Macでファイルの所有者を変更したい時に使われるコマンドが「chown(チェンオウン)」です。
特に複数のユーザーでMacを使用していたり、アクセス権の管理が必要な場面では、このコマンドの使い方を理解しておくことが重要です。
この記事では、chownの基本構文から注意点までを初心者にもわかりやすく解説します。
安全に使えるよう、実際の例も豊富に紹介していきます。
こんな時にchownが役立ちます
- 複数のユーザーでMacを共有している
- 外部から取得したファイルの所有者を変更したい
- プログラム開発でファイルのアクセス権を調整したい
- ファイルサーバーの権限管理をしたい
それでは、まずchownコマンドの基本から学んでいきましょう。
chownとは?

chownコマンドの意味
chownは、「change owner(所有者を変更)」の略で、ファイルやディレクトリの所有者やグループを変更するためのコマンドです。
なぜ所有者の変更が必要なのか
Macでは、すべてのファイルとディレクトリに「所有者」と「グループ」が設定されています。これにより:
- 誰がファイルを読めるか
- 誰がファイルを変更できるか
- 誰がファイルを実行できるか
が決まります。chownを使うことで、これらの権限を適切に管理できるようになります。
基本構文
sudo chown [新しい所有者][:グループ] ファイル名
具体的な使用例
sudo chown taro:staff example.txt
この例の意味:
sudo
:管理者権限で実行chown
:所有者変更コマンドtaro
:新しい所有者のユーザー名staff
:新しいグループ名example.txt
:変更対象のファイル
実行結果:「example.txt」の所有者がtaro、グループがstaffに変更されます。
現在の所有者を確認する方法
変更する前に、現在の所有者を確認してみましょう。
ls -l example.txt
表示例:
-rw-r--r-- 1 hanako admin 1024 12月 15 10:30 example.txt
この場合、所有者は「hanako」、グループは「admin」です。
基本の構文を理解すれば、あとはケースごとの応用ができます。次は、実際によく使われるパターンを見ていきましょう。
実用例:よく使うchownのパターン

