代数とは?文字と数式が開く数学の扉|基礎から応用まで完全ガイド

数学

「2x + 3 = 7」

この式を見て、「あぁ、代数か…」と思った方も多いのではないでしょうか。

学校で習う代数は、最初は文字が出てきて難しく感じるかもしれません。
でも実は、代数は私たちの生活のあらゆる場面で使われている、とても便利な道具なんです。

スマホの料金プランを比較する時、家計簿をつける時、ゲームの攻略法を考える時…知らず知らずのうちに、私たちは代数的な考え方を使っています。

この記事では、「そもそも代数って何?」という基本から、「なぜ文字を使うの?」「実生活でどう役立つの?」という疑問まで、すべて分かりやすく解説していきます。

数学が苦手な方も大丈夫。一緒に、代数という魔法のような道具の世界を探検してみましょう。


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  1. 第1章:代数とは何か?基本をしっかり理解しよう
    1. 代数の正体:数を文字で表す魔法
    2. なぜ文字を使うの?3つの理由
    3. 代数と算数の違い
    4. 代数で使う基本的な記号と用語
    5. 代数の基本ルール
  2. 第2章:代数の歴史|古代から現代まで3000年の旅
    1. 代数は人類の問題解決の歴史
    2. 古代文明の代数的思考
    3. 中世:代数の黄金時代
    4. 近世:記号の革命
    5. 近代:代数の抽象化
    6. 現代:代数の応用爆発
    7. 日本の代数学
    8. 代数発展の3つの転換点
  3. 第3章:代数の基本操作|これだけは押さえたい計算技術
    1. 代数の計算は、実はシンプルなルールの組み合わせ
    2. 式の展開:かっこを外すテクニック
    3. 因数分解:展開の逆操作
    4. 方程式を解く:xの値を見つける
    5. 連立方程式:複数の式を同時に解く
    6. よくある間違いと対策
    7. 練習問題で確認
  4. 第4章:代数の実用例|日常生活から最先端技術まで
    1. あなたも知らずに代数を使っている
    2. 家計・お金の計算
    3. 料理・レシピの計算
    4. スポーツ・ゲーム
    5. テクノロジー分野
    6. 統計・データ分析
    7. 物理・工学
    8. 医療・健康
    9. 音楽と代数
    10. 実用例から学ぶこと
  5. 第5章:代数の主要分野|それぞれの特徴と面白さ
    1. 代数という大きな木の枝分かれ
    2. 初等代数:すべての基礎
    3. 線形代数:現代技術の心臓部
    4. 抽象代数:構造を研究する
    5. ブール代数:デジタルの言語
    6. 代数幾何:図形と式の関係
    7. 計算代数:コンピュータとの融合
    8. それぞれの分野の関係
  6. ここまでを振り返って
  7. 付録:重要公式集
    1. 展開公式
    2. 因数分解公式
    3. 2次方程式の解の公式
    4. 判別式
  8. 学習リソース
    1. オンライン学習サイト
    2. YouTube チャンネル
    3. 書籍
    4. アプリ

第1章:代数とは何か?基本をしっかり理解しよう

代数の正体:数を文字で表す魔法

代数を一言で説明すると、「数の代わりに文字を使って、数の関係や法則を表す数学の分野」です。

でも、これだけだとピンと来ませんよね。もっと身近な例で考えてみましょう。

なぜ文字を使うの?3つの理由

理由1:まだ分からない数を表せる

例えば、こんな問題: 「りんごを何個か買いました。1個100円で、合計500円払いました。何個買った?」

これを式にすると:

  • りんごの個数を「x」とする
  • 100 × x = 500
  • だから x = 5

文字を使うことで、「分からない数」を扱えるようになるんです。

理由2:どんな数でも成り立つ法則を表せる

たとえば:

  • 3 + 5 = 5 + 3
  • 10 + 7 = 7 + 10
  • 100 + 23 = 23 + 100

これらすべてを一つの式で表すと: a + b = b + a

どんな数を入れても成り立つ「法則」を、簡潔に表現できます。

理由3:変化する量の関係を表せる

例:タクシー料金

  • 初乗り:500円
  • 1kmごと:200円追加
  • 距離を「x」kmとすると
  • 料金 = 500 + 200x

距離が変わっても、この式一つで料金が計算できます。

代数と算数の違い

算数(具体的な数の計算)

