マーチンゲール法:夢のような賭け方が破産を招く理由

数学

マーチンゲール法は「必ず勝てる」と信じられてきた賭け方ですが、実際には必ず破産する危険な方法です。

仕組みはシンプル:

負けたら次の賭け金を2倍にして、1回でも勝てば最初の賭け金分の利益が出るという仕組みです。

しかし、数学的な分析と実際のデータは、この方法が財産を失う最も確実な道であることを証明しています。

18世紀のフランスで生まれたこの方法は、現在でも多くの人を破産に追い込み続けています。世界中のカジノや専門家が一致して「絶対に使ってはいけない」と警告している危険な賭け方なのです。


スポンサーリンク
  1. 基本的な仕組みと定義
    1. なぜ魅力的に見えるのか
  2. 18世紀フランスでの誕生と歴史
  3. 数学的な理論と確率の真実
    1. なぜ理論上は勝てるのに、実際には負けるのか
    2. ドゥーブの停止定理
  4. ルーレットでの具体的な使い方と計算
    1. 連続で負ける確率
    2. 実際の研究データ
  5. バカラとブラックジャックでの応用
    1. バカラでの使用
    2. ブラックジャックでの危険性
  6. 実際のシミュレーションが示す恐怖の結果
    1. 単純な賭け方との比較
    2. 連敗の恐怖
  7. カジノの対策と賭け金制限の理由
    1. ラスベガスの一般的なテーブル
    2. マカオのカジノ
    3. モンテカルロカジノ
    4. なぜカジノがこれらの制限を設けるのか
  8. 投資やFXトレードでの危険な応用
    1. レバレッジ100倍の場合
    2. 歴史上の破滅事例
    3. プロの見解
  9. 他の賭け方との比較:どれがマシなのか
    1. パーレー法(逆マーチンゲール)
    2. ダランベール法
    3. フィボナッチ法
    4. ラブシェール法
    5. ケリー基準
    6. 破産リスクの比較表
  10. なぜ一時的に勝てるのに最後は必ず負けるのか
    1. 数学的な関係
    2. 実際の統計
  11. 心理的な罠と認知バイアス
    1. ギャンブラーの誤謬
    2. コントロールの錯覚
    3. 損失追跡行動
    4. 脳科学の研究
  12. 実際の体験談と統計データ
    1. 体験談1
    2. 体験談2
    3. 統計データ
    4. 最も恐ろしいデータ
  13. よくある誤解と正しい理解
    1. 誤解1:「いつか必ず勝つから損しない」
    2. 誤解2:「確率的に連敗は起こりにくい」
    3. 誤解3:「小額から始めれば安全」
    4. 誤解4:「勝率50%なら期待値はゼロ」
    5. 誤解5:「プロも使っている方法」
  14. 専門家の見解:全員が「絶対にやめろ」と警告
    1. 数学者エドワード・ソープ
    2. リスク分析の専門家ナシム・タレブ
    3. ラスベガスアドバイザー
    4. 世界保健機関(WHO)
    5. アメリカ精神医学会
    6. 一致した結論
  15. 結論:なぜこの方法は「悪夢への確実な道」なのか
    1. もしギャンブルをするなら
    2. 最も賢明な選択

基本的な仕組みと定義

マーチンゲール法の仕組みはシンプルです。

賭け金の増やし方:

  1. 最初に10ドルを賭けて負ける
  2. 次は20ドル(2倍)
  3. また負けたら40ドル(さらに2倍)
  4. 80ドル、160ドル…と倍増していく

どこかで勝てば、それまでの負け分をすべて取り戻し、さらに最初の賭け金分(10ドル)の利益が出ます。

具体例:

3回負けて4回目に勝った場合:

  • 1〜3回目の損失:10+20+40=70ドル
  • 4回目で80ドル勝つ → 80ドル獲得
  • 差し引き:10ドルの利益

なぜ魅力的に見えるのか

この方法の魅力は、いつか必ず勝つから損をしないという錯覚にあります。

確かに、無限のお金があって賭け金の上限がなければ、理論上は必ず利益が出ます。

しかし現実世界では:

  • 誰も無限のお金を持っていない
  • すべてのカジノには賭け金の上限がある
  • 連続で負ける確率は低くても必ず起こる

恐怖の数字:

10回連続で負ける確率は約0.1%と低く見えます。

しかし、その時点で必要な賭け金は最初の1024倍。10ドルから始めても10,240ドルが必要になるのです。


18世紀フランスでの誕生と歴史

マーチンゲール法は1750年頃のフランスで生まれました。

当時の賭博辞典によると、ファロというカードゲームで「負けたら賭け金を2倍にして、1回でも勝てば確実に利益が出る」方法として記録されています。

名前の由来

興味深い由来があります。

南フランスのマルティーグという町の住民を指す「マルテガロ」という言葉から来ています。この町の人々は「愚かで理解不能な方法で遊ぶ」という評判があり、この賭け方も当時は愚かに見えたためこの名前がついたのです。

最も有名な使用例

トラントエカラント(赤と黒)というゲームでした。

  • 1694年から記録がある
  • 18世紀中頃にパリのカジノで最も人気
  • 赤か黒かを当てる単純なゲーム
  • 勝率が約50%でマーチンゲール法に最適と考えられた

カサノヴァも1750年代のヴェネツィアのカジノでこの方法を使ったと回想録に書いています。

歴史的な悲劇

1891年、チャールズ・デ・ヴィル・ウェルズがモンテカルロで似た方法を使い、一時的に100万フラン(現在の価値で約15億円相当)を勝ち取りました。

しかし最終的には詐欺で逮捕され、無一文で亡くなりました。


数学的な理論と確率の真実

数学者たちは20世紀にマーチンゲール法を厳密に分析しました。

数学的な発展:

  • 1934年:ポール・レヴィが確率論の基礎を作る
  • 1939年:ジャン・ヴィルが「マーチンゲール」という数学用語を正式に定義
  • 1940年代:ジョセフ・ドゥーブが「ギャンブルで必ず勝つ方法は存在しない」ことを数学的に証明

なぜ理論上は勝てるのに、実際には負けるのか

理論上の話:

無限の資金と無限の賭け金上限があれば、いつか必ず勝つ確率は100%に近づきます。

現実の3つの制限:

  1. 誰も無限のお金を持っていない
  2. カジノには必ず賭け金の上限がある
  3. 連続で負ける確率は低くても必ず起こる

恐ろしい確率の真実:

10回連続で負ける確率は約0.1%。しかし、200回賭ければ84%の確率で6回以上の連敗を経験するのです。


ドゥーブの停止定理

この数学の定理が、マーチンゲール法の致命的な欠陥を証明しています。

簡単に言うと:

「どんな賭け方をしても、期待値(平均的な結果)は変わらない」

カジノゲームはすべて期待値がマイナスなので、どんな工夫をしても長期的には必ず負けるのです。


ルーレットでの具体的な使い方と計算

ヨーロピアンルーレット(0が1つ)で赤か黒に賭ける場合、勝つ確率は18/37=48.65%です。

4回目で勝つ場合の流れ:

回数賭け金結果累積損失
1回目10ドル負け-10ドル
2回目20ドル負け-30ドル
3回目40ドル負け-70ドル
4回目80ドル勝ち+10ドル(利益)

連続で負ける確率

計算すると恐ろしい結果になります。

連敗回数確率必要な賭け金(10ドルスタート)
2連敗26.37%20ドル
3連敗13.55%40ドル
6連敗2.13%320ドル
10連敗0.127%5,120ドル

実際の研究データ

大学の研究では、20,529回のルーレットをマーチンゲール法で賭けた結果:

  • 80%の確率で損失
  • 平均で3,056ドルの損失

歴史的な事実:

1913年のモンテカルロで、赤が26回連続で出たことがあります。この時、マーチンゲール法を使っていた多くの人が破産しました。


バカラとブラックジャックでの応用

バカラでの使用

「プレイヤー」に賭ける時にマーチンゲール法が使われます。

  • 勝率:44.62%
  • 100ドルから始めて4回目で勝つと100ドルの利益

「バンカー」への賭けの問題:

  • 勝率が45.86%と高い
  • しかし5%の手数料がある
  • マーチンゲール法には向かない

マカオのカジノの例:

  • 最低賭け金:100ドル
  • 上限:39,000ドル
  • これだと8回しか倍にできない

ブラックジャックでの危険性

基本戦略を完璧に使えばカジノの優位性は約0.5%まで下げられます。

しかし重大な問題:

  • スプリットやダブルダウンがあるため通常の4倍の資金が必要
  • インシュランス(保険)の賭けは約30.8%もカジノが有利
  • 絶対に使ってはいけない

実際のシミュレーションが示す恐怖の結果

大学の研究チームが行った1,000回のコンピューターシミュレーション(各20,529回のスピン)の結果:

衝撃的なデータ:

  • 平均で2,948ドルの損失
  • 利益が出る確率はわずか20%
  • 最も多いパターン:「最初は小さく勝ち続けるが、最後に大きく負けて破産する」

単純な賭け方との比較

別の研究では、20,000回の独立したシミュレーションで:

