「数学で『根』って言葉が出てきたけど、何のこと?」 「√(ルート)と方程式の根って同じもの?」 「なぜ解のことを根と呼ぶの?」
数学で使われる「根(こん)」という言葉、 実は3つの異なる意味があるんです。
でも心配いりません! すべて「元に戻す」という 共通の考え方でつながっています。
植物の根が地中から栄養を吸い上げるように、 数学の根も「元となる数」を見つける作業なんです。
この記事では、小学生の知識から始めて、 高校数学まで段階的に「根」のすべてを マスターできるよう解説します。
読み終わる頃には、 「なるほど、根ってこういうことか!」 と完全に理解できるはずです。
3種類の「根」:それぞれの意味と関係

1. 方程式の根(解)
最も基本的な「根」の意味
方程式の根 = 方程式を成り立たせる値
例: x² – 5x + 6 = 0 の根は?
x = 2 を代入:2² - 5×2 + 6 = 4 - 10 + 6 = 0 ✓
x = 3 を代入:3² - 5×3 + 6 = 9 - 15 + 6 = 0 ✓
答え:根は x = 2, 3
2. 平方根・n乗根
「何乗したらその数になるか」を表す
- 平方根(2乗根):√4 = 2(2² = 4だから)
- 立方根(3乗根):³√8 = 2(2³ = 8だから)
- n乗根:ⁿ√a(n乗してaになる数)
3. 根号(√ の記号)
根を表すための記号
- √ :ルート、根号
- ³√:3乗根の記号
- ⁿ√:n乗根の記号
3つの関係性:
方程式 x² = 9 の根を求める
→ x = ±√9(平方根を使う)
→ x = ±3(根号を計算)
すべてつながっているんです!
方程式の根:なぜ「解」を「根」と呼ぶのか

語源と歴史
英語では「root」
植物の根のように、 方程式の「根本」となる値だから。
グラフで見ると、 x軸と交わる点(地面に接する点)が根!
y
↑
|
----+----●----●---- x軸(地面)
| 根1 根2
|
↓
根が地面(x軸)に接している!
1次方程式の根
最もシンプルな例
2x + 6 = 0
2x = -6
x = -3 ← これが根!
確認:2×(-3) + 6 = -6 + 6 = 0 ✓
2次方程式の根
根は最大2個
x² - 5x + 6 = 0
因数分解:(x - 2)(x - 3) = 0
根:x = 2, 3
根の個数の法則:
- 1次方程式 → 根は1個
- 2次方程式 → 根は最大2個
- 3次方程式 → 根は最大3個
- n次方程式 → 根は最大n個
根と係数の関係
2次方程式 ax² + bx + c = 0 の根をα、βとすると:
和:α + β = -b/a
積:α × β = c/a
例: x² – 5x + 6 = 0
根:2, 3
和:2 + 3 = 5 = -(-5)/1 ✓
積:2 × 3 = 6 = 6/1 ✓
平方根(ルート):2乗の逆演算
平方根とは何か
定義: 2乗するとaになる数を、aの平方根という
√9 = 3 なぜなら 3² = 9
√16 = 4 なぜなら 4² = 16
√25 = 5 なぜなら 5² = 25
正と負の平方根
重要: 正の数の平方根は2つある!
9の平方根は?
(+3)² = 9 ✓
(-3)² = 9 ✓
答え:±3
記号の使い分け:
- √9 = 3(正の平方根のみ)
- ±√9 = ±3(両方の平方根)
平方根の性質
基本性質
1. √(a×b) = √a × √b
例:√12 = √(4×3) = √4 × √3 = 2√3
2. √(a/b) = √a / √b
例:√(9/4) = √9 / √4 = 3/2
3. (√a)² = a
例:(√5)² = 5
4. √a² = |a|(絶対値)
例:√(-3)² = √9 = 3 = |-3|
無理数としての平方根
有理数にならない平方根 = 無理数
√2 = 1.41421356...(無限に続く)
√3 = 1.73205080...
√5 = 2.23606797...
覚えておくと便利な値:
- √2 ≈ 1.41(ひとよひとよに)
- √3 ≈ 1.73(ひとなみに)
- √5 ≈ 2.24(ふじさん)
n乗根:平方根の拡張
立方根(3乗根)
3乗するとaになる数
³√8 = 2 (2³ = 8)
³√27 = 3 (3³ = 27)
³√-8 = -2 ((-2)³ = -8)
平方根との違い:
- 負の数の立方根も実数として存在
- 実数の立方根は1つだけ
4乗根、5乗根…
⁴√16 = 2 (2⁴ = 16)
⁴√81 = 3 (3⁴ = 81)
⁵√32 = 2 (2⁵ = 32)
n乗根の性質
一般的な性質:
1. ⁿ√(a×b) = ⁿ√a × ⁿ√b
2. ⁿ√(aᵐ) = aᵐ/ⁿ
例:³√(2⁶) = 2⁶/³ = 2² = 4
3. (ⁿ√a)ⁿ = a
4. ⁿ√ᵐ√a = ⁿᵐ√a
例:³√(√64) = ⁶√64 = 2
根の計算:実践的なテクニック

