数学の問題を解いていて、こんな答えになったことはありませんか?
「1/√2」 「3/√5」
これを見た先生に「有理化しなさい」と言われて、困った経験がある人も多いはず。
「答えは合ってるのに、なんで書き直さなきゃいけないの?」 「有理化って、そもそも何のためにするの?」
実は有理化には、ちゃんとした理由があるんです。 昔の数学者たちが計算を楽にするために編み出した、とても賢い方法なんですよ。
今回は、有理化の意味から計算方法、さらには応用問題まで、すべて分かりやすく解説します。 これを読めば、もう有理化で悩むことはありません!
有理化の基本を理解しよう

有理化を一言で説明すると
有理化とは「分母にある√(ルート)を消す計算」のことです。
もっと詳しく言うと:
- 分母の無理数を有理数に変える操作
- 分数の値は変えずに、見た目を整える技術
- 分母を√なしのきれいな形にする方法
例えば:
- 1/√2 を √2/2 に変える
- 2/√3 を 2√3/3 に変える
これが有理化です。
なぜ「有理化」という名前なの?
数の種類を思い出してみましょう。
有理数(ゆうりすう)
- 分数で表せる数
- 例:1, 2, 1/2, 3/4, -5
無理数(むりすう)
- 分数で表せない数
- 例:√2, √3, π(パイ)
分母の√2(無理数)を、2(有理数)に変えるから「有理化」と呼ばれています。
有理化をする3つの理由
理由1:計算が楽になる
例えば、1/√2 + 1/√2 を計算するとき:
- そのまま:2/√2(まだ有理化が必要)
- 有理化後:√2/2 + √2/2 = √2(すぐ答えが出る)
理由2:大きさが分かりやすい
どっちが大きい?
- 1/√2 と 1/√3
有理化すると:
- √2/2 と √3/3
分母が同じなら比べやすいですよね。
理由3:数学の伝統とマナー
分母に√を残すのは「計算が途中」という印象を与えます。 きちんと有理化するのが、数学の作法なんです。
基本的な有理化の方法
パターン1:分母が√aの場合
最も基本的なパターンから始めましょう。
例1:1/√2 を有理化
手順:
- 分母と分子に同じ√2をかける
- 1/√2 × √2/√2 = √2/(√2×√2)
- √2×√2 = 2 だから
- 答え:√2/2
なぜ√2をかけるの? √2 × √2 = 2 になって、ルートが消えるからです!
例2:3/√5 を有理化
計算: 3/√5 × √5/√5 = 3√5/(√5×√5) = 3√5/5
答え:3√5/5
パターン2:分母が a√b の場合
少し複雑になりますが、考え方は同じです。
例1:1/(2√3) を有理化
計算: 1/(2√3) × √3/√3 = √3/(2×3) = √3/6
答え:√3/6
例2:5/(3√2) を有理化
計算: 5/(3√2) × √2/√2 = 5√2/(3×2) = 5√2/6
答え:5√2/6
パターン3:分母が√a + b の場合
これは少し特殊なテクニックを使います。
例:1/(√3 + 1) を有理化
ここで使うのは「分母の共役」です!
共役とは:
- √3 + 1 の共役は √3 – 1
- プラスとマイナスを入れ替えたもの
計算: 1/(√3 + 1) × (√3 – 1)/(√3 – 1)
分母は: (√3 + 1)(√3 – 1) = (√3)² – 1² = 3 – 1 = 2
分子は: 1 × (√3 – 1) = √3 – 1
答え:(√3 – 1)/2
有理化の重要公式

