サーバーを運用していると、「このAlmaLinux、バージョンいくつだっけ?」と確認したくなる場面がよくあります。
ソフトウェアのインストールやトラブルシューティング、セキュリティアップデートの適用など、バージョン情報が必要になるケースは多いものです。
実はAlmaLinuxのバージョンを確認する方法は一つではなく、いくつかのコマンドが用意されています。
今回は、AlmaLinuxのバージョン確認に使える様々なコマンドと、それぞれの使い分けを初心者の方にも分かりやすく解説していきますね。
AlmaLinuxとは
CentOSの後継として登場したディストリビューション
AlmaLinux(アルマリナックス)は、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)と互換性のある無料のLinuxディストリビューションです。
2021年に登場し、CentOSの代替として注目を集めました。
誕生の背景
2020年、Red Hatは「CentOS 8のサポートを2029年から2021年末に短縮する」という衝撃的な発表を行いました。
多くの企業やユーザーが困る中、CloudLinux社が立ち上げたのがAlmaLinuxです。
AlmaLinuxの特徴:
- RHEL 1:1バイナリ互換
- 無料で使用できる
- コミュニティ主導の開発
- 企業のバックアップあり
- 長期サポート(各バージョン10年間)
主なバージョン
AlmaLinux 8系:
- 2021年3月リリース
- RHEL 8互換
- 2029年までサポート
AlmaLinux 9系:
- 2022年5月リリース
- RHEL 9互換
- 2032年までサポート
現在は、これらのバージョンが並行して使われています。
なぜバージョン確認が必要なのか
ソフトウェアの互換性確認
インストールしたいソフトウェアが、使用中のAlmaLinuxバージョンに対応しているか確認する必要があります。
例:
- Docker:AlmaLinux 8以降が必要
- PostgreSQL 15:AlmaLinux 8.5以降推奨
バージョンが古いと、インストールに失敗したり、正常に動作しなかったりすることがあります。
セキュリティアップデートの適用
セキュリティパッチを適用する際、現在のバージョンを把握しておく必要があります。
古いバージョンを使い続けると、脆弱性が残ったままになる危険性があるんです。
トラブルシューティング
問題が発生した時、サポートフォーラムやドキュメントを参照する際、バージョン情報が必須になります。
「AlmaLinux 8.7で○○のエラーが出る」というように、具体的に報告する必要がありますね。
システム移行の計画
サーバーのアップグレードや移行を計画する際、現在のバージョンを正確に把握することが出発点になります。
基本的なバージョン確認コマンド
cat /etc/os-release(推奨)
最も標準的で詳細な情報が得られるコマンドです。
実行方法:
cat /etc/os-release
出力例:
NAME="AlmaLinux"
VERSION="8.9 (Midnight Oncilla)"
ID="almalinux"
ID_LIKE="rhel centos fedora"
VERSION_ID="8.9"
PLATFORM_ID="platform:el8"
PRETTY_NAME="AlmaLinux 8.9 (Midnight Oncilla)"
ANSI_COLOR="0;34"
LOGO="fedora-logo-icon"
CPE_NAME="cpe:/o:almalinux:almalinux:8::baseos"
HOME_URL="https://almalinux.org/"
DOCUMENTATION_URL="https://wiki.almalinux.org/"
BUG_REPORT_URL="https://bugs.almalinux.org/"
ALMALINUX_MANTISBT_PROJECT="AlmaLinux-8"
ALMALINUX_MANTISBT_PROJECT_VERSION="8.9"
REDHAT_SUPPORT_PRODUCT="AlmaLinux"
REDHAT_SUPPORT_PRODUCT_VERSION="8.9"
重要な項目:
- NAME:ディストリビューション名
- VERSION:バージョン番号とコードネーム
- VERSION_ID:バージョン番号のみ
- PRETTY_NAME:整形された表示名
cat /etc/redhat-release
RHEL系ディストリビューションで使われる伝統的な方法です。
実行方法:
cat /etc/redhat-release
出力例:
AlmaLinux release 8.9 (Midnight Oncilla)
シンプルで見やすい出力が得られます。
cat /etc/almalinux-release
AlmaLinux専用のバージョンファイルです。
実行方法:
cat /etc/almalinux-release
出力例:
AlmaLinux release 8.9 (Midnight Oncilla)
内容は/etc/redhat-release
と同じですが、AlmaLinux固有のファイルとして存在します。
hostnamectl
システム全体の情報を表示するコマンドです。
実行方法:
hostnamectl
