AlmaLinuxをインストールするとき、「ソフトウェアの選択」という画面で何を選べばいいのか迷っていませんか?
「最小限のインストール」「サーバー」「GUI付きサーバー」など、複数の選択肢があり、初心者には判断が難しいポイントです。しかし、ここでの選択がAlmaLinuxの使い勝手を大きく左右します。
この記事では、AlmaLinuxのソフトウェア選択について、各オプションの違い、用途別のおすすめ設定、後から変更する方法まで、徹底的に解説します。
「ソフトウェアの選択」とは?

AlmaLinuxのインストール中、「インストール概要」画面に表示される「ソフトウェアの選択」は、インストールするパッケージ群を決める重要な項目です。
なぜ重要なのか?
後から変更できるが、手間がかかる
ソフトウェアの選択は、インストール後でも変更可能です。しかし、最初に適切な環境を選んでおいたほうが、セットアップの時間を大幅に短縮できます。
用途に合わない環境は不便
例えば、デスクトップとして使いたいのに「最小限のインストール」を選ぶと、GUIがなく、すべてコマンドライン操作になります。逆に、サーバー用途で「GUI付きサーバー」を選ぶと、不要なソフトウェアが多数インストールされ、リソースを浪費します。
設定画面の構成
「ソフトウェアの選択」画面は、2つのセクションに分かれています。
左側:ベース環境(Base Environment)
AlmaLinuxの基本的な構成を決める選択肢です。6つまたは7つのオプションから1つを選びます。
右側:選択した環境用のその他のソフトウェア
ベース環境を選択すると、右側に追加できるソフトウェアグループが表示されます。複数選択可能です。
ベース環境の選択肢と特徴
AlmaLinuxで選択できるベース環境は、バージョンによって若干異なりますが、主に以下の6つです。
1. 最小限のインストール(Minimal Install)
特徴
- 最も軽量:必要最低限のパッケージのみ
- GUI なし:すべてコマンドライン操作
- インストール時間:最短(10〜15分程度)
- ディスク容量:約1.5〜2GB
含まれるもの
- 基本的なシステムツール
- ネットワーク機能
- テキストエディタ(vi/vim)
- 基本的なシェル(bash)
向いている用途
- Linuxサーバー:Webサーバー、データベースサーバーなど
- コンテナホスト:Dockerなどのコンテナ環境
- クラウドインスタンス:AWS、Azure、GCPなど
- 組み込みシステム:リソースが限られた環境
メリット
- セキュリティリスクが低い(攻撃対象が少ない)
- パフォーマンスが高い(余分なプロセスがない)
- ディスク容量を節約
- カスタマイズしやすい
デメリット
- Linux初心者には難しい
- すべての操作をコマンドラインで行う必要がある
- 必要なツールは後から手動でインストール
こんな人におすすめ
- Linuxコマンドに慣れている人
- サーバー構築が目的の人
- リソースを最大限効率化したい人
2. サーバー(Server)
特徴
- サーバー向け:一般的なサーバー用途に必要なツールを含む
- GUI なし:コマンドライン操作
- インストール時間:約15〜20分
- ディスク容量:約3〜4GB
含まれるもの(最小限のインストールに加えて)
- 基本的なサーバー管理ツール
- システム監視ツール
- セキュリティツール
- パフォーマンス分析ツール
向いている用途
- 一般的なサーバー用途
- 社内サーバー
- 開発・テストサーバー
メリット
- サーバー管理に必要なツールが最初から入っている
- 最小限のインストールより使いやすい
- それでも軽量
デメリット
- GUI がないため、初心者には難しい
こんな人におすすめ
- サーバー構築経験がある人
- コマンドライン操作に慣れている人
- GUI は不要だが、管理ツールは欲しい人
3. GUI付きサーバー(Server with GUI)
特徴
- GNOMEデスクトップ環境付き:グラフィカルインターフェース
- サーバー機能も充実:サーバー管理ツールも含む
- インストール時間:約30〜40分
- ディスク容量:約6〜8GB
含まれるもの(サーバーに加えて)
- GNOMEデスクトップ環境
- Firefoxブラウザ
- ファイルマネージャー
- テキストエディタ(gedit)
- ターミナルアプリ
- システム設定ツール
向いている用途
- サーバー用途だが、GUI管理も必要
- Linux学習用
- 開発環境
- 小規模オフィスサーバー
メリット
- GUI でサーバー管理できる
- 初心者でも扱いやすい
- Webブラウザやエディタがすぐ使える
デメリット
- リソース消費が多い(メモリ2GB以上推奨)
- セキュリティリスクが若干高まる
- 本格的なサーバー用途には重すぎる
こんな人におすすめ
- Linux初心者
- サーバーを学びたい人
- 開発用途で使う人
- GUI での管理を希望する人
4. ワークステーション(Workstation)
特徴
- デスクトップ作業に最適:開発・文書作成・マルチメディア
- GNOMEデスクトップ環境:Server with GUIと同じGUIベース
