数学の問題で「場合分けをして解きなさい」と言われて、「どうやって分ければいいの?」と困った経験はありませんか?
絶対値を含む方程式や、文字の範囲が決まっていない問題では、場合分けが必要になります。でも、最初は「なぜ分けるの?」「どこで分けるの?」と戸惑いますよね。
この記事では、場合分けの基本的な考え方から、具体的な問題での使い方まで、分かりやすく解説していきます!
場合分けとは?【基本的な考え方】

場合分けの意味
場合分けとは、条件によって答えが変わる可能性があるとき、それぞれの場合に分けて考える方法です。英語では「case division」や「case analysis」といいます。
簡単に言えば、「この場合はこう、あの場合はああ」と、状況ごとに答えを出すということです。
なぜ場合分けが必要?
1つの式や方法では解けない問題があるからです。
日常の例で考えると:
「電車の料金を求めなさい」という問題があったとき:
- 大人なら200円
- 子供なら100円
年齢という条件によって答えが変わるので、場合分けが必要ですね。
場合分けの流れ
ステップ1:どこで分けるか決める
条件の境界を見つけます。
ステップ2:それぞれの場合で考える
各場合について別々に計算します。
ステップ3:答えをまとめる
すべての場合の答えを整理します。
絶対値を含む方程式での場合分け
絶対値を含む問題は、場合分けの典型例です。
なぜ絶対値で場合分けするの?
絶対値記号|x|の中身がプラスかマイナスかで、外し方が変わるからです。
基本ルール:
- 中身がプラス(0以上)のとき:|a| = a
- 中身がマイナスのとき:|a| = -a
例題1:基本的な場合分け
問題: |x – 2| = 3を解きなさい
解き方:
絶対値を外すために、x – 2の符号で場合分けします。
境界を見つける:
x – 2 = 0となるのは、x = 2のとき。
場合1:x ≥ 2のとき
x – 2はプラス(0以上)なので:
|x - 2| = x - 2
方程式は:
x - 2 = 3
x = 5
x = 5は、x ≥ 2を満たすので、これは解になります。
場合2:x < 2のとき
x – 2はマイナスなので:
|x - 2| = -(x - 2) = -x + 2
方程式は:
-x + 2 = 3
-x = 1
x = -1
x = -1は、x < 2を満たすので、これも解になります。
答え: x = 5, -1
例題2:両辺に絶対値
問題: |2x + 1| = |x – 3|を解きなさい
解き方:
2つの絶対値があるので、両方の中身の符号を考えます。
境界:
- 2x + 1 = 0 → x = -1/2
- x – 3 = 0 → x = 3
境界が2つあるので、3つの範囲に分けます。
場合1:x < -1/2のとき
両方ともマイナスなので:
-(2x + 1) = -(x - 3)
-2x - 1 = -x + 3
-x = 4
x = -4
x = -4は、x < -1/2を満たすので解です。
場合2:-1/2 ≤ x < 3のとき
2x + 1はプラス、x – 3はマイナスなので:
2x + 1 = -(x - 3)
2x + 1 = -x + 3
3x = 2
x = 2/3
x = 2/3は、-1/2 ≤ x < 3を満たすので解です。
場合3:x ≥ 3のとき
両方ともプラスなので:
2x + 1 = x - 3
x = -4
x = -4は、x ≥ 3を満たさないので、この場合の解ではありません。
答え: x = -4, 2/3
絶対値を含む不等式での場合分け

不等式でも同じように場合分けします。
例題3:基本的な不等式
