「前回のテスト98点だったのに、今回75点…勉強サボったわけじゃないのに」
「先月は営業成績トップだったのに、今月は普通…何が悪かったんだろう」
「去年ホームラン王の選手が、今年は普通の成績…衰えたのかな?」
実は、これらには共通の法則が働いています。それが「平均への回帰」という現象です。
簡単に言うと、「極端に良い(悪い)結果の後は、普通の結果に戻りやすい」という統計の法則。これ、運が悪くなったわけでも、実力が落ちたわけでもないんです。自然な現象なんです。
この記事を読めば、「調子の波」の正体が分かり、一喜一憂しなくなります。
さらに、ビジネスや投資、日常生活のあらゆる場面で冷静な判断ができるようになりますよ。
統計の知識ゼロでも大丈夫。一緒に、この不思議で面白い現象を理解していきましょう!
第1章:平均への回帰って、そもそも何?
コイン投げで理解する基本概念
まず、超シンプルな例から:
〈コイン投げ実験〉 コインを10回投げて、表が出た回数を記録:
- 1回目:8回(すごく多い!)
- 2回目:5回(普通)
- 3回目:6回(普通)
- 4回目:2回(すごく少ない!)
- 5回目:5回(普通)
気づきましたか?極端な結果(8回や2回)の後は、普通の結果(5回前後)に戻っています。
これが平均への回帰です。
なぜ「回帰」って言うの?
「回帰」は「元に戻る」という意味:
- 極端に高い → 平均に戻る
- 極端に低い → 平均に戻る
- でも、平均を超えて反対側に行くわけじゃない
つまり、「普通の状態に帰る」ということ。
身近な例で実感する
〈テストの点数〉 クラス平均70点のテストで:
- Aさん:前回95点 → 今回82点
- Bさん:前回45点 → 今回58点
両方とも平均に近づいてますよね。
〈身長の遺伝〉
- とても背の高い親 → 子供は親より少し低いことが多い
- とても背の低い親 → 子供は親より少し高いことが多い
極端な特徴は、次の世代では和らぐんです。
平均への回帰の3つの特徴
覚えておくべきポイント:
- 必ず起こるわけではない
- 傾向であって、絶対法則ではない
- 極端な後にさらに極端もありえる
- 実力の変化ではない
- 調子や運の要素が大きい
- 本当の実力は変わっていないことが多い
- 予測に使える
- 極端な結果は続きにくい
- 長期的には平均に収束する
発見者は有名な学者
この現象を発見したのは、フランシス・ゴルトン(1822-1911):
- ダーウィンのいとこ
- 統計学の父の一人
- 身長の遺伝を研究中に発見
「背の高い親の子は、親ほど高くない」という観察から、この法則を見つけたんです。
この章のまとめ
平均への回帰は「極端な結果の後は普通に戻りやすい」という統計の法則。
コイン投げからテストの点数まで、あらゆる場面で見られます。
次は、なぜこの現象が起こるのか、詳しく見ていきましょう。
第2章:なぜ平均への回帰が起こるのか?
「実力」と「運」の関係
どんな結果にも2つの要素があります:
〈結果の方程式〉 結果 = 実力 + 運(偶然)
例:テストの点数
- 実力:普段の勉強量、理解度
- 運:たまたま得意な問題が出た、体調、ケアレスミス
95点取った時は「実力+幸運」
45点だった時は「実力-不運」
極端な結果には「運」が大きく関わる
〈バスケの例〉 フリースロー成功率70%の選手が10本投げる:
- 10本成功(100%)→ 超ラッキー
- 7本成功(70%)→ 実力通り
- 3本成功(30%)→ 超アンラッキー
10本成功の次は、そこまでラッキーじゃないはず。
だから成功率は下がる(平均に戻る)。
サイコロで完全に理解する
6面サイコロを振って「6」を狙う実験:
〈1回目:10回振って「6」が5回出た〉
- 期待値:1.67回(10÷6)
- 実際:5回
- すごくツイてた!
