「リュカ数列」という名前を聞いたことがありますか?
フィボナッチ数列は有名ですが、実はそれと双子のような関係にある「リュカ数列」という数列があります。
フィボナッチ数列と同じルールで数を並べていくのに、最初の2つの数だけが違うだけで、全く異なる数列になるんです。
今回は、このリュカ数列について、定義から性質、フィボナッチ数列との関係まで、分かりやすく解説していきます。
リュカ数列とは?

定義
リュカ数列(Lucas sequence / Lucas numbers)とは、次のように定義される数列です。
L₀ = 2
L₁ = 1
Lₙ = Lₙ₋₁ + Lₙ₋₂(n ≥ 2)
つまり、最初の2つの数を 2 と 1 として、3番目以降は前の2つの数を足した数になります。
数列の具体例
実際にリュカ数列を書き出してみましょう。
2, 1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, 76, 123, 199, 322, 521, 843, 1364, 2207, 3571, 5778, 9349…
- L₀ = 2
- L₁ = 1
- L₂ = 2 + 1 = 3
- L₃ = 1 + 3 = 4
- L₄ = 3 + 4 = 7
- L₅ = 4 + 7 = 11
- L₆ = 7 + 11 = 18
このように続いていきます。
フィボナッチ数列との比較
フィボナッチ数列は、次のように定義されます。
F₀ = 0
F₁ = 1
Fₙ = Fₙ₋₁ + Fₙ₋₂(n ≥ 2)
数列:0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, 377, 610, 987…
見比べてみると:
| 項 | フィボナッチ数列 | リュカ数列 |
|---|---|---|
| 0番目 | 0 | 2 |
| 1番目 | 1 | 1 |
| 2番目 | 1 | 3 |
| 3番目 | 2 | 4 |
| 4番目 | 3 | 7 |
| 5番目 | 5 | 11 |
| 6番目 | 8 | 18 |
ルールは全く同じ(前の2項を足す)ですが、最初の2つの値が違うだけで、全く異なる数列になるんですね。
リュカ数列の名前の由来
エドゥアール・リュカ
リュカ数列は、フランスの数学者エドゥアール・リュカ(François Édouard Anatole Lucas, 1842-1891)に因んで名付けられました。
実は、「フィボナッチ数列」という名前を付けたのも、このリュカです。
リュカは、フィボナッチ数列を研究していた時に、この数列も発見し、その性質を詳しく調べました。
リュカは数論の研究で知られ、素数判定に関する重要な定理も発見しています。
リュカ数列の一般項
ビネの公式(リュカ数版)
フィボナッチ数列には「ビネの公式」という一般項の公式がありますが、リュカ数列にも同様の公式があります。
Lₙ = φⁿ + (1-φ)ⁿ = φⁿ + (-φ)⁻ⁿ
ここで、φ(ファイ)は黄金比です。
φ = (1 + √5) / 2 ≈ 1.618…
また、
(1 – φ) = (1 – √5) / 2 ≈ -0.618… = -1/φ
この式を使えば、n番目のリュカ数を直接計算できます。
例:L₅を計算してみる
φ ≈ 1.618, 1-φ ≈ -0.618 として、
L₅ = (1.618)⁵ + (-0.618)⁵
≈ 11.09 + (-0.09)
≈ 11
実際にL₅ = 11なので、合っていますね。
フィボナッチ数の一般項との比較
フィボナッチ数の一般項
Fₙ = (φⁿ – (1-φ)ⁿ) / √5
リュカ数の一般項
Lₙ = φⁿ + (1-φ)ⁿ
フィボナッチは「引き算して√5で割る」、リュカは「足し算」という違いがあります。
リュカ数列の性質
リュカ数列には、興味深い性質がたくさんあります。
性質1:黄金比への収束
隣り合うリュカ数の比は、黄金比φに収束します。
Lₙ₊₁ / Lₙ → φ(n → ∞)
例:
- L₁ / L₀ = 1 / 2 = 0.5
- L₂ / L₁ = 3 / 1 = 3
- L₃ / L₂ = 4 / 3 ≈ 1.333…
- L₄ / L₃ = 7 / 4 = 1.75
- L₅ / L₄ = 11 / 7 ≈ 1.571…
- L₆ / L₅ = 18 / 11 ≈ 1.636…
- L₁₀ / L₉ = 123 / 76 ≈ 1.618…
だんだん黄金比(≈1.618)に近づいていくのが分かります。
これは、フィボナッチ数列と同じ性質です。
性質2:フィボナッチ数との関係
リュカ数とフィボナッチ数の間には、様々な関係式があります。
関係式1:隣接するフィボナッチ数の和
Lₙ = Fₙ₋₁ + Fₙ₊₁
つまり、リュカ数は、その項番号を挟む2つのフィボナッチ数の和になります。
例:
- L₃ = F₂ + F₄ = 1 + 3 = 4 ✓
- L₅ = F₄ + F₆ = 3 + 8 = 11 ✓
関係式2:積の公式
F₂ₙ = Fₙ × Lₙ
例:
- F₆ = F₃ × L₃ = 2 × 4 = 8 ✓
