AlmaLinuxのインストールを進めていくと、「ソフトウェアの選択」という画面に出会います。
そこには「Server」「Minimal Install」「Workstation」など、いくつかの選択肢が並んでいますが、初めて見ると何を選べばいいのか分かりませんよね。
「それぞれ何が違うの?」
「自分の用途にはどれが適している?」
「間違えて選んだらどうなるの?」
この記事では、AlmaLinuxインストール時のソフトウェア選択について、各オプションの特徴から用途別の選び方まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
AlmaLinuxとは?CentOSの後継として注目されるOS
AlmaLinuxの基本
AlmaLinuxは、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)と互換性のある無料のLinuxディストリビューションです。
2021年に登場し、CentOSの実質的な後継として多くの企業やサーバー管理者に採用されています。
「AlmaLinux」という名前は、ラテン語で「魂」を意味する「anima」から派生した言葉で、CentOSの精神を引き継ぐという意思が込められています。
なぜAlmaLinuxが選ばれるのか
以下のような特徴から、サーバー用途を中心に人気が高まっています:
- 完全無料で商用利用可能
- RHELとの高い互換性
- 長期サポート(各バージョン10年間)
- 安定性と信頼性
- コミュニティ主導の開発
企業のサーバー、Webホスティング、開発環境など、幅広い用途で使われています。
ソフトウェア選択画面の見方
インストールを進めると現れる「ソフトウェアの選択」画面について理解しましょう。
画面の構成
インストーラーのメイン画面から「ソフトウェアの選択」をクリックすると、以下のような構成の画面が表示されます:
左側:ベース環境
大まかな用途に応じたパッケージのセットです。
一つだけ選択できます。
右側:選択した環境のアドオン
ベース環境に追加でインストールするソフトウェア群です。
複数選択できます。
この組み合わせによって、インストールされるソフトウェアの内容が決まります。
各ベース環境の詳細解説
それぞれのベース環境について、特徴と適した用途を見ていきましょう。
Server(サーバー)
概要:
標準的なサーバー用途向けの環境です。
含まれるもの:
- 基本的なシステムツール
- ネットワーク管理ツール
- サーバー運用に必要な基本パッケージ
- コマンドラインインターフェース(CLI)
- グラフィカル環境は含まれない
適した用途:
- Webサーバー
- データベースサーバー
- ファイルサーバー
- アプリケーションサーバー
- 企業の業務サーバー
メリット:
必要なツールがバランス良く入っているため、サーバー構築後にすぐ作業を始められます。
デメリット:
GUIがないため、コマンドライン操作に慣れていない方には難しいかもしれません。
Minimal Install(最小インストール)
概要:
最小限のパッケージだけをインストールする環境です。
含まれるもの:
- OSの起動に必要な最低限のパッケージ
- 基本的なコマンドラインツール
- ネットワーク機能の基礎
適した用途:
- コンテナのベースシステム
- カスタマイズしたいサーバー環境
- リソースが限られた環境
- セキュリティを重視するシステム
- 上級者向けのカスタム構築
メリット:
- ディスク使用量が最小
- セキュリティリスクが低い(不要なソフトがない)
- 起動が速い
- 自分で必要なものだけ追加できる
デメリット:
- 初期状態では機能が非常に限定的
- 必要なツールを自分で追加する必要がある
- 初心者には扱いにくい
Server with GUI(GUIありサーバー)
概要:
サーバー機能に加えて、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を持つ環境です。
含まれるもの:
- サーバー機能のすべて
- GNOMEデスクトップ環境
- Firefoxブラウザ
- 基本的なグラフィカルツール
- ファイルマネージャー
適した用途:
- サーバー管理初心者の学習環境
- GUI管理ツールを使いたいサーバー
- デスクトップとしても使いたい場合
- リモートデスクトップサーバー
メリット:
コマンドラインとGUIの両方が使えるため、初心者でも扱いやすいです。
デメリット:
- リソース消費が多い
- セキュリティ上の攻撃対象が増える
- 純粋なサーバー用途には不要な機能が多い
Workstation(ワークステーション)
概要:
デスクトップ用途や開発作業向けの環境です。
含まれるもの:
- GNOMEデスクトップ環境
- オフィスアプリケーション(LibreOffice)
- 開発ツール
- メディアプレーヤー
- グラフィックツール
適した用途:
- デスクトップPC
- 開発者のワークステーション
- 一般的な業務用PC
- デザイン作業
- マルチメディア作業
メリット:
デスクトップとして必要な機能が最初から揃っています。
デメリット:
サーバー用途には向きません。
Custom Operating System(カスタムOS)
概要:
完全に自分でパッケージを選択できる環境です。
含まれるもの:
基本的には何も選択されていない状態です。
適した用途:
- 特殊な用途向けのカスタムシステム
- 上級者の細かい調整
- 特定のソフトウェアだけが必要な環境
メリット:
完全に自由にカスタマイズできます。
デメリット:
何を選ぶべきか分からないと、使えないシステムになる可能性があります。
Virtualization Host(仮想化ホスト)
概要:
仮想マシンを動かすためのホスト環境です。
含まれるもの:
- KVM(カーネルベース仮想マシン)
- libvirt
- virt-manager(GUI管理ツール)
- 仮想化関連のツール群
適した用途:
- 仮想マシンのホストサーバー
- テスト環境の構築
- 複数のOS環境を動かす必要がある場合
メリット:
仮想化に必要なツールがすべて揃っています。
デメリット:
仮想化を使わない場合は不要な環境です。
用途別の推奨選択
あなたの目的に合わせた選択肢を提案します。
Webサーバーを構築したい
推奨: Server または Minimal Install
理由:
Webサーバー(Apache、Nginx)は後から簡単にインストールできます。
GUIは不要なので、軽量な環境が適しています。
追加で必要な作業:
sudo dnf install httpd
# または
sudo dnf install nginx
データベースサーバーを立てたい
推奨: Server または Minimal Install
理由:
データベース(MariaDB、PostgreSQL)も後からインストール可能です。
セキュリティと安定性を重視するなら、余計なパッケージがない方が良いでしょう。
追加で必要な作業:
sudo dnf install mariadb-server
# または
sudo dnf install postgresql-server
初めてLinuxサーバーに挑戦する
推奨: Server with GUI
理由:
GUIがあることで、コマンドラインに不慣れでも操作しやすくなります。
慣れてきたら、次回は「Server」を選ぶと良いでしょう。
デスクトップPCとして使いたい
推奨: Workstation
理由:
オフィスソフトやマルチメディアツールが最初から入っているため、すぐに使い始められます。
開発環境を構築したい
推奨: Workstation または Server with GUI
理由:
開発ツールやテキストエディタが含まれています。
コマンドラインだけで十分なら「Server」に開発ツールを追加する方法もあります。
Docker/コンテナ環境を作りたい
推奨: Minimal Install または Server
理由:
コンテナ環境では、ホストOSは最小限で構いません。
必要なパッケージだけを追加していく方が効率的です。
追加で必要な作業:
sudo dnf install docker
sudo dnf install podman
仮想マシンをたくさん動かしたい
推奨: Virtualization Host
理由:
仮想化に必要なすべてのツールが最初から揃っているため、すぐに仮想マシンを作成できます。
アドオン(追加ソフトウェア)の選び方
ベース環境を選んだら、右側のアドオンから追加のソフトウェアを選択できます。
主要なアドオンの種類
Development Tools(開発ツール):
- gcc、make、gitなどの開発に必要なツール
- プログラミングをする場合は追加推奨
System Tools(システムツール):
- システム管理や監視のためのツール
- サーバー管理者向け
Security Tools(セキュリティツール):
- セキュリティ監査や分析ツール
- セキュリティを重視する環境で推奨
Network File System Client(NFSクライアント):
- ネットワークファイルシステムを使用する場合
Container Management(コンテナ管理):
- DockerやPodmanなどのコンテナツール
- コンテナを使う予定がある場合
迷ったら選ばなくてもOK
アドオンは後からいつでもインストールできます。
最初は必要最小限にしておいて、実際に使いながら必要なものを追加していく方が、システムを軽量に保てます。
インストール後のソフトウェア追加方法
「やっぱり別の選択肢にすればよかった…」と思っても大丈夫です。
インストール後でもソフトウェアの追加や変更ができます。
パッケージグループのインストール
AlmaLinuxでは、関連するパッケージをまとめた「グループ」という単位があります。
利用可能なグループを確認:
sudo dnf grouplist
特定のグループをインストール:
sudo dnf groupinstall "Development Tools"
sudo dnf groupinstall "Server with GUI"
