「部分集合って何?」「真部分集合とどう違うの?」
集合論を学ぶとき、必ず出てくるのが「部分集合」という概念です。
この記事では、部分集合の基本的な意味から、真部分集合との違い、記号の使い方、部分集合の個数の求め方まで、具体例を豊富に使って分かりやすく解説していきます。
記号の流儀が複数あって混乱しやすい部分もありますが、一つ一つ丁寧に見ていきましょう。
部分集合とは何か

部分集合(ぶぶんしゅうごう)とは、ある集合の要素が、別の集合の要素にすべて含まれているとき、その関係を表す概念です。
英語では「subset(サブセット)」と言います。
基本的な定義
集合Aのすべての要素が集合Bの要素でもあるとき、「AはBの部分集合である」と言います。
記号では A ⊆ B と表します(読み方:「AはBに含まれる」)。
簡単な例で理解しよう
例1:
- 集合A = {1, 2}
- 集合B = {1, 2, 3, 4}
Aのすべての要素(1と2)は、Bにも含まれています。
だから、AはBの部分集合です。
例2:
- 集合C = {犬、猫}
- 集合D = {犬、猫、うさぎ、ハムスター}
Cのすべての要素は、Dにも含まれています。
だから、CはDの部分集合です。
部分集合の条件
AがBの部分集合であるための条件は:
「Aの要素xのどれを取っても、必ずBの要素である」
言い換えると:
- Aに入っている要素は、全部Bにも入っている
- Bに入っているけどAには入っていない要素があっても良い
部分集合の記号と読み方
部分集合を表す記号にはいくつかの流儀があるので、注意が必要です。
基本的な記号
A ⊆ B
- 読み方:「AはBの部分集合である」「AはBに含まれる」
- 意味:Aのすべての要素がBに含まれる
B ⊇ A
- 読み方:「BはAを含む」「BはAの上位集合である」
- 意味:A ⊆ B と同じ(向きが逆)
記号の注意点
教科書や参考書によって、記号の使い方が異なることがあります。
流儀1:
- 部分集合:A ⊆ B
- 真部分集合:A ⊂ B
流儀2:
- 部分集合:A ⊂ B
- 真部分集合:A ⊊ B(または A ⊂ B かつ A ≠ B)
この記事では主に流儀1を使いますが、どちらの流儀も存在することを覚えておいてください。
真部分集合とは
真部分集合(しんぶぶんしゅうごう)とは、部分集合であって、元の集合とは一致しないもののことです。
英語では「proper subset(プロパーサブセット)」と言います。
真部分集合の定義
集合AがBの部分集合であり、かつA ≠ B(AとBが等しくない)とき、
「AはBの真部分集合である」と言います。
記号では A ⊂ B(または A ⊊ B)と表します。
部分集合と真部分集合の違い
部分集合:
- AのすべてがBに含まれる
- A = B でもOK(同じ集合でもOK)
真部分集合:
- AのすべてがBに含まれる
- A ≠ B でなければならない(Bには、Aにない要素が少なくとも1つある)
例で比較
集合B = {1, 2, 3} に対して:
Bの部分集合:
- { }(空集合)
- {1}
- {2}
- {3}
- {1, 2}
- {1, 3}
- {2, 3}
- {1, 2, 3} ← これも部分集合
Bの真部分集合:
- { }(空集合)
- {1}
- {2}
- {3}
- {1, 2}
- {1, 3}
- {2, 3}
- {1, 2, 3} ← これは真部分集合ではない
つまり、集合自身は部分集合だが、真部分集合ではないのです。
部分集合の具体例
実際の例で理解を深めましょう。
例1:数の集合
自然数と整数:
- N = {1, 2, 3, 4, 5, …}(自然数)
- Z = {…, -2, -1, 0, 1, 2, 3, …}(整数)
自然数はすべて整数なので、N ⊆ Z(自然数は整数の部分集合)
しかし、整数には0や負の数があるので、N ≠ Z
