複素共役とは?定義から性質・計算方法まで完全解説【初心者向け】

数学

「複素共役(ふくそきょうやく)」という言葉を聞いて、難しそうだと感じていませんか?

実は、複素共役は複素数を扱う上で欠かせない、とても便利な概念です。分数の分母を実数化したり、複素数の方程式を解いたり、工学や物理学の様々な場面で活躍します。

この記事では、複素共役の基本的な定義から計算方法、重要な性質、そして実際の応用例まで、初心者にもわかりやすく解説していきます。

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  1. 複素共役とは?基本的な定義
    1. 複素数のおさらい
    2. 複素共役の定義
    3. 具体例
    4. 複素共役の呼び方と表記
  2. 複素共役の幾何学的意味
    1. 複素平面とは
    2. 複素共役の幾何学的意味
    3. 2回共役を取ると元に戻る
  3. 複素共役の重要な性質
    1. 性質1:和の複素共役は複素共役の和
    2. 性質2:差の複素共役は複素共役の差
    3. 性質3:積の複素共役は複素共役の積
    4. 性質4:商の複素共役は複素共役の商
    5. 性質5:累乗の複素共役
    6. 性質6:複素数と共役複素数の和は実数
    7. 性質7:複素数と共役複素数の積は実数
    8. 性質8:複素数の絶対値との関係
  4. 複素共役の計算例
    1. 例題1:基本的な複素共役
    2. 例題2:和と差の複素共役
    3. 例題3:積の複素共役
    4. 例題4:複素数の割り算(分母の有理化)
    5. 例題5:実数条件・純虚数条件
  5. 複素共役の応用
    1. 応用1:分母の実数化(有理化)
    2. 応用2:複素数の逆数
    3. 応用3:方程式の解(複素共役根の定理)
    4. 応用4:物理学・工学での利用
  6. よくある質問(FAQ)
    1. Q1: 複素共役はなぜ必要なのですか?
    2. Q2: 複素共役を2回取るとどうなりますか?
    3. Q3: 実数の複素共役はどうなりますか?
    4. Q4: 純虚数の複素共役はどうなりますか?
    5. Q5: z × z̄ はなぜ実数になるのですか?
    6. Q6: 複素共役の表記 z̄、z*、z† の違いは何ですか?
    7. Q7: 複素共役と共役転置の違いは何ですか?
    8. Q8: |z|² = z × z̄ はどう応用されますか?
  7. まとめ

複素共役とは?基本的な定義

複素数のおさらい

まず、複素数について簡単におさらいしましょう。

複素数とは、以下の形で表される数のことです。

z = a + bi

ここで:

  • a:実部(実数の部分)
  • b:虚部の係数(実数)
  • i:虚数単位(i² = -1)

  • 3 + 4i
  • 2 – 5i
  • -1 + 7i
  • 6(6 + 0i と考えられます)
  • 3i(0 + 3i と考えられます)

複素共役の定義

複素数 z = a + bi に対して、虚部の符号だけを反転させた複素数を、元の複素数 z の複素共役(ふくそきょうやく)と呼びます。

定義

複素数 z = a + bi の複素共役は:

z̄ = a - bi

重要なポイント

  • 実部(a)はそのまま
  • 虚部の符号だけが反転(+bi → -bi)

具体例

例1

z = 3 + 4i
z̄ = 3 - 4i

例2

z = 2 - 5i
z̄ = 2 + 5i

例3(純虚数の場合)

z = 7i(= 0 + 7i)
z̄ = -7i(= 0 - 7i)

例4(実数の場合)

z = 5(= 5 + 0i)
z̄ = 5(= 5 - 0i = 5)

実数の場合、虚部が0なので、複素共役は元の数と同じになります。

複素共役の呼び方と表記

読み方

  • 日本語:「ふくそきょうやく」または「きょうやくふくそすう」
  • 英語:complex conjugate(コンプレックス・コンジュゲート)

表記方法

複素数 z の複素共役は、以下のように表記されます。

  1. ( zバー)← 最も一般的
  2. z*(zアスタリスク)← 物理学や工学でよく使われる
  3. z†(zダガー)← 行列の共役転置と区別が必要な場合

この記事では、最も一般的な (バー表記)を使用します。

複素共役の幾何学的意味

複素共役を複素平面(複素数平面、アルガン図)上で見ると、非常にわかりやすい幾何学的な意味があります。

複素平面とは

複素平面は、複素数を座標平面上の点として表現したものです。

  • 横軸(実軸):実部を表す
  • 縦軸(虚軸):虚部を表す

複素数 z = a + bi は、点 (a, b) として表されます。

複素共役の幾何学的意味

複素数 z = a + bi とその複素共役 z̄ = a – bi を複素平面上にプロットすると:

  • z は点 (a, b)
  • は点 (a, -b)

つまり、複素共役は、複素平面上で実軸(横軸)に関して対称な位置にある点を表します。

言い換えると

  • 複素共役を取る = 複素平面上で実軸に関して鏡映変換(反転)する

z = 2 + 3i の場合:

  • z は点 (2, 3) に対応
  • z̄ = 2 – 3i は点 (2, -3) に対応

これらは実軸(横軸)に関して対称です。

2回共役を取ると元に戻る

複素共役を2回取ると、元の複素数に戻ります。

z̄̄ = z

理由

z = a + bi の共役は z̄ = a – bi
z̄ の共役は z̄̄ = a – (-b)i = a + bi = z

幾何学的には、実軸に関して2回反転すると、元の位置に戻るということです。

複素共役の重要な性質

複素共役には、計算を簡単にする便利な性質がたくさんあります。

性質1:和の複素共役は複素共役の和

2つの複素数 z と w の和の複素共役は、それぞれの複素共役の和に等しいです。

z + w の複素共役 = z̄ + w̄

記号で表すと

z + w = z̄ + w̄

z = 3 + 4i、w = 1 + 2i のとき:

左辺

z + w = (3 + 4i) + (1 + 2i) = 4 + 6i
z + w の複素共役 = 4 - 6i

右辺

z̄ = 3 - 4i
w̄ = 1 - 2i
z̄ + w̄ = (3 - 4i) + (1 - 2i) = 4 - 6i

確かに一致します!

性質2:差の複素共役は複素共役の差

z - w = z̄ - w̄

性質3:積の複素共役は複素共役の積

2つの複素数の積の複素共役は、それぞれの複素共役の積に等しいです。

(z × w) の複素共役 = z̄ × w̄

記号で表すと

zw = z̄ · w̄

z = 1 + 2i、w = 3 + 4i のとき:

左辺

z × w = (1 + 2i)(3 + 4i)
     = 3 + 4i + 6i + 8i²
     = 3 + 10i - 8(i² = -1 なので)
     = -5 + 10i

zw = -5 - 10i

右辺

z̄ = 1 - 2i
w̄ = 3 - 4i
z̄ · w̄ = (1 - 2i)(3 - 4i)
      = 3 - 4i - 6i + 8i²
      = 3 - 10i - 8
      = -5 - 10i

一致します!

性質4:商の複素共役は複素共役の商

(z ÷ w) の複素共役 = z̄ ÷ w̄

記号で表すと

(z/w)̄ = z̄ / w̄ (w ≠ 0)

性質5:累乗の複素共役

(z^n)̄ = (z̄)^n (nは整数)

z = 1 + i のとき、z² の複素共役を求めます。

方法1:先に計算してから共役を取る

z² = (1 + i)² = 1 + 2i + i² = 1 + 2i - 1 = 2i
z²̄ = -2i

方法2:先に共役を取ってから計算する

z̄ = 1 - i
(z̄)² = (1 - i)² = 1 - 2i + i² = 1 - 2i - 1 = -2i

どちらの方法でも同じ結果になります!

性質6:複素数と共役複素数の和は実数

z + z̄ = 2a(実数)

証明

z = a + bi とすると:

z + z̄ = (a + bi) + (a - bi)
      = a + a + bi - bi
      = 2a

虚部が相殺されて、実部の2倍の実数になります。

具体例

z = 3 + 4i
z̄ = 3 - 4i
z + z̄ = 6(実数)

応用

この性質を使うと、複素数の実部を簡単に取り出せます。

実部 a = (z + z̄) / 2

性質7:複素数と共役複素数の積は実数

これは最も重要な性質の一つです!

z × z̄ = a² + b²(実数)

証明

z = a + bi とすると:

z × z̄ = (a + bi)(a - bi)
      = a² - abi + abi - b²i²
      = a² - b²(-1)
      = a² + b²

これは実数です!