- F₁₀ = F₅ × L₅ = 5 × 11 = 55 ✓
関係式3:フィボナッチ数で表す
Lₙ = √5 × Fₙ(近似)
厳密には、√5 × Fₙ に近い値になります。
性質3:リュカ恒等式
Lₙ² – 5Fₙ² = 4 × (-1)ⁿ
これは「リュカ恒等式」と呼ばれる有名な式です。
例:n = 3の場合
- L₃² – 5F₃² = 4² – 5×2² = 16 – 20 = -4
- 4 × (-1)³ = 4 × (-1) = -4 ✓
性質4:奇数と偶数のパターン
Lₙが偶数になるのは、nが3の倍数の時だけです。
- L₀ = 2(偶数)← 0は3の倍数
- L₁ = 1(奇数)
- L₂ = 3(奇数)
- L₃ = 4(偶数)← 3の倍数
- L₄ = 7(奇数)
- L₅ = 11(奇数)
- L₆ = 18(偶数)← 3の倍数
この規則性は、フィボナッチ数列(3の倍数番目が偶数)と同じです。
性質5:負の添字への拡張
リュカ数列は、負の整数にも拡張できます。
漸化式 Lₙ₋₂ = Lₙ – Lₙ₋₁ を使って、逆向きに計算します。
…, -11, 7, -4, 3, -1, 2, 1, 3, 4, 7, 11, …
- L₋₁ = L₁ – L₀ = 1 – 2 = -1
- L₋₂ = L₀ – L₋₁ = 2 – (-1) = 3
- L₋₃ = L₋₁ – L₋₂ = -1 – 3 = -4
一般に、L₋ₙ = (-1)ⁿ × Lₙ
リュカ素数
リュカ素数とは?
リュカ素数(Lucas prime)とは、リュカ数であり、かつ素数である数のことです。
最初のリュカ素数
2, 3, 7, 11, 29, 47, 199, 521, 2207, 3571, 9349, 3010349, 54018521, 370248451, 6643838879, …
対応する添字は:
n = 0, 2, 4, 5, 7, 8, 11, 13, 16, 17, 19, 31, 37, 41, 47, …
リュカ素数の条件
重要な定理
Lₙが素数ならば、nは0、素数、または2のべき乗でなければならない。
例外:n = 0の場合、L₀ = 2は素数
ただし、逆は成り立ちません。つまり、nが素数でも、Lₙが必ずしも素数になるとは限りません。
例:
- n = 3(素数)→ L₃ = 4 = 2²(素数ではない)
- n = 5(素数)→ L₅ = 11(素数)
- n = 7(素数)→ L₇ = 29(素数)
最大のリュカ素数
2022年時点で、最大の確認されたリュカ素数はL₁₄₈₀₉₁で、これは30,950桁の数です。
また、最大の確率的素数(probable prime)はL₅₄₆₆₃₁₁で、1,142,392桁です。
リュカ数列の特別な数
完全平方数
リュカ数列の中で完全平方数(平方数)になるのは、1と4だけです。
- L₁ = 1 = 1²
- L₃ = 4 = 2²
それ以外のリュカ数は、平方数になりません。
三角数
リュカ数列の中で三角数になるのは、1, 3, 5778だけです。
三角数とは、1 + 2 + 3 + … + nの形で表せる数のことです。
- 1 = 1
- 3 = 1 + 2
- 5778 = 1 + 2 + … + 107
立方数
リュカ数列の中で立方数(3乗数)になるのは、1だけです。
L₁ = 1 = 1³
広義のリュカ数列

ここまで説明してきたのは、「狭義のリュカ数」でしたが、実は「リュカ数列」という言葉には、もっと広い意味もあります。
一般化されたリュカ数列
二次方程式 x² – Px + Q = 0 の2つの解をα, βとすると、
Uₙ(P, Q) = (αⁿ – βⁿ) / (α – β)
Vₙ(P, Q) = αⁿ + βⁿ
という2つの数列をリュカ数列(広義)といいます。
有名な数列がすべて含まれる
この広義のリュカ数列には、多くの有名な数列が含まれます。
フィボナッチ数列:U(1, -1)
- P = 1, Q = -1の場合
- F₀ = 0, F₁ = 1, Fₙ = Fₙ₋₁ + Fₙ₋₂
(狭義の)リュカ数列:V(1, -1)
- P = 1, Q = -1の場合
- L₀ = 2, L₁ = 1, Lₙ = Lₙ₋₁ + Lₙ₋₂
ペル数:U(2, -1)
- P = 2, Q = -1の場合
- 0, 1, 2, 5, 12, 29, 70, 169, …
メルセンヌ数:Uₙ(3, 2) = 2ⁿ – 1
- P = 3, Q = 2の場合
- 1, 3, 7, 15, 31, 63, 127, …
このように、広義のリュカ数列は、数論に現れる重要な数列を統一的に扱える枠組みなんです。
リュカ数列の応用
リュカ数列は、理論的な興味だけでなく、実用的な応用もあります。
1. 素数判定
リュカ-レーマーテスト(Lucas-Lehmer test)
メルセンヌ素数を判定する方法で、リュカ数列の性質を利用しています。
これは、大きな素数を見つける最も効率的な方法の一つです。
2. 暗号理論
LUC暗号
リュカ数列を使った公開鍵暗号システムがあります。
