命題って何?

命題(めいだい)とは、正しいか正しくないかが明確に決まる文や式のことです。英語では「proposition」といいます。
ポイントは、その内容が実際に正しいかどうかではなく、「正しい」か「正しくない」かがはっきり決められるということです。
命題の例
命題になるもの:
- 「富士山は日本で一番高い山である」→ 正しいと判定できる(真)
- 「2 + 3 = 6」→ 正しくないと判定できる(偽)
- 「x = 2 ならば x² = 4」→ 正しいと判定できる(真)
命題にならないもの:
- 「富士山はきれいだ」→ 人によって意見が分かれる
- 「10000は大きい数字だ」→ 「大きい」の基準があいまい
- 「明日は晴れるかもしれない」→ はっきり決められない
命題かどうかを判断するコツは、「YesかNoかはっきり答えられるか?」を考えることです。
命題の真偽
命題には、真(しん)と偽(ぎ)という2つの状態があります。
真(True)
命題が正しいとき、その命題は真であるといいます。
例: 「すべての猫は動物である」→ 真
偽(False)
命題が正しくないとき、その命題は偽であるといいます。
例: 「すべての動物は猫である」→ 偽
反例とは?
命題が偽であることを示すには、反例(はんれい)を1つ見つければ十分です。
反例とは、命題が成り立たない具体的な例のことです。
例:
命題「x² = 4 ならば x = 2」
これは偽です。なぜなら、x = -2のとき、x² = 4 ですが x ≠ 2 だからです。
この x = -2 が反例です。
「AならばB」の形
数学の命題は、「AならばB」という形で表されることが多いです。
この形を条件文や仮言命題といいます。
- A: 仮定(かてい)、または前提
- B: 結論(けつろん)
記号では A ⇒ B と書きます。
具体例
「x = 3 ならば x² = 9」
- 仮定(A): x = 3
- 結論(B): x² = 9
この命題は真です。x = 3 を代入すると、確かに x² = 9 になります。
逆・裏・対偶とは?
「AならばB」という命題から、3つの関連する命題を作ることができます。
それが逆(ぎゃく)、裏(うら)、対偶(たいぐう)です。
命題の変形パターン
元の命題を「A ⇒ B」としたとき:
| 名前 | 形 | 説明 |
|---|---|---|
| 元の命題 | A ⇒ B | AならばB |
| 逆 | B ⇒ A | BならばA(仮定と結論を入れ替え) |
| 裏 | not A ⇒ not B | AでないならばBでない(両方を否定) |
| 対偶 | not B ⇒ not A | BでないならばAでない(入れ替えて否定) |
覚え方:
- 逆: 左右を逆にする
- 裏: 両方を裏返す(否定する)
- 対偶: 逆にしてから裏返す(または裏にしてから逆にする)
具体例で確認
元の命題: 「猫ならば動物である」(真)
逆: 「動物ならば猫である」(偽)
→ 犬も猿も動物なので偽
裏: 「猫でないならば動物でない」(偽)
→ 犬は猫ではないが動物なので偽
対偶: 「動物でないならば猫でない」(真)
→ 正しい!
命題と対偶の重要な関係
命題の逆・裏・対偶の中で、最も重要なのは対偶です。
対偶の法則
元の命題が真ならば、対偶も必ず真
元の命題が偽ならば、対偶も必ず偽
つまり、命題と対偶の真偽は常に一致します。
これを「命題と対偶は論理的に同値である」といいます。
なぜ対偶が重要なのか?
元の命題を直接証明するのが難しい場合、対偶を証明すれば元の命題も証明できるからです。
これを対偶証明法といいます。
対偶証明法の例
命題: 「n² が偶数ならば n は偶数」を証明せよ。
直接証明は難しいので、対偶を使います。
対偶: 「n が奇数ならば n² は奇数」
証明:
n が奇数ならば、n = 2k + 1 (kは整数)と書けます。
n² = (2k + 1)²
= 4k² + 4k + 1
= 2(2k² + 2k) + 1
これは奇数の形なので、n² は奇数です。
対偶が真であることが証明できたので、元の命題も真です!
逆と裏の関係

