RPC(Remote Procedure Call)とは?ネットワーク越しに関数を呼び出す技術を分かりやすく解説

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「別のコンピュータにある関数を、自分のパソコンにある関数のように使えたら便利だな」と思ったことはありませんか?

実は、これを可能にする技術があります。それがRPC(Remote Procedure Call:遠隔手続き呼び出し)です。

RPCは、ネットワーク上の別のコンピュータにあるプログラムを呼び出して実行させる技術。開発者は複雑なネットワーク通信を意識することなく、まるでローカルの関数を呼び出すかのように、リモートのプログラムを使えるんですね。

今回は、分散システムを支える重要な技術であるRPCについて、仕組みや実例を交えながら詳しく解説していきます。

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RPCの基本的な仕組み

RPCは「Remote Procedure Call」の略称で、日本語では「遠隔手続き呼び出し」と訳されます。

簡単に言えば、ネットワークで繋がった別のコンピュータ上のプログラムを、あたかも自分のコンピュータにあるプログラムのように呼び出せる技術です。

通常、プログラムで関数を呼び出すときは、同じプログラム内や同じコンピュータ内の関数を使いますよね。一方RPCでは、ネットワーク越しに別のマシンにある関数を呼び出せます。しかも開発者は、それがリモートなのかローカルなのかをほとんど意識する必要がありません。

クライアント・サーバモデル

RPCはクライアント・サーバモデルで動作します。

  • クライアント:処理を依頼する側のプログラム
  • サーバ:処理を実行する側のプログラム

クライアントがサーバに「この処理をやってほしい」とリクエストを送ると、サーバが処理を実行して結果を返してくれる。この一連の流れを、開発者は普通の関数呼び出しのように書けるわけです。

RPCが動作する詳しい流れ

RPCの裏側では、いくつかのステップを経て通信が行われています。

  1. クライアントが関数を呼び出す
  • 開発者は普通に関数を呼び出すだけ
  1. クライアントスタブがパラメータをパッキング(マーシャリング)
  • スタブという特殊なプログラムが、関数の引数などをネットワーク送信用の形式に変換
  1. ネットワーク経由でメッセージを送信
  • クライアントのOSがサーバにメッセージを送る
  1. サーバスタブがパラメータをアンパック(アンマーシャリング)
  • サーバ側のスタブが、受け取ったデータを元の形式に戻す
  1. サーバで実際の処理を実行
  • サーバが要求された関数を実行
  1. 結果をクライアントに返送
  • 実行結果が同じ経路を逆にたどってクライアントに届く

スタブとは

スタブ(Stub)は、RPCの重要な構成要素です。

スタブは、開発者と実際のネットワーク通信の間に入って、複雑な処理を代行してくれるプログラムのこと。クライアント側とサーバ側の両方に存在し、データの変換や通信処理を担当します。

開発者はスタブのおかげで、ネットワーク通信の詳細を気にせずプログラミングできるんですね。

マーシャリングとアンマーシャリング

マーシャリング(marshalling)は、関数の引数や戻り値をネットワーク送信用の形式に変換する処理です。

コンピュータによってデータの表現方法が異なることがあります。例えば、整数の並び順や文字コードなど。マーシャリングによって、異なるコンピュータ間でも正しくデータをやり取りできるようになります。

アンマーシャリング(unmarshalling)は、その逆の処理。受け取ったデータを元の形式に戻して、プログラムが使える状態にします。

同期型RPCと非同期型RPC

RPCには大きく分けて2つの動作モードがあります。

同期型RPC

同期型RPCは、最も一般的なRPCの方式です。

クライアントが関数を呼び出すと、サーバから結果が返ってくるまで待機します。つまり、クライアントは処理が完了するまでブロックされた状態になるんですね。

これは普通の関数呼び出しと同じ動作です。処理が完了してから次の処理に進めます。

非同期型RPC

非同期型RPCでは、クライアントは呼び出し後、結果を待たずに次の処理を続行できます。

サーバからの応答は、コールバック(callback)という仕組みで後から受け取る形式。大量のデータ転送が必要な場合や、サーバの処理に時間がかかる場合に有効です。

代表的なRPC実装

RPCには様々な実装が存在します。それぞれ特徴が異なり、用途に応じて使い分けられています。

ONC RPC(Sun RPC)

