「パラメータって何?媒介変数って何のこと?」
「xとyの他にtが出てきて、どう扱えばいいかわからない…」
「パラメータ表示って、普通の方程式と何が違うの?」
高校数学で初めて出会う「パラメータ(媒介変数)」は、多くの人が戸惑う概念です。
今まではy = f(x)のように、xとyだけで式を表してきました。しかしパラメータを使うと、より複雑な曲線も簡単に表現できるようになります。
この記事では、パラメータの意味から具体的な使い方、パラメータを消去する方法まで、具体例を交えて丁寧に解説します。最後まで読めば、パラメータが理解できるはずです!
パラメータ(媒介変数)とは?

パラメータの定義
パラメータ(parameter)または媒介変数とは、xとyの関係を間接的に表すための補助的な変数のことです。
日本語では:
- 媒介変数(ばいかいへんすう)
- 助変数
- 補助変数
など、いろいろな呼び方があります。
パラメータの役割
「媒介」とは、「双方の間に立って取り持つこと」という意味です。
つまり、パラメータはxとyの間に立って、両者をつなぐ役割を果たします。
通常の方程式
y = x²
xとyが直接結びついています。
パラメータ表示
x = t
y = t²
tというパラメータを通して、xとyが間接的に結びついています。
パラメータの表し方
パラメータには、よく次の文字が使われます:
- t:最もよく使われる(timeの頭文字)
- θ(シータ):角度を表すとき
- u、v:2つ以上のパラメータが必要なとき
パラメータ表示(媒介変数表示)とは
媒介変数表示の意味
媒介変数表示(またはパラメータ表示)とは、xとyをそれぞれパラメータtの関数として表す方法です。
一般的な形
x = f(t)
y = g(t)
この形で表された式を媒介変数表示といいます。
媒介変数表示の仕組み
パラメータtに値を代入すると、(x, y)の座標が1つ決まります。
例
x = t + 1
y = t²
のとき:
t = 0の場合
- x = 0 + 1 = 1
- y = 0² = 0
- 点(1, 0)
t = 1の場合
- x = 1 + 1 = 2
- y = 1² = 1
- 点(2, 1)
t = 2の場合
- x = 2 + 1 = 3
- y = 2² = 4
- 点(3, 4)
このようにtを動かすと、点(x, y)が動いて曲線を描きます。
パラメータ表示の特徴
特徴1:間接的な表現
xとyが直接の関係式になっていません。
tを通して間接的につながっています。
特徴2:tの値で点が決まる
tの値を1つ決めると、x、yの値も決まり、平面上の1点が定まります。
特徴3:曲線の軌跡
tを連続的に変化させると、点(x, y)の軌跡が曲線になります。
パラメータを使う理由
なぜわざわざパラメータを使うのでしょうか?
理由1:複雑な曲線を簡単に表せる
例:単位円
普通の方程式:
x² + y² = 1
この方程式からyを求めると:
y = ±√(1 - x²)
複雑ですね。プラスマイナスの場合分けもあります。
パラメータ表示
x = cos t
y = sin t (0 ≤ t < 2π)
すっきりした形で表現できます!
理由2:関数でない曲線も表せる
y = f(x)の形では表せない曲線(xに対してyが2つ以上ある曲線)も、パラメータを使えば表現できます。
例:円全体
円全体は関数ではありません(xに対してyが2つあります)。
でもパラメータ表示なら:
x = cos t
y = sin t
で簡単に表せます。
理由3:微分計算が楽になる
パラメータ表示を使うと、接線や速度ベクトルの計算が簡単になります。
円の場合:
dx/dt = -sin t
dy/dt = cos t
接線ベクトル = (-sin t, cos t)
簡単に求められます!