具体例

z = 3 + 4i
z̄ = 3 - 4i
z × z̄ = (3 + 4i)(3 - 4i) = 9 - 16i² = 9 + 16 = 25

性質8:複素数の絶対値との関係

複素数 z の絶対値(大きさ)を |z| と表すと:

|z|² = z × z̄

証明

z = a + bi のとき、絶対値は:

|z| = √(a² + b²)

したがって:
|z|² = a² + b²

一方、性質7より:

z × z̄ = a² + b²

よって、|z|² = z × z̄ が成り立ちます。

重要性

この性質は、複素数の逆数を求める際に非常に便利です(後述)。

複素共役の計算例

例題1:基本的な複素共役

問題
次の複素数の複素共役を求めなさい。

(1) z = 5 + 3i
(2) w = -2 – 7i
(3) u = 4i
(4) v = -6

解答

(1) z̄ = 5 – 3i(虚部の符号を反転)

(2) w̄ = -2 + 7i(-7i の符号を反転して +7i)

(3) u = 0 + 4i と考えて、ū = 0 – 4i = -4i

(4) v = -6 + 0i と考えて、v̄ = -6 – 0i = -6
実数の複素共役は元の実数と同じです。

例題2:和と差の複素共役

問題
z = 2 + 3i、w = 1 – 4i のとき、以下を求めなさい。

(1) z + w
(2) z – w

解答

(1)

z + w = (2 + 3i) + (1 - 4i) = 3 - i
z + w̄ = 3 + i

または、性質を使って:

z + w̄ = z̄ + w̄ = (2 - 3i) + (1 + 4i) = 3 + i

(2)

z - w = (2 + 3i) - (1 - 4i) = 1 + 7i
z - w̄ = 1 - 7i

例題3:積の複素共役

問題
z = 1 + i、w = 2 – i のとき、zw を求めなさい。

解答

方法1:先に積を計算

zw = (1 + i)(2 - i)
   = 2 - i + 2i - i²
   = 2 + i + 1
   = 3 + i

zw̄ = 3 - i

方法2:性質を使う

z̄ = 1 - i
w̄ = 2 + i
z̄ · w̄ = (1 - i)(2 + i)
      = 2 + i - 2i - i²
      = 2 - i + 1
      = 3 - i

どちらの方法でも同じ結果です!

例題4:複素数の割り算(分母の有理化)

これは複素共役の最も重要な応用の一つです。

問題
以下の複素数を a + bi の形に直しなさい。

z = (3 + 2i) / (1 + i)

解答

分母の複素共役をかけて、分母を実数化します。

分母 1 + i の複素共役は 1 – i です。

z = (3 + 2i) / (1 + i)
  = (3 + 2i) / (1 + i) × (1 - i) / (1 - i)
  = (3 + 2i)(1 - i) / (1 + i)(1 - i)

分子を計算

(3 + 2i)(1 - i) = 3 - 3i + 2i - 2i²
                = 3 - i + 2
                = 5 - i

分母を計算

(1 + i)(1 - i) = 1 - i²
               = 1 + 1
               = 2

よって

z = (5 - i) / 2 = 5/2 - (1/2)i

例題5:実数条件・純虚数条件

問題
複素数 z = (2 + 3i)w が実数となるような複素数 w を求めなさい。

解答

z が実数となる条件は:

z = z̄

したがって:

(2 + 3i)w = (2 + 3i)w̄
(2 + 3i)w = (2 - 3i)w̄

これより:

(2 + 3i)w = (2 - 3i)w̄

w = a + bi とおくと、この条件から w を求めることができます。

(詳細な計算は省略しますが、このように複素共役を使って実数・純虚数の条件を表現できます)

複素共役の応用

応用1:分母の実数化(有理化)

複素数の割り算では、分母を実数にする必要があります。このとき、分母と分子に分母の複素共役をかけることで、分母を実数化できます。

これは、z × z̄ = |z|²(実数)という性質を利用しています。

一般的な手順

(a + bi) / (c + di) を計算する場合:

1. 分母の複素共役 c - di を用意
2. 分母と分子の両方に c - di をかける
3. 分母は (c + di)(c - di) = c² + d²(実数)になる
4. 分子を展開して整理する

応用2:複素数の逆数

複素数 z の逆数 1/z を求める際も、複素共役を使います。

1/z = z̄ / |z|²

z = 3 + 4i の逆数を求めます。

z̄ = 3 - 4i
|z|² = 3² + 4² = 25

1/z = (3 - 4i) / 25 = 3/25 - 4i/25

応用3:方程式の解(複素共役根の定理)

重要な定理

実数係数の方程式が複素数解 α を持つとき、その複素共役 ᾱ も必ず解になります。

方程式 x² – 2x + 5 = 0 を解くと:

x = (2 ± √(4 - 20)) / 2
  = (2 ± √(-16)) / 2
  = (2 ± 4i) / 2
  = 1 ± 2i

解は:

  • x₁ = 1 + 2i
  • x₂ = 1 – 2i

確かに、x₁ と x₂ は複素共役の関係にあります!

