スマホで歩数を記録したり、スマートウォッチで睡眠を測定したり、健康管理アプリで体重を記録したり…。健康データを管理するアプリはたくさんありますが、それぞれバラバラで不便だと感じたことはありませんか?
そんな悩みを解決するのが、Androidの「ヘルスコネクト(Health Connect)」です。
この記事では、ヘルスコネクトとは何か、どんなメリットがあるのか、使い方、対応アプリ、そしてGoogle Fitとの違いまで、わかりやすく解説していきます。
ヘルスコネクトとは?
まず、ヘルスコネクトの基本から理解していきましょう。
ヘルスコネクトの定義
ヘルスコネクト(Health Connect by Android)は、Googleが提供する健康データを一元管理するためのAndroid OSの機能です。
簡単に言うと、複数の健康・フィットネスアプリが、お互いにデータを共有できるようにする「ハブ(中継地点)」のような役割を果たします。
具体例で考えてみましょう
- Aというアプリで歩数を記録
- Bというアプリで睡眠を記録
- Cというアプリで体重を記録
従来は、それぞれのアプリで別々に管理していましたが、ヘルスコネクトがあれば、これらのデータを一箇所にまとめて、必要なアプリから自由にアクセスできるようになります。
iOSのHealthKitに相当
iPhoneユーザーなら「ヘルスケア」アプリをご存知かもしれません。ヘルスコネクトは、まさにAndroid版のHealthKitと言えます。
重要な特徴:データはクラウドではなくデバイス内に
ここが重要なポイントです。ヘルスコネクトのデータはクラウド(インターネット上のサーバー)には保存されず、スマホ内にのみ保存されます。
これにより、プライバシーがしっかり保護されます。
ヘルスコネクトの歴史と現状
ヘルスコネクトがどのように登場したのか、時系列で見ていきましょう。
2022年:ヘルスコネクト発表
Googleは2022年に、健康データを統合するための新しいプラットフォームとしてヘルスコネクトを発表しました。
同時に、従来のGoogle Fit Android APIを廃止する方針も発表されました。
2022年11月:Google Playでリリース
2022年11月11日、ヘルスコネクトアプリがGoogle Playストアで一般公開されました。
Android 13以前の端末では、このアプリをインストールする必要がありました。
2023年4月:日本でもサービス開始
2023年4月、日本でもヘルスコネクトのサービスが正式に開始されました。
日本の初期ローンチパートナー(6社)
- WEBGYM(フィットネス)
- あすけん(食事管理)
- Google Fit
- Fitbit
- その他健康管理アプリ
2024年:Android 14でシステムに統合
Android 14以降では、ヘルスコネクトがAndroid OSの一部として標準搭載されるようになりました。
つまり、Android 14以降の端末では、最初からヘルスコネクトが使えるようになっています(アンインストールはできません)。
2025年6月:Google Fit API完全廃止
2025年6月30日をもって、Google Fit APIが完全に廃止されました。
今後は、ヘルスコネクトが健康データ連携の標準となります。
ヘルスコネクトとGoogle Fitの違い
「Google Fitとヘルスコネクトって何が違うの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
Google Fitとは
Google Fitは、2014年にリリースされたフィットネストラッキングアプリです。
主な機能
- 歩数カウント
- 目標設定
- 運動記録
- 心拍数、睡眠、体重などの記録
Google Fitアプリ自体は、Android版もiOS版もあります。
ヘルスコネクトとは
一方、ヘルスコネクトはアプリそのものではなく、アプリ間でデータを共有するための仕組み(API)です。
重要な違い
| 項目 | Google Fit | ヘルスコネクト |
|---|---|---|
| 性質 | フィットネスアプリ | データ連携プラットフォーム |
| 役割 | データを記録・表示 | アプリ間でデータを共有 |
| データ保存場所 | Googleアカウント(クラウド) | デバイス内(ローカル) |
| API状況 | 2025年6月30日に廃止 | 現在の標準 |
結論:併用も可能
Google Fitアプリは今後も使い続けられます。ただし、裏側ではGoogle Fit APIではなく、ヘルスコネクトを使ってデータをやり取りするようになります。
つまり、「Google Fitアプリ」は健康データを見るための窓口として機能し、「ヘルスコネクト」がその裏でデータを管理する、という関係です。
ヘルスコネクトのメリット
ヘルスコネクトを使うと、どんな良いことがあるのでしょうか?