よって、N ⊂ Z(自然数は整数の真部分集合)
例2:偶数と整数
偶数の集合:
- E = {2, 4, 6, 8, 10, …}(偶数)
- Z = {…, -2, -1, 0, 1, 2, 3, …}(整数)
偶数はすべて整数なので、E ⊆ Z
しかし、整数には奇数もあるので、E ≠ Z
よって、E ⊂ Z(偶数は整数の真部分集合)
例3:地域の包含関係
- A = {東京都}
- B = {関東地方の都県}
- C = {日本の都道府県}
このとき:
- A ⊂ B(東京都は関東地方の都県の真部分集合)
- B ⊂ C(関東地方の都県は日本の都道府県の真部分集合)
- A ⊂ C(東京都は日本の都道府県の真部分集合)
このように、部分集合の関係は連鎖します。
空集合と部分集合

空集合(くうしゅうごう)は、すべての集合の部分集合です。
空集合とは
空集合とは、要素を1つも持たない集合のことです。
記号では ∅ または { } と表します。
空集合は常に部分集合
重要な性質:空集合は、どんな集合Aに対しても、Aの部分集合である
つまり:
- ∅ ⊆ A(どんなAに対しても成り立つ)
例:
- 集合B = {1, 2, 3} に対して、∅ ⊆ B
- 集合C = {犬、猫} に対して、∅ ⊆ C
- 集合D = {赤、青、黄} に対して、∅ ⊆ D
なぜ空集合はすべての集合の部分集合なのか
部分集合の定義を思い出しましょう:
「Aのすべての要素がBに含まれる」
空集合には要素が1つもありません。
だから、「空集合のすべての要素がBに含まれる」は、何もチェックすることがなく、自動的に真になります。
空集合と真部分集合
空集合∅は:
- 空集合以外のすべての集合の真部分集合です
- 空集合自身の真部分集合ではありません(∅ = ∅なので)
集合自身と部分集合
どんな集合Aも、自分自身の部分集合です。
集合自身は部分集合
重要な性質:A ⊆ A(どんな集合Aも自分自身の部分集合)
なぜなら、「Aのすべての要素がAに含まれる」は明らかに真だからです。
例:
- {1, 2, 3} ⊆ {1, 2, 3}
- {犬、猫} ⊆ {犬、猫}
- ∅ ⊆ ∅
集合自身は真部分集合ではない
しかし、集合自身は真部分集合ではありません。
真部分集合の定義は「部分集合であって、等しくない」だからです。
例:
- {1, 2, 3}は{1, 2, 3}の部分集合 ○
- {1, 2, 3}は{1, 2, 3}の真部分集合 ✕
部分集合の個数
n個の要素を持つ集合の部分集合は、全部で何個あるでしょうか?
部分集合の個数の公式
n個の要素を持つ集合Aの部分集合の個数は 2^n 個
なぜ2^nになるのか
各要素について、「部分集合に入れる」か「入れない」かの2通りの選択があります。
n個の要素それぞれに2通りの選択があるので:
2 × 2 × 2 × … × 2(n回)= 2^n
例:3個の要素を持つ集合
集合A = {a, b, c} の部分集合をすべて書き出すと:
- { }(何も選ばない)
- {a}(aだけ選ぶ)
- {b}(bだけ選ぶ)
- {c}(cだけ選ぶ)
- {a, b}(aとbを選ぶ)
- {a, c}(aとcを選ぶ)
- {b, c}(bとcを選ぶ)
- {a, b, c}(すべて選ぶ)
全部で8個 = 2^3
真部分集合の個数の公式
n個の要素を持つ集合Aの真部分集合の個数は 2^n – 1 個
部分集合から、集合自身(A自身)を除くので、2^n – 1 になります。
例:真部分集合の個数
集合A = {a, b, c} の真部分集合は:
{ }, {a}, {b}, {c}, {a, b}, {a, c}, {b, c}
全部で7個 = 2^3 – 1
({a, b, c}は除外される)
部分集合の判定方法
2つの集合が与えられたとき、部分集合かどうかをどう判定すればいいでしょうか?
