数学で「この関数は連続である」「ここで不連続になる」といった表現を聞いたことはありませんか?
「連続」という言葉は日常でもよく使いますが、数学では非常に厳密で重要な意味を持つ概念なんです。簡単に言えば、「グラフが途切れずにつながっている」ということですが、実はもっと深い意味があります。
この記事では、連続性の直感的な理解から数学的に厳密な定義まで、具体例をたっぷり使いながら丁寧に解説していきます。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、身近な例で考えれば、とても自然な概念だと分かってもらえるはずですよ。
それでは、まず「連続」の直感的なイメージから見ていきましょう!
連続の直感的なイメージ:鉛筆を離さずに描ける

連続(れんぞく) という概念を理解する最も簡単な方法は、グラフを描くときのイメージです。英語では “continuous” といいます。
鉛筆を離さずに描けるかどうか
関数のグラフが連続であるとは、鉛筆を紙から離さずに一筆書きで描ける ということです。
説明:
グラフに穴や飛び、切れ目がなく、スムーズにつながっている状態を「連続」といいます。逆に、どこかで途切れていたり、ジャンプしていたりする場合は「不連続」です。
連続な関数の例
実例1:y = x
これは原点を通る直線です。どこにも切れ目や飛びがなく、ずっとつながっています。完全に連続な関数です。
実例2:y = x²
放物線のグラフです。これもどこにも途切れがなく、滑らかにつながっています。連続な関数ですね。
実例3:y = sin x
サインのグラフは波のように上下しますが、どこにも切れ目はありません。これも連続な関数です。
不連続な関数の例
実例1:階段関数
郵便料金のグラフを考えてみましょう。重さが50gまでは84円、50gを超えると94円のように、ある重さを境に急に値段がジャンプします。このような関数は不連続です。
説明:
グラフを描こうとすると、50gのところで鉛筆を離さないと描けません。これが不連続の直感的なイメージです。
実例2:y = 1/x
この関数はx = 0で定義されていません。x = 0の前後でグラフが完全に分離していて、つながっていません。x = 0では不連続です。
点における連続性:一点で連続かどうか
関数が連続かどうかは、各点ごとに考えることができます。
点x = aで連続であるための条件
関数f(x)が点x = aで 連続である とは、以下の3つの条件をすべて満たすことです。
条件1:f(a)が定義されている
説明:
その点での関数の値が存在していなければなりません。
実例:
y = 1/xの場合、x = 0では値が定義されていないので、連続ではありません。
条件2:極限値 lim(x→a) f(x) が存在する
説明:
xがaに近づくとき、f(x)がある値に近づいていく必要があります。この値を 極限値(きょくげんち) といいます。
実例:
y = xの場合、xが3に近づくとき、yも3に近づきます。極限値が存在します。
条件3:lim(x→a) f(x) = f(a)
説明:
極限値と、その点での実際の関数の値が一致している必要があります。これが最も重要な条件です。
実例:
階段関数では、50gに近づくときの極限値(84円)と、50gでの実際の値(94円)が違います。だから不連続なのです。
簡単に言うと
「近くから見た値」と「その点での実際の値」が一致していれば連続、ということですね。
極限を使った厳密な定義
高校数学や大学数学では、極限(きょくげん) という概念を使って連続性を厳密に定義します。
極限とは何か
極限 とは、「限りなく近づいていく」という概念です。英語では “limit” といいます。
説明:
xがaに限りなく近づくとき、f(x)がある値Lに限りなく近づくなら、「xがaに近づくときのf(x)の極限はL」といい、記号で次のように書きます。
lim(x→a) f(x) = L
(「リミット、xがaに近づくときのf(x)はL」と読みます)
極限を使った連続の定義