1. 複数のアプリのデータを一箇所に集約
従来は、アプリごとにバラバラに管理されていた健康データを、一箇所にまとめられます。
例
- Fitbitで睡眠を記録
- Stravaでランニングを記録
- MyFitnessPalで食事を記録
→ これらすべてのデータをヘルスコネクトで一元管理
2. アプリ間のデータ共有が簡単
ヘルスコネクトに一度接続すれば、対応しているすべてのアプリからデータにアクセスできます。
具体例
- スマートウォッチで測定した心拍数
- 体重計アプリで記録した体重
- 睡眠記録アプリで測定した睡眠時間
→ これらすべてを健康管理アプリで一覧表示
3. プライバシーが守られる
データはデバイス内にのみ保存され、クラウドにアップロードされません。
また、どのアプリがどのデータにアクセスできるかを、ユーザー自身が完全にコントロールできます。
4. Googleアカウント不要
ヘルスコネクトはAndroid OSの機能なので、Googleアカウントがなくても利用できます。
5. 開発者にとっても便利
アプリ開発者は、ヘルスコネクトに一度対応すれば、他のすべての対応アプリとデータを連携できるようになります。
個別に連携を開発する必要がないため、開発コストが大幅に削減されます。
ヘルスコネクトで扱えるデータの種類
ヘルスコネクトは、50種類以上のデータ型をサポートしています。
6つの主要カテゴリー
データは以下の6つのカテゴリーに分類されます:
1. アクティビティ(Activity)
- 歩数
- 距離
- 消費カロリー
- エクササイズセッション
- GPSルート
- 自転車のペダル回転数
- スピード
2. 睡眠(Sleep)
- 睡眠時間
- 睡眠の段階(浅い睡眠、深い睡眠、レム睡眠など7段階)
- 覚醒時間
3. 栄養(Nutrition)
- カロリー摂取量
- たんぱく質、炭水化物、脂質
- ビタミン、ミネラル
- 水分摂取量
4. 身体測定値(Body Measurements)
- 体重
- 身長
- BMI(体格指数)
- 体脂肪率
- 筋肉量
- 骨量
5. バイタル(Vitals)
- 心拍数
- 血圧
- 体温(皮膚温度)
- 血中酸素濃度
- 呼吸数
- 安静時心拍数
6. ウィメンズヘルス(Women’s Health)
- 月経周期
- 排卵日
- 性的活動
- 妊娠記録
2024-2025年の新機能
マインドフルネス(Mindfulness)
ストレスや不安など、メンタルヘルスのデータも測定・記録できるようになりました。
医療記録(Medical Records)
Android 16以降では、予防接種記録などの医療データもFHIR形式でサポートされるようになりました。
皮膚温度(Skin Temperature)
睡眠の質、生殖健康、病気の兆候を検出するための皮膚温度データをサポート。
バックグラウンド読み取り
アプリがバックグラウンドで実行中でも、ヘルスコネクトからデータを読み取れるようになりました。
履歴データへのアクセス
従来は過去30日分のみでしたが、ユーザーの許可があれば全履歴にアクセス可能になりました。
ヘルスコネクトの対応条件
ヘルスコネクトを使うには、いくつか条件があります。
必要なOS
Android 9(Pie)以降が必要です。
ただし、バージョンによって使い方が異なります:
- Android 14以降: 最初からシステムに組み込まれている
- Android 13以前: Google Playストアからアプリをインストールする必要がある
アクセス方法
Android 14以降の場合
- 「設定」アプリを開く
- 「セキュリティとプライバシー」をタップ
- 「プライバシー」をタップ
- 「ヘルスコネクト」をタップ
または、クイック設定パネル(画面上部から下にスワイプ)からもアクセスできます。
Android 13以前の場合
- Google Playストアで「ヘルスコネクト」を検索
- アプリをインストール
- 「設定」→「アプリ」→「ヘルスコネクト」からアクセス
注意点
- 仕事用プロファイルがある端末ではサポートされていません
- Google Play開発者サービスがインストールされている必要があります