1980年代前半にサン・マイクロシステムズ社が開発したRPC実装。

UNIX系OSで広く使われ、ネットワークファイルシステム(NFS)の基盤技術として採用されました。現在でも多くのシステムで利用されています。

DCE/RPC

Open Software Foundation(OSF)が開発したRPC実装。

マイクロソフトはこれをベースにMicrosoft RPC(MSRPC)を実装し、Windows環境で使用しています。

XML-RPC

XMLを使ってデータをエンコードし、HTTPを通信プロトコルとして使うRPC方式。

人間にも読みやすいXML形式を使うため、デバッグがしやすいという利点があります。

JSON-RPC

2000年代後半に登場した、非常にシンプルなRPCプロトコル。

JSONでデータをエンコードするため、JavaScriptとの親和性が高く、Web開発で使いやすい特徴があります。

gRPC

Googleが開発した、現代的なRPC実装。

Protocol BuffersというバイナリフォーマットとHTTP/2を使用し、高速な通信を実現しています。マイクロサービスアーキテクチャでよく採用される技術です。

Java RMI

Javaのオブジェクト指向プログラミングに対応したRPC実装。

RPCがオブジェクト指向言語で使われる場合、RMI(Remote Method Invocation:リモートメソッド呼び出し)と呼ばれることがあります。

RPCのメリット

RPCには多くの利点があります。

開発効率の向上

最大のメリットは、プログラマがネットワーク通信の詳細を意識せずにプログラミングできること。

通常、ネットワーク通信を実装するには、ソケット通信やプロトコルの処理など、複雑なコードを書く必要があります。RPCを使えば、普通の関数呼び出しを書くだけで済むため、開発効率が大幅に向上するんですね。

プラットフォームの透過性

互換性のあるRPC規格を採用していれば、機種やOS、プログラミング言語が異なっていても通信できます。

例えば、Windowsで動くクライアントから、Linuxで動くサーバの関数を呼び出すといったことが可能。これは分散システムを構築する上で非常に重要な特徴です。

分散システムの構築

RPCは、クライアント・サーバシステムや分散システムを実現する基盤技術として広く使われています。

処理を複数のサーバに分散させることで、システムの拡張性や可用性を高められます。

モジュラー設計

アプリケーションの異なる部分を独立して開発し、RPCを通じて連携させることができます。

これにより、大規模なシステムでもコンポーネントごとに分割して開発でき、保守性が向上します。

RPCのデメリットと課題

一方で、RPCにはいくつかの制約や課題もあります。

ネットワーク障害への脆弱性

ローカルの関数呼び出しと大きく異なる点は、予測できないネットワーク上の問題で失敗する可能性があることです。

ネットワークが切断されたり、サーバがダウンしたりすると、RPCは失敗します。また、処理が実際に実行されたかどうかをクライアントが知れない場合もあるんですね。

そのため、タイムアウト処理やエラーハンドリングを適切に実装する必要があります。

パフォーマンスの低下

リモートプロシージャコールは、ローカルの関数呼び出しに比べて処理時間が長くなります。

ネットワーク通信のオーバーヘッドや、データのマーシャリング・アンマーシャリングに時間がかかるためです。頻繁に呼び出す必要がある処理には向かない場合があります。

パラメータの制限

RPCでは値渡しのパラメータしか使えず、ポインタ渡しはできません。

これは、異なるアドレス空間を持つコンピュータ間では、ポインタが意味を持たないためです。大量のデータを扱う場合には工夫が必要になります。

実装間の非互換性

様々なRPC実装が存在し、それらの間には互換性がありません。

ONC RPCとMicrosoft RPCでは通信プロトコルやデータ形式が異なるため、異なる実装同士では直接通信できないんですね。

RPCの実際の使用例

RPCは様々な場面で活用されています。

ネットワークファイルシステム(NFS)