  • マーチンゲール法で資金を2倍にできる確率:35%
  • 一度に全額を賭ける方法:47%

衝撃的な結論:

複雑な賭け方をするより、単純に一度だけ大きく賭ける方がまだマシ


連敗の恐怖

  • 10連敗する確率:200回プレイすれば約11%
  • その時点で必要な賭け金:最初の1,023倍
  • 1万円スタートで10連敗 → 1,023万円が必要

カジノの対策と賭け金制限の理由

世界中のカジノはマーチンゲール法への対策として厳格な賭け金制限を設けています。

ラスベガスの一般的なテーブル

  • 最低:5〜10ドル
  • 最高:5,000〜10,000ドル
  • VIPエリア:最高50万ドルまで

ベラージオやウィンなどの高級カジノ:

  • 最低:25ドル
  • 最高:20,000ドル
  • これは最初の賭け金の800倍までしか増やせないことを意味する

マカオのカジノ

  • 最低:3〜13ドル
  • 最高:26,000〜39,000ドル
  • VIPルーム:最高50万ドルまで

モンテカルロカジノ

  • ヨーロピアンルーレット(0が1つ)のみを使用
  • 最低賭け金:25〜100ユーロ(高め)

なぜカジノがこれらの制限を設けるのか

理由は明白です:

マーチンゲール法を使う人が理論上の「必勝法」を実行できないようにするため。

オンラインカジノの危険性:

1時間に90回以上のゲームができるため、破産の確率が急激に上がります。


投資やFXトレードでの危険な応用

一部のトレーダーは「通貨は株と違ってゼロにならない」という理由でマーチンゲール法をFX取引に応用しようとします。

これは極めて危険です。

レバレッジ100倍の場合

0.1ロットから始めて6回負けると:

  • 必要ロット:3.2ロット
  • 必要証拠金:6,300ドル(1万ドル口座の63%)
  • わずか1%の逆方向への動きで資金の63%を失う

歴史上の破滅事例

マーチンゲール的な手法で破滅した有名な事例:

人物・企業損失額
ニック・リーソン(ベアリングス銀行)8億2,700万ポンド
ジェローム・ケルビエル49億ユーロ
アマランス・アドバイザーズ66億ドル

プロの見解

プロのトレーダーは全員、マーチンゲール法を「確実に破産する方法」として拒否しています。

市場の現実:

  • 市場は長期間一方向に動き続けることがある
  • EUR/USDは500ピップス以上動くことも
  • 証拠金不足で強制決済される前に回復することはほぼない

他の賭け方との比較:どれがマシなのか

パーレー法(逆マーチンゲール)

仕組み:

勝った時に賭け金を2倍にし、負けたらリセット

リスク:中程度

  • 損失を限定できる
  • 連勝時に大きな利益
  • しかし、いつ止めるかの判断が難しい

ダランベール法

仕組み:

負けたら1単位増やし、勝ったら1単位減らす

リスク:低〜中程度

  • 問題:「過去の結果が未来に影響する」という誤った前提に基づく

フィボナッチ法

仕組み:

1, 1, 2, 3, 5, 8, 13…という数列に従って賭ける

リスク:高い

  • マーチンゲールより緩やか
  • しかし、それでも危険

ラブシェール法

仕組み:

数列を作り、勝ったら数字を消し、負けたら追加する複雑な方法

リスク:高い

  • 長い連敗で巨額の賭けが必要になる

ケリー基準

仕組み:

勝率と配当から最適な賭け金の割合を計算

リスク:低い

  • 唯一数学的に正しい方法
  • プロのギャンブラーや投資家が実際に使用

破産リスクの比較表

方法破産リスク専門家の推奨
マーチンゲール法確実絶対ダメ
パーレー法低い注意
ダランベール法中程度注意
フィボナッチ法高い注意
ラブシェール法高い注意
ケリー基準低い推奨

なぜ一時的に勝てるのに最後は必ず負けるのか

マーチンゲール法の最大の罠は、短期的には97.8%の確率で小さな利益が出ることです。

これが「必勝法」という錯覚を生み出します。

しかし恐ろしい真実:

残りの2.2%で起こる大敗で、それまでの利益をすべて失い、さらに元本まで失うのです。


数学的な関係

必ず成り立つ関係:

小さな利益 × 97.8% < 巨額の損失 × 2.2%


実際の統計

200回のセッションをプレイすると:

  • 84%の確率で6連敗以上を経験
  • 6連敗で必要な賭け金:63倍
  • 10連敗では:1,023倍

具体例:

1万円から始めても、10連敗で1,023万円が必要

カジノの賭け金上限やあなたの所持金がこれを許さないため、途中で強制的に負けが確定します。


心理的な罠と認知バイアス

人間の脳には危険な認知バイアスがあります。

ギャンブラーの誤謬

「赤が5回連続で出たから、次は黒が出やすい」と考える間違った思考。

真実:

各回のルーレットは独立した事象で、前の結果は次の結果に一切影響しません。


コントロールの錯覚

賭け金を2倍にする行為が、ランダムな結果をコントロールできるという幻想を生みます。


損失追跡行動

アメリカ精神医学会がギャンブル依存症の主要症状として定義。

マーチンゲール法は、まさにこの病的な行動を体系化したものです。


脳科学の研究

連敗後の脳の変化:

  • 前頭頭頂ネットワークが活性化 → リスクを取りやすくなる
  • 扁桃体の活動が低下 → 恐怖を感じにくくなる

実際の体験談と統計データ

体験談1

「500ドルまで増やした資金が、10連敗で一瞬でゼロになった。」

賭け金の推移:1, 2, 4, 8, 16, 32, 64, 128, 256ドル

最後の200ドルも負けて、すべてを失った。


体験談2

「父は5万ドルを持ってラスベガスに行き、最初の1日半で2万5千ドル勝った。」

しかし2日目に、すべてを失った。


統計データ

問題ギャンブラーの現実:

  • 18%が破産を経験
  • 年間平均46,000ドル(約690万円)を失う
  • ホットラインに電話する人の20%が自己破産を申請

社会的コスト:

重度のギャンブル依存症患者一人あたりの社会的コスト:

  • 年間30,000ドル(約450万円)
  • 治療費、犯罪、生産性の損失などを含む

最も恐ろしいデータ

ギャンブル障害はすべての依存症の中で最も自殺リスクが高い

  • 患者の約半数が自殺を考える
  • 5人に1人が実際に自殺を試みる

よくある誤解と正しい理解

誤解1:「いつか必ず勝つから損しない」

正解:

有限の資金と賭け金上限がある現実世界では、必ず破産します。


誤解2:「確率的に連敗は起こりにくい」

正解:

10連敗の確率0.1%も、1,000回賭ければほぼ確実に起こります。


誤解3:「小額から始めれば安全」

正解:

10円から始めても、10連敗で10,230円必要になります。


誤解4:「勝率50%なら期待値はゼロ」

正解:

カジノゲームはすべて50%未満の勝率で、期待値は必ずマイナスです。


誤解5:「プロも使っている方法」

正解:

プロのギャンブラーは全員、マーチンゲール法を「自殺行為」として避けています。


専門家の見解:全員が「絶対にやめろ」と警告

数学者エドワード・ソープ

「負の期待値のゲームでは、どんな賭け方も勝てない」

数学的に証明されています。


リスク分析の専門家ナシム・タレブ

マーチンゲール的手法を「爆発する戦略」と呼んでいます。

「短期的にはうまくいくように見えるが、突然破滅的な損失を招く」


ラスベガスアドバイザー

「マーチンゲールは損失を追いかける最も愚かな方法。」

「ギャンブラーの最重要ルール『失ってはいけないお金は賭けるな』に完全に違反している」


世界保健機関(WHO)

「予防が最も費用対効果の高いギャンブル害削減策」


アメリカ精神医学会

「ギャンブル障害は脳の働きを変え、禁断症状、耐性、渇望を引き起こす」


一致した結論

すべての専門家、すべての研究、すべてのデータが同じ結論を示しています:

マーチンゲール法は絶対に使ってはいけない。


結論:なぜこの方法は「悪夢への確実な道」なのか

マーチンゲール法は表面的には論理的に見えます。

しかし実際には、人間の心理的弱点を悪用する危険な罠です。

3つの危険:

  1. 短期的な小さな勝利が長期的な破滅を隠す
  2. ギャンブラーの誤謬とコントロールの錯覚が正常な判断を奪う
  3. 最悪の場合は自殺のリスクまで高める

もしギャンブルをするなら

以下の基本ルールを必ず守ってください:

  1. 失っても構わない金額だけを賭ける
  2. 事前に損失限度額を決めて必ず守る
  3. 勝ち負けに関係なく時間制限を設ける

最も賢明な選択

ギャンブル自体を避けることです。

マーチンゲール法のような「必勝法」は存在しません。

それは数学的に不可能であり、それを信じることは確実な破滅への第一歩なのです。


コメント

タイトルとURLをコピーしました