デザイン系の学校や会社を見ると、ほとんどがMacを使っていますよね。
「Windowsじゃダメなの?」
「なんでみんなMacなんだろう?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
実は、イラストレーターやデザイナーがMacを使うのには、歴史的な理由と実用的な理由の両方があるんです。
この記事では、なぜデザイン業界でMacが主流になったのか、そして現在もMacが選ばれ続けている理由について、分かりやすく解説していきます。
まずは歴史から:なぜMacがデザイン業界の標準になったのか

Adobe IllustratorはMac専用ソフトとして誕生した
実は、Adobe Illustratorが最初に登場したのは1987年で、Mac専用のソフトだったんです。Windows版が出たのは、それから約9年後の1996年でした。
つまり、長い間「イラストレーターを使う=Macを使う」が当たり前だったということですね。
DTP革命の中心にいたのがMac
1985年、デザインと印刷の世界が大きく変わる「DTP革命」が起こりました。DTP(デスクトップパブリッシング)とは、パソコンを使って印刷物を作る技術のことです。
この時期に登場したのが以下の3つ:
- Appleのマッキントッシュ(Mac)
- AdobeのPostScript(印刷技術)
- PageMaker(レイアウトソフト)
これらが組み合わさることで、それまで専門的な機材が必要だった印刷物の制作が、パソコンでできるようになったんです。
そして、この革命の中心にいたのがMacでした。
印刷会社やデザイン事務所がMacを選んだ理由
当時のMacには、デザインや印刷に適した特徴がありました。
Macが優れていた点
- フォントの扱いが安定していた
- カラーマネジメント(色の管理)が優れていた
- 画面表示の精度が高かった
- 印刷機との接続性が良かった
一方、1990年代のWindowsは、主にビジネス用途(文書作成や表計算など)に特化していました。グラフィック作業には、まだまだ不向きだったんですね。
こうして「デザイン業界=Mac」という文化が業界全体に根付いていきました。
現在もMacが選ばれる実用的な理由
歴史的な背景は分かりました。では、技術が進歩した現在でも、Macが選ばれ続けているのはなぜでしょうか?
1. 高性能なMシリーズチップ
2020年から、Appleは独自開発の「Mシリーズチップ」を搭載したMacを発売しています。
これが、デザイン作業において大きな性能向上をもたらしました。
Mシリーズチップの特徴
- PhotoshopやIllustratorの動作が以前より80%高速化
- 電力効率が良く、バッテリーが長持ち
- 複数のアプリを同時に使ってもサクサク動く
- 熱くならず、ファンの音も静か
特に、MacBook Airはファンレス設計(冷却ファンがない)なので、どんなに作業しても静かなのが嬉しいポイントです。
2. 美しい高品質ディスプレイ
イラストレーターにとって、画面の美しさは非常に重要ですよね。
Macのディスプレイには、以下の特徴があります:
- Retinaディスプレイ:細かい部分まで鮮明に表示される
- 色の正確さ:印刷時の色と画面上の色が近い
- ガラス製:プラスチック製より発色が美しい
細かいイラストを描くときや、色を調整するときに、この画面の美しさが作業効率を大きく左右するんです。
3. Apple製品間の連携が便利
すでにiPhoneやiPadを持っている人にとって、Macを使うメリットは大きいです。
Apple製品同士の連携例
- iPadで描いたスケッチをMacですぐに開ける
- iPhoneで撮った写真が自動的にMacに同期される
- AirDropで簡単にファイルを送受信できる
- どのデバイスからでもメモやメールにアクセスできる
作業を始めたデバイスと違うデバイスで続きができるのは、本当に便利です。
4. macOSのシンプルさと安定性
macOSは、Windowsに比べてシンプルで使いやすいと言われています。
macOSの特徴
- 頻繁なアップデートが少ない(Windowsは毎日のように更新が来ることも)
- システムが安定していて、クラッシュしにくい
- 初期設定が簡単
- ウイルス対策ソフトがなくても比較的安全
デザイナーの多くはIT専門家ではないので、「電源を入れたらすぐに作業を始められる」という点が重要なんですね。
5. ジェスチャーコントロールとMission Control
Macのトラックパッド(タッチパッド)は、ガラス製で非常に滑らかです。
そして、指の動きで様々な操作ができるジェスチャーコントロールが充実しています。
便利なジェスチャー
- 3本指でスワイプ:ウィンドウを切り替える
- ピンチイン・アウト:拡大縮小する
- 2本指でスクロール:スムーズにページを移動
また、Mission Controlという機能を使えば、複数のデスクトップを切り替えて、プロジェクトごとに作業環境を分けることができます。
Illustratorで作業しながら、Photoshop、メール、ブラウザを素早く切り替えられるのは、作業効率アップに繋がります。
6. Quick Look機能が便利
これは地味ですが、デザイナーにとって超便利な機能があります。
それがQuick Lookです。
ファイルを選択してスペースキーを押すだけで、アプリを起動せずに中身をプレビューできるんです。
Quick Lookの便利さ
- PhotoshopやIllustratorのファイルを一瞬で確認できる
- アプリの起動を待つ必要がない
- 大量のファイルから目的のものを素早く見つけられる
Windowsにも似た機能はありますが、Macの方が高速で快適だと感じる人が多いです。
WindowsよりMacが優れているわけではない