  • 3 + 4 = 7
  • 12 × 5 = 60
  • 100 ÷ 4 = 25

特徴:

  • 具体的な数値を扱う
  • 答えは一つの数
  • 個別の問題を解く

代数(文字を使った一般的な表現)

  • x + 4 = 7
  • 12x = 60
  • 100 ÷ x = 25

特徴:

  • 文字で一般化
  • パターンや法則を扱う
  • 多くの問題を一度に解決

代数で使う基本的な記号と用語

変数(へんすう)

  • 意味:変わる数、未知の数を表す文字
  • 例:x、y、a、b
  • 使い方:「生徒の人数をxとする」

定数(ていすう)

  • 意味:決まっている数
  • 例:式「2x + 3」の2と3
  • 特徴:変わらない値

係数(けいすう)

  • 意味:変数にかけられている数
  • 例:「3x」の3が係数
  • 読み方:「3エックス」

項(こう)

  • 意味:+や−で区切られた部分
  • 例:「2x + 3y − 5」には3つの項
  • 種類:定数項、1次の項など

式(しき)

  • 意味:数や文字を演算記号でつないだもの
  • 種類:
    • 単項式:3x
    • 多項式:2x + 3y − 5
    • 等式:x + 2 = 5
    • 不等式:x > 3

代数の基本ルール

文字式の約束事

  1. かけ算の記号は省略
    • 3 × x → 3x
    • a × b → ab
  2. 数字を文字の前に
    • x × 3 → 3x
    • y × (−2) → −2y
  3. 1は省略することが多い
    • 1 × x → x
    • −1 × a → −a
  4. アルファベット順に並べる
    • b × a → ab
    • y × x → xy

同類項をまとめる

同じ文字の部分を「同類項」といい、まとめることができます:

  • 3x + 2x = 5x
  • 4a − a = 3a
  • 2xy + 3xy = 5xy

でも、違う文字はまとめられません:

  • 3x + 2y(これ以上簡単にできない)

代数は「文字を使って数の関係を表す」数学の分野です。
文字を使うことで、未知の数を扱ったり、一般的な法則を表現したりできます。

次の章では、代数がどのように生まれ、発展してきたのかを見ていきましょう。


第2章:代数の歴史|古代から現代まで3000年の旅

代数は人類の問題解決の歴史

algebra(代数)という言葉、実はアラビア語の「アル・ジャブル」から来ているんです。

「壊れたものを元に戻す」という意味で、方程式を解くことを指していました。

人類がどのように代数を発見し、発展させてきたのか、時代を追って見ていきましょう。

古代文明の代数的思考

古代バビロニア(紀元前2000年頃)

最古の代数的問題: 「長方形の面積が60、縦が横より7長い。縦と横の長さは?」

現代の式にすると:

  • 横をx、縦をx + 7とする
  • x(x + 7) = 60
  • x² + 7x = 60

彼らは文字を使わず、言葉で解法を説明していました。

古代エジプト(紀元前1650年頃)

リンド・パピルスに記された問題: 「ある数と、その7分の1を足すと19になる」

現代風に書くと:

  • x + x/7 = 19
  • 8x/7 = 19
  • x = 133/8

「アハ」という言葉で未知数を表していました。

古代ギリシャ(紀元前300年頃)

ユークリッドの幾何学的代数:

  • 代数の問題を図形で解いた
  • 「黄金比」の発見
  • 証明の概念を確立

ピタゴラスの定理も代数的に表現: a² + b² = c²

中世:代数の黄金時代

アル・フワーリズミー(780-850年)

「代数学の父」と呼ばれる理由:

  • 『アル・ジャブル』という本を執筆
  • 方程式の体系的な解法を確立
  • 「アルゴリズム」の語源にもなった

彼の方法:

  1. 移項(アル・ジャブル)
  2. 同類項をまとめる(アル・ムカーバラ)
  3. 両辺を割る

インドの貢献(7-12世紀)

  • ゼロの概念を確立
  • 負の数を導入
  • 10進法の普及
  • 二次方程式の一般解

ブラーマグプタの公式: 「ax² + bx + c = 0 の解は…」(現在の解の公式の原型)

近世:記号の革命

フランソワ・ビエト(1540-1603)

記号代数の創始者:

  • 文字を使って一般的な式を表現
  • 未知数:母音(a, e, i…)
  • 既知数:子音(b, c, d…)

ルネ・デカルト(1596-1650)

現代的な記法の確立:

  • x, y, z を未知数に使用
  • a, b, c を定数に使用
  • 指数の表記法(x²、x³)

「我思う、ゆえに我あり」の哲学者が、数学記号も革命的に変えたんです。

近代:代数の抽象化

ガロア(1811-1832)

20歳で決闘死した天才:

  • 群論の創始
  • 5次以上の方程式に一般解がないことを証明
  • 現代代数学の基礎を築く

ブール(1815-1864)

ブール代数の発明:

  • 論理を代数で表現
  • AND、OR、NOTの演算
  • コンピュータの基礎理論に

現代:代数の応用爆発

20世紀の発展

線形代数

  • ベクトルと行列の理論
  • コンピュータグラフィックス
  • AI・機械学習の基礎

抽象代数

  • 群・環・体の理論
  • 暗号理論への応用
  • 素粒子物理学での利用

21世紀の最前線

量子コンピュータ

  • 量子状態の代数的表現
  • 新しい暗号システム

ビッグデータ解析

  • 高次元データの代数的処理
  • パターン認識への応用

日本の代数学

和算の伝統

関孝和(1642-1708):

  • 行列式の発見(ライプニッツより早い)
  • 高次方程式の数値解法
  • 円周率の精密計算

現代日本の貢献

  • 代数幾何学での世界的研究
  • 整数論での重要な発見
  • フィールズ賞受賞者も輩出

代数発展の3つの転換点

  1. 文字の導入(16世紀)
    • 具体から抽象へ
    • 一般化が可能に
  2. 記号の統一(17世紀)
    • 国際的な共通言語
    • 計算の効率化
  3. 抽象化(19-20世紀)
    • 数以外への応用
    • 構造の研究

代数は3000年以上の歴史を持ち、人類の問題解決と共に発展してきました。
古代の具体的な問題から始まり、現代では抽象的な構造を扱う学問へと進化しています。

次の章では、実際に代数をどのように学び、使うのかを見ていきましょう。


第3章:代数の基本操作|これだけは押さえたい計算技術

代数の計算は、実はシンプルなルールの組み合わせ

代数の計算が苦手という人も多いですが、実は基本的なルールさえ理解すれば、あとはその組み合わせなんです。

料理のレシピのように、手順を踏めば必ず答えにたどり着けます。一つずつ、丁寧に見ていきましょう。

式の展開:かっこを外すテクニック

分配法則(基本中の基本)

まず、これだけは覚えてください: a(b + c) = ab + ac

具体例で確認:

  • 3(x + 2) = 3x + 6
  • 2(x − 5) = 2x − 10
  • −4(x + 3) = −4x − 12

なぜこうなるの? 3(x + 2) は「(x + 2)を3セット」という意味。 だから、xが3個と2が3個で、3x + 6になるんです。

展開の公式(覚えると便利)

公式1:(a + b)² = a² + 2ab + b²

例:(x + 3)² = x² + 2·x·3 + 3² = x² + 6x + 9

覚え方:「最初の2乗、2倍してかける、最後の2乗」

公式2:(a − b)² = a² − 2ab + b²

例:(x − 4)² = x² − 2·x·4 + 4² = x² − 8x + 16

公式3:(a + b)(a − b) = a² − b²

例:(x + 5)(x − 5) = x² − 25

これは「和と差の積」と呼ばれます。

因数分解:展開の逆操作

共通因数でくくる

最も基本的な因数分解:

  • 6x + 12 = 6(x + 2)
  • x² + 3x = x(x + 3)
  • 2x² − 8x = 2x(x − 4)

コツ:すべての項に共通する数や文字を見つける

公式を使った因数分解

展開公式を逆に使います:

x² + 6x + 9 を因数分解

  • これは (x + 3)² の展開形
  • だから答えは (x + 3)²

x² − 25 を因数分解

  • これは x² − 5²
  • 公式より (x + 5)(x − 5)

たすきがけ(少し難しいけど重要)

x² + 5x + 6 を因数分解:

  1. 6になる掛け算を探す:1×6、2×3
  2. 足して5になる組み合わせ:2と3
  3. 答え:(x + 2)(x + 3)

