数学の展開公式を完全マスター!基本から応用まで覚え方のコツも解説

数学

「(x + 3)²」という式を見て、パッと答えが思い浮かびますか?

数学の展開公式を使えば、このようなカッコ付きの式を素早く計算できるようになります。中学3年生で初めて学ぶ展開公式は、その後の高校数学や大学入試でも頻繁に使われる重要なテクニックなんです。

この記事では、展開公式の基本から応用まで、わかりやすく解説していきます。覚え方のコツも紹介するので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

スポンサーリンク

展開とは?基礎知識をおさらい

展開とは、カッコを含む式を計算して、カッコを外すことを指します。

簡単な例で見てみましょう

2(x + 3) = 2x + 6

これが展開です。カッコの外にある2を、カッコ内のそれぞれの項に掛けています。これを分配法則(ぶんぱいほうそく)といいます。

もう少し複雑な例も見てみましょう。

(x + 2)(x + 3)

これを展開するには、最初のカッコの各項と、次のカッコの各項をすべて掛け合わせます。

(x + 2)(x + 3) = x・x + x・3 + 2・x + 2・3 = x² + 3x + 2x + 6 = x² + 5x + 6

この計算、毎回やっていると時間がかかりますよね。そこで登場するのが「展開公式」です。

展開公式とは何か

展開公式(てんかいこうしき)とは、特定の形のカッコ付き式を素早く展開するための公式のことです。

別名を「乗法公式(じょうほうこうしき)」といいます。掛け算(乗法)の結果をパターン化したものだからです。

展開公式のメリット

  • 計算時間が大幅に短縮される
  • 計算ミスが減る
  • 複雑な式でも規則的に処理できる

展開公式を覚えることで、テストでの計算スピードが格段にアップします。

基本の展開公式4つ【中学3年生レベル】

中学3年生で学ぶ基本的な展開公式は4つあります。これらは絶対に覚えておく必要があります。

公式1:(x + a)(x + b)の展開

(x + a)(x + b) = x² + (a + b)x + ab

覚え方のポイント:

  • x²がまず来る
  • 次の項は「aとbの和×x」
  • 最後は「aとbの積」

具体例

(x + 3)(x + 5)を展開してみましょう。

a = 3、b = 5として公式に当てはめます。

= x² + (3 + 5)x + 3×5
= x² + 8x + 15

公式2:(x + a)²の展開

(x + a)² = x² + 2ax + a²

これは「和の2乗」と呼ばれる公式です。

覚え方のポイント:

  • 最初の2乗:x²
  • 2倍の項:2ax
  • 最後の2乗:a²

語呂合わせで「はじめ2乗、2倍して、あとも2乗」と覚えると良いでしょう。

具体例

(x + 4)²を展開します。

= x² + 2・4・x + 4²
= x² + 8x + 16

よくある間違い

×:(x + 4)² = x² + 4² = x² + 16(これは間違い!)

真ん中の2ax(この場合は8x)を忘れないように注意しましょう。

公式3:(x – a)²の展開

(x – a)² = x² – 2ax + a²

これは「差の2乗」と呼ばれる公式です。

公式2との違いは符号だけ

真ん中の項だけマイナスになります。最後のa²は必ずプラスです。

具体例

(x – 3)²を展開します。

= x² – 2・3・x + 3²
= x² – 6x + 9

よくある間違い

×:(x – 3)² = x² – 9(これも間違い!)

やはり真ん中の項を忘れないことが大切です。

公式4:(x + a)(x – a)の展開

(x + a)(x – a) = x² – a²

これは「和と差の積」または「平方の差」と呼ばれる公式です。

覚え方のポイント:

真ん中の項が消えて、2乗の差だけが残ります。非常にシンプルですね。

具体例

(x + 5)(x – 5)を展開します。

= x² – 5²
= x² – 25

なぜ真ん中の項が消えるのか?

実際に分配法則で計算すると:
(x + 5)(x – 5) = x² – 5x + 5x – 25 = x² – 25

-5xと+5xが打ち消し合うため、真ん中の項が消えるんです。

展開公式の覚え方のコツ

コツ1:日本語で覚える

公式を記号だけで覚えるのは大変です。日本語に翻訳すると覚えやすくなります。

公式2の場合:
「(x + a)²は、xの2乗、プラス、2倍のax、プラス、aの2乗」

声に出して何度も言うと、自然に覚えられますよ。

コツ2:パターンを理解する

  • 公式1は「係数の和、定数項の積」
  • 公式2と3は「2乗、2倍、2乗」
  • 公式4は「2乗の差」

このようにパターンとして理解すると忘れにくくなります。

コツ3:何度も練習する

結局のところ、練習が一番の近道です。

毎日5問ずつでもいいので、繰り返し問題を解くことで、自然と公式が身につきます。

コツ4:分配法則に戻る

公式を忘れたときは、焦らず分配法則で地道に計算しましょう。

公式はあくまで「便利な道具」です。基本の分配法則さえできれば、どんな式も展開できます。

発展的な展開公式【高校レベル】

高校に入ると、より複雑な展開公式を学びます。

(a + b)³の展開

(a + b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³

覚え方:
係数が「1、3、3、1」のパターンになっています。

(a – b)³の展開

(a – b)³ = a³ – 3a²b + 3ab² – b³

符号が「+、-、+、-」と交互になります。

(a + b + c)²の展開

(a + b + c)² = a² + b² + c² + 2ab + 2bc + 2ca

3つの項がある場合の公式です。

覚え方:

  • それぞれの2乗を全部足す
  • 2つずつの組み合わせを全部2倍する

a³ + b³とa³ – b³の因数分解

これらは展開の逆の「因数分解」の公式ですが、セットで覚えると便利です。

  • a³ + b³ = (a + b)(a² – ab + b²)
  • a³ – b³ = (a – b)(a² + ab + b²)

