Androidコードネーム: お菓子の名前で辿るAndroidの歴史

プログラミング・IT

「Cupcake」「KitKat」「Oreo」…これらはすべて、Androidのバージョンに付けられたコードネームです。Androidには、各バージョンにアルファベット順のお菓子の名前が付けられるという、ユニークで楽しい伝統がありました。

今回は、Android 1.0から最新バージョンまで、歴代のコードネームを完全網羅し、その由来や歴史、そして2019年に起きた大きな転換点について詳しく解説していきます。

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Androidコードネームとは

基本的な定義

Androidコードネームとは、Androidの各バージョンに付けられる開発コード名のことです。

特徴:

  • 基本的にお菓子(デザート)の名前
  • アルファベット順に命名
  • 親しみやすく覚えやすい

コードネームの目的

なぜお菓子の名前?

  1. 覚えやすさ: バージョン番号より親しみやすい
  2. 楽しさ: ユーザーに楽しいイメージを与える
  3. 開発者の遊び心: Googleのカジュアルな企業文化を反映

誰が決めているのか

コードネームはGoogleのエンジニアチームが決定しています。

特に、GoogleエンジニアのBrian Swetlandが2009年に、お菓子の名前を使うことを提唱したのが始まりとされています。

コードネームの命名ルール

アルファベット順の原則

Android 1.5 Cupcake(C)から始まり、順番に:

  • C → D → E → F → G → H → I → J → K → L → M → N → O → P…

と進んでいきます。

なぜCから?

疑問: 最初はAやBではないの?

答え: Android 1.0と1.1には公式コードネームが付けられませんでした。お菓子のコードネームをつける習慣が始まったのが1.5からだったため、3番目のアルファベットである「C」から開始されました。

1.0と1.1のコードネーム:

  • Android 1.0: なし(社内では「Astro Boy」「Petit Four」)
  • Android 1.1: なし(社内では「Petit Four」)
  • Android 1.5: Cupcake(C)← ここから公式にスタート

Androidロボットも変身!

各バージョンのコードネームに合わせて、Androidのマスコットロボット(ドロイド君)が、そのお菓子に扮した姿になります。

例:

  • Cupcake版: カップケーキの格好
  • Donut版: ドーナツの格好
  • KitKat版: KitKatチョコの格好

歴代コードネーム完全一覧

Android 1.0 〜 1.1(2008年)

Android 1.0(2008年9月23日)

  • コードネーム: なし
  • APIレベル: 1
  • 特徴: 最初のAndroid OS、最初の端末HTC Dreamに搭載

Android 1.1(2009年2月9日)

  • コードネーム: なし(内部的には「Petit Four」)
  • APIレベル: 2
  • 特徴: マイナーアップデート

Android 1.5 Cupcake(2009年)

コードネーム: Cupcake(カップケーキ)

  • リリース: 2009年4月27日
  • APIレベル: 3
  • 由来: カップケーキ(アメリカの小さなケーキ)

主な新機能:

  • 仮想キーボード
  • 動画撮影・再生機能
  • ウィジェット機能
  • コピー&ペースト
  • 韓国語サポート開始

意義: お菓子のコードネームが始まった記念すべきバージョン

Android 1.6 Donut(2009年)

コードネーム: Donut(ドーナツ)

  • リリース: 2009年9月15日
  • APIレベル: 4

主な新機能:

  • 複数画面サイズのサポート
  • 音声・テキスト検索の統合
  • CDMAネットワークサポート

Android 2.0 〜 2.1 Eclair(2009年)

コードネーム: Eclair(エクレア)

  • リリース: 2009年10月26日(2.0)、2010年1月12日(2.1)
  • APIレベル: 5〜7
  • 由来: エクレア(フランスの洋菓子)

主な新機能:

  • Googleマップにナビ機能搭載(カーナビとして使用可能に)
  • Bluetooth 2.1サポート
  • ライブ壁紙
  • マルチタッチサポート

意義: 初めてAndroidがカーナビとして実用化

Android 2.2 Froyo(2010年)

コードネーム: Froyo(フローズンヨーグルト)

  • リリース: 2010年5月20日
  • APIレベル: 8
  • 由来: Frozen Yogurtの略

主な新機能:

  • NFC(近距離無線通信)サポート(おサイフケータイ機能)
  • USBテザリング
  • パフォーマンス向上(JITコンパイラ)

Android 2.3 Gingerbread(2010年)

コードネーム: Gingerbread(ジンジャーブレッド)

  • リリース: 2010年12月6日
  • APIレベル: 9〜10
  • 由来: ジンジャーブレッド(生姜を使った洋菓子)

主な新機能:

  • UIの改善
  • 電源管理の強化
  • 前面カメラサポート
  • NFC機能の拡充

Android 3.0 〜 3.2 Honeycomb(2011年)

コードネーム: Honeycomb(ハニカム)

  • リリース: 2011年2月22日
  • APIレベル: 11〜13
  • 由来: 蜂の巣型のシリアル食品

特徴:

  • タブレット専用バージョン
  • スマートフォンには非対応
  • ソースコードが当初非公開

主な新機能:

  • タブレット最適化UI
  • システムバーの導入
  • マルチタスク改善

Android 4.0 Ice Cream Sandwich(2011年)

コードネーム: Ice Cream Sandwich(アイスクリームサンドイッチ)

  • リリース: 2011年10月18日
  • APIレベル: 14〜15
  • 由来: アイスクリームをクッキーで挟んだお菓子

意義: スマートフォンとタブレットの統合

主な新機能:

  • スマホとタブレットのUI統合
  • 顔認証ロック解除
  • データ使用量の管理
  • スクリーンショット機能(電源+音量下)

Android 4.1 〜 4.3 Jelly Bean(2012年)

コードネーム: Jelly Bean(ジェリービーン)

  • リリース: 2012年7月9日〜2013年7月24日
  • APIレベル: 16〜18
  • 由来: アメリカの砂糖菓子

主な新機能:

  • Project Butter(滑らかな動作)
  • Google Now登場
  • 通知機能の拡張
  • マルチユーザーサポート(タブレット)

Android 4.4 KitKat(2013年)

コードネーム: KitKat(キットカット)

  • リリース: 2013年10月31日
  • APIレベル: 19〜20
  • 由来: ネスレのチョコレート菓子「Kit Kat」

特記事項: 初めて商標名を使用!

主な新機能:

  • “OK Google”音声コマンド
  • メモリ512MBでも動作(低スペック端末対応)
  • フルスクリーン没入モード
  • 印刷フレームワーク

裏話: 当初は「Key Lime Pie」の予定だったが、Nestléとのコラボでキットカットに変更

Android 5.0 〜 5.1 Lollipop(2014年)

コードネーム: Lollipop(ロリポップ)

  • リリース: 2014年11月12日
  • APIレベル: 21〜22
  • 由来: 棒付きキャンディ

主な新機能:

  • Material Design導入(デザイン大刷新)
  • 64bitサポート開始
  • バッテリーセーバーモード
  • 複数ユーザーサポート(スマホでも)

意義: Androidデザインの大転換点

Android 6.0 Marshmallow(2015年)

コードネーム: Marshmallow(マシュマロ)

  • リリース: 2015年10月5日
  • APIレベル: 23
  • 由来: マシュマロ(ふわふわのお菓子)

主な新機能:

  • アプリ権限の細分化(個別に許可・拒否可能)
  • Google Now on Tap
  • 指紋認証API
  • Doze(スリープ時の省電力)

Android 7.0 〜 7.1 Nougat(2016年)

コードネーム: Nougat(ヌガー)

  • リリース: 2016年8月22日
  • APIレベル: 24〜25
  • 由来: ヌガー(ナッツ入りキャンディ)

主な新機能:

  • マルチウィンドウ(画面分割)
  • 通知のカスタマイズ強化
  • データセーバー
  • Vulkan APIサポート

Android 8.0 〜 8.1 Oreo(2017年)

コードネーム: Oreo(オレオ)

  • リリース: 2017年8月21日
  • APIレベル: 26〜27
  • 由来: ナビスコのクッキー菓子「Oreo」

特記事項: 2度目の商標名使用

主な新機能:

  • ピクチャー・イン・ピクチャー(動画を見ながら他の作業)
  • 通知ドット
  • オートフィル機能
  • バックグラウンド制限強化

Android 9 Pie(2018年)