平方根の計算
簡単にする(有理化)
例1:√18を簡単に
√18 = √(9×2) = √9 × √2 = 3√2
例2:√50を簡単に
√50 = √(25×2) = √25 × √2 = 5√2
分母の有理化
例:1/√3 を有理化
1/√3 × √3/√3 = √3/3
根を含む式の計算
加法・減法
同じ根だけをまとめる:
3√2 + 5√2 = 8√2
4√3 - √3 = 3√3
異なる根はまとめられない:
√2 + √3 ≠ √5(これは間違い!)
乗法
√2 × √3 = √6
2√3 × 3√5 = 6√15
(√3)² = 3
展開公式
(a + √b)(a - √b) = a² - b
例:(3 + √2)(3 - √2) = 9 - 2 = 7
(√a + √b)² = a + 2√(ab) + b
例:(√3 + √5)² = 3 + 2√15 + 5 = 8 + 2√15
複素数の根:虚数単位 i の登場
負の数の平方根
問題: √(-4) は?
実数では存在しない! → 虚数単位 i を導入
i² = -1 と定義
√(-4) = √(4 × -1) = √4 × √(-1) = 2i
複素数の平方根
例:(1 + i)の平方根を求める
設定:√(1 + i) = a + bi
両辺を2乗:1 + i = a² - b² + 2abi
実部:a² - b² = 1
虚部:2ab = 1
解くと:a = √((√2 + 1)/2), b = √((√2 - 1)/2)
グラフで見る根の意味
1次関数と根
y = 2x - 4
y
|
| /
| /
----●-------- x
2
x = 2 が根(x軸との交点)
2次関数と根
y = x² - 4x + 3
y
|
| ∪
----●---●---- x
1 3
x = 1, 3 が根
根の個数とグラフの関係
判別式D = b² – 4ac
- D > 0:2個の実数根(x軸と2点で交わる)
- D = 0:1個の実数根(重根)(x軸に接する)
- D < 0:実数根なし(x軸と交わらない)
実生活での応用
物理での応用
自由落下の公式:
h = 1/2 × g × t²
高さ20mから落下、地面到達時間は?
20 = 1/2 × 10 × t²
t² = 4
t = √4 = 2秒
建築・工学での応用
ピタゴラスの定理:
直角三角形の斜辺 = √(a² + b²)
3m、4mの壁の対角線の長さ
= √(3² + 4²) = √25 = 5m
統計での応用
標準偏差:
σ = √(分散)
データのばらつきを表す
金融での応用
複利計算:
年利r%でn年後に2倍になる
(1 + r)ⁿ = 2
r = ⁿ√2 - 1
よくある間違いと注意点
間違い1:√の中の計算
❌ 間違い: √(9 + 16) = √9 + √16 = 3 + 4 = 7 ✅ 正解: √(9 + 16) = √25 = 5
間違い2:負の数の扱い
❌ 間違い: √(-3) × √(-3) = √9 = 3 ✅ 正解: √(-3) × √(-3) = i√3 × i√3 = i² × 3 = -3
間違い3:根の個数
❌ 間違い: x² = 4 の解は x = 2 だけ ✅ 正解: x² = 4 の解は x = ±2
間違い4:0の平方根
✅ 正解: √0 = 0(0の平方根は0のみ)
練習問題と解答
基本問題
問1: 次の平方根を求めよ
- √49 = ?
- √121 = ?
- √0.25 = ?
解答:
- 7(7² = 49)
- 11(11² = 121)
- 0.5(0.5² = 0.25)
応用問題
問2: x² – 6x + 8 = 0 の根を求めよ
解答:
因数分解:(x - 2)(x - 4) = 0
根:x = 2, 4
確認:
x = 2:4 - 12 + 8 = 0 ✓
x = 4:16 - 24 + 8 = 0 ✓
発展問題
問3: √(5 + 2√6) を簡単にせよ
解答:
√(5 + 2√6) = √((√2 + √3)²)
= |√2 + √3|
= √2 + √3
まとめ:「根」は数学の根本的な概念
数学の「根」は、一見バラバラに見えて、 実はすべて**「元に戻す」**という 共通の考え方でつながっています。
3つの根の関係:
✅ 方程式の根 = 式を0にする値
✅ 平方根・n乗根 = n乗の逆演算
✅ 根号 = 根を表す記号
マスターのポイント:
- 方程式の根は「解」と同じ意味
- 平方根は必ず±を考える
- ルートの計算は素因数分解から
- グラフではx軸との交点
- 実生活でも頻繁に使われる
学習の順序:
- まず1次方程式の解(根)を理解
- 平方根の概念と計算をマスター
- 2次方程式の解の公式を習得
- n乗根、複素数へと発展
根の概念は、中学から大学まで ずっと使い続ける重要な基礎。
しっかり理解しておけば、 高度な数学も怖くありません!
この記事を何度も読み返して、 「根」を完全にマスターしてください。
数学の「根本」が分かれば、 枝葉の問題も自然と解けるようになりますよ!
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