建物の高さ、川の幅、星までの距離…
直接測れないものを計算できる魔法の公式、それが**正弦定理(せいげんていり)**です。
どんな三角形でも成り立つ「辺と角度の美しい関係」を使って、見えない距離を計算する方法を、一緒に学んでいきましょう!
正弦定理って何?

基本の公式
a/sinA = b/sinB = c/sinC = 2R
難しそう?でも意味は簡単です。
「向かい合う辺と角のペアで分数を作ると、どれも同じ値になる」
これだけ覚えれば大丈夫!
記号の意味
記号 | 意味 |
---|---|
a, b, c | 三角形の3辺の長さ |
A, B, C | それぞれの対角(向かい合う角) |
R | 外接円の半径 |
2R | 外接円の直径 |
なぜ成り立つの?
すべての三角形は、ちょうど1つの円(外接円)にぴったり収まります。
この円の大きさと、三角形の辺・角の関係が正弦定理なんです。
証明してみよう(高さを使う方法)
中学生でも分かる証明です:
- 垂線を引く 頂点Cから底辺ABに垂線(高さh)を引く
- 2つの直角三角形ができる
左側:sinA = h/b → h = b×sinA 右側:sinB = h/a → h = a×sinB
- 高さは同じ b×sinA = a×sinB
- 整理すると…
a/sinA = b/sinB
どの2辺を選んでも同じ関係が成り立ちます!
いつ使える?使い分けガイド
正弦定理が使える場合
パターン | 分かっているもの | 解の個数 |
---|---|---|
ASA型 | 角-辺-角 | 必ず1つ |
AAS型 | 角-角-辺 | 必ず1つ |
SSA型 | 辺-辺-角 | 0~2個(要注意!) |
余弦定理を使うべき場合
- SAS型:辺-角-辺
- SSS型:辺-辺-辺
角が2つ以上分かっていれば正弦定理、そうでなければ余弦定理!
SSA型の注意点(あいまいな場合)
2つの辺と1つの角から、三角形が:
- 作れない(0個)
- 1つだけ作れる
- 2つ作れる
場合があります。必ず確認しましょう!
実際に解いてみよう
例題1:建物の高さを測る
問題: 地点Aから塔を見上げると30°、100m歩いた地点Bからは45°。塔までの距離は?
解き方:
- 三角形を描く(角A=30°、角B=45°、AB=100m)
- 第3の角:C = 180° – 30° – 45° = 105°
- 正弦定理:AC/sin45° = 100/sin105°
- 計算:AC = 100 × sin45°/sin105° ≈ 73.2m
答え:約73.2m
例題2:SSA型(2つの答え)
問題: a=37、b=55、角A=35°の三角形を解け
解き方:
- 高さチェック:h = 55×sin35° ≈ 31.5
- 37 > 31.5 かつ 37 < 55 → 2つの解がある!
**解1:**角B≈58°、角C≈87°、c≈64.4 **解2:**角B≈122°、角C≈23°、c≈25.2
身近な応用例

GPS(スマホの位置情報)
あなたのスマホの位置は、4つ以上の衛星からの信号を使って計算されています。
衛星1 ────── 衛星2
\ /
\ /
\ /
あなた
衛星が作る巨大な三角形の中で、正弦定理を使って位置を特定!
星までの距離
地球が太陽の周りを回る軌道(直径3億km)を使います:
- 1月に星の位置を測定
- 7月に同じ星を測定(地球は反対側)
- わずかな角度の差(視差)を測定
- 正弦定理で距離を計算
最も近い星(プロキシマ・ケンタウリ)まで4.24光年!
測量の実際
学校の校庭で実験してみよう:
木の高さを測る方法:
- 木から10m離れて角度を測る(例:60°)
- さらに10m離れて角度を測る(例:45°)
- 正弦定理で計算
- 実際の高さと比較
よくある間違いと対策
ミス1:電卓の設定
モード | sin30°の値 | 正しい? |
---|---|---|
度数法(DEG) | 0.5 | ⭕ |
ラジアン(RAD) | -0.988 | ❌ |
必ず度数法(DEG)に設定!
ミス2:対応を間違える
✅ 正しい:辺a ⟷ 角A(向かい合う)
❌ 間違い:辺a ⟷ 角B(隣接)
色分けで対応を明確に!
ミス3:SSA型で1つの解しか求めない
補角(180° – 角度)も忘れずチェック!
練習問題の解き方
解法の4ステップ
- READ(読む)
- 問題を読んで図を描く
- 分かっている情報に印をつける
- CATEGORIZE(分類)
- ASA?AAS?SSA?
- 正弦定理?余弦定理?
- SOLVE(解く)
- 公式に代入
- 電卓で計算
- CHECK(確認)
- 角の和 = 180°?
- 辺の大小関係は正しい?
まとめ:正弦定理の力
正弦定理は、見えない距離を計算できる魔法の道具です。
できるようになること:
✅ 建物の高さを地上から測定
✅ 川幅を渡らずに計算
✅ GPSの仕組みを理解
✅ 星までの距離の求め方を知る
古代の天文学者から現代のGPS技術まで、2000年以上使われてきた定理。
これをマスターすれば、あなたも「見えないものを測る」ことができます。
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