理由4:物理や工学で便利
時間tをパラメータとすると、物体の運動を表すのに便利です。
例:放物運動
x = v₀t cos θ (水平方向の位置)
y = v₀t sin θ - (1/2)gt² (鉛直方向の位置)
時間tに応じた位置を表せます。
パラメータの消去法

パラメータ表示からパラメータtを消去して、xとyだけの式にする方法を学びましょう。
消去の基本手順
手順1:tについて解く
x = f(t)またはy = g(t)から、tを求めます。
手順2:代入する
求めたtを、もう一方の式に代入します。
手順3:整理する
xとyだけの関係式を得ます。
消去法の具体例
例題1:基本的な消去
次の媒介変数表示で表される曲線の方程式を求めよ。
x = t + 1
y = t²
解答
x = t + 1より:
t = x - 1
これをy = t²に代入:
y = (x - 1)²
答え:y = (x – 1)²
これは頂点が(1, 0)の放物線です。
例題2:三角関数の利用
次の媒介変数表示で表される曲線の方程式を求めよ。
x = cos t
y = sin t
解答
三角関数の基本的な恒等式を使います:
cos²t + sin²t = 1
x = cos t、y = sin tより:
x² + y² = 1
答え:x² + y² = 1
これは原点を中心とする半径1の円(単位円)です。
例題3:分数形の消去
次の媒介変数表示で表される曲線の方程式を求めよ。
x = 1/t
y = 2/t (t ≠ 0)
解答
x = 1/tより:
t = 1/x (x ≠ 0)
これをy = 2/tに代入:
y = 2/(1/x) = 2x
答え:y = 2x (x ≠ 0)
これは原点を通らない直線です。
よく出る曲線のパラメータ表示
高校数学でよく扱う曲線のパラメータ表示をまとめます。
円のパラメータ表示
中心(0, 0)、半径rの円
x = r cos θ
y = r sin θ (0 ≤ θ < 2π)
中心(a, b)、半径rの円
x = a + r cos θ
y = b + r sin θ
例
中心(2, 3)、半径5の円:
x = 2 + 5 cos θ
y = 3 + 5 sin θ
楕円のパラメータ表示
楕円の方程式:x²/a² + y²/b² = 1
パラメータ表示:
x = a cos θ
y = b sin θ (0 ≤ θ < 2π)
例
楕円 x²/9 + y²/4 = 1:
x = 3 cos θ
y = 2 sin θ
双曲線のパラメータ表示
双曲線の方程式:x²/a² – y²/b² = 1
パラメータ表示:
x = a/cos θ
y = b tan θ
または
x = a cosh t
y = b sinh t
放物線のパラメータ表示
放物線の方程式:y² = 4px
パラメータ表示:
x = pt²
y = 2pt
例
放物線 y² = 8x(p = 2):
x = 2t²
y = 4t
直線のパラメータ表示
点(x₀, y₀)を通り、方向ベクトル(a, b)を持つ直線
x = x₀ + at
y = y₀ + bt
例
点(1, 2)を通り、方向ベクトル(3, 4)の直線:
x = 1 + 3t
y = 2 + 4t
パラメータを消去すると:
t = (x - 1)/3 = (y - 2)/4
4(x - 1) = 3(y - 2)
4x - 3y + 2 = 0
パラメータと曲線の範囲
パラメータの範囲に注意が必要です。
tの範囲と曲線の範囲
パラメータtの取りうる値の範囲によって、曲線の一部だけを表すことがあります。
例題
次の媒介変数表示は何を表すか?
x = √t
y = √(1 - t²)
解答
√tより、t ≥ 0
√(1 – t²)より、1 – t² ≥ 0、つまり -1 ≤ t ≤ 1
両方を満たすのは:0 ≤ t ≤ 1
また:
x² = t
y² = 1 - t² = 1 - x²
x² + y² = 1
単位円の方程式ですが、x ≥ 0、y ≥ 0なので、第1象限の部分のみを表します。
答え:単位円の第1象限部分(0 ≤ x ≤ 1、0 ≤ y ≤ 1)
閉曲線と開曲線
閉曲線
始点と終点が一致する曲線(円、楕円など)
円の例:
x = cos t
y = sin t (0 ≤ t < 2π)
t = 0とt = 2πで同じ点(1, 0)に戻ります。
開曲線
始点と終点が一致しない曲線(放物線、直線など)
パラメータ表示の応用

ベクトルとの関係
ベクトル方程式は、パラメータ表示の一種です。
位置ベクトルの方程式
→r = →a + t→d
成分で表すと:
(x, y) = (a₁, a₂) + t(d₁, d₂)
これは:
x = a₁ + td₁
y = a₂ + td₂
というパラメータ表示です!
