パソコンにインストールされているソフトウェアを確認していると、いつの間にか「Adobe AIR」がインストールされていることがあります。
見覚えのない名前に、削除してしまっても良いのか不安に感じる方もいるでしょう。
Adobe AIRは、特定のアプリケーションを実行するために必要なランタイム環境です。
削除してしまうと、このランタイムを必要とするアプリケーションが動かなくなる可能性があります。
この記事では、Adobe AIRの基本的な仕組みから、削除しても良いのか、どのような用途で使われているのかまで、わかりやすく解説します。
Adobe AIRとは
Adobe AIR(Adobe Integrated Runtime、アドビ・エアー)は、デスクトップおよびモバイル向けのアプリケーションを実行するためのクロスプラットフォーム対応のランタイム環境です。
元々はAdobeが開発していましたが、2019年6月にHARMAN International(ハーマン・インターナショナル、Samsungの子会社)に移管されました。
ランタイム環境とは、アプリケーションを動作させるために必要な基盤となるソフトウェアのことです。
Adobe AIRをインストールすることで、AIR技術を使って開発されたアプリケーションをパソコンやモバイルデバイス上で実行できるようになります。
開発コードネームは「Apollo」で、2007年にベータ版がリリースされ、2008年に正式版が公開されました。
Adobe AIRの主な特徴
Adobe AIRには、以下のような特徴があります。
クロスプラットフォーム対応
Adobe AIRで開発されたアプリケーションは、Windows、macOS、iOS、Androidなど、複数のオペレーティングシステムで動作します。
開発者は一度コードを書けば、さまざまなプラットフォームに対応したアプリケーションを提供できます。
ただし、Linuxについては2011年6月のバージョン2.6をもってサポートが終了しています。
Web技術を活用したデスクトップアプリ開発
Adobe AIRでは、HTML、CSS、JavaScriptといったWeb開発技術を使ってデスクトップアプリケーションを開発できます。
また、ActionScript 3.0、Adobe Flash、Adobe Flexなどの技術とも組み合わせることができます。
これにより、Web開発者が既存のスキルを活用して、デスクトップアプリケーションやモバイルアプリケーションを開発できる点が大きな利点です。
ローカルリソースへのアクセス
通常のWebアプリケーションとは異なり、Adobe AIRアプリケーションはローカルファイルシステムにアクセスできます。
これにより、ファイルの読み書きや、デスクトップとの連携(ドラッグ&ドロップなど)が可能になります。
例えば、デスクトップ上のExcelファイルをAIRアプリケーションにドラッグ&ドロップして内容を表示したり、逆にアプリケーション内のデータをデスクトップに保存したりすることができます。
Adobe AIRで開発されたアプリケーションの例
Adobe AIRを使って開発されたアプリケーションには、以下のようなものがあります。
- 株式取引プラットフォーム
- 音楽制作ソフトウェア
- SEOツール
- ゲームアプリケーション
- ビジネスアプリケーション
- 教育・e-learningプラットフォーム
これらのアプリケーションは、Webの利便性とデスクトップアプリケーションの機能性を兼ね備えています。
Adobe AIRの仕組み
Adobe AIRアプリケーションは、AIRランタイムがインストールされているコンピューター上で動作します。
ユーザーがAIRアプリケーションをインストールすると、ネイティブのデスクトップアプリケーションと同じように扱えるようになります。
AIRランタイムは、アプリケーションを実行するための一貫したプラットフォームを提供します。
これにより、開発者は特定のオペレーティングシステム向けに個別に開発する必要がなく、AIRランタイムをターゲットとして開発できます。
Captive Runtimeとは
AIRアプリケーションは、ランタイムを含めてパッケージ化することも、ランタイムを別途インストールすることもできます。
ランタイムを含めてパッケージ化したアプリケーションは「Captive Runtime」と呼ばれ、ファイルサイズは大きくなりますが、ユーザーが別途AIRランタイムをインストールする必要がありません。
一方、ランタイムを含めないアプリケーションは、AIRランタイムが別途インストールされている必要があります。
Adobe AIRのインストール方法
Adobe AIRは、以下の方法でインストールされます。
AIRアプリケーションと一緒にインストール
多くの場合、Adobe AIRはAIRアプリケーションをインストールする際に自動的にインストールされます。
ユーザーが意識せずにインストールされているケースがほとんどです。
単体でインストール
Adobe AIRランタイムを単体でインストールすることも可能です。
HARMANの公式サイトから、最新版のAdobe AIRをダウンロードできます。
2025年12月時点での最新バージョンは51.2.2.6です。
インストール手順は以下の通りです。
- HARMAN公式サイト(https://airsdk.harman.com/)からインストーラーをダウンロード
- ダウンロードしたインストーラーをダブルクリック
- セキュリティの警告が表示された場合は「実行」をクリック
- ライセンス同意のダイアログで「同意する」をクリック