確認:(x + 2)(x + 3) = x² + 3x + 2x + 6 = x² + 5x + 6 ✓

方程式を解く:xの値を見つける

1次方程式(基本)

3x + 5 = 14 を解く

手順:

  1. 5を移項:3x = 14 − 5
  2. 計算:3x = 9
  3. 3で割る:x = 3

移項のルール:

  • 符号を変えて反対側へ
  • +は−に、−は+に
  • ×は÷に、÷は×に

2次方程式(3つの解き方)

方法1:因数分解

x² − 5x + 6 = 0

  1. 因数分解:(x − 2)(x − 3) = 0
  2. それぞれ0になる:x − 2 = 0 または x − 3 = 0
  3. 答え:x = 2, 3

方法2:解の公式

ax² + bx + c = 0 の解: x = [−b ± √(b² − 4ac)] / 2a

例:x² + 2x − 3 = 0

  • a = 1, b = 2, c = −3
  • x = [−2 ± √(4 + 12)] / 2
  • x = [−2 ± 4] / 2
  • x = 1, −3

方法3:平方完成 少し難しいですが、理解すると便利です。

連立方程式:複数の式を同時に解く

代入法

例:

  • x + y = 7 … ①
  • 2x − y = 2 … ②

手順:

  1. ①より y = 7 − x
  2. ②に代入:2x − (7 − x) = 2
  3. 計算:3x − 7 = 2
  4. x = 3
  5. y = 7 − 3 = 4

加減法

同じ例で:

  1. ①+②:3x = 9
  2. x = 3
  3. ①に代入:y = 4

どちらの方法も答えは同じです。

よくある間違いと対策

間違い1:符号のミス

  • −3(x − 2) = −3x + 6(−×−=+を忘れない)

間違い2:移項の符号

  • 3x − 5 = 10
  • 3x = 10 + 5(−5が+5になる)

間違い3:両辺の処理

  • 2x = 10を解く時
  • 両辺を2で割る:x = 5

練習問題で確認

基本問題:

  1. 2(x + 3) = ?
  2. x² − 9 を因数分解
  3. 2x + 7 = 15 を解く

解答:

  1. 2x + 6
  2. (x + 3)(x − 3)
  3. x = 4

この章のまとめ: 代数の基本操作は、展開・因数分解・方程式の3つが中心です。ルールを理解して練習すれば、必ずできるようになります。次の章では、代数が実生活でどのように使われているかを見ていきましょう。


第4章:代数の実用例|日常生活から最先端技術まで

あなたも知らずに代数を使っている

「数学なんて実生活で使わない」と思っていませんか? 実は、私たちは毎日、代数的な考え方を使って生活しているんです。

具体的な例を見ながら、代数がどれだけ身近で便利なものか実感してみましょう。

家計・お金の計算

スマホ料金プランの比較

A社:基本料金2,000円 + 1GBあたり500円 B社:基本料金0円 + 1GBあたり800円

使用量をx GBとすると:

  • A社:y = 2000 + 500x
  • B社:y = 800x

どちらがお得?

  • 2000 + 500x = 800x
  • 2000 = 300x
  • x = 6.67

つまり、6.67GB以上使うならA社、それ以下ならB社がお得!

住宅ローンの計算

借入額:3000万円 金利:年1%(月利0.083%) 返済期間:35年(420回)

月々の返済額を求める式: 返済額 = 借入額 × [月利 × (1+月利)ⁿ] / [(1+月利)ⁿ − 1]

これも代数の応用です。計算すると月々約84,685円。

投資の複利計算

元本:100万円 年利:5% 期間:n年後

n年後の金額 = 100万 × (1.05)ⁿ

  • 10年後:約163万円
  • 20年後:約265万円
  • 30年後:約432万円

「72の法則」:72 ÷ 金利 = 資産が2倍になる年数

料理・レシピの計算

分量の調整

4人分のレシピを6人分に:

  • 材料の量 × (6/4) = 材料の量 × 1.5

砂糖200gなら:200 × 1.5 = 300g

カロリー計算

基礎代謝:1500kcal 運動消費:x kcal 摂取カロリー:y kcal

体重維持の条件:1500 + x = y

スポーツ・ゲーム

野球の打率

安打数:x 打数:y 打率 = x/y

目標打率0.300を達成するには? 現在:80安打、300打数(打率0.267) 残り試合で何割打てばいい?