関数f(x)が点x = aで連続であるとは:
lim(x→a) f(x) = f(a)
説明:
「xがaに近づくときのf(x)の極限値」が「x = aでの関数の値」と等しいということです。
具体例で理解しよう
実例1:y = 2x + 1がx = 3で連続であることを確認
- f(3) = 2×3 + 1 = 7
- lim(x→3) (2x + 1) = 2×3 + 1 = 7
- f(3) = lim(x→3) f(x) なので、x = 3で連続
実例2:不連続な例
次のような関数を考えます:
- f(x) = x (x ≠ 2のとき)
- f(2) = 5
この場合:
- f(2) = 5
- lim(x→2) f(x) = 2
- f(2) ≠ lim(x→2) f(x) なので、x = 2で不連続
連続の種類:左側・右側からの連続
連続性には、より細かい分類があります。
右側連続と左側連続
関数が点aで連続かどうかを、右側から近づく場合 と 左側から近づく場合 に分けて考えることができます。
右側連続(みぎがわれんぞく):
xがaより大きい値からaに近づくとき連続である状態です。
記号:lim(x→a+) f(x) = f(a)
(x→a+は「xがaに右側(大きい側)から近づく」という意味)
左側連続(ひだりがわれんぞく):
xがaより小さい値からaに近づくとき連続である状態です。
記号:lim(x→a-) f(x) = f(a)
(x→a-は「xがaに左側(小さい側)から近づく」という意味)
連続であるための条件
関数がx = aで連続であるためには、右側連続かつ左側連続 である必要があります。
つまり:lim(x→a+) f(x) = lim(x→a-) f(x) = f(a)
階段関数の例
郵便料金の階段関数を考えます。
x = 50で:
- 左側から近づく極限(50g未満):84円
- 右側から近づく極限(50g超):94円
- 実際の値 f(50):94円
左側の極限と実際の値が一致しないので、x = 50では不連続です。
区間での連続性:範囲全体で途切れない

点での連続性が理解できたら、次は 区間での連続性 です。
区間で連続であるとは
関数f(x)が区間Iで連続であるとは、その区間に含まれるすべての点で連続である ということです。
実例:
- y = x² は実数全体(-∞ < x < ∞)で連続
- y = 1/x は x ≠ 0 の範囲で連続(x = 0は定義されていないので除く)
閉区間での連続性
閉区間 [a, b] で連続 とは:
- 区間内のすべての点で連続
- x = a では右側連続
- x = b では左側連続
説明:
端点では片側からしか近づけないので、片側連続であればOKです。
不連続の種類:どのように途切れるか
連続でない場合(不連続)にも、いくつかのタイプがあります。
除去可能な不連続(じょきょかのうなふれんぞく)
関数の定義を変えれば連続にできる不連続です。
実例:
f(x) = (x² - 4)/(x - 2) (x ≠ 2)
f(2) = 5
この関数は:
- lim(x→2) (x² – 4)/(x – 2) = lim(x→2) (x + 2) = 4
- f(2) = 5
- 極限値と実際の値が違うので不連続
でも、f(2)を4に定義し直せば連続になります。これを 除去可能な不連続 といいます。
跳躍不連続(ちょうやくふれんぞく)
左側の極限と右側の極限が異なる不連続です。
実例:
階段関数がこのタイプです。左右から近づく値が違うため、「ジャンプ」が発生します。
説明:
このタイプの不連続は、定義を変えても取り除けません。
無限不連続(むげんふれんぞく)
極限値が無限大になる不連続です。
実例:
- y = 1/x の x = 0 での不連続
- xが0に近づくと、yは限りなく大きく(または小さく)なります
- グラフが垂直な線(漸近線)に近づいていきます
振動不連続(しんどうふれんぞく)
極限値が定まらず、振動し続ける不連続です。
実例:
- y = sin(1/x) の x = 0 での不連続
