AlmaLinuxをインストールしようとしたら、画面が真っ暗になったり、進行バーが途中で止まったり、特定の画面からまったく進まなくなったり…
「何時間待っても変わらない」
「再起動してもまた同じところで止まる」
「エラーメッセージも表示されない」
こんな状況に陥ると、本当に困りますよね。
この記事では、AlmaLinuxのインストールが止まってしまう原因と、その解決方法を初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
AlmaLinux(アルマリナックス)とは
まず、AlmaLinuxについて簡単に説明します。
AlmaLinux は、2021年に登場した比較的新しいLinuxディストリビューション(Linuxの種類)です。
特徴:
- CentOSの後継として開発された
- Red Hat Enterprise Linux(RHEL)と互換性がある
- サーバー用途に最適
- 無料で使える
- 企業での採用が増えている
CentOSが開発方針を変更したことで、多くのサーバー管理者がAlmaLinuxに移行しています。
インストールが止まる主な症状
AlmaLinuxのインストールでよく起こる「止まる」症状をまとめました。
症状1:起動直後に真っ暗な画面で止まる
インストールメディア(USBやDVD)から起動したものの、画面が真っ黒のまま何も表示されない状態です。
表示される可能性がある画面:
- 完全な黒い画面
- カーソル(_)だけが点滅している
- 一瞬ロゴが表示されてから真っ暗になる
症状2:GRUBメニューの後に止まる
起動メニュー(GRUBメニュー)は表示されるけど、「Install AlmaLinux」を選択した後に進まない状態です。
よくあるパターン:
- 「Loading initial ramdisk…」で止まる
- カーネルメッセージが大量に表示されて止まる
- 突然画面が真っ暗になる
症状3:グラフィカルインストーラーが起動しない
テキストメッセージは表示されるけど、GUIのインストーラー画面に移行しない状態です。
症状:
- メッセージが流れた後に止まる
- 「Starting graphical target…」から進まない
- エラーメッセージが繰り返し表示される
症状4:インストーラー画面の途中で止まる
インストーラーは起動したけど、特定の画面や処理で止まってしまう状態です。
よくある場所:
- パッケージのインストール中(0%や特定の%)
- 「ソフトウェアソースを設定中」
- 「インストールの準備中」
- 「システムの設定中」
症状5:再起動後に止まる
インストール自体は完了したように見えるけど、再起動後に起動しない状態です。
症状:
- GRUBメニューが表示されない
- GRUBメニューは出るが起動しない
- 起動途中で止まる
インストールが止まる主な原因
なぜAlmaLinuxのインストールが止まるのか、主な原因を見ていきましょう。
原因1:グラフィックドライバーの問題
最も多い原因がこれです。
AlmaLinuxは、インストール時にグラフィックカードを自動検出して適切なドライバーを読み込もうとします。
しかし:
- NVIDIA製のグラフィックカード
- AMD製の一部のグラフィックカード
- 新しいIntel内蔵グラフィック
これらは、オープンソースのドライバーでは正しく動作しないことがあります。
原因2:UEFIとセキュアブートの問題
最近のパソコンは、UEFI(ユーファイ)という新しいファームウェアを使っています。
UEFIには「セキュアブート」という機能があり、これが有効だとインストールが失敗することがあります。
セキュアブートとは:
署名されていないブートローダーの起動を防ぐセキュリティ機能です。
原因3:ハードウェア互換性の問題
一部のハードウェアが、Linuxカーネルに対応していない場合があります。
問題が起きやすいハードウェア:
- 最新のCPU(カーネルが対応していない)
- 特殊なストレージコントローラー
- RAID構成のディスク
- 一部のワイヤレスデバイス
原因4:メモリの不足または不良
インストールには一定量のRAM(メモリ)が必要です。
推奨メモリ:
- 最小:1.5GB
- 推奨:2GB以上
- グラフィカルインストール:4GB以上
メモリが不足していたり、物理的に故障していたりすると、途中で止まることがあります。
原因5:インストールメディアの問題
USBメモリやDVDが正しく作成されていない、または破損している可能性があります。
よくある問題:
- ISOイメージのダウンロードが不完全
- USBメモリへの書き込みエラー
