「全体集合から集合Aを除いた部分」
これが補集合の基本的な考え方です。集合の勉強で必ず出てくる重要な概念なので、しっかり理解しましょう。今回は、補集合の定義から実際の問題での使い方まで、詳しく解説していきます。
補集合とは?

補集合とは、全体集合の中で、ある集合に含まれない要素全体からなる集合のことです。
もう少し具体的に言うと、全体集合Uがあって、その部分集合Aがあるとき、「Uの要素だけど、Aには含まれない要素」を集めた集合が、Aの補集合になります。
記号の表し方
Aの補集合は、いくつかの記号で表されます。
- A’(エー・ダッシュ)
- Ā(エー・バー:Aの上に横線)
- Ac(エー・シー)
どれも同じ意味で、教科書や先生によって使う記号が違うことがありますが、最もよく使われるのはA’とĀです。
具体例で理解しよう
言葉だけだとイメージしにくいので、具体例で見てみましょう。
例1:サイコロの目
全体集合U = {1, 2, 3, 4, 5, 6}(サイコロのすべての目)
集合A = {1, 3, 5}(奇数の目)
このとき、Aの補集合A’は?
答え:A’ = {2, 4, 6}
サイコロの目のうち、奇数(A)ではない目、つまり偶数の目が補集合になります。
例2:アルファベット
全体集合U = {a, b, c, d, e, f}
集合A = {a, b, c}
このとき、Aの補集合A’は?
答え:A’ = {d, e, f}
全体集合Uの中で、Aに含まれていない要素がd、e、fなので、これらが補集合になります。
例3:数の範囲
全体集合U = {xはすべての実数}
集合A = {x | x > 2}(2より大きい数)
このとき、Aの補集合A’は?
答え:A’ = {x | x ≦ 2}(2以下の数)
2より大きい数以外、つまり2以下の数が補集合になります。
ベン図で視覚的に理解する
補集合をベン図で表すと、とても分かりやすくなります。
全体集合Uを長方形で、集合Aを円で表します。このとき、円の外側(長方形の中で円に含まれない部分)が補集合A’です。
ベン図で考えると:
- 円の中 = 集合A
- 円の外(長方形の中) = 補集合A’
「全体から特定の部分を除いた残り」というイメージが掴みやすくなりますね。
補集合の要素の個数
補集合の要素が何個あるかを求めるには、簡単な公式があります。
n(A’) = n(U) − n(A)
n(A)は「集合Aの要素の個数」を表します。
つまり、「補集合の要素の個数 = 全体集合の要素の個数 − もとの集合の要素の個数」です。
具体例で計算
全体集合U = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10}
集合A = {2, 4, 6, 8, 10}
n(U) = 10
n(A) = 5
したがって、
n(A’) = n(U) − n(A) = 10 − 5 = 5
実際に確認すると、A’ = {1, 3, 5, 7, 9}なので、確かに5個ですね。
補集合の重要な性質
補集合には、覚えておくべき重要な性質(法則)があります。
性質1:和集合は全体集合
A ∪ A’ = U
集合Aと補集合A’を合わせると、全体集合Uになります。
例:U = {1, 2, 3, 4, 5}、A = {1, 2, 3}なら、A’ = {4, 5}
A ∪ A’ = {1, 2, 3} ∪ {4, 5} = {1, 2, 3, 4, 5} = U
性質2:共通部分は空集合
A ∩ A’ = ∅
集合Aと補集合A’には、共通する要素が1つもありません。だから共通部分は空集合(∅)になります。
例:A = {1, 2, 3}、A’ = {4, 5}
A ∩ A’ = ∅(共通する要素はない)
性質3:補集合の補集合は元に戻る
(A’)’ = A
補集合の補集合をとると、元の集合に戻ります。
例:U = {1, 2, 3, 4, 5}、A = {1, 2, 3}なら、A’ = {4, 5}
A’の補集合は {1, 2, 3} = A
性質4:全体集合と空集合の補集合
U’ = ∅
∅’ = U
全体集合の補集合は空集合で、空集合の補集合は全体集合です。
全体集合には「すべて」が含まれているので、それ以外は何もない(空集合)。空集合には何も含まれていないので、それ以外は「すべて」(全体集合)になるわけです。
ド・モルガンの法則
補集合に関する最も重要な法則が「ド・モルガンの法則」です。
第1法則:共通部分の補集合
(A ∩ B)’ = A’ ∪ B’
「AとBの共通部分の補集合」は、「Aの補集合とBの補集合の和集合」に等しい。
第2法則:和集合の補集合
(A ∪ B)’ = A’ ∩ B’
「AとBの和集合の補集合」は、「Aの補集合とBの補集合の共通部分」に等しい。
具体例で確認
U = {1, 2, 3, 4, 5, 6}
A = {1, 3, 5}
B = {1, 2, 3}
第1法則の確認
A ∩ B = {1, 3}
(A ∩ B)’ = {2, 4, 5, 6}
一方、
A’ = {2, 4, 6}
B’ = {4, 5, 6}
A’ ∪ B’ = {2, 4, 5, 6}
確かに等しいですね!