コードネーム: Pie(パイ)

  • リリース: 2018年8月6日
  • APIレベル: 28
  • 由来: パイ(デザート)

主な新機能:

  • ジェスチャーナビゲーション
  • Adaptive Battery(AI学習による電池最適化)
  • デジタルウェルビーイング
  • 屋内位置測位の精度向上(RTT)

意義: お菓子コードネームの公式使用の最後のバージョン

Android 10以降: コードネームの転換点

2019年の大きな変更

Android 9 Pieまで続いてきたお菓子のコードネームが、Android 10で廃止されました。

理由:

  1. 国際化への配慮: 一部のお菓子は特定地域でしか知られていない
  2. 分かりやすさ: バージョン番号の方が明確
  3. アクセシビリティ: 色覚障害者にも見やすいロゴ・デザインへ変更

Android 10(2019年)

コードネーム: なし(公式には単に「Android 10」)

  • 内部コードネーム: Quince Tart(キンス・タルト)
  • リリース: 2019年9月3日
  • APIレベル: 29

主な新機能:

  • ダークテーマ
  • ジェスチャーナビゲーション拡充
  • プライバシー機能強化

Android 11(2020年)

コードネーム: なし(公式)

  • 内部コードネーム: Red Velvet Cake(レッドベルベットケーキ)
  • リリース: 2020年9月8日
  • APIレベル: 30

主な新機能:

  • 会話通知
  • バブル通知
  • 画面録画機能

Android 12(2021年)

コードネーム: なし(公式)

  • 内部コードネーム: Snow Cone(スノーコーン)
  • リリース: 2021年10月4日
  • APIレベル: 31

主な新機能:

  • Material You(大規模デザイン刷新)
  • プライバシーダッシュボード

Android 13(2022年)

コードネーム: Tiramisu(ティラミス)

  • リリース: 2022年8月15日
  • APIレベル: 33

変更点: 開発者向けに再びコードネームが公開されるようになった

主な新機能:

  • テーマカラーアイコン
  • アプリごとの言語設定

Android 14(2023年)

コードネーム: Upside Down Cake(アップサイドダウンケーキ)

  • リリース: 2023年10月4日
  • APIレベル: 34

主な新機能:

  • 超広帯域無線(UWB)サポート強化
  • 健康フィットネス権限

Android 15(2024年)

コードネーム: Vanilla Ice Cream(バニラアイスクリーム)

  • リリース: 2024年10月15日
  • APIレベル: 35

主な新機能:

  • プライバシーサンドボックス
  • 衛星通信サポート

Android 16(2025年)

コードネーム: Baklava(バクラヴァ)

  • 予定リリース: 2025年第2四半期
  • APIレベル: 36(予定)
  • 由来: トルコ・中東の層状ペストリー菓子

特記事項:

  • 2025年から年2回リリース体制に変更
  • 通常より早いリリース(従来は8〜10月、今回はQ2)

Bで始まるコードネーム: 初めて「B」で始まるコードネームが採用された(1.0、1.1をスキップしたため)

コードネームの変遷まとめ表

バージョンコードネーム意味リリース年API
1.0なし20081
1.1なし20092
1.5Cupcakeカップケーキ20093
1.6Donutドーナツ20094
2.0/2.1Eclairエクレア2009/20105-7
2.2Froyoフローズンヨーグルト20108
2.3Gingerbreadジンジャーブレッド20109-10
3.0-3.2Honeycombハニカム201111-13
4.0Ice Cream Sandwichアイスクリームサンドイッチ201114-15
4.1-4.3Jelly Beanジェリービーン2012-201316-18
4.4KitKatキットカット201319-20
5.0/5.1Lollipopロリポップ201421-22
6.0Marshmallowマシュマロ201523
7.0/7.1Nougatヌガー201624-25
8.0/8.1Oreoオレオ201726-27
9Pieパイ201828
10(Quince Tart)キンス・タルト201929
11(Red Velvet Cake)レッドベルベットケーキ202030
12(Snow Cone)スノーコーン202131-32
13Tiramisuティラミス202233
14Upside Down Cakeアップサイドダウンケーキ202334
15Vanilla Ice Creamバニラアイスクリーム202435
16Baklavaバクラヴァ202536

※10〜12のコードネームはGoogle内部のみで使用、公式には非公開

イースターエッグ: 隠された楽しみ

イースターエッグとは

Androidには、各バージョンに隠し機能(イースターエッグ)が用意されています。

表示方法

手順:

  1. 「設定」を開く
  2. 「デバイス情報」または「端末情報」をタップ
  3. 「Androidバージョン」を7回連続でタップ
  4. 隠し画面が表示される!