- USBメモリ自体の故障
- DVDの読み取りエラー
原因6:BIOSの設定問題
BIOS/UEFI設定が適切でない場合も、インストールが失敗します。
チェック項目:
- レガシーBIOSモードとUEFIモードの不一致
- CSM(互換性サポートモジュール)の設定
- 仮想化機能の有効/無効
解決方法1:起動オプションを変更する(最も効果的)
グラフィックドライバーの問題は、起動オプションを追加することで解決できます。
手順:nomodeset オプションを追加
これが最も効果的で簡単な方法です。
操作手順:
- GRUBメニューを表示
- インストールメディアから起動
- 「Install AlmaLinux」の項目を選択(Enterは押さない)
- 編集モードに入る
- キーボードの「e」キーを押す
- 起動パラメータの編集画面が表示される
- 起動オプションを追加
- 「linux」または「linuxefi」で始まる行を探す
- 通常は以下のような行:
linux /images/pxeboot/vmlinuz inst.stage2=hd:LABEL=AlmaLinux-9-x86_64 quiet
- この行の末尾(「quiet」の後)に以下を追加:
nomodeset
- 結果:
linux /images/pxeboot/vmlinuz inst.stage2=hd:LABEL=AlmaLinux-9-x86_64 quiet nomodeset
- 起動する
- Ctrl + X を押す、または F10 を押す
- 変更された設定で起動が開始される
nomodeset の意味:
「グラフィックカードのモード設定を無効にする」という意味で、基本的なVGAモードで起動します。
その他の有効な起動オプション
nomodesettで解決しない場合、以下のオプションも試してみましょう。
nouveau.modeset=0(NVIDIA向け):
linux ... quiet nouveau.modeset=0
NVIDIAのオープンソースドライバー(Nouveau)を無効化します。
radeon.modeset=0(AMD向け):
linux ... quiet radeon.modeset=0
AMDのRadeonドライバーを無効化します。
i915.modeset=0(Intel向け):
linux ... quiet i915.modeset=0
Intel内蔵グラフィックのドライバーを無効化します。
acpi=off(電源管理を無効):
linux ... quiet acpi=off
ACPI(電源管理)を無効にします。古いハードウェアで有効な場合があります。
noapic(割り込み制御を無効):
linux ... quiet noapic
APICを無効化します。一部のマザーボードで効果があります。
複数のオプションを同時に使用:
linux ... quiet nomodeset nouveau.modeset=0
スペースで区切って複数指定できます。
解決方法2:セキュアブートを無効にする
セキュアブートが原因の場合は、BIOS/UEFI設定で無効化します。
セキュアブートの無効化手順
ステップ1:BIOS/UEFI設定に入る
- パソコンを再起動
- 起動直後に特定のキーを連打
- Dell:F2
- HP:F10
- Lenovo:F1またはF2
- ASUS:Del
- Acer:F2
ステップ2:セキュアブートを探す
BIOS/UEFI設定内で以下の場所を探します:
- Boot(起動)タブ
- Security(セキュリティ)タブ
- Advanced(詳細設定)タブ
「Secure Boot」という項目を見つけます。
ステップ3:無効化する
- 「Secure Boot」を選択
- 「Enabled」から「Disabled」に変更
- 場合によっては、管理者パスワードの入力が必要
ステップ4:保存して終了
- F10キーを押す(または画面の指示に従う)
- 「Save and Exit」を選択
- 変更を保存して再起動
注意:
セキュアブートを無効にすると、Windowsとのデュアルブート環境で問題が起きる可能性があります。
解決方法3:テキストモードでインストールする
グラフィカルインストーラーが起動しない場合、テキストモードを使います。
テキストモードインストールの手順
起動オプションの追加:
GRUBメニューで「e」キーを押して編集モードに入り、以下を追加:
linux ... quiet nomodeset inst.text
inst.text が、テキストモードでインストールを開始するオプションです。
