大切なファイルが突然消えてしまった、システムが起動しなくなった、ハードディスクが認識されない…そんな絶望的な状況に陥ったことはありませんか?
Windowsでデータを失った時は、適切な手順を踏むことで復旧できる可能性が大幅に高まります。
この記事では、データ復旧の基本から専門的な手法まで、状況に応じた最適な対処法を段階的に解説します。
初心者でも安全に実行できる方法から、上級者向けの高度なテクニックまで網羅し、あなたの大切なデータを取り戻すお手伝いをします。
この記事で学べること:
- データ消失の原因と対処の優先順位
- 段階的な復旧手順(簡単→高度)
- 無料・有料復旧ツールの使い分け
- システム修復とデータ救出の手法
データ消失の緊急対応|まず最初にすべきこと

最重要:作業を停止する
データが消失したことに気づいたら、まず作業を停止してください。
これが復旧成功の最も重要なポイントです。
絶対にやってはいけないこと:
❌ 新しいファイルの保存:消失したデータが上書きされる
❌ ソフトウェアのインストール:復旧可能なデータが破壊される
❌ ディスクの最適化:削除されたファイルの痕跡が完全に消える
❌ システムの再起動(不必要な場合):一時的なデータが失われる
データ消失の主な原因
問題の原因を正しく把握することで、適切な対処法を選択できます:
原因 | 症状 | 復旧難易度 | 対処法 |
---|---|---|---|
誤削除 | ファイルが見当たらない | ★☆☆ | ごみ箱確認→復旧ソフト |
システム障害 | OS起動不能 | ★★☆ | システム修復→データ救出 |
ハードディスク故障 | 異音、認識不能 | ★★★ | 専門業者への依頼推奨 |
ウイルス感染 | ファイル暗号化・削除 | ★★☆ | 駆除後にバックアップから復元 |
停電・強制終了 | ファイル破損 | ★★☆ | システムチェック→修復 |
ステップ1:簡単な方法から試す

ごみ箱からの復元
最も基本的で成功率の高い方法です。
手順:
- デスクトップの「ごみ箱」をダブルクリック
- 削除されたファイルを探す
- 該当ファイルを右クリック→「元に戻す」
ごみ箱にない場合の確認点:
- ごみ箱の容量設定が小さすぎないか
- 「削除時にごみ箱に移動しない」設定になっていないか
- Shift+Deleteで完全削除していないか
ファイル履歴機能の活用
Windows 10/11の標準機能「ファイル履歴」が有効になっている場合:
手順:
- 設定 → 更新とセキュリティ → バックアップ
- その他のオプション → 現在のバックアップからファイルを復元
- 復元したいファイルを選択 → 復元ボタン
以前のバージョン機能
ファイルやフォルダの以前の状態に戻すWindows標準機能:
手順:
- 復元したいファイルがあったフォルダを右クリック
- 以前のバージョンの復元を選択
- 一覧から適切な日時のバージョンを選択
- 復元またはコピーを実行
注意点:
- システムの復元ポイントが作成されている必要がある
- 復元すると現在のファイルが上書きされる(コピーがより安全)
OneDriveやGoogleドライブの復旧機能
クラウドストレージを使用している場合:
OneDriveの場合:
- ブラウザでOneDrive.comにアクセス
- ごみ箱を確認
- ファイルの復元機能を使用(30日以内)
Googleドライブの場合:
- Googleドライブを開く
- 左側メニューのごみ箱を確認
- 該当ファイルを右クリック→復元
ステップ2:システムレベルの修復