なぜこうなるのか

実数係数の方程式では、虚数部分がペアで現れるため、解も必ずペアになります。

応用

この性質により、複素数解の一つがわかれば、もう一つの解も自動的にわかります。

応用4:物理学・工学での利用

複素共役は、物理学や工学の様々な分野で活躍します。

電気工学

  • 交流回路の計算
  • インピーダンスの計算
  • 電力の計算(P = V × I、I は電流の複素共役)

量子力学

  • 波動関数の確率密度:|ψ|² = ψ × ψ*
  • 期待値の計算

信号処理

  • フーリエ変換
  • フィルタ設計
  • 周波数解析

制御工学

  • 伝達関数
  • 安定性解析

よくある質問(FAQ)

Q1: 複素共役はなぜ必要なのですか?

A: 複素共役には主に以下の役割があります。

  1. 分母の実数化:複素数の割り算を簡単にする
  2. 実数・虚数の抽出:複素数から実部や虚部を取り出す
  3. 絶対値の計算:|z|² = z × z̄ を利用
  4. 方程式の解:実数係数の方程式では複素数解が共役ペアで現れる
  5. 物理・工学の計算:様々な実用的な計算で使用

Q2: 複素共役を2回取るとどうなりますか?

A: 元の複素数に戻ります。

z̄̄ = z

z = 3 + 4i
z̄ = 3 - 4i
z̄̄ = 3 + 4i = z

幾何学的には、複素平面上で実軸に関して2回反転すると、元の位置に戻ります。

Q3: 実数の複素共役はどうなりますか?

A: 実数の複素共役は、元の実数と同じです。

理由

実数 a は、a = a + 0i と表せます。
その複素共役は:ā = a – 0i = a

5̄ = 5
-3̄ = -3

Q4: 純虚数の複素共役はどうなりますか?

A: 純虚数の複素共役は、符号が反転した純虚数になります。

(3i)̄ = -3i
(-5i)̄ = 5i

Q5: z × z̄ はなぜ実数になるのですか?

A: 計算すると虚部が相殺されるからです。

z × z̄ = (a + bi)(a - bi)
      = a² - abi + abi - b²i²
      = a² + b²(虚部が相殺)

これは (a + b)(a – b) = a² – b² の公式に似ていますが、i² = -1 により符号が変わります。

Q6: 複素共役の表記 z̄、z*、z† の違いは何ですか?

A: どれも同じ複素共役を表しますが、使われる分野が異なります。

  • (バー):数学で最も一般的
  • z*(アスタリスク):物理学、工学でよく使われる
  • z†(ダガー):量子力学、行列の共役転置と区別が必要な場合

Q7: 複素共役と共役転置の違いは何ですか?

A:

  • 複素共役:複素数の虚部の符号を反転
  • 共役転置(エルミート転置):行列の転置+各要素の複素共役
複素数: z* = 複素共役
行列: A† = 転置 + 各要素の複素共役

Q8: |z|² = z × z̄ はどう応用されますか?

A: この関係は、複素数の大きさ(絶対値)を計算するのに使います。

z = 3 + 4i の絶対値を求める:

方法1:公式を使う

|z| = √(3² + 4²) = √25 = 5

方法2:複素共役を使う

z × z̄ = (3 + 4i)(3 - 4i) = 25
|z|² = 25
|z| = 5

どちらの方法でも同じ結果になります。

まとめ

複素共役は、複素数を扱う上で欠かせない重要な概念です。この記事のポイントをまとめます。

定義

  • 複素数 z = a + bi の複素共役は z̄ = a – bi
  • 実部はそのまま、虚部の符号だけ反転

表記

  • z̄(バー):数学で一般的
  • z*(アスタリスク):物理・工学
  • z†(ダガー):量子力学など

幾何学的意味

  • 複素平面上で実軸に関する対称移動
  • 2回共役を取ると元に戻る(z̄̄ = z)

重要な性質

  1. 和の共役:z + w = z̄ + w̄
  2. 差の共役:z – w = z̄ – w̄
  3. 積の共役:zw = z̄ · w̄
  4. 商の共役:(z/w)̄ = z̄ / w̄
  5. 累乗の共役:(z^n)̄ = (z̄)^n
  6. z + z̄ = 2a(実数)
  7. z × z̄ = a² + b²(実数)
  8. |z|² = z × z̄

主な応用

  • 分母の有理化(実数化)
  • 複素数の逆数計算
  • 方程式の複素数解(共役ペアで現れる)
  • 物理・工学の計算(電気回路、量子力学、信号処理など)

計算のコツ

  • 分数の分母は必ず複素共役をかけて実数化
  • z × z̄ は常に実数(|z|²)になることを覚えておく
  • 性質を活用すれば計算が簡単になる

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