テキストモードでの操作
テキストモードは、マウスが使えずキーボードだけで操作します。
基本的な操作方法:
- Tab:次の項目に移動
- 矢印キー:選択肢の移動
- Enter:決定
- スペース:チェックボックスの切り替え
画面の指示に従って進めていけば、GUIと同じようにインストールできます。
解決方法4:最小インストールを選択する
パッケージが多すぎると、インストール中にフリーズすることがあります。
最小インストールの選択方法
インストーラーが起動したら:
- ソフトウェアの選択画面を開く
- 左側のリストから「Minimal Install(最小インストール)」を選択
- インストールを続行
最小インストールなら、必要最小限のパッケージだけがインストールされるため:
- インストール時間が短縮される
- フリーズのリスクが減る
- 後から必要なソフトウェアを追加できる
解決方法5:インストールメディアを作り直す
インストールメディア自体に問題がある可能性もあります。
ISOイメージの再ダウンロード
手順:
- 公式サイトからダウンロード
- AlmaLinux公式サイト(https://almalinux.org/)
- 適切なバージョンとアーキテクチャを選択
- ミラーサイトを選んでダウンロード
- チェックサムを検証
- ダウンロードしたISOファイルが破損していないか確認
- SHA256チェックサムを比較
Windowsでの検証:
certutil -hashfile AlmaLinux-9.x-x86_64-dvd.iso SHA256
Linuxでの検証:
sha256sum AlmaLinux-9.x-x86_64-dvd.iso
公式サイトに記載されているチェックサムと一致すれば、正常です。
USBメモリの再作成
推奨ツール:
- Rufus(Windows)
- balenaEtcher(Windows/Mac/Linux)
- ddコマンド(Linux)
Rufusでの作成手順:
- Rufusを起動
- デバイス:使用するUSBメモリを選択
- ブートの種類:ISOファイルを選択
- パーティション構成:GPTを選択(UEFIの場合)
- スタート
重要:
- USB 3.0対応のメモリを使用
- 容量は8GB以上推奨
- 書き込み前にUSBメモリをフォーマット
解決方法6:ハードウェアをチェックする
ハードウェアに問題がある場合の対処法です。
メモリテストを実行
Memtest86を使用:
- GRUBメニューで「Troubleshooting」を選択
- 「Memory Test」を選択
- テストが完全に終わるまで待つ(数時間かかる場合も)
エラーが検出された場合:
- メモリモジュールを交換
- メモリスロットを変更
- 複数枚ある場合は1枚ずつ試す
ストレージをチェック
不良セクタの確認:
別のLinuxシステム(ライブUSBなど)から起動して:
sudo badblocks -v /dev/sda
(/dev/sdaは対象のディスク)
S.M.A.R.T.情報の確認:
sudo smartctl -a /dev/sda
問題が見つかった場合は、ハードディスクやSSDの交換を検討してください。
BIOSをアップデート
古いBIOSバージョンだと、新しいハードウェアに対応していないことがあります。
手順:
- メーカーの公式サイトにアクセス
- 自分のマザーボードまたはPCモデルを検索
- 最新のBIOSファームウェアをダウンロード
- メーカーの指示に従ってアップデート
注意:
BIOSアップデートは慎重に行ってください。失敗すると起動しなくなります。
解決方法7:代替イメージを試す
AlmaLinuxには複数のインストールイメージがあります。
Boot ISO(ネットワークインストール)
特徴:
- サイズが小さい(約600MB)
- インストール時にパッケージをダウンロード
- 最新のパッケージが取得できる
使用場面:
- DVDイメージで問題がある時
- ネットワーク環境が安定している時
Minimal ISO
特徴:
- 必要最小限のパッケージのみ
- インストールが速い
- 問題が起きにくい
デメリット:
- GUI環境は含まれていない
- 後からパッケージを追加する必要がある
古いバージョンを試す
最新版で問題がある場合、一つ前のメジャーバージョンを試してみます。
例:
- AlmaLinux 9で問題がある → AlmaLinux 8を試す
古いバージョンは、ハードウェア対応が異なる場合があります。
解決方法8:仮想環境でテストする
物理マシンで問題が解決しない場合、まず仮想環境で試してみるのも有効です。