NFSは、ONC RPCを基盤技術として使用しています。

ネットワーク上の別のコンピュータにあるファイルを、まるでローカルにあるかのようにアクセスできる仕組みを実現しています。

マイクロサービスアーキテクチャ

現代のWebアプリケーション開発では、gRPCがマイクロサービス間の通信によく使われています。

各サービスが独立して動作しながら、RPCを通じて連携することで、スケーラブルなシステムを構築できます。

データベース接続

多くのデータベースシステムは、クライアントとサーバ間の通信にRPCの概念を使用しています。

アプリケーションからデータベースへのクエリ実行も、広い意味ではRPCの一種と言えるでしょう。

RPCとRESTの違い

WebのAPI設計では、RPCとREST(Representational State Transfer)がよく比較されます。

アプローチの違い

RPCは「関数やアクション」に焦点を当てています。クライアントは「この処理を実行してほしい」という形でサーバに依頼します。

一方RESTは「リソースやオブジェクト」に焦点を当て、HTTPのGET、POST、PUT、DELETEなどの動詞を使ってリソースを操作する設計です。

呼び出し方法の違い

RPCでは、クライアントは関数名とパラメータを事前に知っている必要があります。通常HTTP POSTを使って特定の関数を名前で呼び出します。

RESTでは、リソースのURLとHTTP動詞だけを知っていればよく、個々の関数名を意識する必要がありません。

使い分け

RPCは複雑な計算処理やリモートでの処理実行が必要な場合に適しています。

RESTはデータの作成・読み取り・更新・削除(CRUD操作)を行う場合に適しており、現代のWeb APIでは主流の設計手法となっています。

RPCを使う際の注意点

RPCを効果的に使うためには、いくつかのポイントに注意が必要です。

エラーハンドリングの実装

ネットワーク障害やサーバのエラーに備えて、適切なエラーハンドリングを実装しましょう。

タイムアウト時間を設定し、タイムアウトが発生した場合の処理を明確に定義することが重要です。多くのRPCフレームワークは、タイムアウト時に例外をスローする仕組みを提供しています。

冪等性の考慮

冪等性(idempotency)とは、同じ操作を複数回実行しても結果が変わらない性質のこと。

ネットワーク障害でRPCが失敗した場合、再試行する必要がありますよね。このとき、冪等性のある処理なら問題ありませんが、冪等性のない処理(例:銀行の送金)は複数回実行されると問題が発生します。

処理の設計時に冪等性を意識することが大切です。

セキュリティ対策

RPCを使う場合、認証と暗号化を適切に実装する必要があります。

不正なクライアントからの呼び出しを防ぐための認証機構や、通信内容の盗聴を防ぐための暗号化(TLS/SSLなど)を設定しましょう。

まとめ

RPC(Remote Procedure Call)は、ネットワーク上の別のコンピュータにあるプログラムを、ローカルの関数のように呼び出せる技術です。

開発者はネットワーク通信の複雑な詳細を意識せずにプログラミングでき、開発効率が大幅に向上します。クライアント・サーバシステムや分散システムを構築する基盤技術として、長年にわたって使われてきました。

ONC RPC、XML-RPC、JSON-RPC、gRPCなど様々な実装があり、それぞれの特徴を理解して用途に応じて使い分けることが重要です。

ただし、ネットワーク障害への脆弱性やパフォーマンスの問題など、いくつかの課題もあります。適切なエラーハンドリングやセキュリティ対策を実装することで、これらの課題に対処できるでしょう。

現代のマイクロサービスアーキテクチャやクラウドコンピューティングにおいても、RPCの概念は重要な役割を果たし続けています。分散システムの開発に携わるなら、RPCの仕組みをしっかり理解しておくことが、より良いシステム設計につながるはずです。

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