ベクトル解析を勉強していると、必ず出会うのが「回転」という概念です。英語では「curl」や「rotation」と呼ばれ、物理学や工学の分野で大活躍しています。
この記事では、一見難しそうな「回転」を、水の流れや風車といった身近なイメージを使って分かりやすく解説していきます。数式だけではピンとこない方も、きっと「なるほど!」と納得できるはずですよ。
回転って何を表しているの?

ベクトル場の「回転」とは、簡単に言えばその場所でどれだけ渦が発生しているかを表す量です。
川の流れを想像してみてください。真っ直ぐ流れている部分では、浮かべた落ち葉はただ流されていくだけですよね。でも、渦が発生している場所では、葉っぱがクルクルと回転しながら流されていきます。
この「クルクル回る強さと向き」を数学的に表現したものが、ベクトル解析における「回転」なんです。
水車で考える回転のイメージ
物理学の教科書でよく使われるのが、小さな水車(パドルホイール)のたとえ話です。
流体の中に小さな水車を浮かべたとき、その水車が回転するかどうか、そしてどの向きに回るかを観察します。水車が回転すれば、そこには「回転」があるということ。回転しなければ、回転はゼロということになります。
さらに面白いのは、水車の軸の向きです。水車を縦に置くか横に置くかで、回転の仕方が変わってきます。この「どの向きの軸で最もよく回転するか」が、回転ベクトルの向きを決めるポイントになっています。
回転の数学的な定義
ここからは少し数学的な話になりますが、できるだけ分かりやすく説明しますね。
三次元空間のベクトル場 F = (F₁, F₂, F₃) があるとき、その回転は次のように定義されます:
rot F = ∇ × F
ここで ∇(ナブラ)は微分演算子、×は外積(クロス積)を表しています。
具体的に成分で書くと、こうなります:
rot F = (∂F₃/∂y – ∂F₂/∂z, ∂F₁/∂z – ∂F₃/∂x, ∂F₂/∂x – ∂F₁/∂y)
各成分が偏微分(部分的な変化率)の差で表されているのが特徴的ですね。この差が「ねじれ具合」を表現しているわけです。
いろいろな呼び方と記号
回転を表す記号には、いくつかのバリエーションがあります:
- rot F (ヨーロッパでよく使われる)
- curl F (英語圏で一般的)
- ∇ × F (ナブラとクロス積を使った表記)
どれも同じ意味です。ちなみに「curl」という名前を最初に提案したのは、電磁気学で有名なジェームズ・クラーク・マクスウェルで、1871年のことでした。
地域や分野によって好まれる記法が違うので、論文や教科書を読むときは注意が必要ですよ。
右手の法則で向きを決める
回転ベクトルの向きは、右手の法則を使って決めます。
右手の指を回転の方向に丸めたとき、親指が指す方向が回転ベクトルの向きになります。これは物理学でよく使われるルールなので、覚えておくと便利です。
反時計回りの回転なら、回転ベクトルは上向き(または手前向き)になり、時計回りなら下向き(または奥向き)になる、というイメージですね。
簡単な具体例で理解しよう

例1: まっすぐ流れる水
ベクトル場 F = (1, 0, 0) を考えてみましょう。
これは、すべての点で x 方向に一定の速さで流れている状態を表しています。川が真っ直ぐ流れているような状況ですね。
この場合、回転を計算すると rot F = (0, 0, 0) となります。つまり回転ゼロ。確かに、真っ直ぐな流れには渦がないので、納得できますよね。
例2: 回転する流れ
ベクトル場 F = (-y, x, 0) はどうでしょうか。
これは xy 平面上で原点を中心に反時計回りに回転する流れを表しています。台風の渦のようなイメージです。
計算すると rot F = (0, 0, 2) となります。z 軸方向に向いた回転ベクトルが出てきましたね。これは、流れが xy 平面内で回転していることを意味しています。
実際にどこで使われているの?
回転は、理論だけでなく実際の問題でも大活躍しています。
流体力学での応用
水や空気の流れを解析するとき、回転は「渦度(うずど)」という量と深く関係しています。渦度とは、流体中の微小な部分がどれだけ回転しているかを表す量のこと。
台風の予測、飛行機の翼周りの空気の流れ、川の渦の発生など、さまざまな現象の理解に役立っています。
電磁気学での重要性
電磁気学では、マクスウェル方程式という非常に重要な法則の中に回転が登場します。
具体的には、磁場の回転が電流や電場の時間変化と関係している、という法則です。これにより、電波の伝わり方や電磁誘導の仕組みを理解できるんですね。
発電機やモーター、無線通信といった技術の基礎になっている数学なんです。
無回転場と保存場の関係

回転がゼロになるベクトル場は、特別な性質を持っています。
rot F = 0 となる場合、そのベクトル場は「無回転場」または「保存場」と呼ばれます。
保存場には面白い性質があって、ある点から別の点まで移動するとき、どんな経路を通っても「仕事」(エネルギーの変化)が同じになるんです。重力場がその代表例ですね。
逆に、回転がゼロでない場合は保存場ではありません。つまり、経路によって必要なエネルギーが変わってくるということです。
ストークスの定理とのつながり
ベクトル解析には、回転に関する重要な定理があります。それがストークスの定理です。
この定理は、曲面上での回転の積分と、その曲面の境界線に沿った線積分を結びつけるもの。微分積分学の基本定理を、より高次元に拡張した形になっています。
物理や工学の問題を解くとき、複雑な面積分を簡単な線積分に置き換えられるので、計算がぐっと楽になるんですよ。
まとめ: 回転は「渦」を数式で表したもの
ベクトル解析の「回転」は、一言で言えばベクトル場の各点における「渦の強さと向き」を表す量です。
小さな水車を浮かべたときに回転するかどうか、どの向きに回転するかを数学的に表現したものと考えると、イメージしやすくなります。

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