ポアソン分布とは?コンビニの来客数で理解する確率の世界

数学

「1時間にコンビニに何人来るか予測できる?」「今日、流れ星は何個見られる?」

実はこういった「めったに起きないけど、たまに起きる出来事の回数」を予測する魔法のような方法があるんです。それがポアソン分布です。

名前は難しそうですが、実は私たちの日常生活のあちこちで活躍している確率分布なんです。コンビニの店員配置、コールセンターの人員計画、さらには保険料の計算まで、ポアソン分布が使われています。

この記事では、数式を最小限にして、身近な例とグラフで直感的に理解できるよう解説します。読み終わる頃には「なるほど、これがポアソン分布か!」と納得できるはずです。


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ポアソン分布を一言で説明すると

めったに起きない出来事を数える道具

ポアソン分布とは、一定の時間や空間で、ランダムに起きる出来事が何回起きるかを予測する確率分布です。

もっと簡単に言うと: 「めったに起きないけど、起きる時は起きる」という出来事の回数を予測する方法です。

3つの条件を満たす時に使える

ポアソン分布が使えるのは、以下の3つの条件を満たす時だけです:

  1. 独立性:1つの出来事が起きても、次の出来事に影響しない
  2. 定常性:どの時間帯でも起きる確率は同じ
  3. 非同時性:まったく同時には起きない

難しそう?大丈夫、具体例で説明します!


身近な例で理解するポアソン分布

例1:深夜のコンビニの来客数

深夜2時から3時のコンビニを想像してください。

状況:

  • 平均して1時間に3人のお客さんが来る
  • お客さんはランダムに来店する
  • 前のお客さんが来たかどうかは、次のお客さんに影響しない

ポアソン分布で分かること:

  • 0人の確率:約5%
  • 1人の確率:約15%
  • 2人の確率:約22%
  • 3人の確率:約22%(平均値で最も高い)
  • 4人の確率:約17%
  • 5人の確率:約10%
  • 6人以上:約9%

つまり、平均3人でも、実際には2人や4人の日も結構あるということが分かります!

例2:1ページあたりの誤字の数

本や新聞の誤字もポアソン分布に従います。

状況:

  • 平均して1ページに0.5個の誤字がある
  • 誤字はランダムに発生
  • どのページでも発生確率は同じ

ポアソン分布で分かること:

  • 誤字0個のページ:約61%
  • 誤字1個のページ:約30%
  • 誤字2個のページ:約8%
  • 誤字3個以上:約1%

半分以上のページには誤字がないことが分かりますね!

例3:サッカーの得点数

90分間のサッカーの試合での得点数もポアソン分布で予測できます。

例:平均2.5点のチーム

  • 0点(無得点):約8%
  • 1点:約21%
  • 2点:約26%
  • 3点:約21%
  • 4点:約13%
  • 5点以上:約11%

だから、サッカーのスコア予想や賭けの確率計算にも使われているんです!


ポアソン分布の特徴と性質

特徴1:平均と分散が同じ

ポアソン分布の面白い特徴は、平均値と分散(ばらつきの大きさ)が同じになることです。

例:

  • 平均3人なら、分散も3
  • 平均10件なら、分散も10

これは他の分布にはない、特別な性質なんです。

特徴2:まれな出来事ほど正確

ポアソン分布は、発生確率が低い出来事ほど正確に予測できます。

向いている例:

  • 事故の発生回数(めったに起きない)
  • 機械の故障回数(たまに起きる)
  • レアなクレーム件数(ほとんど来ない)

向いていない例:

  • コインの表裏(50%で高確率)
  • サイコロの目(16.7%で高確率)
  • 毎日の出勤者数(ほぼ全員来る)

特徴3:時間や空間を分割できる

1時間の平均が分かれば、30分や2時間の平均も計算できます。

例:1時間に平均6人来る場合

  • 30分なら平均3人
  • 2時間なら平均12人
  • 10分なら平均1人

この性質のおかげで、柔軟な予測が可能になります。


ポアソン分布の形とグラフ

平均値(λ)で形が変わる

ポアソン分布の形は、平均値(ラムダと読みます)によって変化します。

λ(平均)が小さい時(例:λ=1)

  • 左に偏った形
  • 0回や1回が最も起きやすい
  • まれにしか起きない出来事

λ(平均)が中くらいの時(例:λ=5)

  • 山型の形
  • 平均値付近が最も起きやすい
  • 適度にばらつく

λ(平均)が大きい時(例:λ=20)

  • 正規分布(ベルカーブ)に近づく
  • 左右対称に近い形
  • 予測しやすくなる

グラフの読み方

ポアソン分布のグラフは棒グラフで表されます。

縦軸: 確率(その回数が起きる可能性) 横軸: 回数(0回、1回、2回…)

棒が高いほど、その回数が起きやすいということです。


ポアソン分布の計算方法(数式は最小限に)

基本の公式

ポアソン分布の確率を求める公式:

P(X = k) = (e^(-λ) × λ^k) / k!

難しそう?大丈夫、実際は:

  • λ(ラムダ):平均の回数
  • k:知りたい回数
  • e:2.718…という特別な数
  • !:階乗(5! = 5×4×3×2×1)

実際の計算例

例:平均2回の時、ちょうど3回起きる確率は?

  1. λ = 2、k = 3を代入
  2. e^(-2) = 0.135
  3. 2^3 = 8
  4. 3! = 6
  5. 確率 = 0.135 × 8 ÷ 6 = 0.18(18%)

でも実際は、Excelやオンライン計算機を使えば一瞬で計算できます!