これで、後からGUI環境を追加したり、開発ツールを一括インストールしたりできます。
個別パッケージのインストール
必要なソフトウェアを個別にインストールすることもできます。
基本的なコマンド:
sudo dnf install パッケージ名
例:
sudo dnf install httpd # Webサーバー
sudo dnf install mariadb-server # データベース
sudo dnf install git # バージョン管理
sudo dnf install vim # テキストエディタ
GUIを後から追加する方法
Minimal InstallやServerを選んだ後で、やっぱりGUIが欲しくなった場合:
sudo dnf groupinstall "Server with GUI"
sudo systemctl set-default graphical.target
sudo reboot
これで再起動後、GUIログイン画面が表示されるようになります。
ディスク容量の目安
各環境で必要なディスク容量の目安です。
Minimal Install
- 最小要件:約1GB
- 推奨:5GB以上
- 実用的:10GB以上(ログやデータ用)
Server
- 最小要件:約2GB
- 推奨:10GB以上
- 実用的:20GB以上
Server with GUI
- 最小要件:約3GB
- 推奨:15GB以上
- 実用的:30GB以上
Workstation
- 最小要件:約4GB
- 推奨:20GB以上
- 実用的:50GB以上(アプリケーションやデータ用)
実際の使用では、ログファイル、データベース、ユーザーファイルなども考慮して、余裕を持ったディスク容量を確保しましょう。
セキュリティ面での考慮事項
ソフトウェア選択はセキュリティにも影響します。
最小インストールの原則
セキュリティの観点から、「必要最小限のソフトウェアだけをインストールする」という原則があります。
理由:
- インストールされているソフトが少ないほど、脆弱性のリスクが減る
- 攻撃対象となる可能性のあるサービスが減る
- システムの管理が容易になる
そのため、サーバー用途では「Server」や「Minimal Install」が推奨されます。
GUI環境のリスク
GUI環境は便利ですが、以下のような点でセキュリティリスクが増加します:
- Xサーバーやデスクトップ環境に脆弱性がある可能性
- 不要なサービスが動作している
- リソースを多く消費する
本番環境のサーバーでは、できるだけGUIを避け、必要な場合はSSHとコマンドラインで管理するのが一般的です。
よくある質問と答え
インストール中に選択を間違えたらどうなる?
大きな問題はありません。
後から必要なソフトウェアを追加したり、不要なものを削除したりできます。
複数のベース環境を組み合わせられる?
ベース環境自体は一つしか選べませんが、インストール後にパッケージグループを追加すれば、実質的に組み合わせることができます。
後から別のベース環境に変更できる?
完全な変更は難しいですが、パッケージの追加や削除で近い状態にすることは可能です。
大きく変更したい場合は、再インストールの方が確実です。
どれを選んでも問題なく動作する?
はい、どの選択肢も正常に動作します。
違いは「何がインストールされているか」だけで、安定性や信頼性に差はありません。
まとめ:目的に合わせて最適な選択を
AlmaLinuxのソフトウェア選択について、重要なポイントをおさらいしましょう。
主要なベース環境:
- Minimal Install:最小限、上級者向け、カスタマイズ前提
- Server:標準的なサーバー用途、バランスが良い
- Server with GUI:初心者向けサーバー、GUI付き
- Workstation:デスクトップ用途、開発環境
- Virtualization Host:仮想化環境の構築
選び方の基本:
- サーバー用途 → Server または Minimal Install
- 初心者 → Server with GUI
- デスクトップ → Workstation
- 仮想化 → Virtualization Host
覚えておきたいこと:
- 後からソフトウェアの追加・削除は可能
- セキュリティ重視なら必要最小限を選ぶ
- 迷ったら「Server」が無難な選択
- ディスク容量は余裕を持って確保
インストール後の追加コマンド:
sudo dnf groupinstall "グループ名"
sudo dnf install パッケージ名
AlmaLinuxのインストール時のソフトウェア選択は、後から変更できるので、あまり神経質になる必要はありません。
まずは自分の用途に近そうなものを選んで、実際に使いながら必要なソフトウェアを追加していくのが、最も実践的なアプローチです。
サーバー構築でも、デスクトップ利用でも、あなたの目的に合わせた最適なAlmaLinux環境を作り上げてください!
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