- インストールが完了するまで待つ
Adobe AIRは削除しても良いのか
Adobe AIRを削除するかどうかは、AIRを使用しているアプリケーションがあるかどうかによります。
削除しても問題ないケース
以下のような場合は、Adobe AIRを削除しても問題ありません。
- AIRを必要とするアプリケーションを使用していない
- AIRアプリケーションをすべてアンインストールした
- 使わないアプリケーションを整理したい
削除すると問題が起きるケース
Adobe AIRを削除すると、AIRを必要とするアプリケーションが起動できなくなります。
削除後にAIRアプリケーションを起動しようとすると、以下のようなエラーメッセージが表示されます。
「このアプリケーションで必要な Adobe AIR のバージョンが見つかりません。」
削除前の確認方法
Adobe AIRをアンインストールしようとすると、一部の環境ではAIRで動作しているアプリケーションの一覧が表示されます。
表示されたアプリケーションが普段使うものであれば、アンインストールしない方が良いでしょう。
逆に全く使わないアプリケーションであれば、Adobe AIRと一緒に削除しても問題ありません。
削除後に必要になった場合
もしAdobe AIRを削除した後に必要になった場合でも、HARMAN公式サイトから再度ダウンロードしてインストールすることができます。
開発者向け情報
Adobe AIRを使ってアプリケーションを開発したい開発者向けに、基本的な情報を紹介します。
Adobe AIR SDK
Adobe AIR SDKは、AIRアプリケーションを開発するためのソフトウェア開発キットです。
HARMANの公式サイトから無料でダウンロードできます。
SDKには、ランタイム環境やAPI、コンパイラなどが含まれています。
開発に使用できる言語
Adobe AIRアプリケーションは、以下の言語・技術で開発できます。
- ActionScript 3.0
- HTML、CSS、JavaScript
- Adobe Flash
- Adobe Flex
- Ajax
開発者は、プロジェクトの要件や自身のスキルに応じて、適切な言語を選択できます。
統合開発環境(IDE)
Adobe AIRアプリケーションの開発を効率的に行うため、以下のような統合開発環境が利用できます。
- Adobe Animate
- Adobe Flash Builder
- Moonshine IDE(無料)
- FlashDevelop(オープンソース)
- IntelliJ IDEA
- Visual Studio Code(AS3 & MXML拡張機能を使用)
これらのIDEは、コーディング、デバッグ、パッケージングなどの機能を提供します。
パッケージング
開発したAIRアプリケーションを配布するには、パッケージング作業が必要です。
パッケージングとは、アプリケーションのソースコードやアセットを実行可能なファイル形式に変換するプロセスです。
AIR SDKに含まれるツールを使用することで、以下のようなファイルを生成できます。
- Windows用のEXEファイル
- macOS用のAPPファイル
- iOS用のIPAファイル
- Android用のAPKファイル
Adobeからハーマンへの移管
2019年6月、Adobe AIRの開発と保守はAdobeからHARMAN Internationalに移管されました。
Adobeによるサポートは2020年12月31日に終了し、バージョン32以前のサポートはすべて終了しています。
現在、Adobe AIRの開発とサポートはすべてHARMANが行っており、最新版のダウンロードもHARMANの公式サイトから提供されています。
HARMANは、コミュニティ主導の開発に重点を置き、開発者からのフィードバックを元に新機能の追加やバグ修正を行っています。
ライセンスモデルの変更
HARMANへの移管後、ライセンスモデルが変更されました。
個人ユーザーや趣味でAIRを使用する場合は無料で利用できますが、商用アプリケーションを開発・配布する企業は、有料ライセンスが必要になる場合があります。
ただし、AIRアプリケーションを使用するエンドユーザーは、引き続き無料でAIRランタイムを利用できます。
Adobe AIRの今後
Adobe AIRは、Flashの終了とともに衰退するのではないかという懸念もありましたが、HARMANの管理下で開発が続けられています。
64ビット対応の強化、最新のアプリバンドル規格への対応、新機能の追加など、継続的な改善が行われています。
既存のAIRアプリケーションを使い続けたい企業や、クロスプラットフォーム開発の利点を活かしたい開発者にとって、Adobe AIRは引き続き有用なフレームワークとして機能しています。
まとめ
Adobe AIRは、クロスプラットフォーム対応のアプリケーションランタイム環境です。
Web技術を使ってデスクトップアプリケーションやモバイルアプリケーションを開発できる点が特徴です。
パソコンにインストールされているAdobe AIRは、AIRアプリケーションを実行するために必要なものです。
使用しているアプリケーションがない場合は削除しても問題ありませんが、削除後に必要になった場合は再インストールできます。
開発元はAdobeからHARMANに移管されましたが、継続的な開発とサポートが行われており、今後も利用可能な技術として維持されています。

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