微分との関係
パラメータ表示された曲線の接線の傾きは:
dy/dx = (dy/dt)/(dx/dt)
例
x = t²
y = t³
のとき:
dx/dt = 2t
dy/dt = 3t²
dy/dx = 3t²/(2t) = (3/2)t (t ≠ 0)
t = 2のとき、傾きは3です。
速度ベクトル
時間tをパラメータとするとき:
速度ベクトル = (dx/dt, dy/dt)
例
x = 3t
y = 4t
のとき:
速度ベクトル = (3, 4)
一定の速度で直線上を動いています。
特殊な曲線のパラメータ表示
サイクロイド
サイクロイドとは、円が直線上を滑らずに転がるとき、円周上の1点が描く曲線です。
パラメータ表示(半径rの円)
x = r(θ - sin θ)
y = r(1 - cos θ)
サイクロイドは、パラメータを使わないと表現が非常に難しい曲線です。
アステロイド
アステロイドは、星形の曲線です。
パラメータ表示
x = a cos³t
y = a sin³t
方程式に直すと:
x^(2/3) + y^(2/3) = a^(2/3)
カージオイド
カージオイドは、ハート型の曲線です。
パラメータ表示
x = 2a cos t - a cos 2t
y = 2a sin t - a sin 2t
よくある間違いと注意点
間違い1:パラメータの範囲を考えない
誤り
x = cos t
y = sin t
は単位円全体を表す。
注意点
tの範囲を指定しないと、同じ点を何度も通ることになります。
正解
0 ≤ t < 2πの範囲で、円を1周します。
間違い2:消去のとき条件を忘れる
例
x = t²
y = t³
消去して:y² = x³
しかし、元の式ではx ≥ 0という条件があります!
正解
y² = x³ (x ≥ 0)
間違い3:代入ミス
パラメータを消去するとき、代入を間違えないよう注意しましょう。
例
x = 2t
y = t² + 1
x = 2tより、t = x/2
これをy = t² + 1に代入:
y = (x/2)² + 1 = x²/4 + 1
間違い4:関数でないものをyで表そうとする
円などの閉曲線は、y = f(x)の形では表せません。
パラメータ表示を使いましょう!
練習問題
学んだことを確認する練習問題です。
問題1:パラメータの消去
次の媒介変数表示で表される曲線の方程式を求めよ。
x = 2t
y = t² - 1
答えを見る
x = 2tより、t = x/2
y = t² – 1に代入:
y = (x/2)² - 1
y = x²/4 - 1
答え:y = x²/4 – 1
問題2:三角関数の消去
次の媒介変数表示で表される曲線の方程式を求めよ。
x = 2 cos θ
y = 3 sin θ
答えを見る
x = 2 cos θより、cos θ = x/2
y = 3 sin θより、sin θ = y/3
cos²θ + sin²θ = 1より:
(x/2)² + (y/3)² = 1
x²/4 + y²/9 = 1
答え:x²/4 + y²/9 = 1(楕円)
問題3:パラメータ表示への変換
円 (x – 1)² + (y – 2)² = 9 をパラメータ表示せよ。
答えを見る
中心(1, 2)、半径3の円なので:
x = 1 + 3 cos t
y = 2 + 3 sin t (0 ≤ t < 2π)
答え:x = 1 + 3 cos t、y = 2 + 3 sin t
問題4:曲線の範囲
次の媒介変数表示が表す曲線を求め、その範囲を答えよ。
x = t²
y = t³ (-1 ≤ t ≤ 2)
答えを見る
x = t²、y = t³より、t = x^(1/2)(x ≥ 0のとき)
y = (x^(1/2))³ = x^(3/2)
ただし、-1 ≤ t ≤ 2より:
- t = -1のとき:(1, -1)
- t = 0のとき:(0, 0)
- t = 2のとき:(4, 8)
答え:y = x^(3/2)の一部(実際にはより複雑)
正確には、y² = x³ (0 ≤ x ≤ 4)
まとめ:パラメータをマスターするポイント
パラメータを理解するための重要ポイントをまとめます。
ポイント1:パラメータは補助的な変数
- xとyの間に立って両者をつなぐ
- よく使われる文字:t、θ
- 時間を表すことが多い
ポイント2:パラメータ表示の形
x = f(t)
y = g(t)
tに値を代入すると、(x, y)の座標が決まる。
ポイント3:パラメータを使う理由
- 複雑な曲線を簡単に表せる
- 関数でない曲線も表現できる
- 微分計算が楽になる
- 物体の運動を表すのに便利
ポイント4:パラメータの消去法
- tについて解く
- もう一方の式に代入
- xとyだけの式を得る
ポイント5:よく出る曲線
- 円:x = r cos θ、y = r sin θ
- 楕円:x = a cos θ、y = b sin θ
- 直線:x = x₀ + at、y = y₀ + bt
ポイント6:範囲に注意
- tの範囲によって、曲線の一部だけを表すことがある
- 消去後も条件(x ≥ 0など)を忘れない
ポイント7:ベクトル方程式との関係
ベクトル方程式は、パラメータ表示の一種。
ポイント8:実際の応用
- 物理:放物運動、円運動
- 工学:ロボットアームの動き
- グラフィックス:アニメーション
パラメータ表示は、最初は慣れないかもしれませんが、使いこなせるようになると強力なツールです。
複雑な曲線を簡単に表現でき、計算も楽になります。たくさんの問題を解いて、パラメータ表示に慣れていきましょう!

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