出力例:
Static hostname: server01
Icon name: computer-vm
Chassis: vm
Machine ID: a1b2c3d4e5f6g7h8i9j0k1l2m3n4o5p6
Boot ID: 9876543210abcdef0123456789abcdef
Virtualization: kvm
Operating System: AlmaLinux 8.9 (Midnight Oncilla)
CPE OS Name: cpe:/o:almalinux:almalinux:8::baseos
Kernel: Linux 4.18.0-513.5.1.el8_9.x86_64
Architecture: x86-64
ホスト名やカーネル情報も同時に確認できて便利です。
rpm -q almalinux-release
RPMパッケージとしてのバージョンを確認します。
実行方法:
rpm -q almalinux-release
出力例:
almalinux-release-8.9-1.el8.x86_64
パッケージの詳細なバージョンとアーキテクチャが分かります。
カーネルバージョンの確認
uname -r
Linuxカーネルのバージョンを確認します。
実行方法:
uname -r
出力例:
4.18.0-513.5.1.el8_9.x86_64
読み方:
4.18.0
:カーネルバージョン513.5.1
:ビルド番号el8_9
:Enterprise Linux 8.9向けx86_64
:64ビットアーキテクチャ
uname -a
より詳細なシステム情報を表示します。
実行方法:
uname -a
出力例:
Linux server01 4.18.0-513.5.1.el8_9.x86_64 #1 SMP Thu Nov 16 10:29:27 EST 2023 x86_64 x86_64 x86_64 GNU/Linux
ホスト名、カーネルバージョン、ビルド日時などが一度に確認できます。
システム情報の詳細確認
lsb_release -a
LSB(Linux Standard Base)情報を表示します。
実行方法:
lsb_release -a
出力例:
LSB Version: :core-4.1-amd64:core-4.1-noarch
Distributor ID: AlmaLinux
Description: AlmaLinux release 8.9 (Midnight Oncilla)
Release: 8.9
Codename: MidnightOncilla
注意:
このコマンドを使うには、redhat-lsb-core
パッケージのインストールが必要です。
インストール方法:
sudo dnf install redhat-lsb-core
/proc/version
カーネルとコンパイラの情報を確認できます。
実行方法:
cat /proc/version
出力例:
Linux version 4.18.0-513.5.1.el8_9.x86_64 (mockbuild@localhost) (gcc version 8.5.0 20210514 (Red Hat 8.5.0-20) (GCC)) #1 SMP Thu Nov 16 10:29:27 EST 2023
コンパイル環境やビルド日時の詳細が分かります。
マイナーバージョンの確認
dnf –releasever
現在のリリースバージョンを確認します。
実行方法:
dnf config-manager --dump | grep releasever
または:
cat /etc/dnf/vars/releasever
出力例:
8.9
rpm -qa | grep almalinux
インストールされているAlmaLinux関連パッケージを確認します。
実行方法:
rpm -qa | grep almalinux
出力例:
almalinux-release-8.9-1.el8.x86_64
almalinux-repos-8.9-1.el8.x86_64
almalinux-logos-84.5-1.el8.x86_64
almalinux-indexhtml-8.9-1.el8.noarch
複数のパッケージバージョンが一覧表示されます。
GUIでのバージョン確認
GNOME環境の場合
デスクトップ環境が入っている場合、GUIでも確認できます。
手順:
- 画面右上の電源アイコンをクリック
- 設定アイコン(歯車マーク)をクリック
- 「詳細」または「このシステムについて」を選択
- バージョン情報が表示されます
Cockpit(Web管理画面)
Cockpitは、ブラウザから操作できるサーバー管理ツールです。
アクセス方法:
- ブラウザで
https://サーバーIP:9090
にアクセス - ログイン
- ダッシュボードにシステム情報が表示されます
Cockpitのインストール:
sudo dnf install cockpit
sudo systemctl enable --now cockpit.socket
リモートでのバージョン確認
SSH経由での確認
リモートサーバーのバージョンを確認する場合:
ssh ユーザー名@サーバーIP "cat /etc/os-release"
出力例:
NAME="AlmaLinux"
VERSION="8.9 (Midnight Oncilla)"
...
