「Linuxをインストールするとき、/bootって何?」
「ブートパーティションの容量がいっぱいになった…」
「なぜ別のパーティションに分けるの?」
Linuxを使っていると、こんな疑問や問題に出くわすことがあります。
実は、ブートパーティション(/boot)は、あなたのコンピュータが起動するために絶対に必要な重要な領域なんです。この記事では、/bootの役割から管理方法まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。
読み終わる頃には、ブートパーティションの重要性がしっかり理解できますよ!
ブートパーティション(/boot)とは?システムの「起動装置」

ブートパーティションとは、Linuxシステムの起動に必要なファイルを保存するための専用領域のこと。
コンピュータの電源を入れてから、実際にOSが動き出すまでの「準備エリア」だと思ってください。
パーティションって何?
パーティションとは、ハードディスクやSSDを論理的に区切った領域のこと。一つの物理ドライブを、複数の独立した「部屋」に分けて使うイメージです。
実例:
500GBのSSDを、以下のように分けることができます:
- ブートパーティション:1GB
- ルートパーティション(/):100GB
- ホームパーティション(/home):残り全部
/bootディレクトリに入っているもの
ブートパーティションには、以下のような重要なファイルが格納されています。
1. Linuxカーネル(vmlinuz)
Linuxの心臓部であるカーネルの実行ファイルです。
カーネルとは、ハードウェアとソフトウェアの橋渡しをする、OSの中核部分のこと。これがないとシステムは動きません。
ファイル名の例:
vmlinuz-5.15.0-56-generic
数字の部分はカーネルのバージョンを表しています。
2. 初期RAMディスク(initrd/initramfs)
システム起動時に最初に読み込まれる一時的なファイルシステムです。
役割:
- ルートパーティションをマウント(接続)するための準備
- 必要なドライバの読み込み
- 暗号化されたディスクの解除
ファイル名の例:
initrd.img-5.15.0-56-generic
カーネルとセットで使われます。
3. ブートローダー設定(GRUB)
GRUB(グラブ)は、どのOSを起動するかを選択する画面を表示するプログラムです。
設定ファイルの場所:
/boot/grub/grub.cfg
デュアルブート(WindowsとLinuxの両方をインストール)している場合、起動時に表示される選択メニューがGRUBです。
4. System.map
カーネルのシンボル情報が記録されたファイル。主にデバッグ(問題の調査)に使われます。
5. config
カーネルがどのような設定でコンパイルされたかを記録したファイルです。
なぜ/bootを別パーティションに分けるのか?
「全部ルートパーティション(/)に入れればいいじゃない?」と思うかもしれませんね。実は、分ける理由がいくつかあるんです。
理由1:古いBIOSの制限への対応
昔のBIOS(Basic Input/Output System)には、ディスクの最初の1024シリンダー(約8GB)以内にあるファイルしか読み込めないという制限がありました。
/bootを別パーティションにして、ディスクの先頭に配置することで、この制限を回避できたんです。
注意:
現代のUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)システムでは、この制限はありません。
理由2:ルートパーティションが破損しても起動可能
ルートパーティション(/)に問題が起きても、/bootが別パーティションなら、修復モードで起動できる可能性があります。
理由3:特殊なファイルシステムの使用
ルートパーティションをBtrfs、ZFS、LVMなどの高度なファイルシステムで構成する場合、/bootは単純なext4などで分けておくと安全です。
理由:
起動時には複雑なファイルシステムを扱えないため、シンプルな形式の/bootが必要になります。
理由4:暗号化への対応
ルートパーティション全体を暗号化する場合、/bootは暗号化しない別パーティションにする必要があります。
暗号化されたパーティションは、そこに入っている解除プログラム自体も読めないという矛盾が生じるためです。
現代のシステムでは分けなくてもいい?
実は、最近のLinuxディストリビューションでは、/bootを別パーティションにしなくても問題ないことが多いです。
分けなくても良いケース
- 単純な構成:ext4でルートパーティションだけ
- UEFIシステム:BIOSの制限がない
- 暗号化しない:ディスク全体を平文で保存
多くの初心者向けインストーラーは、自動パーティション設定で/bootを分けない構成を選択します。
分けた方が良いケース
- ディスク全体の暗号化
- LVM、Btrfs、ZFSなどの使用
- マルチブート環境(複数のOSをインストール)
- サーバー環境(保守性を重視)
ブートパーティションの適切なサイズ
/bootパーティションを作る場合、どれくらいのサイズが適切なのでしょうか?
推奨サイズ
- 最小: 200MB
- 推奨: 500MB〜1GB
- 余裕を持たせる: 1〜2GB
なぜこのサイズ?
カーネルファイルは一つあたり10〜15MB程度ですが、システムアップデートで複数のバージョンが保存されます。
実例:
Ubuntu系では、通常3〜4世代のカーネルが保存されます。カーネル本体とinitramfsを合わせると、一世代で約50〜100MBになることも。
複数のカーネルバージョンを保持するため、余裕を持ったサイズが必要なんです。
ブートパーティションの容量不足問題
よくあるトラブルが「/bootの容量不足」です。
症状
- システムアップデートが失敗する
- 新しいカーネルがインストールできない
- 「/bootに空き容量がありません」というエラー
原因
古いカーネルが削除されずに溜まっている状態です。
解決方法
古いカーネルを削除して空き容量を確保しましょう。
ステップ1:現在使用中のカーネルを確認
uname -r
このコマンドで表示されたバージョンは削除してはいけません。
ステップ2:インストール済みカーネルを一覧表示
dpkg --list | grep linux-image
複数のバージョンが表示されます。
ステップ3:古いカーネルを削除(Ubuntu/Debian系)
sudo apt autoremove --purge
このコマンドで、使われていない古いカーネルが自動的に削除されます。
手動で削除する場合:
sudo apt remove linux-image-5.15.0-52-generic
sudo apt remove linux-image-5.15.0-53-generic
バージョン番号は、先ほどの一覧から選びます。ただし、現在使用中のものは絶対に削除しないでください。
ステップ4:設定を更新
sudo update-grub
GRUBの設定を更新して、削除したカーネルをメニューから除外します。
EFIシステムパーティション(ESP)との違い
「/bootとEFIパーティションって違うの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
EFIシステムパーティション(ESP)とは
UEFIシステムで使われる特別なパーティションで、通常は/boot/efiにマウントされます。
役割:
- UEFIブートローダー(GRUBなど)の保存
- UEFIファームウェアが直接読み込むファイルの保存
ファイルシステム:
FAT32形式(UEFIの仕様で決まっています)
サイズ:
100MB〜500MB程度
/bootとの関係
UEFIシステムでは、以下のような構成になります:
/boot(ext4など、カーネルとinitramfsを保存)
└─ /boot/efi(FAT32、EFIシステムパーティション)
つまり、/bootの中に/boot/efiがマウントされる階層構造です。
ブートパーティションの確認方法
自分のシステムで/bootがどうなっているか確認してみましょう。
コマンド1:マウント状況を確認
df -h | grep boot
出力例:
/dev/sda1 976M 156M 753M 18% /boot
/dev/sda2 511M 5.3M 506M 2% /boot/efi
この例では、/bootは976MB、/boot/efiは511MBで、それぞれ別パーティションになっています。
コマンド2:パーティション構成を確認
lsblk
出力例:
NAME MAJ:MIN RM SIZE RO TYPE MOUNTPOINT
sda 8:0 0 500G 0 disk
├─sda1 8:1 0 1G 0 part /boot
├─sda2 8:2 0 512M 0 part /boot/efi
└─sda3 8:3 0 498.5G 0 part /
ディスク構成が視覚的に分かります。
コマンド3:使用量を詳しく確認
du -sh /boot/*
/boot内の各ファイルやディレクトリのサイズが表示されます。
ブートパーティションのベストプラクティス
システム管理のための推奨事項をまとめます。
1. 適切なサイズを確保
新規インストール時は、1GB程度を確保しておくと安心です。
2. 定期的にクリーンアップ
古いカーネルが溜まりやすいので、定期的にチェックして削除しましょう。
3. 自動削除の設定(Ubuntu/Debian系)
/etc/apt/apt.conf.d/50unattended-upgradesを編集して、古いカーネルを自動削除する設定ができます。
4. バックアップを取る
/bootの内容も定期的にバックアップしておくと、トラブル時に復旧しやすくなります。
よくある質問