Excelでの計算方法

Excelなら関数一つで計算できます:

=POISSON.DIST(回数, 平均, FALSE)

例: 平均5回で、ちょうど3回の確率

=POISSON.DIST(3, 5, FALSE)

結果:0.14(14%)


実際の活用例と応用

ビジネスでの活用

1. コールセンターの人員配置

平均的な着信数から、必要なオペレーター数を計算します。

  • 1時間の平均着信:20件
  • ポアソン分布で計算→30件来る確率も2%
  • 余裕を持って人員配置

2. 在庫管理

商品の売れ行きから、適切な在庫数を決定します。

  • 1日の平均販売数:5個
  • 品切れを避けたい(95%の確率でカバー)
  • ポアソン分布→9個在庫すればOK

3. 製造業の品質管理

不良品の発生率から、検査の頻度を決めます。

  • 1000個に1個の不良品(平均0.001)
  • 次の1000個で2個以上出る確率は?
  • ポアソン分布で計算→約0.26%

保険業界での応用

保険会社は、ポアソン分布を使って保険料を計算しています。

自動車保険の例:

  • ある地域の年間事故発生率:平均0.1件/人
  • 1000人が加入したら?
  • 総事故数の分布を予測→保険料設定

生命保険の例:

  • 特定年齢層の死亡率
  • 加入者数から支払い件数を予測
  • リスクに応じた保険料設定

IT・Web分析での使用

1. サーバーアクセス数の予測

  • 1秒あたりの平均アクセス数
  • ピーク時の予測
  • サーバー容量の決定

2. システムエラーの監視

  • 通常時のエラー発生率
  • 異常値の検知
  • アラートの設定

3. ユーザー行動分析

  • クリック数の分布
  • 購入数の予測
  • A/Bテストの設計

ポアソン分布と他の分布との違い

二項分布との違い

二項分布: 決まった回数の試行での成功回数 ポアソン分布: 一定時間での発生回数

項目二項分布ポアソン分布
試行回数固定(例:100回)無限
確率一定(例:10%)とても小さい
コイン投げ事故発生数
使う場面成功率が分かる時めったに起きない時

正規分布との違い

正規分布: 平均を中心に左右対称 ポアソン分布: 0以上の整数のみ

項目正規分布ポアソン分布
値の範囲-∞から+∞0以上の整数
常に左右対称λが小さいと非対称
身長、体重来客数、故障数
平均と分散独立同じ値

指数分布との関係

ポアソン分布と指数分布は表裏一体の関係です。

  • ポアソン分布:一定時間での回数
  • 指数分布:次に起きるまでの時間

例:バスの到着

  • 1時間に平均3本→ポアソン分布
  • 次のバスまでの待ち時間→指数分布

よくある間違いと注意点

間違い1:いつでも使えると思う

誤解: どんな回数データでもポアソン分布が使える

正解: 3つの条件(独立性、定常性、非同時性)を満たす必要がある

使えない例:

  • 満員電車の乗客数(上限がある)
  • 株価の変動回数(相互に影響)
  • 試験の合格者数(確率が高すぎる)

間違い2:平均が大きくても使う

誤解: 平均100回でもポアソン分布を使う

正解: 平均が大きい(目安:20以上)なら正規分布の方が適切

理由:

  • 計算が複雑になる
  • 正規分布で十分近似できる
  • むしろ正規分布の方が正確

間違い3:連続値に適用する

誤解: 売上金額や時間もポアソン分布で扱える

正解: ポアソン分布は**カウントデータ(0, 1, 2…)**専用

連続値の場合:

  • 金額→正規分布や対数正規分布
  • 時間→指数分布やガンマ分布
  • 割合→ベータ分布

実践!ポアソン分布を使ってみよう

練習問題1:ピザの注文数

あるピザ店で、平日の夜7-8時の注文数は平均4件です。

問題:

  1. 注文が0件の確率は?
  2. 5件以上来る確率は?
  3. ちょうど4件の確率は?

解答:

  1. 約1.8%(ほとんどない)
  2. 約37%(3回に1回以上)
  3. 約19.5%(最も高い確率)

練習問題2:Webサイトのエラー

あるWebサイトで、1日平均0.5回エラーが発生します。

問題: 1週間(7日)でエラーが一度も起きない確率は?

考え方:

  1. 7日間の平均 = 0.5 × 7 = 3.5回
  2. 0回の確率を計算
  3. 答え:約3%

自分で試してみる方法

Step 1: データを集める

  • 1時間ごとの来客数
  • 1日ごとのクレーム数
  • 1ページごとの誤字数

Step 2: 平均を計算

  • データの合計 ÷ 期間数

Step 3: ポアソン分布で予測

  • Excelやオンライン計算機を使用
  • グラフを描いて確認

Step 4: 実際と比較

  • 予測と実際のズレを確認
  • 条件を満たしているか再確認

まとめ

ポアソン分布は、一見難しそうな名前ですが、実は私たちの生活に密着した便利な道具なんです。

覚えておくべき3つのポイント:

  1. めったに起きない出来事の回数を予測する分布
  2. 平均値さえ分かれば、いろいろな確率が計算できる
  3. ビジネスから科学まで、幅広く活用されている

コンビニの来客数、Webサイトのアクセス数、事故の発生数…これらすべてがポアソン分布で説明できます。

次にコンビニで並んでいる時、「今この瞬間も、ポアソン分布に従って人が来ているんだな」と思い出してみてください。数学が、ちょっと身近に感じられるかもしれません。

統計は難しくない。ただ、世の中のパターンを見つける方法なんです!

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