逆と裏には、対偶ほど強い関係ではありませんが、以下の関係があります。
逆と裏の真偽は常に一致します
なぜなら、逆の対偶が裏だからです。
真偽の関係図
元の命題 ⟺ 対偶
↕ ↕
逆 ⟺ 裏
- 元の命題と対偶は真偽が一致(⟺)
- 逆と裏は真偽が一致(⟺)
- でも、元の命題と逆の真偽は一致するとは限らない
具体例で確認
元の命題: 「x = 2 ならば x² = 4」(真)
逆: 「x² = 4 ならば x = 2」(偽)
→ 反例: x = -2
裏: 「x ≠ 2 ならば x² ≠ 4」(偽)
→ 反例: x = -2
対偶: 「x² ≠ 4 ならば x ≠ 2」(真)
見ての通り:
- 元の命題(真)と対偶(真)は一致 ✓
- 逆(偽)と裏(偽)は一致 ✓
- 元の命題(真)と逆(偽)は一致しない
否定の作り方
裏と対偶を作るには、条件の否定(ひてい)を作る必要があります。
基本的な否定
| 元の条件 | 否定 |
|---|---|
| x = 2 | x ≠ 2 |
| x > 5 | x ≤ 5 |
| x < 3 | x ≥ 3 |
「かつ」と「または」の否定
ド・モルガンの法則を使います。
| 元の条件 | 否定 |
|---|---|
| A かつ B | not A または not B |
| A または B | not A かつ not B |
例:
「x > 0 かつ y > 0」の否定は「x ≤ 0 または y ≤ 0」
複雑な命題の例
実際の問題で、逆・裏・対偶を作ってみましょう。
例題
命題「x² – x – 2 < 0 ならば 0 < x < 1」の逆・裏・対偶を述べ、その真偽を答えよ。
解答:
逆: 「0 < x < 1 ならば x² – x – 2 < 0」→ 真
裏: 「x² – x – 2 ≥ 0 ならば x ≤ 0 または 1 ≤ x」→ 真
(逆が真なので、逆の対偶である裏も真)
対偶: 「x ≤ 0 または 1 ≤ x ならば x² – x – 2 ≥ 0」→ 偽
反例: x = -1/2 のとき、x < 0 だが x² – x – 2 = 1/4 + 1/2 – 2 = -5/4 < 0
命題を判定するコツ
命題の真偽を判定するためのテクニックをまとめます。
1. まず具体例で試す
いくつか数値を代入して、命題が成り立つか確認します。
2. 反例を探す
命題が偽だと思ったら、1つでも反例を見つければ証明完了です。
3. 対偶を考える
元の命題の証明が難しければ、対偶を考えてみましょう。
4. ベン図を使う
集合の包含関係として考えると、視覚的に理解しやすくなります。
「A ⇒ B」が真 ⟺ Aの集合がBの集合に含まれる
日常生活での命題
命題は数学だけでなく、日常生活でも使われています。
日常の例
命題: 「雨が降っているならば地面は濡れている」(真)
逆: 「地面が濡れているならば雨が降っている」(偽)
→ 水をまいた可能性もある
裏: 「雨が降っていないならば地面は濡れていない」(偽)
→ 水をまいた可能性もある
対偶: 「地面が濡れていないならば雨は降っていない」(真)
日常会話では「逆もまた然り(ぎゃくもまたしかり)」という表現をよく使いますが、論理学では「逆は必ずしも真ならず」なので注意が必要です!
必要条件と十分条件
命題「A ⇒ B」が真のとき:
- Aは Bの十分条件
- Bは Aの必要条件
といいます。
十分条件
「Aならば必ずBになる」→ AがあればBには十分
例: 「猫である」は「動物である」の十分条件
必要条件
「Bでなければ Aにならない」→ Bは Aに必要
例: 「動物である」は「猫である」の必要条件
必要十分条件
「A ⇒ B」も「B ⇒ A」も両方真のとき、AとBは必要十分条件の関係にあります。
記号では A ⇔ B と書きます。
まとめ
命題は、数学における論理的思考の基礎となる重要な概念です。
命題の重要ポイント:
- 命題とは真偽がはっきり決まる文や式
- 「AならばB」の形が基本
- 逆: 入れ替え(B ⇒ A)
- 裏: 否定(not A ⇒ not B)
- 対偶: 入れ替えて否定(not B ⇒ not A)
真偽の関係:
- 元の命題と対偶は真偽が一致(重要!)
- 逆と裏は真偽が一致
- 元の命題と逆は一致するとは限らない
証明のテクニック:
- 反例を1つ見つければ偽を証明できる
- 対偶証明法: 元の命題が難しければ対偶を証明する
- 具体例で試してから一般的に証明する
実用のヒント:
- 日常会話の「逆もまた然り」は論理学では必ずしも成り立たない
- ベン図を使うと理解しやすい
- 否定を作るときはド・モルガンの法則を使う
命題は高校数学で頻出のテーマです。特に大学入試では、命題の真偽判定や対偶証明法がよく出題されます。
逆・裏・対偶の関係をしっかり理解して、論理的思考力を鍛えましょう!


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