(80 + a)/(300 + b) = 0.300 (aは追加安打、bは追加打数)

ゲームのダメージ計算

基本攻撃力:100 武器補正:x% スキル補正:y%

最終ダメージ = 100 × (1 + x/100) × (1 + y/100)

最適な組み合わせを代数で計算!

テクノロジー分野

AI・機械学習

画像認識の仕組み:

  • ピクセル値を変数に
  • 重みをかけて計算
  • y = w₁x₁ + w₂x₂ + … + b

これが人工ニューロンの基本式です。

暗号技術(RSA暗号)

公開鍵暗号の原理:

  • 大きな素数p、qを選ぶ
  • n = p × q を計算
  • 暗号化:C = Mᵉ mod n
  • 復号化:M = Cᵈ mod n

オンラインショッピングの安全性は代数が守っています。

コンピュータグラフィックス

3D物体の回転:

  • 回転行列による変換
  • x’ = x cos θ − y sin θ
  • y’ = x sin θ + y cos θ

ゲームや映画のCGはすべて代数計算です。

統計・データ分析

相関関係の分析

身長(x)と体重(y)の関係: y = ax + b

最小二乗法で最適な直線を求める。

売上予測

過去のデータから将来を予測: 売上 = a × 月 + b × 季節要因 + c

物理・工学

放物運動

ボールを投げた時の軌道:

  • 高さ:y = v₀t − (1/2)gt²
  • 距離:x = v₀t cos θ

最適な角度は45度!(代数で証明可能)

電気回路

オームの法則:V = IR

  • 電圧(V) = 電流(I) × 抵抗(R)

並列抵抗の合成: 1/R = 1/R₁ + 1/R₂

医療・健康

薬の投与量計算

体重による調整: 投与量 = 基準量 × (患者体重/標準体重)

血中濃度の変化: 濃度 = 初期濃度 × (1/2)^(経過時間/半減期)

BMI計算

BMI = 体重(kg) / 身長(m)²

理想体重を求める: 理想体重 = 22 × 身長²

音楽と代数

音階の周波数

基準音A = 440Hz 半音上がるごとに:周波数 × 2^(1/12)

1オクターブ上 = 周波数 × 2

テンポ計算

BPM(1分間の拍数)からの計算: 1拍の長さ(秒) = 60 / BPM

実用例から学ぶこと

代数を使うメリット:

  1. 予測ができる:未来の値を計算
  2. 最適化できる:最良の選択を発見
  3. 一般化できる:個別でなくパターンで理解
  4. 自動化できる:コンピュータに計算させる

この章のまとめ: 代数は特別な場面だけでなく、日常生活のあらゆる場面で使われています。意識すれば、より賢い選択ができるようになります。次の章では、代数の主要な分野について詳しく見ていきましょう。


第5章:代数の主要分野|それぞれの特徴と面白さ

代数という大きな木の枝分かれ

代数といっても、実はいろいろな分野があります。 それぞれに特徴があり、使われる場面も違います。

代数という大きな木から伸びる、主要な枝を一つずつ見ていきましょう。

初等代数:すべての基礎

何を学ぶか

中学・高校で習う代数:

  • 文字式の計算
  • 方程式・不等式
  • 関数とグラフ
  • 数列と級数

重要な概念

恒等式と方程式の違い

  • 恒等式:(a + b)² = a² + 2ab + b²(常に成立)
  • 方程式:x² = 4(特定のxで成立)

関数の考え方

  • y = f(x):xを入れるとyが出る機械
  • 1次関数:y = ax + b(直線)
  • 2次関数:y = ax² + bx + c(放物線)

どこで使う?