問題: |x – 1| < 2を解きなさい
解き方:
境界: x – 1 = 0 → x = 1
場合1:x ≥ 1のとき
x - 1 < 2
x < 3
x ≥ 1の条件と合わせると:1 ≤ x < 3
場合2:x < 1のとき
-(x - 1) < 2
-x + 1 < 2
-x < 1
x > -1
x < 1の条件と合わせると:-1 < x < 1
2つの範囲をまとめる:
-1 < x < 3
答え: -1 < x < 3
文字の範囲による場合分け
文字が含まれる問題では、その文字の値によって場合分けすることがあります。
例題4:二次方程式の解の個数
問題: 二次方程式x² + 2ax + a + 2 = 0が実数解を持つようなaの値の範囲を求めなさい
解き方:
実数解を持つ条件は、判別式D ≥ 0です。
判別式を計算:
D = (2a)² - 4 × 1 × (a + 2)
= 4a² - 4a - 8
= 4(a² - a - 2)
= 4(a - 2)(a + 1)
実数解を持つ条件:
4(a - 2)(a + 1) ≥ 0
(a - 2)(a + 1) ≥ 0
場合分けして考える:
場合1:両方プラス
a - 2 ≥ 0 かつ a + 1 ≥ 0
a ≥ 2 かつ a ≥ -1
→ a ≥ 2
場合2:両方マイナス
a - 2 ≤ 0 かつ a + 1 ≤ 0
a ≤ 2 かつ a ≤ -1
→ a ≤ -1
答え: a ≤ -1 または a ≥ 2
例題5:最大値・最小値の場合分け
問題: y = -(x – a)² + 3(0 ≤ x ≤ 2)の最大値を求めなさい
解き方:
この関数は、x = aで最大値3をとる下に凸の放物線です。
aの位置によって、0 ≤ x ≤ 2の範囲での最大値が変わります。
場合1:a < 0のとき
頂点がx = 0より左にあるので、最大値はx = 0で:
y = -(0 - a)² + 3 = -a² + 3
場合2:0 ≤ a ≤ 2のとき
頂点が範囲内にあるので、最大値はx = aで:
y = 3
場合3:a > 2のとき
頂点がx = 2より右にあるので、最大値はx = 2で:
y = -(2 - a)² + 3
答え:
- a < 0のとき:最大値は-a² + 3
- 0 ≤ a ≤ 2のとき:最大値は3
- a > 2のとき:最大値は-(2 – a)² + 3
関数の場合分け(区分的に定義された関数)
関数そのものが場合分けで定義されることもあります。
例題6:区分関数の値
問題: 次の関数f(x)について、f(-1)、f(0)、f(2)の値を求めなさい
f(x) = { 2x + 1 (x < 0のとき)
{ x² (x ≥ 0のとき)
解き方:
f(-1)を求める:
-1 < 0なので、f(x) = 2x + 1を使います。
f(-1) = 2 × (-1) + 1 = -1
f(0)を求める:
0 ≥ 0なので、f(x) = x²を使います。
f(0) = 0² = 0
f(2)を求める:
2 ≥ 0なので、f(x) = x²を使います。
f(2) = 2² = 4
答え: f(-1) = -1、f(0) = 0、f(2) = 4
例題7:絶対値関数
問題: f(x) = |x|を場合分けして表しなさい
解き方:
絶対値の定義から:
f(x) = |x| = { x (x ≥ 0のとき)
{ -x (x < 0のとき)
グラフはV字型になります。
場合の数・確率での場合分け
組み合わせや確率の問題でも、場合分けが重要です。
例題8:サイコロの目の和
問題: サイコロを2個振ったとき、目の和が5になる場合は何通りありますか?