覚えておくべき基本公式
公式1:√a × √a = a
これが有理化の基本原理です。
例:
- √2 × √2 = 2
- √5 × √5 = 5
- √10 × √10 = 10
公式2:(a + b)(a – b) = a² – b²
分母に和や差がある時に使います。
例:
- (√5 + 2)(√5 – 2) = 5 – 4 = 1
- (√7 + √3)(√7 – √3) = 7 – 3 = 4
公式3:分母分子に同じ数をかけても値は変わらない
a/b = (a×c)/(b×c)
これが有理化できる数学的根拠です。
よく出る有理化の結果
覚えておくと便利な結果:
- 1/√2 = √2/2
- 1/√3 = √3/3
- 2/√2 = √2(約分できる)
- 1/(√2 + 1) = √2 – 1
- 1/(√3 – 1) = (√3 + 1)/2
これらは頻出なので、暗記してもいいくらいです。
応用:複雑な有理化
分母が √a + √b の場合
例:1/(√5 + √2) を有理化
共役は √5 – √2 です。
計算: 1/(√5 + √2) × (√5 – √2)/(√5 – √2)
分母: (√5 + √2)(√5 – √2) = 5 – 2 = 3
分子: √5 – √2
答え:(√5 – √2)/3
分母が a + b√c の場合
例:1/(2 + √3) を有理化
共役は 2 – √3 です。
計算: 1/(2 + √3) × (2 – √3)/(2 – √3)
分母: (2 + √3)(2 – √3) = 4 – 3 = 1
分子: 2 – √3
答え:2 – √3
二重根号を含む場合
例:1/√(2 + √3) を有理化
これは高校レベルですが、考え方は同じです。
まず、2 + √3 = (√3 + 1)²/2 と変形できることを利用します。 (これは少し難しいので、今は「こういうのもある」程度でOK)
よくある間違いと注意点
間違い1:分子だけにルートをかける
間違い例: 1/√2 = √2/√2 = 1
正解: 1/√2 × √2/√2 = √2/2
分母と分子の両方に同じ数をかけましょう!
間違い2:約分を忘れる
間違い例: 2/√8 = 2√8/8
正解: 2/√8 = 2/(2√2) = 1/√2 = √2/2
まず約分できないか確認しましょう。
間違い3:共役を間違える
間違い例: 1/(√5 + 2) に (√5 + 2) をかける
正解: 1/(√5 + 2) に (√5 – 2) をかける
符号を逆にするのを忘れずに!
間違い4:計算ミス
よくあるミス: (√3 + 1)(√3 – 1) = 3 – 1 = 4(間違い)
正解: (√3 + 1)(√3 – 1) = 3 – 1 = 2
落ち着いて計算しましょう。
有理化が必要な場面
場面1:テストの答案
数学のテストでは、有理化していないと減点される場合があります。
例:
- 問:1/√3 + 1/√3 を計算せよ
- △:2/√3(減点の可能性)
- ○:2√3/3(満点)
場面2:三角比の値
30°、45°、60°の三角比では有理化が必須です。
例:
- tan 30° = 1/√3 = √3/3
- sin 45° = 1/√2 = √2/2
これらは有理化した形で覚えます。
場面3:物理の計算
物理の公式でも有理化が出てきます。
例:単振動の周期 T = 2π√(m/k) を変形すると T = 2π√m/√k = 2π√(mk)/k
場面4:複雑な式の整理
長い計算の途中で有理化すると、後が楽になります。
練習問題にチャレンジ

レベル1:基本の有理化
次の式を有理化せよ:
- 1/√5 答え:√5/5
- 2/√3 答え:2√3/3
- 3/√6 答え:3√6/6 = √6/2
- 4/√8 答え:4/(2√2) = 2/√2 = √2
- 5/√10 答え:5√10/10 = √10/2
レベル2:係数がある場合
次の式を有理化せよ:
- 1/(3√2) 答え:√2/6
- 2/(5√3) 答え:2√3/15
- 3/(2√5) 答え:3√5/10
- 6/(4√3) 答え:6√3/12 = √3/2
レベル3:分母に和や差がある場合
次の式を有理化せよ:
- 1/(√2 + 1) 答え:√2 – 1
- 1/(√5 – 2) 答え:√5 + 2
- 2/(√3 + 1) 答え:√3 – 1
- 3/(2 – √2) 答え:3(2 + √2)/2
有理化の歴史と豆知識
電卓がない時代の知恵
有理化は、電卓がない時代に生まれた技術です。
例えば 1/√2 ≈ 1/1.414… を計算するより、 √2/2 ≈ 1.414…/2 = 0.707… の方が計算しやすかったんです。
分母が整数の方が、筆算で割り算しやすいですからね。
有理化しない国もある?
実は、国や地域によって有理化の扱いが違います。
- 日本:必ず有理化する
- アメリカ:場合による
- ヨーロッパ:国による
でも、国際的な数学の論文では有理化が基本です。
コンピュータと有理化
コンピュータにとっては、有理化してもしなくても計算速度は変わりません。 でも、人間が見やすいように、有理化して表示することが多いです。
まとめ:有理化は数学の身だしなみ
有理化について、たくさん学んできましたね。
覚えておくべきポイント:
- 有理化 = 分母の√を消す操作
- 分母と分子に同じ数をかける
- 値は変わらない、見た目が変わるだけ
- テストでは有理化必須
有理化の手順:
- 分母を確認(√aか、a + √bか)
- 適切な数を選ぶ(√aなら√a、a + √bなら共役)
- 分母と分子にかける
- 計算して整理
有理化は最初は面倒に感じるかもしれません。
でも、きちんと有理化された答えは美しく、計算ミスも減ります。 数学における「礼儀正しい答え方」とも言えるでしょう。
練習すれば必ずできるようになります。 まずは 1/√2 = √2/2 から始めて、少しずつ複雑な問題に挑戦してみてください。
有理化をマスターすれば、数学の世界がもっとクリアに見えてくるはずです!
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