- xが0に近づくと、関数が激しく振動して極限値が定まりません
連続関数の重要な性質
連続な関数には、いくつかの重要な性質があります。
中間値の定理(ちゅうかんちのていり)
定理:
関数f(x)が閉区間[a, b]で連続で、f(a) ≠ f(b)のとき、f(a)とf(b)の間のどんな値kに対しても、f(c) = kとなるcが[a, b]の中に存在する。
説明:
グラフが途切れずにつながっているなら、始点と終点の間のすべての高さを必ず通過する、ということです。
実例:
気温を考えてみましょう。午前0時が10℃で、正午が25℃だったとします。気温は連続的に変化するので、その間に必ず20℃になる時刻が存在します。
最大値・最小値の定理
定理:
関数f(x)が閉区間[a, b]で連続ならば、その区間で最大値と最小値を持つ。
説明:
連続な関数を有限の閉区間で見れば、必ず一番高い点と一番低い点が存在するということです。
実例:
y = x² を区間[-2, 3]で考えると:
- 最小値:f(0) = 0
- 最大値:f(3) = 9
これらは必ず存在します。
連続関数の四則演算
定理:
f(x)とg(x)がともに連続ならば、次の関数も連続:
- f(x) + g(x)(和)
- f(x) – g(x)(差)
- f(x) × g(x)(積)
- f(x) / g(x)(商、ただしg(x) ≠ 0)
説明:
連続な関数同士を足したり掛けたりしても、結果は連続になります。
合成関数の連続性
定理:
g(x)がx = aで連続で、f(u)がu = g(a)で連続ならば、合成関数f(g(x))はx = aで連続。
説明:
連続な関数の中に連続な関数を入れても、結果は連続です。
実例:
- g(x) = x² は連続
- f(u) = sin u は連続
- よって f(g(x)) = sin(x²) も連続
微分可能と連続の関係
微分可能(びぶんかのう) と連続性には密接な関係があります。
微分可能ならば連続
定理:
関数f(x)がx = aで微分可能ならば、f(x)はx = aで連続である。
説明:
微分可能(滑らかで接線が引ける)という条件は、連続(つながっている)という条件より強いのです。
実例:
- y = x² は微分可能なので、当然連続です
- 接線が引けるなら、グラフは必ずつながっています
連続でも微分可能とは限らない
逆は成り立ちません。連続だけど微分可能でない関数もあります。
実例:y = |x|(絶対値関数)
この関数は:
- すべての点で連続(グラフは途切れていない)
- x = 0では微分不可能(尖っているので接線が引けない)
説明:
「つながっている」けど「滑らかでない」点が存在するのです。
一様連続:連続性の強いバージョン
大学数学では、一様連続(いちようれんぞく) という概念も登場します。
一様連続とは
一様連続 とは、連続性が区間全体で「均等に」成り立つという強い条件です。英語では “uniformly continuous” といいます。
説明:
普通の連続性は各点ごとに成り立てばよいのですが、一様連続は区間全体で同じ基準で連続性が保証されます。
普通の連続との違い
実例:y = 1/x を区間(0, 1]で考える
この関数は:
- (0, 1]のすべての点で連続
- しかし一様連続ではない
理由:
x = 0に近づくほど、関数の変化が激しくなります。区間全体で「均等に」連続とは言えないのです。
実生活での連続性の応用
連続性の概念は、数学だけでなく実生活でも重要です。
物理量の連続性
温度、圧力、速度 などの物理量は、通常連続的に変化します。
実例:
- 気温は急に10℃から30℃にジャンプしません
- 車の速度も連続的に変化します(瞬間移動はできません)
説明:
物理法則の多くは、量が連続的に変化することを前提にしています。
デジタルとアナログ
アナログ信号: 連続的な値を取る信号
デジタル信号: 離散的な値を取る信号(不連続)
実例:
- アナログ時計の秒針:連続的に動く
- デジタル時計の表示:1秒ごとに飛ぶ(不連続)
