高校の数学で登場する三角関数。「sin」「cos」「tan」といった記号を見るだけで、「これって将来何の役に立つの?」と思った経験はありませんか?
実は三角関数は、私たちの日常生活のあらゆる場面で活躍しているんです。スマートフォンの電波、音楽の音質、ゲームのキャラクターの動き、建物の設計まで——三角関数なしには成り立たない技術がたくさんあります。
この記事では、三角関数の基本から実際の使われ方まで、分かりやすく解説していきますね。
三角関数って何?まずは基本から理解しよう

三角関数とは、角度と辺の長さの関係を表す関数のことです。
もともとは直角三角形の辺の比から始まった概念なのですが、現在では円の動きや波の表現など、さまざまな場面で使われています。
三角関数には主に3つの基本的な関数があります:
- sin(サイン/正弦)
- cos(コサイン/余弦)
- tan(タンジェント/正接)
これらの関数を使うことで、直接測れないものの高さや距離を計算できるんです。
直角三角形で考えるsin・cos・tan
三角形の各辺の名前を覚えよう
まず、直角三角形の各辺には特別な名前がついています。
基準となる角度をθ(シータ)として:
- 斜辺:直角と向かい合う一番長い辺
- 対辺:角度θと向かい合う辺
- 隣辺:角度θと直角に挟まれた辺
この3つの辺の関係から、sin・cos・tanが定義されます。
sin・cos・tanの定義
sin θ(サイン)= 対辺 ÷ 斜辺
cos θ(コサイン)= 隣辺 ÷ 斜辺
tan θ(タンジェント)= 対辺 ÷ 隣辺
つまり、どの辺をどの辺で割るかによって、sinなのかcosなのかtanなのかが決まるわけですね。
覚え方のコツ:「ソーカータ」
三角関数の覚え方として有名なのが「SOHCAHTOA(ソーカートア)」という語呂合わせです。
- SOH → Sine = Opposite(対辺) / Hypotenuse(斜辺)
- CAH → Cosine = Adjacent(隣辺) / Hypotenuse(斜辺)
- TOA → Tangent = Opposite(対辺) / Adjacent(隣辺)
英語版の覚え方ですが、日本語でも「サ・タ・コ」(サインは対斜、タンジェントは対隣、コサインは隣斜)などの覚え方があります。
よく使う角度の三角関数の値
三角関数を使う上で、特定の角度における値を覚えておくと便利です。
基本的な角度の値
| 角度 | sin | cos | tan |
|---|---|---|---|
| 0° | 0 | 1 | 0 |
| 30° | 1/2 | √3/2 | 1/√3 |
| 45° | √2/2 | √2/2 | 1 |
| 60° | √3/2 | 1/2 | √3 |
| 90° | 1 | 0 | (定義されない) |
この表の値は、試験でも実際の計算でもよく使うので、覚えておくと役立ちます。
覚え方のテクニック
sinとcosの値は、次のパターンで覚えられます:
sin 0°, 30°, 45°, 60°, 90° = √0/2, √1/2, √2/2, √3/2, √4/2
cos 0°, 30°, 45°, 60°, 90° = √4/2, √3/2, √2/2, √1/2, √0/2
つまり、sinは√0から√4まで増えていき、cosはその逆に√4から√0まで減っていくんです。
知っておきたい重要な公式
三角関数には、計算を楽にする便利な公式がいくつかあります。
相互関係の公式
sin²θ + cos²θ = 1
この公式は「ピタゴラスの定理」から導かれる、最も基本的な関係式です。sinの値が分かればcosの値を求められますし、その逆も可能になります。
tan θ = sin θ / cos θ
タンジェントは、サインをコサインで割ることで求められます。
単位円での定義
高校数学では、三角関数を単位円(半径1の円)を使って定義します。
単位円の中心を原点として、x軸の正の方向から反時計回りにθだけ回転した点を考えます。このとき:
- その点のy座標がsin θ
- その点のx座標がcos θ
- その点の傾き(y/x)がtan θ
この定義により、90度以上の角度でも三角関数を計算できるようになりました。
三角関数の歴史:古代から現代まで

