数学の授業で「∈」や「∪」といった見慣れない記号を見て、戸惑った経験はありませんか?
集合の記号は一見複雑に見えますが、実は私たちの日常生活でも使われている「グループ分け」の考え方を、数学的に表現したものなんです。例えば「クラスの生徒の集まり」や「偶数の集まり」など、ものをまとめて扱うときに役立ちます。
この記事では、集合で使う記号の意味や読み方、実際の使い方まで、基礎から丁寧に解説していきますね。
集合とは何か?記号を学ぶ前の基礎知識

集合(しゅうごう)とは、簡単に言うと「ものの集まり」のことです。
数学では、はっきりと区別できる対象をひとまとめにしたものを「集合」と呼びます。集まっている一つ一つのものを「要素(ようそ)」または「元(げん)」といいます。
例えば、次のようなものが集合の例です:
- 1から10までの整数の集合:{1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10}
- 日本の都道府県の集合:{北海道, 青森, 岩手, …}
- 偶数の集合:{2, 4, 6, 8, 10, …}
このように、集合は波括弧 { } を使って表すのが一般的です。
基本的な集合記号一覧
ここからは、集合で頻繁に使われる記号を一つずつ見ていきましょう。
要素を表す記号:∈と∉
∈(エレメントオブ、または「〜に属する」)
この記号は「〜は…の要素である」という意味を表します。
使い方の例:
- 3 ∈ {1, 2, 3, 4, 5}
- 読み方:「3は集合{1, 2, 3, 4, 5}の要素である」
つまり、「3はこの集合に含まれている」ということです。
∉(ノットエレメントオブ、または「〜に属さない」)
この記号は「〜は…の要素ではない」という意味になります。
使い方の例:
- 6 ∉ {1, 2, 3, 4, 5}
- 読み方:「6は集合{1, 2, 3, 4, 5}の要素ではない」
6はこの集合に入っていないということですね。
部分集合を表す記号:⊂、⊆、⊃、⊇
⊂(真部分集合、しんぶぶんしゅうごう)
A ⊂ B と書くと、「Aのすべての要素はBに含まれており、かつAとBは等しくない」という意味です。
使い方の例:
- {1, 2} ⊂ {1, 2, 3, 4}
- 左側の集合のすべての要素が右側の集合に含まれています
⊆(部分集合)
A ⊆ B は「Aのすべての要素はBに含まれている(AとBが等しい場合も含む)」という意味になります。
⊂と⊆の違い:
- ⊂は「AとBは必ず異なる」
- ⊆は「AとBが同じでもOK」
数学でいう「<」と「≤」の関係に似ていますね。
⊃と⊇(上位集合)
これらは⊂と⊆の逆の向きです。B ⊃ A なら「BはAを含む」という意味になります。
集合の演算記号
∪(和集合、わしゅうごう)
ユニオンと読み、「どちらか一方、または両方に含まれる要素すべて」を表します。
使い方の例:
- A = {1, 2, 3}、B = {3, 4, 5} のとき
- A ∪ B = {1, 2, 3, 4, 5}
両方の集合を合わせたものですね。重複する要素(この場合は3)は1つだけ数えます。
∩(共通部分、きょうつうぶぶん)
インターセクションと読み、「両方の集合に共通して含まれる要素」を表します。
使い方の例:
- A = {1, 2, 3, 4}、B = {3, 4, 5, 6} のとき
- A ∩ B = {3, 4}
両方に共通して入っている要素だけを集めたものです。
特殊な集合を表す記号
∅(空集合、くうしゅうごう)
要素が1つも含まれていない集合を表します。「何もない集合」ですね。
使い方の例:
- {1, 2} ∩ {3, 4} = ∅
- この2つの集合には共通の要素がないので、空集合になります
注意:∅は「0(ゼロ)」とは違います。0は数字ですが、∅は「何も入っていない箱」のようなものです。
U(全体集合、ぜんたいしゅうごう)
考えている範囲すべてを含む集合を表します。
例えば、「1から10までの整数について考える」というときは、U = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10} が全体集合になります。
より高度な集合記号
補集合:A’またはAᶜ
全体集合Uの中で、Aに含まれない要素すべてを集めたものを「Aの補集合(ほしゅうごう)」といいます。
使い方の例:
- U = {1, 2, 3, 4, 5}、A = {1, 2} のとき
- A’ = {3, 4, 5}
「Aに入っていないもの全部」という意味ですね。
差集合:A – BまたはA \ B
「Aには含まれるが、Bには含まれない要素」の集合を表します。
使い方の例:
- A = {1, 2, 3, 4}、B = {3, 4, 5} のとき
- A – B = {1, 2}
AからBの要素を取り除いたものと考えるとわかりやすいでしょう。
直積:×
2つの集合から1つずつ要素を取り出して作った「組」の集合を表します。
使い方の例:
- A = {1, 2}、B = {3, 4} のとき
- A × B = {(1,3), (1,4), (2,3), (2,4)}
すべての組み合わせを作るイメージです。
濃度:|A|またはn(A)
集合に含まれる要素の個数を表します。
使い方の例:
- A = {1, 2, 3, 4, 5} のとき
- |A| = 5または n(A) = 5
要素が5個あるということですね。
数の集合を表す特別な記号
数学では、よく使われる数の集合には専用の記号が用意されています。
- ℕ(自然数の集合):{1, 2, 3, 4, 5, …}
- ℤ(整数の集合):{…, -2, -1, 0, 1, 2, …}
- ℚ(有理数の集合):分数で表せる数の集合
- ℝ(実数の集合):数直線上のすべての数
- ℂ(複素数の集合):実数と虚数を含むすべての数
これらの記号を使うと、文章が非常にすっきりします。例えば「すべての自然数について」と書く代わりに「∀n ∈ ℕ」と書けるわけです。
集合記号の実践的な使い方