System File Checker(SFC)によるシステムファイル修復
Windowsのシステムファイルが破損している場合の修復方法:
手順:
- Windows + Xキーを押す
- Windows PowerShell(管理者)を選択
- 以下のコマンドを実行:
sfc /scannow
実行中の画面:
Microsoft Windows [Version 10.0.19041.1415]
(c) Microsoft Corporation. All rights reserved.
C:\WINDOWS\system32>sfc /scannow
システム スキャンを開始しています。この処理には時間がかかることがあります。
システム スキャンの検証フェーズを開始しています。
検証 100% が完了しました。
Windows リソース保護により、破損したファイルが見つかり、正常に修復されました。
詳細は、CBS.Log windir\Logs\CBS\CBS.log に記録されています。
SFCで修復できない場合:
DISM(Deployment Image Servicing and Management)を使用:
# 1. ヘルスチェック
dism /online /cleanup-image /checkhealth
# 2. 詳細スキャン
dism /online /cleanup-image /scanhealth
# 3. 修復実行
dism /online /cleanup-image /restorehealth
修復後、再度SFCを実行:
sfc /scannow
CHKDSK によるディスク修復
ハードディスクのファイルシステムエラーを修復:
基本的な使用方法:
# Cドライブのチェック(読み取り専用)
chkdsk C:
# Cドライブの修復(要再起動)
chkdsk C: /f
# 不良セクタの検出・修復(時間がかかる)
chkdsk C: /r
パラメータの説明:
/f
: エラーを修復/r
: 不良セクタを検出し、読み取り可能な情報を回復/x
: 必要に応じてボリュームを強制的にマウント解除
実行例:
C:\WINDOWS\system32>chkdsk C: /f
ファイル システムの種類は NTFS です。
現在のドライブはロックできません。
ボリュームが別のプロセスで使用されているため、CHKDSK を実行できません。
次回のシステム開始時にこのボリュームをチェックしますか (Y/N)?
注意点:
- システムドライブ(通常C:)の修復は再起動が必要
- 修復されたファイルは
found.000
フォルダに.chk
拡張子で保存される - 完了まで数時間かかる場合がある
ステップ3:専用復旧ソフトウェアの活用
無料の復旧ツール
Windows File Recovery(Microsoft公式)
Microsoft純正の無料データ復旧ツールです。
インストール方法:
- Microsoft Storeで「Windows File Recovery」を検索
- インストール後、管理者権限でコマンドプロンプトを開く
使用例:
# 基本的な復旧(Regularモード)
winfr C: D: /regular /n *.docx /n *.pdf
# より強力な復旧(Extensiveモード)
winfr C: D: /extensive /n *.jpg /n *.png
# 特定フォルダの復旧
winfr C: D: /regular /n \Users\%username%\Documents\*
パラメータ説明:
C:
: 復旧元ドライブD:
: 復旧先ドライブ(元のドライブと異なる必要がある)/regular
: 最近削除されたファイル向け/extensive
: より古いファイルや重度の破損向け/n
: ファイル名パターン指定
TestDisk & PhotoRec
オープンソースの強力な復旧ツールです。
主な機能:
- パーティションテーブルの修復
- ブートセクタの復旧
- 多様なファイル形式の復元(700種類以上)
基本的な使用手順:
- 公式サイトからダウンロード(ポータブル版推奨)
- 管理者権限で実行
- 対象ドライブを選択
- ファイルタイプを指定してスキャン開始
Recuva
初心者向けのGUIを持つ無料復旧ソフトです。
特徴:
- 直感的な操作画面
- ファイルの復旧可能性を色分け表示
- ポータブル版が利用可能
使用手順:
- 公式サイトからダウンロード・インストール
- 復旧したいファイルタイプを選択
- 元の保存場所を指定
- Deep Scanを有効にしてスキャン実行
有料の高性能復旧ソフト
EaseUS Data Recovery Wizard
特徴:
- 高い復旧成功率
- 初心者にも使いやすいインターフェース
- プレビュー機能付き
料金体系:
- Free版:2GBまで無料
- Pro版:年額8,900円程度
- 永久ライセンス:17,800円程度
主な機能:
- 削除ファイルの復元
- フォーマット後の復旧
- パーティション復旧
- RAW回復
Stellar Data Recovery
特徴:
- プロフェッショナル向けの高機能
- 破損した動画ファイルの修復機能
- ディスクイメージング機能
適用場面:
- 重要なビジネスデータの復旧
- メディアファイルの専門的な復元
- 法的証拠保全が必要な場合
ステップ4:外部デバイス・故障ディスクからの復旧

外部ストレージデバイスの診断
USB/外付けHDDが認識されない場合:
- デバイスマネージャーでの確認
- Windows + X → デバイス マネージャー
- ディスク ドライブを展開
- 不明なデバイスや警告マークを確認
- ディスクの管理での確認
- Windows + X → ディスクの管理
- 未割り当て領域や未フォーマット状態を確認
- 別のUSBポートやPCでの接続テスト
物理的故障の兆候と対処
故障の兆候:
- 異音(カチカチ、ガリガリ音)
- 異常な発熱
- 認識されない
- アクセス速度の著しい低下
軽度の論理障害の場合:
# 読み取り専用でのチェック
chkdsk E: /f /r
# ディスクエラーの詳細確認
wmic diskdrive get status,model,size
データ救出手順:
- 最小限のアクセスでスキャンのみ実行
- 別のドライブに復旧データを保存
- 重要ファイルから優先的に救出
- 作業時間を制限(過度な負荷を避ける)
専門業者への依頼判断基準
自分で対処可能なケース:
- ファイルの誤削除
- ソフトウェア的な問題
- 軽度のファイルシステム破損
専門業者への依頼が推奨されるケース:
- ハードディスクの物理的故障
- 重要なビジネスデータの復旧
- RAID構成の複雑な障害
- 復旧成功率を最大化したい場合
業者選択のポイント:
- ISO27001などのセキュリティ認証
- 成功報酬制の料金体系
- データ消去証明書の発行
- 緊急対応の可否
高度な復旧テクニック