ログインせずに一発で確認できて便利です。
Ansibleでの一括確認
複数サーバーのバージョンを一度に確認したい場合、Ansibleが使えます。
コマンド例:
ansible all -m shell -a "cat /etc/os-release | grep VERSION_ID"
サーバー管理を効率化できますね。
バージョンアップグレードの確認
利用可能なアップデートを確認
現在インストールされているバージョンから、アップデート可能なパッケージを確認します。
実行方法:
sudo dnf check-update
アップデート可能なパッケージがリストアップされます。
マイナーバージョンアップの確認
AlmaLinux 8.8から8.9へのアップグレードが可能か確認:
sudo dnf update --releasever=8.9
実際にアップデートする前に、何が更新されるか確認できます。
メジャーバージョンアップ
AlmaLinux 8から9へのアップグレードは、専用のツールを使います。
ELevate(移行ツール)の使用:
# ELevateプロジェクトのツールを使用
sudo dnf install -y elevate-release
sudo dnf install -y leapp-upgrade leapp-data-almalinux
sudo leapp preupgrade
ただし、メジャーバージョンのアップグレードは慎重に行う必要があります。
実用的な使用例
スクリプトでの利用
シェルスクリプト内でバージョンを判定する例:
#!/bin/bash
VERSION=$(cat /etc/os-release | grep VERSION_ID | cut -d'"' -f2)
if [[ "$VERSION" == "8.9" ]]; then
echo "AlmaLinux 8.9を検出しました"
elif [[ "$VERSION" == "9.3" ]]; then
echo "AlmaLinux 9.3を検出しました"
else
echo "不明なバージョン: $VERSION"
fi
条件分岐での利用
バージョンによって処理を変える:
#!/bin/bash
MAJOR_VERSION=$(cat /etc/os-release | grep VERSION_ID | cut -d'"' -f2 | cut -d'.' -f1)
if [ "$MAJOR_VERSION" -ge 9 ]; then
echo "Python 3.9が利用可能です"
dnf install python39
else
echo "Python 3.6を使用します"
dnf install python36
fi
ログへの記録
システム情報をログファイルに記録:
#!/bin/bash
LOG_FILE="/var/log/system_info.log"
echo "=== System Information ===" >> $LOG_FILE
echo "Date: $(date)" >> $LOG_FILE
cat /etc/os-release >> $LOG_FILE
echo "Kernel: $(uname -r)" >> $LOG_FILE
echo "=========================" >> $LOG_FILE
トラブルシューティング
コマンドが見つからない
lsb_release: command not found
というエラーが出る場合:
解決法:
sudo dnf install redhat-lsb-core
ファイルが存在しない
/etc/os-release: No such file or directory
というエラーが出る場合:
原因:
非常に古いシステムか、ファイルが削除されている。
解決法:
別のコマンドを試す:
cat /etc/redhat-release
権限エラー
一部のコマンドで権限エラーが出る場合:
解決法:sudo
を付けて実行:
sudo cat /etc/os-release
ただし、通常はsudoなしでも読み取り可能です。
よくある質問
AlmaLinuxとRocky Linuxの見分け方は?
両方ともRHEL互換ですが、/etc/os-release
のNAME
フィールドで判別できます。
AlmaLinux:
NAME="AlmaLinux"
Rocky Linux:
NAME="Rocky Linux"
コードネームの意味は?
各バージョンには動物の名前が付けられています。
例:
- AlmaLinux 8.9:Midnight Oncilla(オンシラという小型ネコ科動物)
- AlmaLinux 9.3:Shamrock Pampas Cat(パンパスキャット)
コードネームは識別しやすくするための愛称のようなものです。
バージョン番号の見方は?
例:8.9の場合
- 8:メジャーバージョン(RHEL 8互換)
- 9:マイナーバージョン(マイナーアップデート)
マイナーバージョンは数ヶ月ごとに更新され、セキュリティパッチや新機能が追加されます。
CentOSとバージョンの対応は?
AlmaLinuxのバージョンは、CentOSおよびRHELと以下のように対応します:
- AlmaLinux 8.x ≒ CentOS 8.x ≒ RHEL 8.x
- AlmaLinux 9.x ≒ CentOS Stream 9 ≒ RHEL 9.x
まとめ:用途に応じて最適なコマンドを選ぼう
AlmaLinuxのバージョン確認には、様々なコマンドが用意されています。
この記事のポイント:
- AlmaLinuxはRHEL互換の無料ディストリビューション
- バージョン確認はソフトウェア互換性やセキュリティに必須
cat /etc/os-release
が最も詳細で推奨cat /etc/redhat-release
がシンプルで見やすいhostnamectl
でシステム情報も同時確認uname -r
でカーネルバージョンを確認- GUIやCockpitでも確認可能
- スクリプトで自動化できる
- リモートサーバーもSSHで確認可能
推奨コマンド:
cat /etc/os-release
迷ったら、このコマンドを使っておけば間違いありません。
バージョン情報を正確に把握して、安全で快適なサーバー運用を実現しましょう!
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