ここまで学んだ記号を組み合わせて、実際の問題を解いてみましょう。
例題1:和集合と共通部分
A = {2, 4, 6, 8, 10}、B = {4, 8, 12, 16} のとき、次を求めてください。
- A ∪ B
- A ∩ B
解答:
- A ∪ B = {2, 4, 6, 8, 10, 12, 16}(両方を合わせた集合)
- A ∩ B = {4, 8}(両方に共通する要素)
例題2:部分集合の関係
A = {1, 2, 3}、B = {1, 2, 3, 4, 5} のとき、正しいものはどれでしょうか?
- A ⊂ B
- B ⊂ A
- A = B
解答:
1が正しいです。Aのすべての要素はBに含まれており、AとBは等しくないためです。
集合記号でよくある間違いと注意点
間違い1:空集合を0と混同する
- 誤:∅ = 0
- 正:∅は何も含まない集合、0は数値
空集合は「空っぽの箱」、0は「ゼロという数」です。まったく違うものですね。
間違い2:⊂と⊆の使い分け
- A ⊂ B:AとBは必ず異なる
- A ⊆ B:AとBが同じでも良い
厳密な数学では、この区別が重要になります。
間違い3:∪と∩の混同
- ∪(和集合):どちらかに含まれるすべて
- ∩(共通部分):両方に含まれるもの
形が似ているので、しっかり覚えましょう。∪は「U」nion(ユニオン)の形、∩は「n」に似ていると覚えると良いでしょう。
集合記号が活躍する場面
集合の記号は、数学の様々な分野で使われています。
確率・統計での応用
- サイコロを振る実験で、「偶数の目が出る」という事象は {2, 4, 6} という集合で表せます
- 複数の条件を満たす確率を計算するときに、和集合や共通部分の考え方が役立ちます
論理学での応用
- 「AかつB」は A ∩ B に対応します
- 「AまたはB」は A ∪ B に対応します
データベースやプログラミングでの応用
- データの検索や絞り込みは、集合の演算と同じ考え方です
- 「条件Aと条件Bを両方満たすデータ」は共通部分の考え方そのものです
まとめ
集合の数学記号は、最初は複雑に見えるかもしれません。でも、それぞれの記号の意味をしっかり理解すれば、数学的な考え方を簡潔に表現できる便利なツールになります。
この記事で学んだ主要な記号:
- ∈、∉:要素の関係を表す
- ⊂、⊆、⊃、⊇:集合の包含関係を表す
- ∪、∩:集合の演算(和集合と共通部分)
- ∅、U:特殊な集合(空集合と全体集合)
- A’:補集合
- A – B:差集合
これらの記号を使いこなせるようになると、複雑な数学の問題もスムーズに解けるようになるでしょう。最初は一つずつゆっくり覚えて、少しずつ慣れていってくださいね。
数学の記号は、世界共通の「言語」です。この言語を習得することで、数学という学問の面白さがより深く理解できるようになりますよ。

コメント