ド・モアブルの定理を完全マスター!証明から応用まで徹底解説

数学

複素数の累乗を計算する時、「(1+i)^10なんて計算できない…」と思ったことはありませんか?

実は、ド・モアブルの定理を使えば、どんなに大きな累乗でも簡単に計算できるんです。

この定理は、複素数平面における最も美しく、そして実用的な定理の一つです。

今回は、ド・モアブルの定理の意味から証明、そして具体的な応用例まで、しっかり理解できるように解説していきます。

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ド・モアブルの定理とは?

まず、定理の内容を確認しましょう。

定理の内容

ド・モアブルの定理

整数nに対して、次の等式が成り立つ。

(cosθ + isinθ)^n = cos(nθ) + isin(nθ)

この定理は、複素数の累乗を計算する際に非常に強力です。

定理の意味を理解しよう

この定理が何を言っているのか、分かりやすく説明します。

絶対値が1の複素数をn乗すると、偏角がn倍になる

これだけです!シンプルですよね。

複素数平面上で考えると、回転を表しています。

角度θの複素数をn回掛け合わせると、角度がnθになるということです。

一般形

絶対値がrの複素数z = r(cosθ + isinθ)の場合は:

z^n = r^n(cos(nθ) + isin(nθ))

絶対値はn乗、偏角はn倍になります。

複素数の極形式を復習

ド・モアブルの定理を使うには、複素数の極形式を理解しておく必要があります。

極形式とは

複素数 z = a + bi を、以下の形で表したものを極形式といいます。

z = r(cosθ + isinθ)

ここで:

  • r:絶対値(または大きさ)
  • θ:偏角(または角度)

絶対値と偏角の求め方

絶対値r

r = √(a² + b²)

複素数平面上で原点からの距離です。

偏角θ

tan θ = b/a から求めます。

ただし、複素数がどの象限にあるかを考慮する必要があります。

極形式への変換例

例:z = 1 + i を極形式に変換

絶対値:r = √(1² + 1²) = √2

偏角:tan θ = 1/1 = 1 なので、θ = π/4(第1象限)

したがって:z = √2(cos(π/4) + isin(π/4))

ド・モアブルの定理の証明

定理がなぜ成り立つのか、数学的帰納法で証明します。

証明の準備

証明したい命題:P(n) = (cosθ + isinθ)^n = cos(nθ) + isin(nθ)

これがすべての整数nで成り立つことを示します。

n ≥ 1 の場合(数学的帰納法)

ステップ1:n = 1 の場合

(cosθ + isinθ)^1 = cosθ + isinθ = cos(1・θ) + isin(1・θ)

明らかに成立します。

ステップ2:n = k で成立すると仮定

(cosθ + isinθ)^k = cos(kθ) + isin(kθ) が成り立つと仮定します。

ステップ3:n = k+1 でも成立することを示す

(cosθ + isinθ)^(k+1) を計算します。

(cosθ + isinθ)^(k+1)
= (cosθ + isinθ)^k × (cosθ + isinθ)

仮定より:
= (cos(kθ) + isin(kθ)) × (cosθ + isinθ)

展開すると:
= cos(kθ)cosθ – sin(kθ)sinθ + i(sin(kθ)cosθ + cos(kθ)sinθ)

ここで三角関数の加法定理を使います:

  • cos(A + B) = cosA cosB – sinA sinB
  • sin(A + B) = sinA cosB + cosA sinB

したがって:
= cos(kθ + θ) + isin(kθ + θ)
= cos((k+1)θ) + isin((k+1)θ)

これで n = k+1 でも成立することが示されました。

結論

n = 1 で成立し、n = k で成立すれば n = k+1 でも成立するので、すべての自然数nで成立します。

n = 0 の場合

(cosθ + isinθ)^0 = 1 = cos(0) + isin(0)

これも成立します。

n < 0 の場合

n = -m(mは自然数)とすると:

(cosθ + isinθ)^(-m) = 1/(cosθ + isinθ)^m

分母を有理化すると:
= 1/(cos(mθ) + isin(mθ))
= (cos(mθ) – isin(mθ))/(cos²(mθ) + sin²(mθ))
= cos(mθ) – isin(mθ)
= cos(-mθ) + isin(-mθ)

したがって、負の整数でも成立します。

ド・モアブルの定理の使い方

実際に定理を使って問題を解いてみましょう。

例題1:複素数の累乗を計算

(1 + i)^6 を計算せよ。

解答

まず、1 + i を極形式に変換します。

絶対値:r = √(1² + 1²) = √2

偏角:θ = π/4(第1象限)

したがって:1 + i = √2(cos(π/4) + isin(π/4))

ド・モアブルの定理を適用:

(1 + i)^6 = (√2)^6(cos(6・π/4) + isin(6・π/4))
= 8(cos(3π/2) + isin(3π/2))
= 8(0 + i(-1))
= -8i

答え:-8i

例題2:複雑な累乗

(√3 + i)^5 を計算せよ。

解答

極形式に変換:

r = √((√3)² + 1²) = √(3 + 1) = 2

θ = π/6(第1象限、tan θ = 1/√3)

したがって:√3 + i = 2(cos(π/6) + isin(π/6))

ド・モアブルの定理を適用:

(√3 + i)^5 = 2^5(cos(5π/6) + isin(5π/6))
= 32(cos(5π/6) + isin(5π/6))
= 32(-√3/2 + i・1/2)
= -16√3 + 16i

