複素数を勉強していると、ある日突然「極形式」という言葉に出会いますよね。
普通の複素数の形(z = a + bi)とは全然違う形で書かれていて、最初は「これって何?」って思ってしまうかもしれません。
でも実は、極形式は複素数をもっと便利に扱うための表現方法なんです。特に掛け算や割り算、回転の計算が驚くほど簡単になります。
この記事では、極形式の基本的な考え方から具体的な使い方まで、分かりやすく解説していきますね。
極形式って何?基本的な考え方

複素数の2つの表し方
複素数には大きく分けて2つの表現方法があります。
一つ目は直交座標形式(デカルト形式)です。これは皆さんがよく見る「z = a + bi」という形ですね。
複素数平面で考えると、実軸方向にa、虚軸方向にbだけ移動した点として表現されます。
二つ目が今回のテーマである極形式です。
極形式では、複素数を「原点からの距離r」と「実軸からの角度θ」という2つの情報で表現します。
極形式の基本的な形
極形式は次のように書かれます。
z = r(cosθ + isinθ)
ここで、
- rは原点から複素数までの距離(絶対値またはモジュラスと呼ばれます)
- θは実軸の正の部分から測った角度(偏角またはアーギュメントと呼ばれます)
この表現方法は、極座標系(polar coordinates)を複素数に応用したものなんですよ。
なぜ極形式が便利なの?
極形式の最大の利点は、複素数の掛け算や割り算がとてもシンプルになることです。
例えば、普通の形(a + bi)で複素数を36乗しようとしたら、何度も何度も掛け算をしなければなりません。これはかなり大変な作業になります。
でも極形式なら、複素数の累乗計算が驚くほど簡単になるんです。
また、回転の計算が視覚的に分かりやすいという特徴もあります。複素数平面上で点を回転させる操作が、極形式では明確に理解できます。
直交座標形式から極形式への変換方法

必要な公式
複素数 z = a + bi を極形式に変換するには、次の2つの値を求めます。
距離rの計算:
r = √(a² + b²)
これは三平方の定理(ピタゴラスの定理)そのものですね。原点から点(a, b)までの距離を求めています。
角度θの計算:
tanθ = b/a からθを求めます
ただし、θの値を決めるときは、複素数がどの象限にあるのかを必ず確認してください。
具体例で理解しよう
例1: z = 1 + √3i を極形式で表す
まず距離rを計算します。
r = √(1² + (√3)²) = √(1 + 3) = √4 = 2
次に角度θを求めます。
cosθ = 1/2, sinθ = √3/2
これを満たす角度は、θ = π/6(60度)です。
したがって、極形式は
z = 2(cos(π/6) + isin(π/6))
例2: z = -1 + i√3 を極形式で表す
距離rを計算すると
r = √((-1)² + (√3)²) = √(1 + 3) = 2
この複素数は第2象限にありますね。
tanθ = √3/(-1) = -√3
第2象限で tanθ = -√3 となる角度は θ = 2π/3 です。
したがって、極形式は
z = 2(cos(2π/3) + isin(2π/3))
このように、象限によって角度が変わるので注意が必要です。
極形式での計算のルール

複素数の積(掛け算)
2つの複素数を極形式で掛け算するときは、とってもシンプルです。
z₁ = r₁(cosθ₁ + isinθ₁)
z₂ = r₂(cosθ₂ + isinθ₂)
このとき、
z₁z₂ = r₁r₂{cos(θ₁ + θ₂) + isin(θ₁ + θ₂)}
つまり、距離は掛け合わせ、角度は足し合わせるだけなんです。
これは三角関数の加法定理から導かれるルールです。
複素数の商(割り算)
割り算も同じように簡単です。
z₁/z₂ = (r₁/r₂){cos(θ₁ – θ₂) + isin(θ₁ – θ₂)}
距離は割り、角度は引くというシンプルなルールになります。
計算例
z₁ = 2(cos(π/6) + isin(π/6))
z₂ = 3(cos(π/4) + isin(π/4))
の積を求めてみましょう。
距離: 2 × 3 = 6
角度: π/6 + π/4 = 2π/12 + 3π/12 = 5π/12
したがって、
z₁z₂ = 6(cos(5π/12) + isin(5π/12))
直交座標形式で計算するよりも、ずっと簡単ですよね。
偏角について知っておくべきこと
偏角θには重要な特徴があります。
まず、偏角は無限に多くの値を取ることができます。なぜなら、ある角度θに対して、θ + 2πn(nは整数)も同じ位置を表すからです。
一般に、偏角は θ = arg z = θ₀ + 2πn (nは整数)と表されます。
ただし、通常は 0 ≤ θ < 2π または -π < θ ≤ π の範囲で偏角を表すことが多いです。
-π < θ ≤ π の範囲の偏角を主偏角と呼び、Arg z のように大文字で書くこともあります。
極形式の別の表現:指数形式
極形式には、さらに便利な表現方法があります。
オイラーの公式を使うと、極形式は次のように書けます。
z = re^(iθ)
この形は指数形式と呼ばれ、特に高度な計算で重要になってきます。
オイラーの公式とは、
e^(iθ) = cosθ + isinθ
という美しい等式のことです。
この表現を使うと、複素数の計算がさらにシンプルになります。
極形式が活躍する場面

ド・モアブルの定理
極形式の最も有名な応用がド・モアブルの定理です。
{r(cosθ + isinθ)}ⁿ = rⁿ(cos(nθ) + isin(nθ))
この定理により、複素数の累乗計算が非常に簡単になります。
例えば、z³⁶を計算する場合、極形式なら距離を36乗して、角度を36倍するだけで済むんです。
回転の表現
複素数平面上で点を回転させる操作も、極形式で考えると分かりやすくなります。
複素数zに e^(iα) を掛けることは、zを原点を中心にα回転させることを意味します。
例えば、90度(π/2)回転させたいなら、e^(iπ/2) = i を掛ければいいということです。
電気工学での応用
極形式は電気工学でも頻繁に使われます。
交流回路の解析では、電圧や電流を複素数で表現するのですが、その際に極形式(位相表示)が便利なんです。
振幅と位相という2つの情報で電気的な量を表現できるからです。
極形式を使う際の注意点
極形式を使うときには、いくつか気をつけるべきポイントがあります。
まず、rは必ず正の値(r > 0)でなければなりません。もし負の値が出てきたら、角度を調整して正にする必要があります。
また、虚数単位iの前は必ず+の符号でなければなりません。もし z = cosθ – isinθ という形になったら、これは極形式とは言えません。
足し算や引き算をする場合は、一度直交座標形式に戻してから計算し、再び極形式に変換する方が簡単です。
まとめ
極形式は、複素数を「原点からの距離」と「角度」という2つの情報で表現する方法です。
z = r(cosθ + isinθ) という形で書かれ、rを絶対値(モジュラス)、θを偏角(アーギュメント)と呼びます。
極形式の最大の利点は、複素数の掛け算や割り算が「距離は掛けて(割って)、角度は足して(引いて)」という簡単なルールでできることです。
特に複素数の累乗計算や回転の操作では、直交座標形式よりもはるかに扱いやすくなります。


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