解き方:
1個目の目によって場合分けします。
1個目が1のとき: 2個目は4 → (1, 4)
1個目が2のとき: 2個目は3 → (2, 3)
1個目が3のとき: 2個目は2 → (3, 2)
1個目が4のとき: 2個目は1 → (4, 1)
1個目が5のとき: 2個目は0(不可能)
1個目が6のとき: 2個目は-1(不可能)
答え: 4通り
場合分けのコツと注意点

コツ1:境界をはっきりさせる
どこで場合を分けるのか、境界の値を明確にしましょう。
例:
x = 2が境界なら、「x < 2」と「x ≥ 2」のように、境界点をどちらかに含めます。
コツ2:もれなく重複なく
すべての場合を考え、重複がないようにします。
良い例:
x < 0、x = 0、x > 0
悪い例:
x < 0、x > 0(x = 0が抜けている)
コツ3:各場合で条件を確認
求めた解が、その場合の条件を満たしているか必ず確認します。
例:
「x ≥ 2のとき」で解いてx = 1が出たら、これは条件に合わないので不適です。
注意点1:境界での等号の扱い
境界の値を含むか含まないか、記号に注意しましょう。
- x < 2:2を含まない
- x ≤ 2:2を含む
注意点2:答えの表記
場合分けの答えは、どの場合にどの答えになるかを明確に書きます。
例:
x < 0のとき x = -1
x ≥ 0のとき x = 3
実践問題で理解度チェック
問題1
|x + 1| = 4を場合分けして解きなさい。
解答:
境界:x = -1
場合1:x ≥ -1のとき
x + 1 = 4
x = 3
場合2:x < -1のとき
-(x + 1) = 4
-x - 1 = 4
-x = 5
x = -5
答え: x = 3, -5
問題2
|x – 2| > 3を場合分けして解きなさい。
解答:
境界:x = 2
場合1:x ≥ 2のとき
x - 2 > 3
x > 5
場合2:x < 2のとき
-(x - 2) > 3
-x + 2 > 3
-x > 1
x < -1
答え: x < -1 または x > 5
問題3
次の関数の値を求めなさい。
f(x) = { x + 2 (x < 1のとき)
{ 2x (x ≥ 1のとき)
(1) f(0) (2) f(1) (3) f(3)
解答:
(1) f(0):0 < 1なので、f(0) = 0 + 2 = 2
(2) f(1):1 ≥ 1なので、f(1) = 2 × 1 = 2
(3) f(3):3 ≥ 1なので、f(3) = 2 × 3 = 6
高度な場合分け
多重場合分け
境界が複数ある場合、3つ以上に分けることもあります。
例: |x – 1| + |x + 2|を場合分けして表す
境界は、x = 1とx = -2です。
場合1:x < -2のとき
-(x - 1) + (-(x + 2)) = -x + 1 - x - 2 = -2x - 1
場合2:-2 ≤ x < 1のとき
-(x - 1) + (x + 2) = -x + 1 + x + 2 = 3
場合3:x ≥ 1のとき
(x - 1) + (x + 2) = x - 1 + x + 2 = 2x + 1
条件による場合分け
文字定数の範囲によって答えが変わる問題もあります。
例: ax² + 2x + 1 = 0の解の個数
aの値によって、二次方程式か一次方程式かが変わります。
場合1:a = 0のとき
一次方程式になり、解は1個。
場合2:a ≠ 0のとき
二次方程式になり、判別式で解の個数が決まります。
場合分けを使う主な場面
絶対値を含む式
絶対値記号を外すときに必要です。
不等式の解
特に絶対値を含む不等式で使います。
関数の定義域
定義域によって式が変わる関数を扱うときに使います。
最大値・最小値問題
範囲や条件によって最大値・最小値が変わるときに使います。
場合の数・確率
数え上げの際に、状況を整理するために使います。
方程式の解の個数
係数に文字が含まれるときに使います。
まとめ
場合分けは、数学の様々な分野で使われる重要な考え方です。
この記事のポイント
- 場合分けとは条件によって状況を分けて考える方法
- 絶対値を含む式では、中身の符号で場合分けする
- 境界となる値を見つけることが第一歩
- 各場合で求めた解が条件を満たすか確認する
- 「もれなく重複なく」すべての場合を考える
- 境界での等号(≥、>など)の扱いに注意
- 関数も場合分けで定義できる(区分関数)
- 文字定数の範囲によって答えが変わることもある
場合分けは最初は難しく感じるかもしれませんが、「どこで分けるか」「それぞれの場合でどうなるか」という2つのステップを意識すれば、確実に解けるようになります。たくさんの問題に取り組んで、場合分けの感覚を身につけていきましょう!


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