〈2回目:また10回振る〉
- 前回の結果は関係ない
- 期待値は変わらず1.67回
- だから2回くらいに落ち着く可能性が高い
前回ツイてたからって、今回もツクとは限らない。
これが平均への回帰の正体です。
実力が同じでも結果は変わる
〈マラソンの例〉 実力が全く同じランナーでも:
- 絶好調の日:2時間10分
- 普通の日:2時間15分
- 不調の日:2時間20分
絶好調の次のレースは、たぶん普通。
これも平均への回帰。
よくある誤解を解く
〈誤解1:下手になった〉
× 「前回良かったのに今回悪い → 実力が落ちた」
○ 「前回が出来すぎだっただけ」
〈誤解2:呪いや法則〉
× 「2年目のジンクス」
○ 「1年目が良すぎただけ」
〈誤解3:必ず戻る〉
× 「極端の後は必ず平均」
○ 「平均に戻りやすい傾向がある」
この章のまとめ
平均への回帰は「運の要素が平均化する」から起こります。
実力は変わらなくても、運が普通に戻れば結果も普通に。
これを理解すれば、一喜一憂しなくなります。次は、日常生活でよく見る例を詳しく見ていきましょう。
第3章:身の回りの平均への回帰
スポーツでの平均への回帰
プロ野球でよく見る現象:
〈新人王の2年目〉 1年目:打率.320(新人王!) 2年目:打率.275(普通…)
「2年目のジンクス」って言われるけど、実は平均への回帰。
1年目は実力+幸運だっただけ。
〈月間MVP〉
- 4月:打率.400で月間MVP
- 5月:打率.280
- シーズン通算:.300
4月は出来すぎ。5月で普通に戻った。
学校・勉強での平均への回帰
〈模試の成績〉 偏差値の推移:
- 1回目:偏差値68(やった!)
- 2回目:偏差値62(あれ?)
- 3回目:偏差値63(こんなもんか)
1回目はたまたま得意分野が多かった。
実力は偏差値63くらい。
〈クラスの席替え〉
- 前回:超うるさい席(運が悪い)
- 今回:普通の席(平均的)
- 極端な環境は続きにくい
ビジネス・仕事での平均への回帰
〈営業成績〉 月間売上:
- 1月:300万円(過去最高!)
- 2月:180万円(普通)
- 3月:200万円(普通)
1月は大口顧客がたまたま重なっただけ。
〈株価の動き〉
- 急騰した株 → その後は普通の上昇率に
- 急落した株 → その後は普通まで回復することも
極端な動きは続きにくい。
健康・ダイエットでの平均への回帰
〈体重の変化〉 ダイエット開始:
- 1週目:-3kg(すごい!)
- 2週目:-0.5kg(あれ?)
- 3週目:-0.8kg(普通)
最初は水分が抜けただけ。その後が本当のペース。
〈体調〉
- すごく調子が悪い日 → 次の日は少しマシ
- 絶好調の日 → 次の日は普通
極端な体調は続きにくい。
SNS・ゲームでの平均への回帰
〈いいね数〉 投稿のいいね:
- バズった投稿:5000いいね
- 次の投稿:200いいね
- その次:150いいね
バズは運の要素が大きい。
〈ゲームのガチャ〉
- 10連で激レア3枚! → 次の10連は普通
- 50連でレアなし → 次は少し出るかも
確率は毎回同じ。極端な結果は続きにくい。
天気にも平均への回帰
〈異常気象の後〉
- 記録的猛暑の夏 → 次の夏は普通のことが多い
- 大雪の冬 → 次の冬は普通のことが多い
極端な気象は毎年続かない。
この章のまとめ
スポーツ、勉強、仕事、健康、SNS、天気まで、平均への回帰はどこにでもあります。「極端は続かない」と知っていれば、冷静に対処できます。次は、この知識をどう活用するか見ていきましょう。
第4章:平均への回帰を活用する方法
投資・お金での活用
賢い投資判断:
〈株式投資〉 やってはいけないこと:
- 急騰した株を追いかける
- 急落した株を投げ売る
平均への回帰を意識した投資:
- 急騰 → 落ち着くのを待つ
- 急落 → 回復の可能性を考える
ただし、企業の実力(ファンダメンタル)の見極めは必要。
