も人気のあるプロキシアプリです。
Dronyの特徴
主な機能
- ユーザー名・パスワード認証に対応
- HTTP、HTTPS、SOCKS4a、SOCKS5対応
- Root権限不要で動作
- Wi-Fiとモバイルネットワーク両対応
- アプリごとのフィルタリング可能
- PAC/WPADスクリプト対応
対応する認証方式
- Basic認証
- Digest認証
- NTLM認証(Windows)
動作環境
- Android 4.1以降
Dronyのインストール
Google Play Storeから
- Google Play Storeを開く
- 「Drony」で検索
- 「Drony – http/socks proxy」を選択
- 「インストール」をタップ
注意点
- 無料アプリですが、広告が表示されます
- 一部の国では配信されていない場合があります
Dronyの基本設定
ステップ1:Wi-Fi設定を変更
Dronyを使う場合、まずWi-Fi側の設定を変更します。
- 設定→Wi-Fi
- 使用するWi-Fi名を長押し→「ネットワークを変更」
- 「詳細設定」を展開
- プロキシ→「手動」を選択
- プロキシのホスト名:「localhost」と入力
- プロキシのポート:「8020」と入力
- 「保存」をタップ
なぜlocalhostを設定?
Dronyは、スマホ内部にプロキシサーバーを立ち上げ、そこで認証を処理します。
そのため、Wi-Fi設定では「localhost」(自分自身)を指定します。
ステップ2:Dronyアプリの設定
- Dronyアプリを開く
- 左にスワイプして「Settings(設定)」タブを表示
- 「Networks」をタップ
- 「Wi-Fi」を選択
- 設定したいWi-Fiネットワーク名をタップ
ステップ3:プロキシ情報の入力
- 「Proxy type」が「Manual(手動)」になっているか確認
- 下にスクロールして以下を入力:
- Hostname:プロキシサーバーのアドレス
- Port:ポート番号
- Username:ユーザー名
- Password:パスワード
- Proxy type(下の方):「Plain」を選択
- 必要に応じて「Domain」を入力
- 戻るボタンで前の画面に戻る
ステップ4:Dronyを有効化
- 「Log」タブに戻る
- 画面上部の「OFF」をタップ
- 「ON」に切り替わる
- VPN接続の許可を求められたら「OK」をタップ
VPNの許可について
Dronyは内部的にVPN機能を使ってトラフィックを制御します。
これは正常な動作なので、許可してください。
モバイルネットワークでのDrony設定
Wi-Fiと同様の手順ですが、最初の選択が異なります。
手順
- Dronyアプリ→Settings→Networks
- 「Not Wi-Fi」を選択(モバイルデータ)
- プロキシ情報を入力(Wi-Fiと同じ)
- Logタブで「ON」にする
Dronyの高度な設定
フィルタリング機能
特定のアプリだけプロキシを使うことができます。
- 「Filter」タブを開く
- 「Default action」でデフォルトの動作を選択
- Deny:すべて拒否
- Allow:すべて許可
- Direct:プロキシを使わない
- 個別のアプリに対してルールを設定
接続の監視
「Connections」タブで、どのアプリがネットワークを使っているか確認できます。
その他のプロキシアプリ

Drony以外のプロキシアプリも紹介します。
ProxyDroid
特徴
- 強力なプロキシアプリ
- グローバルプロキシ設定
- アプリごとの個別設定
デメリット
- Root権限が必須
- 一般ユーザーには不向き
こんな人におすすめ
- Root化済みの端末を使っている
- より細かい制御が必要
SocksDroid
特徴
- SOCKS5プロキシ専用
- シンプルな設定
- Root不要
使い方
- アプリをインストール
- プロキシ情報を入力
- 「Connect」をタップ
デメリット
- SOCKS5のみ対応
- HTTPプロキシは使えない
Shadowsocks
特徴
- 暗号化プロキシ
- 検閲回避に使用
- 高速で安定
用途
- 主に中国などのインターネット検閲回避
- プライバシー保護
注意点
- 専用のサーバーが必要
- 設定がやや複雑
Every Proxy
特徴
- シンプルなプロキシアプリ
- HTTP/SOCKS対応
- Root不要
使いやすさ
- 初心者向け
- 設定が簡単
プロキシ設定後の確認方法
正しく設定できているか確認する方法です。
接続テスト
Webブラウザでテスト
- Chromeなどのブラウザを開く
- 「whatismyipaddress.com」にアクセス
- 表示されるIPアドレスを確認
- プロキシサーバーのIPアドレスと一致すればOK
Dronyのログ確認
Dronyの「Log」タブで、通信が正常に行われているか確認できます。
正常な場合
- 緑色のログが表示される
- 「Connected」と表示される
エラーの場合
- 赤色のログが表示される
- エラーメッセージを確認
プロキシ設定のトラブルシューティング
よくある問題と解決方法です。
インターネットに接続できない
原因1:プロキシ情報が間違っている
解決方法
- ホスト名、ポート番号を再確認
- 半角英数字で入力されているか確認
- スペースが入っていないか確認
原因2:認証情報が間違っている
解決方法
- ユーザー名、パスワードを再確認
- 大文字・小文字を間違えていないか確認
原因3:プロキシサーバーがダウンしている
解決方法
- ネットワーク管理者に確認
- 別のネットワークで試す
一部のアプリが動かない
Androidのプロキシ設定は、すべてのアプリで機能するわけではありません。