ここまでMacの良い点を挙げてきましたが、正直に言うと、現在ではWindowsとMacの性能差はほとんどなくなっています。
Adobe製品はどちらのOSでも同じように動く
PhotoshopやIllustratorなどのAdobe製品は、MacでもWindowsでも同じように使えます。
機能や操作方法に大きな違いはありません。
Windowsにもメリットがある
実は、Windowsにも大きなメリットがあるんです。
Windowsの優れている点
- 価格が安い:同じ性能でもMacより安く買える
- カスタマイズ性が高い:パーツを交換・アップグレードできる
- 周辺機器の選択肢が多い:様々なメーカーの機器を使える
- ゲームもできる:ゲーム用としても使える
特にコストパフォーマンスでは、Windowsの方が圧倒的に優れています。
同じ価格なら、Windowsの方が高性能なパソコンを買えることが多いです。
最近はWindowsユーザーも増えている
実際、最近ではWindowsを使うデザイナーも増えてきています。
Windowsユーザーが増えている理由
- 高性能なWindowsパソコンが手頃な価格で手に入る
- ゲームや動画編集もしたいという人が多い
- パーツを自分で選んでカスタマイズできる自由度を好む人がいる
- 若い世代は最初からWindowsに慣れている人も多い
性能面での差がほとんどなくなった今、Macを選ぶかWindowsを選ぶかは、個人の好みや予算によるところが大きいんです。
Macを選ぶべき人、Windowsでも良い人
では、どんな人がMacを選ぶべきで、どんな人がWindowsでも良いのでしょうか?
Macがおすすめな人
- すでにiPhoneやiPadを持っていて、連携機能を活用したい人
- デザイン会社や印刷会社で働く予定で、職場がMac環境の人
- シンプルで使いやすいOSを求める人
- バッテリー持ちを重視する人(MacBook系)
- 軽量で持ち運びやすいノートパソコンが欲しい人
Windowsでも問題ない人
- 予算を抑えたい人
- 高性能なパソコンをできるだけ安く手に入れたい人
- 自分でパーツを選んでカスタマイズしたい人
- ゲームや動画編集など、デザイン以外の用途にも使いたい人
- すでにWindowsに慣れていて、わざわざ変える必要がない人
どちらを選んでも大丈夫!大切なのは作品の質

結局のところ、MacでもWindowsでも、素晴らしいイラストやデザインを作ることはできます。
本当に重要なのは以下の3点です:
- スペックが十分か:メモリ16GB以上、ストレージ256GB以上が理想
- 自分が使いやすいか:慣れているOSの方が作業効率が良い
- 予算に合っているか:無理して高いパソコンを買う必要はない
最低限必要なスペックの目安
Macの場合
- CPU:M2チップ以上(M3やM4ならなお良い)
- メモリ:16GB以上(8GBでも軽い作業なら可能)
- ストレージ:256GB以上(できれば512GB)
Windowsの場合
- CPU:Intel Core i5(第13世代以上)またはAMD Ryzen 5以上
- メモリ:16GB以上
- ストレージ:SSD 256GB以上(できれば512GB)
- グラフィック:内蔵GPUでも可能だが、専用GPUがあると快適
よくある質問
Q. 学校でMacを使っているけど、自宅はWindowsでも大丈夫?
A. 全く問題ありません。Adobe製品は両方のOSで同じように動きますし、ファイルの互換性もあります。ただし、ショートカットキーが多少違うので、両方を使い分けるには少し慣れが必要です。
Q. MacBook AirとMacBook Pro、どっちを選べばいい?
A. 一般的なイラスト制作なら、MacBook Airで十分です。ただし、以下の場合はMacBook Proを検討してください:
- 5000×3000ピクセル以上の大きなイラストを描く
- レイヤーを100枚以上使う
- PhotoshopとIllustratorを同時に開いて作業する
- 動画編集もする
Q. 中古のMacを買っても大丈夫?
A. 2020年以降のMシリーズチップ搭載モデル(M1、M2、M3)なら中古でも十分使えます。ただし、それ以前のIntelチップ搭載モデルは性能が大きく劣るので、おすすめしません。
Q. Windowsの方が安いなら、Windowsでいいのでは?
A. その通りです。コストパフォーマンスを重視するなら、Windowsの方が良い選択です。
特に予算が限られている場合は、無理してMacを買うより、同じ予算で高性能なWindowsパソコンを買う方が賢明かもしれません。
まとめ:歴史と文化、そして実用性
イラストレーターやデザイナーがMacを使う理由は、以下のようにまとめられます。
歴史的な理由
- IllustratorがMac専用ソフトとして誕生した
- DTP革命の中心にMacがいた
- 印刷・デザイン業界でMacが標準になった
技術的な理由
- Mシリーズチップによる高性能化
- 美しいRetinaディスプレイ
- Apple製品間の優れた連携機能
- 安定したmacOS
- バッテリー持ちの良さ
文化的な理由
- デザイン業界でMacが標準という認識
- 学校や会社がMac環境
- 先輩デザイナーから受け継がれてきた
ただし、現在では:
- WindowsとMacの性能差はほとんどない
- Adobe製品は両方で同じように使える
- Windowsの方がコストパフォーマンスが高い
- 最終的には個人の好みと予算次第
どちらを選んでも、素晴らしい作品は作れます。
大切なのは、パソコンのブランドではなく、あなたの創造性とスキルです。
自分の予算や使い方に合ったパソコンを選んで、思う存分イラスト制作を楽しんでくださいね!


コメント