〈家計管理〉
- 臨時収入があった月 → 来月は普通と考えて貯金
- 出費が多かった月 → 来月は普通に戻ると期待
スポーツ・勉強での活用
メンタル管理に効果的:
〈好調な時〉
- 過信しない
- 基本を大切にする
- 次は普通かもと心構え
〈不調な時〉
- 落ち込みすぎない
- 実力を疑わない
- 次は良くなる可能性
〈練習・勉強計画〉
- 成績が急上昇 → ペースは続かないと理解
- 成績が急降下 → 実力はあると信じて継続
ギャンブルで騙されない
〈パチンコ・スロット〉
- 大勝ちの後 → 次も勝てると思うのは間違い
- 大負けの後 → 次は勝てると思うのも間違い
毎回の確率は同じ。期待値はマイナス。
〈宝くじ〉
- 当選者の地域 → 次回も当たりやすいわけじゃない
- 売り場の実績 → 過去と未来は無関係
この章のまとめ
平均への回帰を知っていれば、投資、勉強、人間関係、あらゆる場面で冷静な判断ができます。
極端な結果に一喜一憂せず、長期的な視点を持てるようになります。次は、よくある誤解について解説します。
第5章:平均への回帰のよくある誤解と注意点
誤解1:ギャンブラーの誤謬
間違った考え方:
〈コイン投げの誤解〉
× 「5回連続で表が出た。次は裏が出やすい」
○ 「次も表と裏の確率は50%ずつ」
コインに記憶はありません。毎回独立した事象です。
〈ルーレットの誤解〉
× 「赤が10回続いた。次は黒!」
○ 「次も赤と黒の確率は同じ」
これを「ギャンブラーの誤謬」と言います。
誤解2:逆方向への回帰
間違った期待:
〈成績の誤解〉
× 「前回良かったから、次は悪くなる」
○ 「前回良かったから、次は平均的になりやすい」
平均を超えて逆側に行くわけじゃない!
〈振り子のイメージは間違い〉
× 良い → 悪い → 良い → 悪い
○ 極端 → 普通 → 普通 → 時々極端
誤解3:実力の否定
実力を軽視してはいけない:
〈プロ選手の場合〉
- イチロー:高打率を長年維持
- 実力があれば、平均自体が高い
〈勉強の場合〉
- 常に高得点の人:実力が本当に高い
- たまに高得点の人:運の要素が大きい
継続性を見ることが大切。
誤解4:すべてに当てはまる
平均への回帰が起こらない場合:
〈トレンドがある場合〉
- 成長期の子供の身長
- 急成長中の企業の売上
- 上達中の初心者
右肩上がりなら、回帰しない。
〈実力が変化した場合〉
- 猛練習で上達
- 怪我で実力低下
- 新しい方法を習得
本質的な変化があれば別。
誤解5:短期間で必ず起こる
時間スケールの問題:
〈すぐには起こらない〉
- 2〜3回では分からない
- 10回、20回で傾向が見える
- 長期的な視点が必要
〈連続することもある〉
- 3連続で極端もありえる
- でも10連続は稀
- 確率の問題
正しい活用のための注意点
〈見極めのポイント〉
- 運の要素はどれくらい?
- 大きい:平均への回帰が起こりやすい
- 小さい:実力の差がそのまま出る
- サンプル数は十分?
- 少ない:判断するには早い
- 多い:傾向が見えてくる
- 他の要因は?
- 環境の変化
- ルールの変更
- 競争相手の変化
この章のまとめ
平均への回帰は強力な概念ですが、誤解も多いです。
「次は逆」ではなく「次は普通」、「必ず起こる」ではなく「起こりやすい」。
正しく理解して使うことが大切です。
まとめ:平均への回帰と上手に付き合う
長い記事を最後まで読んでくださり、ありがとうございます。平均への回帰、もう怖くないですよね?
〈この記事で学んだこと〉
- 平均への回帰は「極端な後は普通に戻りやすい」現象
- 原因は「運の要素が平均化する」から
- スポーツ、勉強、仕事、投資、あらゆる場面で起こる
- 知っていれば一喜一憂しなくなる
- ギャンブラーの誤謬とは違う
- 長期的視点が大切
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