影響を受けにくいアプリ
- Chromeなどのブラウザ
- 多くのSNSアプリ
影響を受けやすいアプリ
- 銀行アプリ
- セキュリティアプリ
- VPNアプリ
- ゲームアプリ
解決方法
- Dronyでアプリごとの設定を変更
- または、そのアプリ使用時のみプロキシをオフにする
通信速度が遅い
原因
- プロキシサーバーの負荷が高い
- プロキシサーバーまでの距離が遠い
- 認証処理のオーバーヘッド
解決方法
- 別のプロキシサーバーを使う
- 不要な場合はプロキシをオフにする
- Wi-Fi以外のネットワークを試す
Dronyが動作しない
原因1:VPN許可がされていない
解決方法
- Dronyを一度アンインストール
- 再インストール
- VPN許可の画面で必ず「OK」をタップ
原因2:バッテリー最適化の影響
解決方法
- 設定→アプリ→Drony
- バッテリー→「最適化しない」を選択
原因3:他のVPNアプリとの競合
解決方法
- 他のVPNアプリを一時停止
- 同時に複数のVPNは使えない
プロキシ設定が保存されない
原因
- キャリアによるAPN設定のロック
- 企業管理端末でのポリシー制限
解決方法
- Wi-Fi接続を使う
- ネットワーク管理者に相談
プロキシを解除する方法
プロキシが不要になった場合の解除方法です。
Wi-Fiプロキシの解除
手順
- 設定→ネットワークとインターネット→Wi-Fi
- 該当のWi-Fi名をタップ
- 編集アイコンをタップ
- 詳細設定を展開
- プロキシ→「なし」を選択
- 保存
Dronyの停止
手順
- Dronyアプリを開く
- 「Log」タブで「ON」をタップ
- 「OFF」に切り替わる
完全に削除したい場合は、アプリをアンインストールしてください。
APN設定の初期化
手順
- 設定→モバイルネットワーク→アクセスポイント名
- 右上のメニュー(⋮)
- 「初期設定にリセット」をタップ
これで、キャリアの初期設定に戻ります。
よくある質問
Q1. プロキシを設定すると通信料金は増えますか?
A. いいえ、増えません。
プロキシはあくまで通信経路を変更するだけで、データ通信量自体は変わりません。
Q2. 家庭のWi-Fiでもプロキシは必要ですか?
A. 通常は不要です。
家庭用のWi-Fiルーターでは、プロキシ設定は基本的に必要ありません。
企業や学校などの大規模ネットワークで主に使われます。
Q3. プロキシ設定でセキュリティは向上しますか?
A. 場合によります。
信頼できるプロキシサーバーを経由すれば、セキュリティが向上する可能性があります。
ただし、不明なプロキシサーバーを使うと、逆に通信内容を盗聴されるリスクがあります。
Q4. VPNとプロキシの違いは何ですか?
A. 暗号化の有無と適用範囲が異なります。
VPN
- すべての通信を暗号化
- すべてのアプリに適用
- より高いセキュリティ
プロキシ
- 基本的に暗号化なし(HTTPSプロキシを除く)
- アプリによっては適用されない
- 設定が簡単
使い分け
- セキュリティ重視→VPN
- 単純な経路変更→プロキシ
Q5. 無料のプロキシサーバーを使っても大丈夫ですか?
A. おすすめしません。
無料のプロキシサーバーには以下のリスクがあります。
リスク
- 通信内容の盗聴
- マルウェアの注入
- 個人情報の収集
- 突然のサービス停止
安全な利用
- 会社や学校が提供するプロキシを使う
- 信頼できる有料サービスを使う
- VPNサービスの利用を検討
Q6. プロキシ設定は他のWi-Fiにも適用されますか?
A. いいえ、適用されません。
プロキシ設定はWi-Fiネットワークごとに個別です。
家のWi-Fiでプロキシを設定しても、職場のWi-Fiには影響しません。
Q7. Dronyは安全なアプリですか?
A. 基本的に安全です。
Dronyは長年使われているアプリで、多くのユーザーに信頼されています。
ただし、以下の点に注意してください。
注意点
- Google Play以外からダウンロードしない
- アプリの権限を確認する
- プロキシサーバー自体の信頼性を確認
Q8. プロキシを設定したらバッテリー消費は増えますか?
A. わずかに増えます。
プロキシ経由の通信は、直接接続よりもわずかに処理が増えるため、バッテリー消費が若干増えます。
ただし、劇的な増加ではありません。
まとめ
Androidでプロキシを設定する方法について解説しました。
この記事のポイント
- プロキシは企業・学校などで使われる中継サーバー
- Wi-Fi接続は設定アプリから簡単に設定可能
- モバイルネットワークはAPN設定から
- 認証が必要な場合はDronyアプリが便利
- Wi-Fiごとに個別設定が必要
- 設定後は接続テストで確認
- 不要になったら必ず解除
設定方法の選び方
- 認証不要のWi-Fi→標準設定で十分
- 認証が必要→Dronyアプリを使う
- モバイル回線→APN設定(認証不要の場合のみ)
重要な注意点
- プロキシ情報(ホスト名、ポート、認証情報)は管理者に確認
- 不明なプロキシサーバーは使わない
- 家庭のWi-Fiでは通常設定不要
- トラブル時は管理者に相談
プロキシ設定は、正しく行えば安全で便利な機能です。
会社や学校のネットワークで必要な場合は、管理者から提供される情報をもとに、この記事の手順に従って設定してください。
認証が必要な場合は、Dronyアプリを使うことで、Androidでも問題なくプロキシ認証が利用できます。
設定後にインターネットに接続できない場合は、入力した情報に間違いがないか、もう一度確認してみましょう。


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