応用:係数が1でない場合の展開

基本公式では、xの係数が1でしたが、実際には係数が他の数字になることもあります。

例:(2x + 3)(2x + 5)

このような式は、2xをひとまとまりとして考えます。

2x = Xと置き換えると:
(X + 3)(X + 5) = X² + 8X + 15

Xを2xに戻すと:
= (2x)² + 8(2x) + 15
= 4x² + 16x + 15

例:(3x + 2)²

これも同様に、3x = Xと置き換えます。

(X + 2)² = X² + 4X + 4

Xを3xに戻すと:
= (3x)² + 4(3x) + 4
= 9x² + 12x + 4

展開の工夫:置き換えを使う

複雑な式を展開するときは、「置き換え」というテクニックが有効です。

例題:(x + 2y + 3z)²を展開

3つの項がありますが、最初の2つをまとめます。

A = x + 2y とおくと:
(A + 3z)²

これを展開すると:
= A² + 6Az + 9z²

Aを元に戻します:
= (x + 2y)² + 6(x + 2y)z + 9z²

さらに展開:
= x² + 4xy + 4y² + 6xz + 12yz + 9z²

このように、複雑な式も工夫次第で展開できるんです。

展開と因数分解の関係

展開と因数分解は、互いに逆の操作です。

展開:カッコを外す
(x + 3)(x + 5) → x² + 8x + 15

因数分解:カッコでまとめる
x² + 8x + 15 → (x + 3)(x + 5)

展開公式をしっかり理解すると、因数分解も楽にできるようになります。両方セットで学習するのがおすすめです。

二項定理(にこうていり):さらに高度な展開

高校数学では、二項定理という一般化された展開公式を学びます。

二項定理の公式

(a + b)ⁿ = ₙC₀ aⁿ + ₙC₁ aⁿ⁻¹b + ₙC₂ aⁿ⁻²b² + … + ₙCₙ bⁿ

ここで ₙCᵣ は組み合わせの数(二項係数)を表します。

パスカルの三角形

二項係数は、パスカルの三角形として視覚化できます。

        1
      1   1
    1   2   1
  1   3   3   1
1   4   6   4   1

各行が、それぞれ(a + b)⁰、(a + b)¹、(a + b)²、(a + b)³、(a + b)⁴の係数に対応しています。

展開公式の実用例

展開公式は、数学の問題を解くだけでなく、実生活でも役立ちます。

例1:面積の計算

(x + 5)²という式は、一辺が(x + 5)cmの正方形の面積を表します。

展開すると x² + 10x + 25 となり、これは:

  • x² : x×xの正方形
  • 10x : 5×xの長方形が2つ
  • 25 : 5×5の正方形

として分解できます。

例2:速さと距離の計算

時速xkmで走る車と、時速(x + 10)kmで走る車がそれぞれ2時間走ったときの距離の差は?

2(x + 10) – 2x = 2x + 20 – 2x = 20km

このように、展開を使うと問題がスムーズに解けます。

よくある間違いと注意点

間違い1:2乗の公式で真ん中の項を忘れる

×:(x + 3)² = x² + 9
○:(x + 3)² = x² + 6x + 9

2ax(真ん中の項)は絶対に忘れないようにしましょう。

間違い2:符号のミス

(x – 3)²の展開で、最後のa²をマイナスにしてしまう間違いがよくあります。

×:(x – 3)² = x² – 6x – 9
○:(x – 3)² = x² – 6x + 9

a²は必ずプラスです。

間違い3:公式の形を見間違える

(x + 3)(x – 3)と(x + 3)²は違います。

  • (x + 3)(x – 3) = x² – 9(和と差の積)
  • (x + 3)² = x² + 6x + 9(和の2乗)

問題をよく見て、どの公式を使うべきか判断しましょう。

練習問題で理解を深めよう

理論だけでなく、実際に手を動かすことが大切です。

基礎問題

  1. (x + 2)(x + 7)を展開しなさい
  2. (x + 5)²を展開しなさい
  3. (x – 4)²を展開しなさい
  4. (x + 6)(x – 6)を展開しなさい

解答

  1. x² + 9x + 14
  2. x² + 10x + 25
  3. x² – 8x + 16
  4. x² – 36

応用問題

  1. (2x + 3)(2x + 5)を展開しなさい
  2. (3x – 2)²を展開しなさい

解答

  1. 4x² + 16x + 15
  2. 9x² – 12x + 4

これらの問題がスラスラ解けるようになれば、展開公式をマスターしたと言えるでしょう。

まとめ

数学の展開公式は、計算をスピードアップさせる強力なツールです。

この記事で学んだ重要ポイント:

  • 展開とは:カッコを外して式を書き換えること
  • 基本の4公式
  1. (x + a)(x + b) = x² + (a + b)x + ab
  2. (x + a)² = x² + 2ax + a²
  3. (x – a)² = x² – 2ax + a²
  4. (x + a)(x – a) = x² – a²
  • 覚え方のコツ:日本語で覚える、パターンを理解する、練習を重ねる
  • 応用:係数が1でない場合も置き換えで対応できる
  • 発展:3乗の公式、3項の公式、二項定理など

展開公式は、最初は難しく感じるかもしれませんが、練習を重ねれば必ず身につきます。

公式を丸暗記するだけでなく、「なぜそうなるのか」を理解することが大切です。分配法則から導き出せることを知っていれば、万が一公式を忘れても自分で計算できますからね。

数学は積み重ねの学問です。展開公式をしっかりマスターして、次のステップである因数分解や2次方程式へと進んでいきましょう!

コメント

タイトルとURLをコピーしました