RSA暗号の代替として研究されています。
3. 擬似乱数生成
リュカ数列の性質を利用して、擬似乱数を生成する方法があります。
4. 組合せ論
円環状の配置問題
1, 2, …, nの中から、隣り合わない数を選ぶ方法の総数は、Lₙ通りになります。
(ただし、1とnも隣り合っているとみなす円環状の配置)
プログラミングでの実装

再帰的な実装(Python)
def lucas(n):
if n == 0:
return 2
elif n == 1:
return 1
else:
return lucas(n-1) + lucas(n-2)
# 使用例
print(lucas(9)) # 76
反復的な実装(効率的)
def lucas(n):
if n == 0:
return 2
elif n == 1:
return 1
a, b = 2, 1
for i in range(2, n+1):
a, b = b, a + b
return b
# 使用例
print(lucas(9)) # 76
反復的な実装の方が、計算時間がO(n)で済むので効率的です。
リュカ数列を表示
def print_lucas(n):
lucas_sequence = []
a, b = 2, 1
lucas_sequence.append(a)
if n > 0:
lucas_sequence.append(b)
for i in range(2, n+1):
a, b = b, a + b
lucas_sequence.append(b)
print(lucas_sequence)
# 使用例
print_lucas(15)
# [2, 1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, 76, 123, 199, 322, 521, 843, 1364]
フィボナッチ数列とリュカ数列の関係まとめ
両者の関係を改めて整理しましょう。
共通点
- 同じ漸化式:どちらも「前の2項の和」
- 黄金比に収束:隣接項の比がφに収束
- 同じ一般項の形:黄金比のべき乗で表せる
- 奇数・偶数のパターン:3の倍数番目が偶数
相違点
- 初期値が違う
- フィボナッチ:0, 1
- リュカ:2, 1
- 一般項の式
- フィボナッチ:引き算
- リュカ:足し算
- 素数の条件
- フィボナッチ:Fₙが素数 → nは素数(F₄を除く)
- リュカ:Lₙが素数 → nは0, 素数, または2のべき乗
きょうだいのような関係
フィボナッチ数列とリュカ数列は、同じ家族(広義のリュカ数列)に属するきょうだいのような関係です。
多くの公式で、互いに登場し合います。
リュカ数列の面白い性質
最後に、いくつか面白い性質を紹介します。
性質1:下1桁の周期
リュカ数列の下1桁(一の位)は、12個ごとに繰り返します。
2, 1, 3, 4, 7, 1, 8, 9, 7, 6, 3, 9, 2, 1, 3, 4, 7, 1, 8, 9, 7, 6, 3, 9, …
フィボナッチ数列の下1桁の周期が60なのに対し、リュカ数列は12と短いです。
性質2:下2桁の周期
下2桁(下十の位と一の位)の周期は60です。
これはフィボナッチ数列と同じです。
性質3:5で割った余りの周期
リュカ数列を5で割った余りは、4個ごとに繰り返します。
L mod 5 = 2, 1, 3, 4, 2, 1, 3, 4, …
性質4:末尾の数字
L₂ₙは必ず2で終わります。
- L₂ = 3
- L₄ = 7
- L₆ = 18
- L₈ = 47
あれ?これは間違いですね。正しくは、
L₃ₙは必ず偶数で終わります。
実際、3の倍数番目のリュカ数は偶数なので、必ず偶数で終わります。
まとめ
リュカ数列について、詳しく見てきました。
リュカ数列の定義
L₀ = 2, L₁ = 1, Lₙ = Lₙ₋₁ + Lₙ₋₂
数列:2, 1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, 76, 123, 199, 322, 521, 843, …
一般項
Lₙ = φⁿ + (1-φ)ⁿ
(φ = 黄金比 = (1+√5)/2)
フィボナッチ数列との関係
- 同じ漸化式、違う初期値
- 多くの関係式で結ばれている
- きょうだいのような関係
リュカ素数
- Lₙが素数 → nは0, 素数, または2のべき乗
- 最初のリュカ素数:2, 3, 7, 11, 29, 47, 199, 521, …
応用
- 素数判定(リュカ-レーマーテスト)
- 暗号理論(LUC暗号)
- 組合せ論
広義のリュカ数列
フィボナッチ数、リュカ数、ペル数、メルセンヌ数など、多くの重要な数列を含む一般的な枠組み。
リュカ数列は、フィボナッチ数列ほど有名ではありませんが、同じくらい興味深く、数学的に重要な数列です。
フィボナッチ数列を知っている人は、ぜひリュカ数列も覚えてみてください。
両者の関係を理解すると、数列の世界がもっと面白くなりますよ!

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