「外積って何?」「内積は習ったけど、外積は初めて聞いた」という人も多いでしょう。
外積は高校数学の教科書には載っていないことが多いですが、大学数学や物理学では非常に重要な概念です。2つのベクトルから、それらに垂直な新しいベクトルを作り出す、とても便利な計算方法なんです。
この記事では、外積の基本から計算方法、そして実際の応用例まで、わかりやすく解説していきます。
外積とは何か?

外積は、2つのベクトルから新しいベクトルを作る計算方法の1つです。
外積の定義
ベクトルaとベクトルbの外積は「a × b」と書き、次のような性質を持つベクトルです:
- aとbの両方に垂直(直交)である
- その大きさはaとbが作る平行四辺形の面積に等しい
- 向きは「右ねじの法則」で決まる
外積は「ベクトル積」とも呼ばれます。英語ではcross productです。
内積との違いを理解しよう
ベクトルの掛け算には、内積と外積の2種類があります。この違いをしっかり押さえましょう。
内積(スカラー積)
内積 a・b の結果は「スカラー(普通の数)」になります。
a・b = |a||b|cosθ
つまり、答えには大きさだけがあって、向きはありません。例えば「5」とか「-3」といった数値が答えになります。
外積(ベクトル積)
外積 a × b の結果は「ベクトル」になります。
|a × b| = |a||b|sinθ
答えには大きさと向きの両方があります。例えば「(3, -2, 1)」のように、3つの成分を持つベクトルが答えになります。
どう使い分ける?
- 内積:2つのベクトルがどれくらい同じ方向を向いているか知りたい時
- 外積:2つのベクトルに垂直なベクトルを求めたい時
例えば、2つのベクトルが作る平面に垂直な法線ベクトルを求める場合、外積を使います。
外積の大きさ:平行四辺形の面積
外積の大きさには、重要な幾何学的意味があります。
大きさの公式
ベクトルaとbのなす角をθとすると:
|a × b| = |a||b|sinθ
この値は、aとbを2辺とする平行四辺形の面積と等しくなります。
なぜ面積になるのか
平行四辺形の面積は「底辺×高さ」で求まります。
- 底辺を|a|とすると
- 高さは|b|sinθ(bをaに垂直な方向に分解した成分)
したがって、面積 = |a| × |b|sinθ = |a × b|となります。
三角形の面積
三角形の面積は平行四辺形の半分なので:
三角形の面積 = (1/2)|a × b|
この公式は、座標が与えられた三角形の面積を求める時に便利です。
右ねじの法則:外積の向き
外積の向きは「右ねじの法則」で決まります。
右ねじの法則とは
右手を使って、次のようにします:
- 人差し指をベクトルaの方向に向ける
- 中指をベクトルbの方向に向ける
- 親指が立つ方向が、a × bの方向
別の言い方をすると:
右ねじをaからbへ回す向きに回転させた時、ねじが進む方向がa × bの方向です。
a × bとb × aは逆向き
重要な性質として:
a × b = -(b × a)
つまり、ベクトルの順序を入れ替えると、外積の向きが反対になります。大きさは同じですが、符号が逆になるんです。
外積の計算方法
ここからは、実際に外積を計算する方法を見ていきましょう。
成分表示
ベクトルa = (a₁, a₂, a₃)、ベクトルb = (b₁, b₂, b₃)の外積は:
a × b = (a₂b₃ – a₃b₂, a₃b₁ – a₁b₃, a₁b₂ – a₂b₁)
この公式、一見複雑ですよね。でも、規則性があるんです。
覚え方のコツ
各成分を順番に見ていくと:
- 第1成分:a₂とa₃、b₂とb₃をクロスして掛ける
- 第2成分:a₃とa₁、b₃とb₁をクロスして掛ける(符号に注意)
- 第3成分:a₁とa₂、b₁とb₂をクロスして掛ける
「クロス」というのは、成分の添字が交差するように掛け算するという意味です。
行列式を使う方法
もっと覚えやすい方法があります。次のように書いて:
| i j k |
| a₁ a₂ a₃ |
| b₁ b₂ b₃ |
この行列式を展開します(iは(1,0,0)、jは(0,1,0)、kは(0,0,1)の単位ベクトル)。
第1行に沿って展開すると:
a × b = i(a₂b₃ – a₃b₂) – j(a₁b₃ – a₃b₁) + k(a₁b₂ – a₂b₁)
具体的な計算例

実際に計算してみましょう。
例題1:基本的な計算
a = (2, 1, 3)、b = (1, -1, 0)の外積を求めよ。
解答
公式に当てはめます:
a × b = (a₂b₃ – a₃b₂, a₃b₁ – a₁b₃, a₁b₂ – a₂b₁)
各成分を計算:
- 第1成分:(1)(0) – (3)(-1) = 0 + 3 = 3
- 第2成分:(3)(1) – (2)(0) = 3 – 0 = 3
- 第3成分:(2)(-1) – (1)(1) = -2 – 1 = -3
したがって、a × b = (3, 3, -3)
検算:垂直かどうか確認
外積はaとbの両方に垂直なはずです。内積が0になるか確認しましょう。
a・(a × b) = (2)(3) + (1)(3) + (3)(-3) = 6 + 3 – 9 = 0 ✓
b・(a × b) = (1)(3) + (-1)(3) + (0)(-3) = 3 – 3 + 0 = 0 ✓
ちゃんと垂直になっていますね!
例題2:平行四辺形の面積
a = (2, 0, 0)、b = (0, 3, 0)が作る平行四辺形の面積を求めよ。
解答
まず外積を計算:
a × b = ((0)(0) – (0)(3), (0)(0) – (2)(0), (2)(3) – (0)(0))
= (0, 0, 6)
外積の大きさが面積:
|a × b| = √(0² + 0² + 6²) = 6
面積は6です。
これは直感的にも正しいです。aは x 軸方向に長さ2、bは y 軸方向に長さ3なので、長方形の面積は 2 × 3 = 6 になります。
外積の性質
外積には、覚えておくと便利な性質がいくつかあります。
反対称性
a × b = -(b × a)
順序を入れ替えると、符号が逆になります。
同じベクトルの外積はゼロ
a × a = 0
同じベクトル同士の外積は、必ずゼロベクトルになります。これは、平行なベクトルが作る平行四辺形の面積が0だからです。
平行なベクトルの外積もゼロ
aとbが平行(一方が他方の定数倍)なら:
a × b = 0
これも、平行四辺形がつぶれて面積が0になるためです。
分配法則
a × (b + c) = (a × b) + (a × c)
外積は足し算に対して分配できます。
スカラー倍
(ka) × b = k(a × b) = a × (kb)
定数倍は外に出せます(kは定数)。
単位ベクトルの外積
基本となる単位ベクトル i = (1, 0, 0)、j = (0, 1, 0)、k = (0, 0, 1) の外積を覚えると便利です。
巡回的な関係
i × j = k
j × k = i
k × i = j
この3つは覚えやすい循環になっています。
逆向きの場合
j × i = -k
k × j = -i
i × k = -j
順序を逆にすると、符号が逆になります。
同じもの同士
i × i = 0
j × j = 0
k × k = 0
同じベクトルの外積は常にゼロです。
外積の応用
外積は、数学だけでなく物理学でも重要です。
物理学での応用
力のモーメント(トルク)
レンチでボルトを回す時の回転力は、外積で表されます。
τ = r × F
ここで、rは回転軸からの位置ベクトル、Fは加える力のベクトルです。外積を使うことで、どの方向にどれだけの回転力が働くかが分かります。
ローレンツ力
磁場の中を電荷が動く時に受ける力は:
F = q(v × B)
ここで、qは電荷、vは速度ベクトル、Bは磁場ベクトルです。外積により、力の方向が速度と磁場の両方に垂直であることが表現されています。
角運動量
物体の回転の勢いを表す角運動量も外積で表されます:
L = r × p
ここで、rは位置ベクトル、pは運動量ベクトルです。
数学での応用
法線ベクトル
平面に垂直なベクトル(法線ベクトル)を求める時、外積が便利です。
平面上の2つのベクトルa、bがあれば、その外積 a × b が法線ベクトルになります。
例えば、3点A、B、Cを通る平面の法線ベクトルを求めるには:
- ベクトルAB = B – A
- ベクトルAC = C – A
- 法線ベクトル = AB × AC
体積の計算
3つのベクトル a、b、c が作る平行六面体の体積は:
体積 = |a・(b × c)|
これを「スカラー三重積」といいます。外積と内積を組み合わせた計算です。
よくある間違いと注意点

外積を学ぶ時に、よくある間違いをまとめました。
内積と混同する
外積の結果はベクトル、内積の結果はスカラーです。
間違い:「a × b = 5」(これは内積の答え)
正しい:「a × b = (3, -2, 1)」(外積の答えはベクトル)
符号のミス
成分計算で、引き算の順序を間違えやすいです。
a₂b₃ – a₃b₂ と b₃a₂ – b₂a₃ では、符号が逆になるので注意しましょう。
2次元ベクトルに適用しようとする
外積は3次元ベクトルのための演算です。
2次元ベクトル (a₁, a₂) と (b₁, b₂) の「外積」は、厳密には定義されません。ただし、z成分を0として (a₁, a₂, 0) と (b₁, b₂, 0) の外積を計算することはできます。
結果は (0, 0, a₁b₂ – a₂b₁) となり、z軸方向を向きます。この z 成分の値 a₁b₂ – a₂b₁ を「2次元の外積」と呼ぶこともあります。
右手と左手を間違える
右ねじの法則は必ず「右手」を使います。
左手を使うと、向きが逆になってしまいます。
外積を求める練習問題
理解を深めるために、いくつか問題を解いてみましょう。
問題1
a = (1, 2, 3)、b = (4, 5, 6) の外積を求めよ。
解答
a × b = (a₂b₃ – a₃b₂, a₃b₁ – a₁b₃, a₁b₂ – a₂b₁)
= ((2)(6) – (3)(5), (3)(4) – (1)(6), (1)(5) – (2)(4))
= (12 – 15, 12 – 6, 5 – 8)
= (-3, 6, -3)
問題2
3点 A(1, 0, 0)、B(0, 1, 0)、C(0, 0, 1) を頂点とする三角形の面積を求めよ。
解答
ベクトルAB = B – A = (-1, 1, 0)
ベクトルAC = C – A = (-1, 0, 1)
AB × AC を計算:
AB × AC = ((1)(1) – (0)(0), (0)(-1) – (-1)(1), (-1)(0) – (1)(-1))
= (1, 1, 1)
|AB × AC| = √(1² + 1² + 1²) = √3
三角形の面積 = (1/2)|AB × AC| = √3/2
外積の可視化
外積を理解するには、図形的にイメージすることも大切です。
3次元空間での外積
2つのベクトルaとbがxy平面上にある場合を考えましょう。
a = (2, 0, 0)(x軸方向)
b = (0, 3, 0)(y軸方向)
この外積は:
a × b = (0, 0, 6)
z軸の正の方向を向くベクトルになります。これは、xy平面に垂直な方向です。
右ねじの法則の確認
右手で、人差し指をx軸方向(aの方向)、中指をy軸方向(bの方向)に向けると、親指は自然にz軸の正の方向(上向き)を向きます。
まとめ:外積は垂直なベクトルを作る強力なツール
外積は、2つのベクトルから、それらに垂直な新しいベクトルを生み出す計算方法です。
外積の重要ポイント
- 結果はベクトル(内積と違って数値ではない)
- 元の2つのベクトルの両方に垂直
- 大きさは平行四辺形の面積
- 向きは右ねじの法則で決まる
- a × b = -(b × a)(順序を変えると符号が逆)
計算の流れ
- ベクトルの成分を確認
- 公式に当てはめて各成分を計算
- 必要に応じて大きさ(ノルム)を求める
外積は高校数学の範囲外ですが、大学の理工系では必須の知識です。物理学、工学、コンピュータグラフィックスなど、幅広い分野で活用されています。
最初は複雑に感じるかもしれませんが、何度か計算練習をすれば、すぐに慣れます。特に物理を学ぶ人にとっては、外積を理解しておくと、力のモーメントや電磁気学の理解が格段に深まりますよ。

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