  • 日常の計算すべて
  • 物理・化学の基本法則
  • 経済・ビジネスの分析
  • プログラミングの基礎

線形代数:現代技術の心臓部

ベクトルと行列の世界

ベクトル:方向と大きさを持つ量

→   [3]
v = [4]

大きさ = √(3² + 4²) = 5

行列:数を長方形に並べたもの

    [1 2]
A = [3 4]

主な操作

行列の積:

[1 2] [5]   [1×5 + 2×6]   [17]
[3 4] [6] = [3×5 + 4×6] = [39]

実用例

Google検索

  • ページランク算法
  • 巨大な行列計算
  • 重要度を固有値で計算

画像処理

  • 画像= ピクセルの行列
  • フィルター = 行列の演算
  • 圧縮 = 行列の分解

3Dゲーム

  • 座標変換
  • 回転・拡大・移動
  • すべて行列計算

抽象代数:構造を研究する

群論(ぐんろん)

対称性を研究する分野。

例:正方形の対称性

  • 90度回転:4回で元に戻る
  • 反転:2回で元に戻る
  • これらの組み合わせが「群」

応用例

  • ルービックキューブの解法
  • 結晶構造の分類
  • 素粒子物理学

環論(かんろん)

足し算と掛け算の構造を研究。

例:時計の算術

  • 11時 + 3時間 = 2時
  • mod 12の世界

応用

  • 暗号理論
  • 誤り訂正符号
  • デジタル信号処理

体論(たいろん)

四則演算ができる構造。

例:有限体

  • 要素が有限個
  • QRコードの原理
  • データ通信の誤り訂正

ブール代数:デジタルの言語

論理演算

真(1)と偽(0)の世界:

  • AND:両方真なら真
  • OR:どちらか真なら真
  • NOT:真偽を反転

真理値表

A | B | A AND B | A OR B
--|---|---------|-------
0 | 0 |    0    |   0
0 | 1 |    0    |   1
1 | 0 |    0    |   1
1 | 1 |    1    |   1

応用

コンピュータ回路

  • すべての計算の基礎
  • CPU設計
  • メモリ構造

検索エンジン

  • 「猫 AND 犬」
  • 「(東京 OR 大阪) AND ホテル」

プログラミング

if (age >= 18) and (has_license):
    print("運転できます")

代数幾何:図形と式の関係

方程式が描く図形

円の方程式 x² + y² = r²

楕円の方程式 x²/a² + y²/b² = 1

双曲線の方程式 x²/a² − y²/b² = 1

フェルマーの最終定理

xⁿ + yⁿ = zⁿ(n ≥ 3) を満たす自然数解は存在しない。

350年かけて証明された難問。代数幾何が鍵でした。

計算代数:コンピュータとの融合

数式処理システム

できること

  • 因数分解を瞬時に
  • 積分・微分の計算
  • 方程式の厳密解

使用ソフト

  • Mathematica
  • Maple
  • SageMath(無料)

グレブナー基底

多変数多項式を扱う強力な道具:

  • ロボットの動作計画
  • 化学反応の解析
  • 経済モデルの最適化

それぞれの分野の関係

        初等代数
           ↓
    ┌──────┼──────┐
    ↓      ↓      ↓
線形代数  抽象代数  ブール代数
    ↓      ↓      ↓
    └──────┼──────┘
           ↓
      応用数学全般

ここまでを振り返って

長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

代数について、最初のイメージは変わりましたか?

「x」や「y」という文字が、実は私たちの考えを整理し、問題を解決するための強力な道具だということが、少しでも伝わっていれば嬉しいです。

付録:重要公式集

展開公式

  • (a + b)² = a² + 2ab + b²
  • (a − b)² = a² − 2ab + b²
  • (a + b)(a − b) = a² − b²
  • (a + b)³ = a³ + 3a²b + 3ab² + b³

因数分解公式

  • a² − b² = (a + b)(a − b)
  • a³ + b³ = (a + b)(a² − ab + b²)
  • a³ − b³ = (a − b)(a² + ab + b²)

2次方程式の解の公式

ax² + bx + c = 0 の解: x = [−b ± √(b² − 4ac)] / 2a

判別式

D = b² − 4ac

  • D > 0:異なる2つの実数解
  • D = 0:重解
  • D < 0:実数解なし

学習リソース

オンライン学習サイト

  • Khan Academy(無料、日本語対応)
  • Coursera(大学講義)
  • edX(MIT等の講義)

YouTube チャンネル

  • とある男が授業をしてみた
  • ヨビノリ
  • PASSLABO

書籍

  • 『中学3年分の数学が教えられるほどよくわかる』(小杉拓也)
  • 『数学ガール』シリーズ(結城浩)
  • 『算数・数学が得意になる本』(芳沢光雄)

アプリ

  • Photomath(写真で問題を解く)
  • Microsoft Math Solver
  • GeoGebra(グラフ描画)

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