数学の授業で「円錐の母線の長さを求めなさい」という問題を見たことはありませんか?
「母線」という言葉は聞き慣れないですが、実は立体図形を理解する上でとても重要な概念なんです。特に円柱や円錐の表面積を計算するときには、母線の長さが必要になります。
この記事では、母線の基本的な意味から、具体的な長さの求め方、表面積計算への応用まで、分かりやすく解説していきます!
母線とは?【基本的な定義】

母線の意味
母線(ぼせん)とは、立体図形の側面を作る直線のことです。英語では「generatrix」や「generator」といいます。
もっと分かりやすく言うと、「立体の縦の線」や「側面を構成する線」のことです。
イメージで理解する
想像してみてください。紙を丸めて筒を作ると円柱ができますよね。このとき、紙の上下をつなぐ直線が母線です。
円錐も同じように、扇形の紙を丸めて作ることができます。このとき、頂点から底面の円周までの直線が母線になります。
母線という名前の由来
「母線」という名前は、この線が立体を「生み出す」基準となる線だからつけられました。回転体を考えるとき、ある線を軸の周りに回転させることで立体ができるため、その「もとになる線」という意味で母線と呼ばれます。
円柱の母線【円柱での母線の特徴】
円柱は、最も母線が理解しやすい立体です。
円柱の母線とは
円柱の母線は、上の底面と下の底面を垂直につなぐ直線のことです。
円柱には無数の母線がありますが、どの母線も長さは同じで、円柱の高さと等しくなります。
円柱の母線の性質
性質1:母線の長さ = 円柱の高さ
円柱の母線は底面に垂直なので、母線の長さと高さは同じです。
性質2:母線は側面の直線
円柱を展開図にしたとき、側面は長方形になります。この長方形の縦の辺が母線です。
性質3:すべての母線は平行
円柱のどの母線も、互いに平行で同じ長さです。
円柱の母線を使った計算
例題:円柱の側面積
半径r、高さhの円柱の側面積は:
側面積 = 底面の円周 × 母線の長さ
= 2πr × h
= 2πrh
母線の長さ = hを使っています。
円錐の母線【円錐での母線の特徴】
円錐では、母線が重要な役割を果たします。
円錐の母線とは
円錐の母線は、頂点から底面の円周上の任意の点までの直線のことです。
円錐にも無数の母線がありますが、どの母線も長さは同じです。
円錐の母線と高さの違い
ここが重要なポイントです。
高さ: 頂点から底面に垂直に下ろした線の長さ
母線: 頂点から底面の円周までの斜めの線の長さ
母線の長さ > 高さ
円錐では、母線は斜めの線なので、高さより長くなります。
円錐の母線の求め方
三平方の定理(ピタゴラスの定理)を使います。
公式:
l² = h² + r²
l:母線の長さ
h:円錐の高さ
r:底面の半径
例題:
高さ4cm、底面の半径3cmの円錐の母線の長さを求めなさい。
解き方:
l² = 4² + 3²
l² = 16 + 9
l² = 25
l = 5 (cm)
答え: 5cm
円錐の側面積と母線
円錐の側面を展開すると、扇形になります。
側面積の公式:
側面積 = πrl
r:底面の半径
l:母線の長さ
導き方:
展開図の扇形の弧の長さは、底面の円周2πrと等しくなります。
扇形の半径は母線lです。
扇形の面積の公式から:
側面積 = (弧の長さ × 半径) ÷ 2
= (2πr × l) ÷ 2
= πrl
角柱と角錐の側面の辺
厳密には母線という言葉は回転体(円柱・円錐など)で使いますが、角柱や角錐でも似た概念があります。
角柱の側面
角柱の側面を構成する辺は、底面に垂直な直線です。
四角柱なら、縦の辺が母線に相当する部分になります。
角錐の側面
角錐では、頂点から底面の各頂点までの辺が、円錐の母線に相当します。
ただし、角錐では各辺の長さが異なることもあります(円錐ではすべての母線が同じ長さ)。
回転体と母線の関係
母線の概念は、回転体を理解する上で重要です。
回転体の作り方
ある平面図形を、ある直線(回転軸)の周りに1回転させてできる立体を回転体といいます。
円柱の場合:
長方形を、その一辺を軸として回転させると円柱ができます。回転軸に平行な辺が、回転後の母線になります。
円錐の場合:
直角三角形を、直角を挟む一辺を軸として回転させると円錐ができます。斜辺が、回転後の母線になります。
母線が作る面
母線を回転軸の周りに回転させると、立体の側面が作られます。
- 円柱:母線を回転させると円柱の側面ができる
- 円錐:母線を回転させると円錐の側面ができる
母線を使った表面積の計算