答え:-16√3 + 16i

例題3:負の累乗

(1 – i)^(-4) を計算せよ。

解答

極形式に変換:

r = √2

θ = -π/4(第4象限)

1 – i = √2(cos(-π/4) + isin(-π/4))

ド・モアブルの定理を適用:

(1 – i)^(-4) = (√2)^(-4)(cos(-4・(-π/4)) + isin(-4・(-π/4)))
= 1/4(cos(π) + isin(π))
= 1/4(-1 + i・0)
= -1/4

答え:-1/4

三角関数のn倍角公式への応用

ド・モアブルの定理は、三角関数の倍角公式を導くのにも使えます。

3倍角の公式を導出

sin3θ と cos3θ を求める

ド・モアブルの定理で n = 3 とすると:

(cosθ + isinθ)^3 = cos3θ + isin3θ

左辺を展開します(二項定理を使用):

(cosθ + isinθ)^3
= cos³θ + 3cos²θ(isinθ) + 3cosθ(isinθ)² + (isinθ)³

i² = -1 なので:

= cos³θ + 3icos²θsinθ – 3cosθsin²θ – isin³θ

実部と虚部に分けます:

実部:cos³θ – 3cosθsin²θ
虚部:3cos²θsinθ – sin³θ

これが cos3θ + isin3θ と等しいので:

cos3θ = cos³θ – 3cosθsin²θ

sin²θ = 1 – cos²θ を使うと:
= cos³θ – 3cosθ(1 – cos²θ)
= 4cos³θ – 3cosθ

sin3θ = 3cos²θsinθ – sin³θ

cos²θ = 1 – sin²θ を使うと:
= 3(1 – sin²θ)sinθ – sin³θ
= 3sinθ – 4sin³θ

これが3倍角の公式です!

複素数のn乗根の計算

ド・モアブルの定理は、方程式 z^n = w を解くのにも使えます。

1のn乗根

x^3 = 1 を満たす複素数xをすべて求めよ。

解答

解を z = cosθ + isinθ(絶対値1)とします。

ド・モアブルの定理より:

z^3 = cos3θ + isin3θ = 1 = cos0 + isin0

したがって:

3θ = 0 + 2πk(kは整数)

θ = 2πk/3

0 ≤ θ < 2π の範囲で考えると:

  • k = 0:θ = 0
  • k = 1:θ = 2π/3
  • k = 2:θ = 4π/3

したがって、3つの解は:

x₁ = cos0 + isin0 = 1

x₂ = cos(2π/3) + isin(2π/3) = -1/2 + i√3/2

x₃ = cos(4π/3) + isin(4π/3) = -1/2 – i√3/2

これらは複素数平面上で正三角形を形成します。

一般のn乗根

方程式 z^n = w を解く手順:

  1. w を極形式 w = r(cosα + isinα) で表す
  2. z = r^(1/n)(cos((α+2πk)/n) + isin((α+2πk)/n))
  3. k = 0, 1, 2, …, n-1 でn個の解を得る

オイラーの公式との関係

ド・モアブルの定理は、オイラーの公式とも深く関係しています。

オイラーの公式

e^(iθ) = cosθ + isinθ

この公式を使うと、ド・モアブルの定理は指数法則から直ちに導けます。

(e^(iθ))^n = e^(inθ)

つまり:

(cosθ + isinθ)^n = cos(nθ) + isin(nθ)

この視点から見ると、ド・モアブルの定理は指数法則の一種とも言えます。

cis記法

cosθ + isinθ を簡潔に書くため、cis θ という記法もあります。

cis θ = cosθ + isinθ

この記法を使うと、ド・モアブルの定理は:

(cis θ)^n = cis(nθ)

とシンプルに書けます。

よくある間違いと注意点

ド・モアブルの定理を使う際の注意点をまとめます。

nは整数に限る

ド・モアブルの定理は、nが整数の場合のみ成立します。

n = 1/2 のような分数では、一般には成り立ちません。

これは、複素数の累乗が多価関数になるためです。

極形式に変換すること

定理を使う前に、必ず複素数を極形式に変換してください。

a + bi の形のまま定理は使えません。

偏角の範囲に注意

偏角は通常 0 ≤ θ < 2π の範囲で考えます。

計算結果が2πを超えたら、2πで割った余りを求めましょう。

例:5π/2 = π/2(2πを引く)

象限の判定

極形式に変換する際、複素数がどの象限にあるか正しく判定してください。

tan θ だけでなく、実部と虚部の符号も確認しましょう。

まとめ:ド・モアブルの定理で複素数計算を簡単に

ド・モアブルの定理は、複素数の累乗を驚くほど簡単に計算できる強力な道具です。

定理の要点

整数nに対して:
(cosθ + isinθ)^n = cos(nθ) + isin(nθ)

一般形:
z^n = r^n(cos(nθ) + isin(nθ))

証明方法

数学的帰納法と三角関数の加法定理を使用します。

主な応用

  1. 複素数の累乗計算
  2. 複素数のn乗根の計算
  3. 三角関数のn倍角公式の導出
  4. 複素数方程式の解法

使い方のコツ

  1. まず複素数を極形式に変換
  2. ド・モアブルの定理を適用
  3. 必要に応じて直交形式に戻す

最初は難しく感じるかもしれませんが、何度も練習すれば自然と使えるようになります。

極形式への変換さえできれば、あとは定理を当てはめるだけです。

複素数の世界がぐっと広がる美しい定理、ぜひマスターしてくださいね!

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