三角関数の歴史は、なんと約2600年前にまで遡ります。
古代ギリシャの哲学者タレス
古代ギリシャの哲学者タレスは、影の長さを利用してピラミッドの高さを計算しました。これが三角関数の始まりと言われています。
太陽の角度が45度のとき、物体の高さと影の長さが等しくなることに気づいたタレスは、この原理を使ってピラミッドの高さを測定したのです。
古代ギリシャの天文学者ヒッパルコス
ヒッパルコスは、三角関数の基礎を築いた人物として知られています。彼は星の位置を計算するために、三角関数の表を作成しました。
さらに驚くことに、ヒッパルコスは三角関数を使って地球の半径や、地球から月までの距離まで測定したんです!
イスラム世界での発展
中世のイスラム世界では、数学者たちが三角関数をさらに発展させました。天文学の精度を高めるため、より詳細な三角関数表が作られていきました。
三角関数は実際どこで使われているの?
「三角関数なんて社会に出たら使わない」という意見を聞くことがありますが、実際には私たちの生活のあらゆる場面で使われています。
測量・建築の分野
三角関数の最も古くからある使い道が測量です。
建物の高さや山の高さ、土地の距離など、直接測ることが難しいものでも、角度と一部の距離が分かれば三角関数で計算できます。
たとえば、ビルから100m離れた地点で、ビルの頂上を見上げる角度が30度だったとします。この場合、tanの公式を使えばビルの高さを計算できるんです。
現代でも国土地理院が地図を作る際に、三角測量という方法を使っています。
スマートフォンと電波通信
スマートフォンが出す電波は、規則正しい波の形をしています。この波をプログラムで表現する際に、三角関数が使われているんです。
AMラジオやFMラジオ、携帯電話の通信も、すべて三角関数によって制御されています。
音楽と音声処理
音も空気を伝わる波です。音の大きさ、高さ、音色は、すべて波の形で表現できます。
音楽制作ソフトやスマートフォンのボイスレコーダーなど、音声を扱うあらゆる技術で三角関数が活用されています。
ゲームとCG
ゲームでキャラクターがジャンプしたり、回転したりする動きも、三角関数で計算されています。
画像を回転させる処理や、影の長さを計算する際にも三角関数が使われているんです。3Dゲームでは、カメラの位置や角度の計算にも欠かせません。
家電製品
実は家電製品の中でも、三角関数は大活躍しています。
デザインから機能面まで、さまざまな場所で三角関数が使われているんです。エアコンの風向き制御や、洗濯機の回転制御なども、三角関数の計算に基づいています。
よくある疑問:三角関数Q&A
Q1. なぜ「サイン」「コサイン」という名前なの?
A. 「サイン(sine)」という名前は、もともとサンスクリット語の「弦の半分」という意味の言葉から来ています。
これがアラビア語に翻訳され、さらにラテン語に翻訳される過程で「sinus(胸、湾)」という単語になり、最終的に「sine」になったと言われています。
「タンジェント(tangent)」は「接する」という意味のラテン語が由来です。
Q2. 90度以上の角度でも三角関数は使えるの?
A. はい、使えます!
直角三角形での定義では90度までしか扱えませんが、単位円を使った定義により、任意の角度で三角関数を計算できるようになりました。
たとえば、sin 120°やcos 180°なども計算可能です。
Q3. 三角関数の公式が多すぎて覚えられない
A. すべての公式を丸暗記する必要はありません。
基本的な公式(sin²θ + cos²θ = 1など)を覚えておけば、他の公式は導出できることが多いです。
加法定理や倍角の公式なども、基本から導き出せるので、理解することが大切ですね。
Q4. 計算機がない時代はどうしていたの?
A. 昔は「三角関数表」という、角度ごとのsin・cos・tanの値をまとめた表を使っていました。
現代でも教科書の巻末に載っていることがあります。今は電卓やスマートフォンですぐに計算できますが、基本的な値は覚えておくと便利です。
Q5. 波を表現できるって、どういうこと?
A. sin θやcos θのグラフを描くと、きれいな波の形になります。
この性質を利用して、音波、電波、光波、地震波など、あらゆる波動現象を三角関数で表現できるんです。これを「フーリエ解析」と呼び、現代の信号処理技術の基礎になっています。
まとめ:三角関数は私たちの生活を支えている
三角関数は、一見難しそうに見えますが、基本的な考え方は「直角三角形の辺の比」というシンプルなものです。
そして、この基本的な概念が発展して、現代の技術を支える重要な道具になっています。
スマートフォン、音楽、ゲーム、建築、GPS——私たちが何気なく使っているこれらの技術の裏側では、三角関数が活躍しているんです。
「サイン・コサインなんて役に立たない」と言われることもありますが、実際には私たちの生活に欠かせない、とても実用的な数学なんですね。
三角関数を学ぶことで、世界を測り、表現し、理解する新しい方法を手に入れることができます。最初は難しく感じるかもしれませんが、一つひとつ理解していけば、きっと面白さが見えてくるはずです!


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