立体の表面積を求めるとき、母線の長さが必要になることが多いです。
円柱の表面積
公式:
表面積 = 底面積 × 2 + 側面積
= 2πr² + 2πrh
h:母線の長さ(= 高さ)
例題:
半径3cm、高さ5cmの円柱の表面積を求めなさい。
解き方:
表面積 = 2π × 3² + 2π × 3 × 5
= 18π + 30π
= 48π (cm²)
円錐の表面積
公式:
表面積 = 底面積 + 側面積
= πr² + πrl
l:母線の長さ
例題:
半径3cm、母線の長さ5cmの円錐の表面積を求めなさい。
解き方:
表面積 = π × 3² + π × 3 × 5
= 9π + 15π
= 24π (cm²)
母線の長さを求める実践問題
問題1:円錐の母線
問題:
高さ12cm、底面の半径5cmの円錐の母線の長さを求めなさい。
解き方:
三平方の定理を使います。
l² = h² + r²
l² = 12² + 5²
l² = 144 + 25
l² = 169
l = 13 (cm)
答え: 13cm
問題2:母線から高さを求める
問題:
底面の半径が6cm、母線の長さが10cmの円錐の高さを求めなさい。
解き方:
三平方の定理から:
l² = h² + r²
10² = h² + 6²
100 = h² + 36
h² = 64
h = 8 (cm)
答え: 8cm
問題3:母線を使った側面積
問題:
底面の半径4cm、母線の長さ6cmの円錐の側面積を求めなさい。
解き方:
側面積 = πrl
= π × 4 × 6
= 24π (cm²)
答え: 24π cm²
問題4:円柱の表面積
問題:
半径2cm、母線の長さ7cmの円柱の表面積を求めなさい。
解き方:
円柱では母線の長さ = 高さなので、h = 7cm。
表面積 = 2πr² + 2πrh
= 2π × 2² + 2π × 2 × 7
= 8π + 28π
= 36π (cm²)
答え: 36π cm²
展開図と母線の関係
立体の展開図を描くとき、母線の長さが重要になります。
円柱の展開図
円柱を展開すると:
- 底面:2つの円
- 側面:長方形
側面の長方形の縦の長さが母線の長さです。
側面の長方形の大きさ:
- 横:底面の円周 = 2πr
- 縦:母線の長さ = h
円錐の展開図
円錐を展開すると:
- 底面:円
- 側面:扇形
側面の扇形の半径が母線の長さです。
側面の扇形の大きさ:
- 半径:母線の長さ = l
- 弧の長さ:底面の円周 = 2πr
中心角の求め方:
扇形の中心角をθとすると:
2πl × θ/360 = 2πr
θ = 360r/l (度)
母線と高さを混同しないために
初学者がよく間違えるポイントを整理しましょう。
円柱の場合
母線の長さ = 高さ
円柱では、母線は底面に垂直なので、母線と高さは同じです。混同しても問題ありません。
円錐の場合
母線の長さ ≠ 高さ
円錐では、母線は斜めの線、高さは垂直の線なので、まったく違います。
見分け方:
- 高さ:頂点から底面の中心まで(垂直)
- 母線:頂点から底面の円周まで(斜め)
関係式:
l² = h² + r²
母線が最も長く、次に高さ、最も短いのは半径ではありません(r < h < lとは限らない)。
円錐台と母線
円錐台(円錐の上を切った形)にも母線があります。
円錐台の母線
円錐台の母線は、上の底面の円周から下の底面の円周までの斜めの線です。
母線の長さの求め方:
上の底面の半径をr₁、下の底面の半径をr₂、高さをhとすると:
l² = h² + (r₂ - r₁)²
円錐台の側面積
公式:
側面積 = π(r₁ + r₂)l
l:母線の長さ
r₁:上の底面の半径
r₂:下の底面の半径
よくある質問
Q1:なぜ「母線」という名前なの?
回転体を作るときの「もとになる線」だからです。この線を回転させることで立体が生まれるため、「母」という字が使われています。
Q2:母線は何本ある?
理論上、無数にあります。円柱や円錐の側面上のどの点を通っても、母線を引くことができます。ただし、どの母線も同じ長さです。
Q3:母線と斜辺の違いは?
円錐を作る前の直角三角形では「斜辺」、回転させて円錐になった後は「母線」と呼びます。意味としては同じですが、使う場面が違います。
Q4:角柱にも母線はある?
厳密には母線という言葉は回転体で使いますが、角柱の縦の辺を母線のようなものと考えることもあります。
Q5:球に母線はある?
球は曲面しかないので、母線という概念はありません。球は半円を回転させて作りますが、回転させる半円の円弧を母線とは呼びません。
母線に関連する用語

回転軸
立体を作るときに、図形を回転させる中心となる軸のことです。
円柱や円錐を作るとき、母線は回転軸を中心に回転します。
斜高
角錐において、頂点から底面の辺の中点までの距離を斜高といいます。これは円錐の母線に似た概念です。
頂点
円錐の尖った部分です。すべての母線は頂点から出発します。
底面
立体の下の面(または上下の面)です。母線は底面の円周上の点につながります。
まとめ
母線は立体図形、特に回転体を理解する上で重要な概念です。
この記事のポイント
- 母線とは立体の側面を作る直線のこと
- 円柱の母線の長さは高さと同じ
- 円錐の母線の長さは高さより長い(斜めの線だから)
- 円錐の母線の長さは三平方の定理で求める:l² = h² + r²
- 円柱の側面積:2πrh(hは母線の長さ)
- 円錐の側面積:πrl(lは母線の長さ)
- 展開図を描くとき母線の長さが必要
- 円錐では母線と高さを混同しないように注意
- 母線という名前は「もとになる線」という意味
母線の概念をしっかり理解すれば、立体図形の表面積や展開図の問題がグッと解きやすくなります。特に円錐では、母線と高さを混同しないように注意しましょう。図を描いて視覚的に理解することが大切ですよ!


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