パターン1:所有者だけを変更する
グループはそのままで、所有者だけを変更したい場合:
sudo chown hanako file.txt
説明:
- 所有者を「hanako」に変更
- グループは変更されない(現在のままを維持)
実行前後の比較例:
# 実行前
-rw-r--r-- 1 taro admin 1024 12月 15 10:30 file.txt
# 実行後
-rw-r--r-- 1 hanako admin 1024 12月 15 10:30 file.txt
パターン2:所有者とグループを一括変更
所有者とグループを同時に変更したい場合:
sudo chown taro:admin /path/to/file
説明:
- 所有者を「taro」に変更
- グループを「admin」に変更
- コロン(:)で区切って指定
パターン3:グループだけを変更する
所有者はそのままで、グループだけを変更したい場合:
sudo chown :staff file.txt
説明:
- コロンの前を空白にする
- グループのみ「staff」に変更
- 所有者は変更されない
パターン4:ディレクトリ配下すべてを変更(再帰的)
フォルダの中身すべてを一度に変更したい場合:
sudo chown -R taro:staff /Users/taro/Documents
説明:
-R
オプション:再帰的(Recursive)に実行- Documentsフォルダ以下すべてのファイル・ディレクトリが対象
- 所有者を「taro」、グループを「staff」に変更
パターン5:複数ファイルを一度に変更
複数のファイルを同時に変更したい場合:
sudo chown hanako:admin file1.txt file2.txt file3.txt
ワイルドカードを使って、同じ拡張子のファイルをまとめて変更:
sudo chown hanako:admin *.txt
パターン6:現在のユーザーに所有権を移す
自分自身に所有権を移したい場合:
sudo chown $(whoami):staff file.txt
説明:
$(whoami)
:現在ログインしているユーザー名を自動取得- 手動でユーザー名を入力する必要がない
chownは単体でも強力ですが、再帰オプションと組み合わせることで、より効率的に運用できます。
ただし、強力なコマンドであるため、使用時には注意が必要です。
次は、安全に使うための注意点を確認しましょう。
注意点とトラブル回避
基本的な注意点
1. sudoが必要
所有権の変更には管理者権限が必要です。
# ❌ これはエラーになる
chown taro file.txt
# ✅ 正しい方法
sudo chown taro file.txt
sudoを使うと、パスワードの入力が求められます。
2. 誤操作による影響を理解する
所有権を間違えると、以下のような問題が起こる可能性があります:
- 他のユーザーがファイルにアクセスできなくなる
- アプリケーションが正常に動作しなくなる
- システムが不安定になる
3. システムファイルは絶対に触らない
システムディレクトリ(/System、/usr、/binなど)の所有権を変更すると、macOSの動作に深刻な影響を与える可能性があります。
安全な使い方のコツ
事前確認を必ず行う
# 変更前に現在の状況を確認
ls -l ファイル名
# 変更後に結果を確認
sudo chown 新しい所有者 ファイル名
ls -l ファイル名
小さな範囲から始める
# ❌ いきなり大きなディレクトリを変更するのは危険
sudo chown -R taro:staff /Users
# ✅ まずは小さなディレクトリで試す
sudo chown -R taro:staff /Users/taro/test_folder
バックアップを取る
重要なファイルの所有権を変更する前は、バックアップを取っておきましょう。
# ファイルをコピーしてバックアップ
cp important_file.txt important_file_backup.txt
トラブルが起きた時の対処法
元の所有者に戻す
間違って変更してしまった場合は、元に戻すことができます:
# 元の所有者「hanako」、グループ「admin」に戻す
sudo chown hanako:admin file.txt
権限エラーが出た場合
「Permission denied」エラーが出た場合:
- sudoを使っているか確認
- 管理者パスワードが正しいか確認
- ファイルが存在するか確認
よくある質問と解決方法
Q: chownしたのにアクセスできない A: 所有権だけでなく、アクセス権限(読み書き実行権限)も確認してください。
# アクセス権限を確認
ls -l file.txt
# アクセス権限を変更(必要に応じて)
sudo chmod 644 file.txt
Q: 複数のファイルを安全に変更したい A: まず1つのファイルで試してから、範囲を広げましょう。
# 1つずつ試す
sudo chown taro:staff file1.txt
sudo chown taro:staff file2.txt
# 問題なければまとめて実行
sudo chown taro:staff *.txt
実際の活用シーン

シーン1:外部から取得したファイルの権限調整
USB メモリーや外部サーバーから取得したファイルの所有権を調整:
# 外部ファイルを自分の所有に変更
sudo chown $(whoami):staff /Volumes/USB/downloaded_files/*
シーン2:開発プロジェクトの権限統一
チーム開発で、プロジェクトファイルの所有権を統一:
# プロジェクトディレクトリ全体の所有権を統一
sudo chown -R developer:dev-team /Users/shared/project
シーン3:Webサーバーファイルの権限設定
Webサーバー用ファイルの所有権を適切に設定:
# Webサーバー用ユーザーに所有権を変更
sudo chown -R www:www /usr/local/var/www
まとめ
Macのchownコマンドは、正しく使えば非常に便利な所有権管理ツールです。ファイルのアクセス権を制御したい場面で、ぜひ活用してみてください。
この記事の要点
- chownは所有者とグループを変更するコマンド
- sudoを使って管理者権限で実行する
- -Rオプションでディレクトリ配下すべてを一括変更
- システムファイルは絶対に変更しない
- 事前確認とバックアップが安全使用のカギ
安全に使うためのチェックリスト
- [ ] 変更前に現在の所有権を確認した
- [ ] システムディレクトリではないことを確認した
- [ ] 重要なファイルのバックアップを取った
- [ ] まず小さな範囲で試した
- [ ] 変更後に結果を確認した
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