歴代のイースターエッグ例

Gingerbread: ゾンビジンジャーブレッド人形
Jelly Bean: ジェリービーンが飛び回る
KitKat: KitKatのロゴがクルクル回る
Lollipop: Flappy Bird風ゲーム
Marshmallow: Flappy Bird風ゲーム(改良版)
Nougat: 猫集めゲーム「Android Neko」
Oreo: タコが泳ぐ
Pie: 文字がカラフルに回転

ぜひ自分の端末で試してみてください!

コードネームにまつわるトリビア

1. KitKatの裏話

Android 4.4は当初「Key Lime Pie(キーライムパイ)」になる予定でした。

しかし、Googleがネスレと提携し、チョコレート菓子「Kit Kat」をコードネームに採用。初めて商標名が使われた歴史的バージョンになりました。

2. 候補になったが選ばれなかったお菓子

Nで始まるお菓子の候補:

  • Nutella(ヌテラ)
  • New York Cheesecake
  • Neapolitan(ナポリタンアイス)

最終的に「Nougat」が選ばれました。

3. 地域による知名度の差

例えば「Nougat(ヌガー)」は、欧米では一般的なお菓子ですが、日本ではあまり馴染みがありません。

このような国際化の問題が、Android 10でのコードネーム廃止の一因となりました。

4. なぜOの次がPなのか?

Android 9は「Pie」ですが、実はGoogle内部では最初「Pistachio Ice Cream(ピスタチオアイスクリーム)」が候補だったとされています。

5. Androidロボットの秘密

Androidのマスコットロボットは、デザイナーのIrina Blokが「トイレのピクトグラム」からインスピレーションを得てデザインしたと言われています。

APIレベルとの関係

APIレベルとは

APIレベルは、Androidプラットフォームが提供するAPIのバージョンを示す整数値です。

コードネームとの対応

  • Cupcake = API 3
  • Donut = API 4
  • KitKat = API 19-20
  • Oreo = API 26-27

開発者は、このAPIレベルを指定してアプリを開発します。

重要性

古いAPIレベルのアプリは:

  • 新しいAndroid端末で表示されない可能性
  • セキュリティリスク
  • 新機能が使えない

定期的なアップデートが重要です。

まとめ: Androidコードネームの意義

Androidコードネームについて、重要なポイントをまとめます。

歴史と変遷:

  • 2009年Android 1.5 Cupcakeから開始
  • 2018年Android 9 Pieまで公式使用
  • 2019年Android 10で廃止(内部では継続)
  • 2022年Android 13から開発者向けに再公開

命名ルール:

  • アルファベット順(C〜)
  • お菓子・デザートの名前
  • 親しみやすく覚えやすい

特別なバージョン:

  • KitKat、Oreo: 商標名使用
  • Honeycomb: タブレット専用
  • Lollipop: Material Design導入
  • Pie: お菓子名公式使用の最後

現在の状況:

  • 公式には単にバージョン番号
  • 内部コードネームは継続
  • Android 13以降は開発者向けに公開
  • Android 16で初めてBから始まるコードネーム

楽しみ方:

  • イースターエッグを探す
  • コードネームの由来を調べる
  • Androidロボットの変身を楽しむ

Androidのコードネームは、単なる開発用の記号ではなく、Googleの遊び心とユーザーへの配慮が込められた、Android文化の重要な一部です。お菓子の名前という親しみやすい命名により、技術的なバージョン番号よりもずっと覚えやすく、愛着が湧くものになっています。

次のAndroid 17のコードネームは、おそらく「C」で始まるお菓子になるでしょう。どんな名前になるのか、今から楽しみですね!

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