ヘルスコネクトの使い方
実際にヘルスコネクトを使う手順を見ていきましょう。
初期設定
ステップ1:ヘルスコネクトを開く
Android 14以降なら設定アプリから、Android 13以前ならアプリ一覧から「ヘルスコネクト」を開きます。
ステップ2:アプリとの連携を許可する
ヘルスコネクトを開くと、「アプリのアクセス許可」という画面が表示されます。
ここで、どのアプリがどのデータにアクセスできるかを設定します。
データを共有する設定
例:Google FitとFitbitを連携させる
- ヘルスコネクトを開く
- 「アプリのアクセス許可」をタップ
- 「Google Fit」をタップ
- 共有したいデータ(歩数、心拍数など)を選択
- 「許可」をタップ
- 同じ手順で「Fitbit」も設定
これで、Google FitとFitbitの間でデータが自動的に同期されるようになります。
データの確認方法
ヘルスコネクトアプリ内で、記録されているデータを確認できます。
- ヘルスコネクトを開く
- 「データとアクセス」をタップ
- 見たいデータのカテゴリー(歩数、睡眠など)を選択
アクセス許可の変更・削除
後からアクセス許可を変更したり、削除したりすることも簡単です。
- ヘルスコネクトを開く
- 「アプリのアクセス許可」をタップ
- 変更したいアプリを選択
- データの種類ごとに許可/不許可を切り替え
または、アプリのアクセスを完全に削除することもできます。
主要な対応アプリ
ヘルスコネクトに対応しているアプリをご紹介します。
フィットネス・運動系
- Google Fit: Googleの総合フィットネスアプリ
- Fitbit: Fitbitデバイスとの連携
- Strava: ランニング・サイクリング記録
- Peloton: フィットネスバイク連携
- Samsung Health: Samsungの健康管理アプリ
- WEBGYM: 東急スポーツオアシスのフィットネスアプリ
栄養・食事管理系
- MyFitnessPal: カロリー・栄養管理
- あすけん: 日本の食事管理アプリ
- Lifesum: 食事とライフスタイル管理
睡眠・健康管理系
- Sleep as Android: 睡眠トラッキング
- Health Diary: 総合健康管理
- Oura: Ouraリングとの連携
- Withings: Withingsデバイス連携
ポイ活・歩数アプリ系
- クラシルリワード: 歩数でポイントが貯まる
- トリマ: 移動でポイントが貯まる
- その他多数の歩数ポイ活アプリ
よくある問題と解決方法
ヘルスコネクトを使っていて、よくある問題と対処法をまとめました。
歩数が自動で連携されない
原因
- アプリの設定が正しくない
- バックグラウンド実行が許可されていない
- データの同期タイミングの問題
解決方法
- スマホの設定→アプリ→ヘルスコネクト→連携したいアプリを開く
- これを何度か繰り返す
- 各アプリのバックグラウンド実行を許可する
- スマホを再起動してみる
歩数の計測がおかしい(多すぎる/少なすぎる)
原因
複数のアプリが同時に歩数を計測していると、重複カウントやカウント漏れが発生することがあります。
解決方法
- どのアプリをメインの歩数計測アプリにするか決める
- 他のアプリの歩数計測機能をオフにする
- ヘルスコネクトの設定で、歩数データの「書き込み」を許可するアプリを1つに絞る
アプリ一覧にヘルスコネクトが表示されない
原因
Android 13以前の端末では、ヘルスコネクトは通常のアプリ一覧に表示されません。
解決方法
- 「設定」→「アプリ」→「ヘルスコネクト」から探す
- または、クイック設定パネル(画面上部から下にスワイプ)から探す
データが他のアプリと同期されない
解決方法
- 両方のアプリでヘルスコネクトの連携設定を確認
- 読み取り/書き込みの両方を許可しているか確認
- アプリを最新版にアップデート
- ヘルスコネクトアプリ自体も最新版にアップデート
ヘルスコネクトのプライバシーとセキュリティ
健康データは非常にセンシティブな個人情報です。ヘルスコネクトはどのようにプライバシーを守っているのでしょうか?