VirtualBoxで試す
メリット:
- ハードウェアの問題を切り分けられる
- 設定を簡単に変更できる
- リスクなくテストできる
手順:
- VirtualBoxをインストール
- 新規仮想マシンを作成
- AlmaLinuxのISOをマウント
- インストールを実行
仮想環境で正常にインストールできれば、物理マシンのハードウェアに問題があると判断できます。
インストール前の確認事項:トラブルを防ぐために
インストール前にチェックしておくべき項目です。
システム要件を確認
最小要件:
- CPU:1.5GHz以上のプロセッサー
- メモリ:1.5GB以上(GUI環境は4GB推奨)
- ストレージ:20GB以上の空き容量
推奨環境:
- CPU:2コア以上
- メモリ:4GB以上
- ストレージ:50GB以上
BIOS設定を確認
インストール前に以下を確認しましょう:
起動モード:
- UEFI推奨(セキュアブートは無効)
- レガシーBIOSモードも可能
仮想化機能:
- Intel VT-x または AMD-V を有効化
- 仮想環境で使う場合に必要
Fast Boot:
- 無効にする
- 有効だとUSBから起動できないことも
バックアップを取る
既存のデータがある場合、必ずバックアップを取ってください。
インストール中の予期せぬトラブルでデータが失われることがあります。
よくある質問と答え
AlmaLinuxインストールに関するよくある質問です。
Q1: 何時間待てば進むのか?
A: 通常、画面が完全に止まって10分以上変化がない場合、フリーズしていると判断できます。
正常なインストールでも:
- パッケージのダウンロード:5〜20分
- インストール処理:10〜30分
は普通にかかります。ただし、進行状況が全く変わらない場合はフリーズです。
Q2: 強制終了しても大丈夫?
A: インストール途中でフリーズした場合、強制終了しても問題ありません。
まだディスクに書き込まれていないか、途中のデータは無効になるだけです。
方法:
- 電源ボタンを長押し(5秒以上)
- ノートPCならバッテリーを外す(可能なら)
Q3: CentOSからの移行でも同じ問題が起きる?
A: はい、起きる可能性があります。
AlmaLinuxはRHEL互換なので、CentOSと同じハードウェア要件ですが、カーネルバージョンが新しいため、古いハードウェアで問題が起きることがあります。
Q4: Rocky Linuxも試すべき?
A: はい、選択肢の一つです。
Rocky Linuxも同じくRHEL互換のディストリビューションで、AlmaLinuxで問題がある場合、Rocky Linuxで解決することがあります。
逆もまた然りです。
Q5: サポートを受けられる?
A: AlmaLinux自体は無料ですが、コミュニティサポートとなります。
サポートを受ける方法:
- AlmaLinux公式フォーラム
- Reddit(r/AlmaLinux)
- IRC・Mattermost
- 有償サポート契約(企業向け)
まとめ:落ち着いて対処すれば必ず解決できる
AlmaLinuxのインストールが止まる問題は、適切な対処で解決できます。
この記事のポイント:
- 最も多い原因はグラフィックドライバーの問題
- 「nomodeset」オプションが最も効果的
- セキュアブートを無効化する
- テキストモードでのインストールも検討
- インストールメディアを作り直してみる
- ハードウェアの問題も疑う
トラブル解決の手順:
- まず「nomodeset」オプションを試す
- セキュアブートを無効化
- インストールメディアを作り直す
- テキストモードでインストール
- 最小インストールを選択
- ハードウェアをチェック
- 古いバージョンや代替イメージを試す
初心者向けの推奨手順:
1. GRUBメニューで「e」キーを押す
2. 「linux」行の末尾に「nomodeset」を追加
3. Ctrl + X で起動
これだけで、多くの問題が解決します。
それでも解決しない場合:
- ハードウェアが古すぎる、または新しすぎる可能性
- 別のディストリビューション(Rocky Linux、Fedoraなど)を検討
- コミュニティフォーラムで質問
AlmaLinuxは安定したサーバーOSですが、インストール時のトラブルは決して珍しくありません。
落ち着いて一つずつ対処していけば、必ず解決できます。この記事の方法を参考に、ぜひインストールを成功させてくださいね!
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