- 開発ツール充実:IDEやコンパイラなど
- インストール時間:約35〜45分
- ディスク容量:約8〜10GB
含まれるもの(Server with GUIに加えて)
- より多くの開発ツール
- グラフィック編集ツール
- オフィスアプリ(LibreOffice)
- マルチメディアアプリ
向いている用途
- ソフトウェア開発
- 日常的なデスクトップ作業
- Linux学習
- テスト環境
メリット
- 開発に必要なツールが最初から入っている
- デスクトップとしても使いやすい
- Server with GUIより多機能
デメリット
- サーバー用途には向かない
- リソース消費が多い
こんな人におすすめ
- ソフトウェア開発者
- デスクトップOSとしてLinuxを使いたい人
- 学習目的の人
5. カスタムオペレーティングシステム(Custom Operating System)
特徴
- 最小限の構成:ベースのみ
- 柔軟なカスタマイズ:右側で必要なパッケージグループを自由に追加
- インストール時間:選択内容による
- ディスク容量:選択内容による
向いている用途
- 特定の用途に特化したシステム
- 細かくカスタマイズしたい場合
メリット
- 必要なものだけインストールできる
- 無駄がない
デメリット
- ある程度の知識が必要
- 選択肢を間違えると、後から追加が必要
こんな人におすすめ
- Linux上級者
- 特定用途に最適化したい人
6. 仮想化ホスト(Virtualization Host)
特徴
- 仮想マシンホスト専用:KVMなど仮想化ツールが含まれる
- GUI なし:コマンドライン操作
- インストール時間:約20〜30分
- ディスク容量:約4〜5GB
含まれるもの(最小限のインストールに加えて)
- KVM(仮想化技術)
- libvirt(仮想マシン管理)
- virt-manager関連ツール
- ネットワークブリッジツール
向いている用途
- 仮想マシンのホストOS
- プライベートクラウド構築
メリット
- 仮想化に必要なツールがすべて揃っている
- セットアップが簡単
デメリット
- 仮想化以外の用途には向かない
こんな人におすすめ
- 仮想化環境を構築したい人
- 複数のVMを運用する人
7. KDE Plasma Workspaces(バージョンによっては利用可能)
特徴
- KDEデスクトップ環境:GNOMEとは異なるGUI
- デスクトップ用途:Windowsに近い操作感
- カスタマイズ性が高い
向いている用途
- デスクトップOS
- GNOMEよりKDEが好きな人
追加ソフトウェアの選択
ベース環境を選択すると、右側に「選択した環境用のその他のソフトウェア」が表示されます。
よくある追加ソフトウェア
追加できるソフトウェアグループは、ベース環境によって異なりますが、以下がよく表示されます。
開発ツール系
- 開発ツール(Development Tools):gcc、make、gitなど
- RPM開発ツール(RPM Development Tools):RPMパッケージ作成ツール
- システム開発(System Development):カーネル開発ツール
管理ツール系
- システム管理ツール(System Administration Tools):システム管理コマンド
- セキュリティツール(Security Tools):セキュリティ監査ツール
サーバーツール系
- ゲストエージェント(Guest Agents):仮想マシン用ツール
- 標準(Standard):よく使われる標準ツール
デスクトップ系
- オフィススイート(Office Suite/Productivity):LibreOffice
- グラフィックツール(Graphical Administration Tools):GUI管理ツール
追加ソフトウェアの選び方
最小限のインストールを選んだ場合
追加ソフトウェアはあまり選択できません。後からdnfコマンドでインストールするのが一般的です。
サーバーを選んだ場合
- 「標準」:推奨
- 「システム管理ツール」:サーバー管理に便利
- 「ゲストエージェント」:仮想マシンの場合は選択
Server with GUIまたはWorkstationを選んだ場合
- 「開発ツール」:プログラミングする場合は選択
- 「オフィススイート」:文書作成が必要なら選択
用途別おすすめ設定
実際の使用ケース別に、おすすめの設定を紹介します。
ケース1:Webサーバーを構築したい
おすすめベース環境:最小限のインストール
追加ソフトウェア:なし
理由:
Webサーバー(Apache、Nginxなど)は後からインストールします。最小限の構成でセキュリティとパフォーマンスを最大化できます。
インストール後の作業:
sudo dnf install httpd
sudo systemctl enable httpd
sudo systemctl start httpd
ケース2:データベースサーバーを構築したい
おすすめベース環境:最小限のインストール または サーバー
追加ソフトウェア:標準(Serverの場合)
理由:
データベース(MySQL、PostgreSQLなど)も後からインストール。サーバー環境を選ぶと管理ツールが便利です。
ケース3:Linux学習用に使いたい
おすすめベース環境:Server with GUI
追加ソフトウェア:
- 標準
- 開発ツール(プログラミングも学ぶ場合)
理由:
GUIがあるため初心者でも扱いやすく、ターミナルでコマンドも学べます。
ケース4:ソフトウェア開発環境として使いたい
おすすめベース環境:Workstation
追加ソフトウェア:
- 開発ツール
- システム開発(必要に応じて)
理由:
開発に必要なツールが最初から揃っており、すぐにコーディングを始められます。
ケース5:デスクトップOSとして使いたい
おすすめベース環境:Workstation
追加ソフトウェア:
- オフィススイート
- グラフィックツール
理由:
日常的なPC作業に必要なアプリが揃います。
ケース6:仮想化ホストとして使いたい
おすすめベース環境:仮想化ホスト
追加ソフトウェア:標準
理由:
仮想化に必要なツールがすべて含まれており、設定が簡単です。
ケース7:Dockerホストとして使いたい
おすすめベース環境:最小限のインストール
追加ソフトウェア:なし
理由:
Dockerは後からインストール。最小限の構成でコンテナのパフォーマンスを最大化できます。
ケース8:何に使うか決まっていない
おすすめベース環境:Server with GUI
追加ソフトウェア:標準、開発ツール
理由:
GUIがあるため初心者でも扱いやすく、後から用途を決められます。
インストール後にソフトウェアを追加・変更する方法

「やっぱり別の環境にしたい」となっても大丈夫です。後から変更できます。
デスクトップ環境(GUI)を追加する
最小限のインストールやサーバーを選んだ後、GUIを追加できます。
GNOMEデスクトップをインストール
# EPELとPowerToolsリポジトリを有効化
sudo dnf install epel-release
sudo dnf config-manager --set-enabled crb
# GNOMEをインストール(2つの選択肢)
# オプション1:Server with GUI相当
sudo dnf groupinstall "Server with GUI"
# オプション2:Workstation相当
sudo dnf groupinstall "Workstation"
デフォルトをGUI起動に変更
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
KDEデスクトップをインストール
sudo dnf install epel-release
sudo dnf config-manager --set-enabled crb
sudo dnf groupinstall "KDE Plasma Workspaces"
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
XFCEデスクトップをインストール
sudo dnf install epel-release
sudo dnf groupinstall Xfce
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
開発ツールを追加する
# 基本的な開発ツール
sudo dnf groupinstall "Development Tools"
# より詳細なシステム開発ツール
sudo dnf groupinstall "System Development"
# RPMパッケージ開発ツール
sudo dnf groupinstall "RPM Development Tools"
サーバーツールを追加する
# システム管理ツール
sudo dnf groupinstall "System Administration Tools"
# セキュリティツール
sudo dnf groupinstall "Security Tools"
インストール可能なグループを確認
# すべてのグループを表示
dnf group list
# 隠れたグループも含めて表示
dnf group list --hidden
# 特定のグループの内容を確認
dnf group info "Server with GUI"
個別のパッケージをインストール
グループではなく、個別にパッケージをインストールすることもできます。
# 例:Apache Webサーバー
sudo dnf install httpd
# 例:MariaDB(MySQL互換)
sudo dnf install mariadb-server
# 例:Git
sudo dnf install git
# 例:Python3開発環境
sudo dnf install python3 python3-pip python3-devel
# 例:Node.js
sudo dnf install nodejs npm
よくある質問
Q: 「最小限のインストール」でインストールしたけど、やっぱりGUIが欲しくなりました。再インストールが必要ですか?