判定の手順
AがBの部分集合かどうかを判定する:
- Aの要素を1つずつチェックする
- その要素がBに含まれているか確認する
- すべての要素がBに含まれていれば、A ⊆ B
- 1つでもBに含まれない要素があれば、A ⊆ B ではない
例題1:部分集合の判定
次のうち、AがBの部分集合であるものを選べ。
(1) A = {1, 3}, B = {1, 2, 3, 4}
(2) A = {2, 5}, B = {1, 2, 3, 4}
(3) A = {1, 2, 3}, B = {1, 2, 3}
解答:
(1) 1∈B、3∈B なので、A ⊆ B ○
(2) 2∈B だが、5∉B なので、A ⊆ B ✕
(3) すべての要素が共通なので、A ⊆ B ○(A = B でもある)
例題2:真部分集合の判定
次のうち、AがBの真部分集合であるものを選べ。
(1) A = {1, 2}, B = {1, 2, 3}
(2) A = {1, 2, 3}, B = {1, 2, 3}
(3) A = { }, B = {1, 2}
解答:
(1) A ⊆ B であり、かつ A ≠ B(Bには3がある)なので、A ⊂ B ○
(2) A = B なので、真部分集合ではない ✕
(3) A ⊆ B であり、かつ A ≠ B なので、A ⊂ B ○
ベン図で理解する部分集合
ベン図を使うと、部分集合の関係が視覚的に分かりやすくなります。
ベン図とは
ベン図とは、集合を円や楕円で表し、集合間の関係を図示したものです。
部分集合のベン図
A ⊆ B のとき:
- 集合Aを表す円が、集合Bを表す円の内側に完全に入っている
┌─────────────┐
│ B │
│ ┌─────┐ │
│ │ A │ │
│ └─────┘ │
└─────────────┘
真部分集合のベン図
A ⊂ B のとき:
- Aの円がBの円の内側に入っている
- Bには、Aの外側の部分がある
┌─────────────┐
│ B │
│ ┌─────┐ │
│ │ A │ │
│ └─────┘ │
│ │
└─────────────┘
部分集合でない場合
A ⊄ B のとき(AがBの部分集合でない):
- 2つの円が重なっているが、Aが完全にBに入っていない
- または、まったく重なっていない
┌─────┐ ┌─────┐
│ A │ │ B │
└─────┘ └─────┘
部分集合の性質
部分集合にはいくつかの重要な性質があります。
性質1:反射律(はんしゃりつ)
どんな集合Aも、自分自身の部分集合である
A ⊆ A
性質2:推移律(すいいりつ)
A ⊆ B かつ B ⊆ C ならば、A ⊆ C
部分集合の関係は「連鎖」します。
例:
- 偶数 ⊆ 整数
- 整数 ⊆ 有理数
- よって、偶数 ⊆ 有理数
性質3:反対称律(はんたいしょうりつ)
A ⊆ B かつ B ⊆ A ならば、A = B
2つの集合が互いに部分集合なら、それらは等しい。
これは、2つの集合が等しいことを証明するときによく使われます。
性質4:空集合の性質
∅ ⊆ A(すべての集合Aに対して)
空集合は、すべての集合の部分集合です。
部分集合の応用例
部分集合の概念は、数学のさまざまな場面で使われます。
例1:条件を満たす要素の集合
全体集合U = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10}
条件「3の倍数」を満たす要素の集合A = {3, 6, 9}
このとき、A ⊂ U(Aはレの真部分集合)
例2:データベースの検索結果
- 全体:すべての商品
- 検索結果:条件に合う商品
検索結果は、全商品の部分集合です。
例3:プログラミングでの配列
元の配列から、条件に合うものだけを抽出した配列は、元の配列の部分集合と考えられます。
例:
元の配列 = [1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10]
偶数のみ = [2, 4, 6, 8, 10] ← 部分集合
よくある間違いと注意点
部分集合を学ぶとき、注意したいポイントがあります。
間違い1:要素と部分集合の混同
間違った例:
1 ⊆ {1, 2, 3}
正しい例:
1 ∈ {1, 2, 3}(1は要素)
{1} ⊆ {1, 2, 3}({1}は部分集合)
重要:
- 要素を表すときは ∈(エレメント)
- 部分集合を表すときは ⊆(サブセット)
間違い2:空集合の扱い
間違った考え:
「空集合は部分集合ではない」
正しい理解:
空集合は、すべての集合の部分集合です。
間違い3:記号の混同
⊂ と ⊆ の使い分けは、教科書によって異なります。
必ず確認:
使っている教科書や参考書で、どちらの流儀を使っているか確認しましょう。
間違い4:集合自身を忘れる
「集合Aの部分集合をすべて書け」という問題では、A自身も含めるのを忘れないように。
例:
{1, 2}の部分集合:
{ }, {1}, {2}, {1, 2} ← {1, 2}を忘れずに
部分集合の練習問題
実際に問題を解いて、理解を深めましょう。
問題1:部分集合の個数
集合A = {a, b, c, d} の部分集合は全部で何個あるか?
解答:
要素が4個なので、2^4 = 16個
問題2:真部分集合の個数
集合B = {1, 2, 3, 4, 5} の真部分集合は全部で何個あるか?
解答:
要素が5個なので、2^5 – 1 = 32 – 1 = 31個
問題3:部分集合の列挙
集合C = {x, y} のすべての部分集合を書け。
解答:
- { }
- {x}
- {y}
- {x, y}
全部で4個(= 2^2)
問題4:部分集合の判定
次のうち正しいものを選べ。
(a) {1, 2} ⊆ {1, 2, 3}
(b) {1, 4} ⊆ {1, 2, 3}
(c) { } ⊆ {1, 2}
(d) {1, 2, 3} ⊂ {1, 2, 3}
解答:
(a) ○(1も2も含まれている)
(b) ✕(4が含まれていない)
(c) ○(空集合はすべての集合の部分集合)
(d) ✕(等しいので真部分集合ではない)
問題5:真部分集合の判定
A = {2, 4, 6, 8, …}(偶数全体)
B = {1, 2, 3, 4, 5, …}(自然数全体)
AはBの真部分集合か?
解答:
すべての偶数は自然数なので、A ⊆ B
しかし、Bには奇数(1, 3, 5, …)も含まれるので、A ≠ B
よって、A ⊂ B(AはBの真部分集合)○
まとめ
部分集合は、集合論の基礎となる重要な概念です。
この記事のポイント:
- 部分集合とは、ある集合のすべての要素が別の集合に含まれている関係
- A ⊆ B は「AはBの部分集合」
- 真部分集合とは、部分集合であって元の集合と等しくないもの
- A ⊂ B(または A ⊊ B)は「AはBの真部分集合」
- 空集合∅は、すべての集合の部分集合
- どんな集合も、自分自身の部分集合
- n個の要素を持つ集合の部分集合の個数は 2^n 個
- n個の要素を持つ集合の真部分集合の個数は 2^n – 1 個
- 記号の使い方は流儀によって異なるので注意
- 要素(∈)と部分集合(⊆)を混同しない
部分集合の理解で重要なのは:
- 「すべて」の要素が含まれていること
- 集合自身も部分集合に含まれること
- 空集合が特別な部分集合であること
これらの基本をしっかり押さえることで、集合の演算(和集合、積集合、補集合など)の理解もスムーズになります。
まずは小さな集合で部分集合をすべて書き出す練習をして、徐々に抽象的な集合にも対応できるようになっていきましょう!


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