第2法則の確認
A ∪ B = {1, 2, 3, 5}
(A ∪ B)’ = {4, 6}
一方、
A’ = {2, 4, 6}
B’ = {4, 5, 6}
A’ ∩ B’ = {4, 6}
こちらも等しくなっています!
ド・モルガンの法則の覚え方
補集合の記号「 ̄」と演算記号「∩、∪」が入れ替わると覚えましょう。
- 全体にかかっていた補集合 → 各集合にかかる
- 各集合にかかっていた補集合 → 全体にかかる
- ∩(共通部分)→ ∪(和集合)
- ∪(和集合)→ ∩(共通部分)
補集合を使った問題の解き方
補集合は、特に「少なくとも1つ」「すべて〜でない」といった問題で威力を発揮します。
問題例1:場合の数
1から5までの数字が書かれた5個のボールが入った袋があります。ボールを1個取り出して数字を確認し、袋に戻す操作を10回行います。このとき、1が少なくとも1回出る場合は何通りあるか。
補集合を使わない解き方(大変!)
「少なくとも1回」= 「1回出る」+「2回出る」+…+「10回出る」と、すべてのパターンを数えなければならず、非常に大変です。
補集合を使った解き方(簡単!)
「少なくとも1回出る」の補集合は「1回も出ない」です。
全体の場合の数:5^10通り(10回の操作で、それぞれ5通りの選び方)
1が1回も出ない場合の数:4^10通り(1以外の4つの数字から選ぶ)
したがって、求める答えは:
5^10 − 4^10 = 9,765,625 − 1,048,576 = 8,717,049通り
補集合を使うことで、計算が圧倒的に簡単になりました!
問題例2:人数を数える
あるクラス40人のうち、数学が好きな生徒が25人、英語が好きな生徒が30人います。両方とも好きでない生徒は何人いますか?
補集合を使った考え方
全体集合U = クラス全員(40人)
A = 数学が好きな生徒
B = 英語が好きな生徒
求めるのは「AでもBでもない」= (A ∪ B)’ の人数
ド・モルガンの法則より、(A ∪ B)’ = A’ ∩ B’
A ∪ Bの人数を求めて、全体から引けば答えが出ます。
n(A ∪ B) = n(A) + n(B) − n(A ∩ B)
問題文には「両方好きな人」の人数がないので、この問題は情報不足ですが、補集合の考え方を使うことで解く道筋が見えてきます。
補集合を学ぶ意義
補集合は、単なる計算のテクニックではありません。
論理的思考を鍛える
「Aではないもの」を考えることで、物事を多角的に捉える力が身につきます。
効率的な問題解決
直接数えるのが難しい場合でも、補集合(その逆)を使えば簡単に解けることがあります。
集合論の基礎
補集合は、より高度な数学(確率論、論理学など)の基礎となる重要な概念です。
よくある間違い
補集合でつまずきやすいポイントを確認しておきましょう。
間違い1:全体集合を忘れる
補集合は必ず「全体集合」との関係で決まります。全体集合が変われば、補集合も変わるので注意!
例:A = {1, 2, 3}
U1 = {1, 2, 3, 4, 5}なら、A’ = {4, 5}
U2 = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8}なら、A’ = {4, 5, 6, 7, 8}
間違い2:記号の意味を取り違える
(A ∩ B)’ と A’ ∩ B’ は違います!ド・モルガンの法則を使って正しく変形しましょう。
間違い3:空集合の扱い
∅’ = U であることを忘れがち。「何もない」の補集合は「すべて」です。
まとめ:補集合は「逆から考える」技術
補集合は、全体集合の中で「ある集合に含まれない部分」を表す概念です。
重要ポイント
- 補集合の定義:A’ = {x ∈ U | x ∉ A}
- 記号:A’、Ā、Ac
- 要素の個数:n(A’) = n(U) − n(A)
- 基本性質:A ∪ A’ = U、A ∩ A’ = ∅
- ド・モルガンの法則を使いこなす
「直接数えるのが難しいなら、補集合で考えてみる」
この発想が身につくと、数学の問題がぐっと解きやすくなります。補集合を使いこなして、効率的に問題を解く力を身につけていきましょう!

コメント