経済学での応用
価格、需要、供給などを連続関数として扱うことで、微分などの数学的手法が使えるようになります。
実例:
需要関数が連続であれば、価格をわずかに変えたときの需要の変化(弾力性)を計算できます。
コンピュータグラフィックス
滑らかな曲線や曲面を描くには、連続関数が必要です。
実例:
- ベジェ曲線は連続な曲線
- 3Dモデルの表面も連続的に滑らか
説明:
不連続な点があると、画像に「カクカク」した部分ができてしまいます。
連続性の確認方法
実際に関数が連続かどうかを確認する方法を見ていきましょう。
ステップ1:定義域を確認
まず、関数がどこで定義されているか確認します。
実例:
- y = √x は x ≥ 0 でのみ定義
- y = 1/x は x ≠ 0 でのみ定義
ステップ2:基本的な連続関数を識別
以下の関数は、定義域全体で連続です:
- 多項式関数(x²、x³ + 2x – 1など)
- 三角関数(sin x、cos xなど)
- 指数関数(eˣなど)
- 対数関数(ln x、定義域内で)
ステップ3:四則演算や合成を確認
連続な関数同士の四則演算や合成は連続なので、複雑な関数も連続性を判断できます。
実例:
- f(x) = sin(x²) + eˣ
- sin(x²)は連続な関数の合成で連続
- eˣは連続
- よって和も連続
ステップ4:不連続の可能性がある点を調べる
次のような点では不連続の可能性があります:
- 分母が0になる点
- 関数の定義が変わる点(場合分けがある関数)
- 絶対値記号の中身が0になる点
ε-δ論法:連続性の厳密な定義
大学数学では、ε-δ論法(イプシロン・デルタろんぽう) という非常に厳密な方法で連続性を定義します。
ε-δ論法とは
関数f(x)が点x = aで連続であるとは:
任意のε > 0に対して、あるδ > 0が存在して、|x – a| < δ ならば |f(x) – f(a)| < ε
説明:
- εは「どれくらい近ければよいか」の許容誤差
- δは「xをどれくらいaに近づければよいか」の範囲
どんなに小さなε(許容誤差)を要求されても、適切なδを選べば、xをaから離れてδ以内に抑えればf(x)がf(a)からε以内に収まる、ということです。
直感的な理解
「どれだけ近い値が欲しいか」を決めたら、「そのためにはどれだけxをaに近づければよいか」が決まる、という意味です。
これが数学的に厳密な連続の定義ですが、高校数学では極限を使った定義で十分です。
まとめ:連続性は数学の基本概念
連続性は、数学のあらゆる分野で重要な役割を果たす基本的な概念です。
連続の基本的な理解:
- グラフが途切れずにつながっている状態
- 鉛筆を離さずに一筆書きできる
- 近くから見た値と実際の値が一致している
点での連続の条件:
- f(a)が定義されている
- 極限値 lim(x→a) f(x) が存在する
- lim(x→a) f(x) = f(a)
連続性の種類:
- 点での連続性と区間での連続性
- 左側連続と右側連続
- 一様連続(より強い条件)
不連続の種類:
- 除去可能な不連続
- 跳躍不連続
- 無限不連続
- 振動不連続
連続関数の重要な性質:
- 中間値の定理
- 最大値・最小値の定理
- 四則演算で連続性が保たれる
- 合成関数の連続性
微分可能との関係:
- 微分可能ならば連続
- 連続でも微分可能とは限らない
実生活での応用:
- 物理量は通常連続的に変化
- アナログとデジタルの違い
- 経済学やコンピュータグラフィックスで活用
理解のコツ:
- まず直感的なイメージを持つ
- 具体的な関数のグラフで確認
- 基本的な連続関数を押さえる
- 不連続な例も見て違いを理解
連続性の概念をしっかり理解すると、微分積分や高度な数学の理解がグッと深まります。
まずは「グラフが途切れない」という直感から始めて、徐々に厳密な理解へと進んでいってくださいね!

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