A: 再インストールは不要です。前述の「デスクトップ環境(GUI)を追加する」の手順で、後からGUIをインストールできます。dnf groupinstall "Server with GUI"を実行し、systemctl set-default graphical.targetでGUI起動に切り替えれば完了です。
Q: 「Server with GUI」と「Workstation」の違いは何ですか?
A: 基本的にはどちらもGNOMEデスクトップ環境ですが、Workstationのほうがより多くの開発ツールやアプリケーションが含まれています。Server with GUIは「サーバーとしても使えるGUI環境」、Workstationは「デスクトップ作業や開発に特化した環境」と考えてください。
Q: インストール中に「ソフトウェアの選択」をスキップしたら、どうなりますか?
A: デフォルトで「Server with GUI」がインストールされます(AlmaLinux 9の場合)。ただし、バージョンによって異なる可能性があるため、明示的に選択することをおすすめします。
Q: ディスク容量が限られています。どの環境が最も軽量ですか?
A: 「最小限のインストール」が最も軽量で、約1.5〜2GBです。次に軽いのが「サーバー」で約3〜4GB。「Server with GUI」は約6〜8GB必要です。
Q: 仮想マシン(VM)にインストールする場合、どれがおすすめですか?
A: 用途によります。サーバー用途なら「最小限のインストール」または「サーバー」+「ゲストエージェント」。学習目的や開発用途なら「Server with GUI」が扱いやすいです。仮想化ホストとして使うなら「仮想化ホスト」を選んでください。
Q: 後からソフトウェアグループを削除できますか?
A: はい、可能です。sudo dnf groupremove "グループ名"で削除できます。ただし、依存関係のあるパッケージが他にも使われている場合、完全には削除されないことがあります。
Q: インストール後、どのベース環境が選ばれたか確認する方法はありますか?
A: /root/anaconda-ks.cfgファイルを確認すると、インストール時の設定が記録されています。また、インストールされているグループはdnf group list --installedで確認できます。
Q: EPELリポジトリとは何ですか?有効化すべきですか?
A: EPEL(Extra Packages for Enterprise Linux)は、RHELやAlmaLinux向けの追加パッケージリポジトリです。多くの便利なソフトウェアが含まれており、有効化することをおすすめします。有効化方法:sudo dnf install epel-release
まとめ
AlmaLinuxインストール時の「ソフトウェアの選択」についてまとめます。
ベース環境の選び方:クイック決定表
| 用途 | おすすめ環境 | GUI | ディスク容量 |
|---|---|---|---|
| Webサーバー | 最小限のインストール | なし | 〜2GB |
| データベースサーバー | 最小限のインストール / サーバー | なし | 〜4GB |
| Linux学習 | Server with GUI | あり | 〜8GB |
| ソフトウェア開発 | Workstation | あり | 〜10GB |
| デスクトップOS | Workstation | あり | 〜10GB |
| 仮想化ホスト | 仮想化ホスト | なし | 〜5GB |
| Dockerホスト | 最小限のインストール | なし | 〜2GB |
| 汎用・未定 | Server with GUI | あり | 〜8GB |
迷ったときのおすすめ
| レベル | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| 初心者 | Server with GUI | GUI付きで扱いやすい、学習にも最適 |
| 中級者 | サーバー | 軽量でサーバー管理ツールも充実 |
| 上級者 | 最小限のインストール | 完全カスタマイズ可能、最も効率的 |
後から変更可能
インストール後でも、dnf groupinstallコマンドでソフトウェアグループを追加できます。
- GUIが欲しくなった →
dnf groupinstall "Server with GUI" - 開発ツールが必要 →
dnf groupinstall "Development Tools"
セキュリティとパフォーマンスのバランス
- 最小限が最良:不要なソフトウェアが少ないほど、セキュリティリスクとリソース消費が減る
- しかし使いやすさも重要:特に学習目的やデスクトップ用途では、GUIがあったほうが圧倒的に便利
インストール時の注意点
- ベース環境は1つのみ選択:複数選択はできません
- 追加ソフトウェアは複数選択可能:必要なものにチェックを入れましょう
- 変更は「完了」で確定:選択後、必ず「完了」ボタンを押してください
最終的なアドバイス
最初は「Server with GUI」または「Workstation」で始めて、AlmaLinuxに慣れてから、次回のインストール時に「最小限のインストール」などにチャレンジするのがおすすめです。
GUIがあれば、コマンドライン操作とグラフィカル操作の両方を学べるため、学習曲線が緩やかになります。
あなたの用途に最適なソフトウェア選択で、快適なAlmaLinux環境を構築してください!

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