ユーザーが完全にコントロール
- どのアプリがアクセスできるか、ユーザー自身が決定
- データの種類ごとに個別に許可/不許可を設定可能
- いつでも許可を取り消せる
データはデバイス内に保存
クラウドにアップロードされないため、Googleや第三者がデータを見ることはできません。
アクセス履歴の確認
どのアプリがいつデータにアクセスしたか、履歴を確認できます。
アプリ開発者への厳格な要件
Google Playでは、ヘルスコネクトを使うアプリに対して厳格な審査を行っています。
2025年3月の方針更新
- より詳細な利用目的の説明が必要
- プライバシーポリシーの明示
- データの不正利用を防ぐための厳格な審査
ヘルスコネクトの今後
Googleは、ヘルスコネクトをさらに進化させる計画を発表しています。
すでに発表されている機能
Recording API(近日公開予定)
モバイルでも歩数、距離、消費カロリーを直接記録できるAPIが提供されます。
- Googleアカウント不要
- バッテリー消費が少ない
- センサーマネージャーより効率的
医療データとの統合
Android 16以降では、予防接種記録などの医療データもサポート。
将来的には、電子カルテとの連携も視野に入れています。
より多くのデータ型
今後も、サポートするデータ型が増え続ける予定です。
よくある質問
Q1: ヘルスコネクトは無料ですか?
はい、完全無料です。Android OSの標準機能なので、追加費用は一切かかりません。
Q2: iPhoneでも使えますか?
いいえ、ヘルスコネクトはAndroid専用です。iPhoneには「ヘルスケア」という同様の機能があります。
Q3: データは勝手に共有されませんか?
いいえ、ユーザーが明示的に許可しない限り、データが共有されることはありません。
Q4: 古いAndroid端末でも使えますか?
Android 9以降であれば使用できます。ただし、Android 8以前は対応していません。
Q5: ヘルスコネクトをアンインストールできますか?
Android 14以降の端末では、システムの一部なのでアンインストールはできません。ただし、「無効化」することは可能です。
Android 13以前の場合は、Google Playからインストールしたアプリなので、通常通りアンインストールできます。
Q6: Google Fitは今後使えなくなりますか?
Google Fitアプリ自体は今後も使い続けられます。ただし、裏側の技術がGoogle Fit APIからヘルスコネクトに変わるだけです。
Q7: 複数のデバイスでデータを同期できますか?
ヘルスコネクトのデータはデバイス内にのみ保存されるため、複数デバイス間での直接同期はできません。
ただし、Google FitやFitbitなどのクラウド同期機能を持つアプリを経由すれば、間接的に同期できます。
まとめ:ヘルスコネクトで健康管理をもっと便利に
ヘルスコネクトについて、ここまでの内容をまとめます。
重要なポイント
- ヘルスコネクトは健康データを一元管理するAndroidの標準機能
- 複数のアプリのデータを一箇所に集約できる
- データはデバイス内に保存され、プライバシーが守られる
- Android 14以降は最初から組み込まれている
- Google Fit APIの後継で、今後の標準となる
こんな人におすすめ
- 複数の健康・フィットネスアプリを使っている人
- スマートウォッチやフィットネストラッカーを使っている人
- 健康データを一箇所で管理したい人
- プライバシーを重視する人
始め方
- Android 14以降なら設定から「ヘルスコネクト」を開く
- Android 13以前ならGoogle Playからアプリをインストール
- 使っている健康・フィットネスアプリと連携
- 共有したいデータを選択して許可
ヘルスコネクトを使えば、バラバラだった健康データを統合して、より効果的な健康管理ができるようになります。
まずは設定画面からヘルスコネクトを開いて、普段使っているアプリと連携してみましょう!

コメント