Q1. /bootを削除してしまったらどうなる?
システムが起動しなくなります。復旧には、LiveUSBから起動して/bootを復元する必要があります。絶対に削除しないでください。
Q2. /bootのファイルを手動で削除しても大丈夫?
ダメです。必ずパッケージマネージャー(aptやdnfなど)を使って削除してください。手動削除すると、システムの整合性が崩れます。
Q3. デュアルブート環境での注意点は?
WindowsとLinuxのデュアルブートでは、両方のOSが同じEFIシステムパーティションを共有します。WindowsやLinuxのどちらかを再インストールする際は、EFIパーティションを誤って削除しないよう注意が必要です。
Q4. SSDとHDDで違いはある?
基本的な仕組みは同じですが、SSDの方が起動が速いです。/bootをSSDに配置すれば、システムの起動速度が向上します。
トラブルシューティング
問題:起動時にGRUB画面が表示されない
原因:
ブートローダーの設定が壊れている可能性があります。
解決方法:
- LiveUSBで起動
- /bootをマウント
- GRUBを再インストール
sudo mount /dev/sda1 /mnt/boot
sudo grub-install /dev/sda
sudo update-grub
問題:カーネルパニックで起動しない
原因:
新しいカーネルに問題がある可能性があります。
解決方法:
- GRUB画面で「Advanced options」を選択
- 古いカーネルで起動
- 問題のあるカーネルを削除
- システムを更新
まとめ:ブートパーティションはシステムの心臓部
ブートパーティション(/boot)は、Linuxシステムが起動するために絶対に必要な領域です。
重要ポイント:
- 起動に必要なファイル(カーネル、initramfs、GRUBなど)を保存
- 推奨サイズは500MB〜1GB
- 現代のシステムでは分けなくても良い場合もある
- 暗号化や特殊なファイルシステムを使う場合は分離が必要
/bootに含まれる主なファイル:
- vmlinuz(カーネル本体)
- initrd/initramfs(初期RAMディスク)
- grub.cfg(ブートローダー設定)
容量不足の対処法:
- 古いカーネルを削除(sudo apt autoremove –purge)
- 定期的なクリーンアップ
- 適切なサイズでパーティション作成
EFIシステムパーティション(ESP):
- UEFIシステムで必要
- FAT32形式
- /boot/efiにマウント
- 100〜500MB程度
ブートパーティションは普段意識することは少ないですが、システムの根幹を支える重要な存在です。定期的なメンテナンスを心がけて、快適なLinux環境を保ちましょう!
安定したシステム運用を!

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