コマンドラインを使った詳細診断
ディスクの詳細情報取得:
# ディスク情報の詳細表示
wmic diskdrive get size,model,status,interfacetype
# パーティション情報の確認
wmic logicaldisk get size,freespace,filesystem
# エラーログの確認
wmic diskdrive get status | findstr /i error
イベントログでのエラー確認:
# システムログのディスクエラー確認
wevtutil qe System /f:text | findstr /i "disk error"
# アプリケーションログの確認
wevtutil qe Application /f:text | findstr /i "disk"
PowerShellを使った高度な操作
ファイル復旧のためのPowerShellスクリプト:
# 削除されたファイルの痕跡を検索
Get-ChildItem -Path "C:\" -Recurse -Force -ErrorAction SilentlyContinue |
Where-Object {$_.Name -like "*重要な文書*"}
# ファイルの詳細情報取得
Get-ItemProperty -Path "C:\重要なファイル.docx" |
Select-Object Name,CreationTime,LastWriteTime,Length
# 隠しファイル・システムファイルを含む検索
Get-ChildItem -Path "C:\" -Force -Recurse -Attributes Hidden,System
レジストリからの情報復旧
最近使用したファイルの履歴:
# 最近使用したドキュメント
reg query "HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\Explorer\RecentDocs"
# Officeアプリケーションの履歴
reg query "HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Office\16.0\Word\File MRU"
予防策とバックアップ戦略

自動バックアップの設定
Windows標準のファイル履歴:
- 設定 → 更新とセキュリティ → バックアップ
- ドライブの追加で外部ドライブを選択
- その他のオプションで詳細設定:
- バックアップ頻度:1時間ごと(推奨)
- バックアップ保持期間:容量が許す限り
- 対象フォルダの選択
システムイメージバックアップ:
# システムイメージの作成
wbadmin start backup -backupTarget:E: -include:C: -allCritical -quiet
バックアップルール
データ保護の基本原則:
- 3つのコピー:元データ + 2つのバックアップ
- 2つの異なるメディア:HDDとクラウドなど
- 1つは遠隔地:クラウドや別拠点
実装例:
- 元データ:メインPC
- ローカルバックアップ:外付けHDD
- クラウドバックアップ:OneDrive、Googleドライブ
定期的なシステムメンテナンス
月次作業:
- ディスクのエラーチェック
- 不要ファイルの削除
- システムファイルの整合性確認
週次作業:
- バックアップの動作確認
- 重要ファイルの手動コピー
メンテナンス用バッチファイル例:
@echo off
echo システムメンテナンスを開始します...
echo ディスクエラーチェック
chkdsk C: /f /v
echo システムファイルチェック
sfc /scannow
echo 一時ファイルの削除
del /s /q "%temp%\*"
echo メンテナンス完了
pause
緊急時対応フローチャート
データ消失発見時の対応手順
データ消失を発見
↓
すぐに作業を停止
↓
原因の特定
↓
┌─────────────────────┐
│ 誤削除の場合 │ → ごみ箱確認 → 以前のバージョン
├─────────────────────┤
│ システム障害の場合 │ → SFC/DISM → CHKDSK
├─────────────────────┤
│ ハード故障の場合 │ → 作業中止 → 専門業者相談
└─────────────────────┘
↓
復旧ソフトウェア使用
↓
成功 → データ確認・バックアップ
失敗 → 専門業者への相談
重要度別対応優先順位
最優先(即座に対応):
- ビジネス重要データ
- 代替不可能なファイル
- 法的に必要な文書
高優先:
- 個人的な思い出の写真・動画
- 長時間かけて作成した作品
- 設定ファイル・ブックマーク
中優先:
- 再取得可能なソフトウェア
- 一般的な文書テンプレート
まとめ:データ復旧成功のポイント
状況別推奨手順まとめ
状況 | 第一選択 | 第二選択 | 最終手段 |
---|---|---|---|
誤削除 | ごみ箱復元 | 無料復旧ソフト | 有料復旧ソフト |
システム障害 | SFC/DISM | システム復元 | クリーンインストール |
ディスク障害 | CHKDSK | 復旧ソフト | 専門業者 |
外部デバイス | 接続確認 | フォーマット修復 | 物理修復 |
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