「|x| < 3って、どうやって解くの?」
「場合分けが必要なときと不要なときの違いが分からない…」
高校数学で多くの人がつまずく絶対値不等式。
実は、絶対値の意味をしっかり理解すれば、不等式の解き方はとてもシンプルなんです。この記事では、基礎から応用まで、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。
絶対値不等式を攻略して、数学への自信をつけましょう!
絶対値とは?まずは基本を押さえよう
絶対値不等式を解く前に、絶対値の意味をしっかり理解しておく必要があります。
絶対値は「距離」を表す
絶対値とは、数直線上で原点(0)からの距離のことです。
たとえば:
- |3| = 3(3は0から3離れている)
- |-3| = 3(-3も0から3離れている)
- |0| = 0(0は0から0離れている)
距離は常に正の数なので、絶対値は必ず0以上になります。
絶対値記号の外し方
絶対値記号「| |」を外すときは、中身が正か負かによって方法が変わります。
中身が0以上のとき
→ そのまま外す
例:|5| = 5
中身が負のとき
→ マイナスをつけて外す
例:|-5| = -(-5) = 5
これが絶対値の基本ルールです。
絶対値不等式の基本パターン【右辺が定数の場合】
絶対値不等式には、大きく分けて2つのパターンがあります。
まずは右辺が定数(数字だけ)の場合から見ていきましょう。このタイプは場合分けが不要で、機械的に解けるので覚えてしまえば簡単です。
パターン1:|x| < a(小なり型)
|x| < a の形は、「xの絶対値がaより小さい」という意味。つまり、「0からの距離がa未満の範囲」を探します。
公式
|x| < a → -a < x < a
この形は、xが-aとaの間にはさまれる形になります。
解き方の例
問題:|x| < 3 を解け
これは「0からの距離が3より小さい数」を探す問題です。
数直線で考えると、-3と3の間にある数すべてが答えになります。
答え:-3 < x < 3
もう1つ例題
問題:|x – 2| < 5 を解け
まず公式に当てはめます。
絶対値の中身を X として考えると、X = x – 2 です。
|x - 2| < 5
↓ 公式を適用
-5 < x - 2 < 5
↓ 両辺に2を足す
-5 + 2 < x < 5 + 2
-3 < x < 7
答え:-3 < x < 7
パターン2:|x| > a(大なり型)
|x| > a の形は、「xの絶対値がaより大きい」という意味。つまり、「0から離れた位置にある範囲」を探します。
公式
|x| > a → x < -a または x > a
この形は、xが-aより小さいか、aより大きい、という2つの範囲に分かれます。
解き方の例
問題:|x| > 4 を解け
これは「0からの距離が4より大きい数」を探す問題です。
数直線で考えると、-4より左、または4より右にある数が答えになります。
答え:x < -4 または x > 4
もう1つ例題
問題:|2x – 1| > 3 を解け
公式に当てはめて解いていきます。
|2x - 1| > 3
↓ 公式を適用
2x - 1 < -3 または 2x - 1 > 3
↓ 左側の不等式を解く
2x < -2
x < -1
↓ 右側の不等式を解く
2x > 4
x > 2
答え:x < -1 または x > 2
なぜ不等号で結果が変わるの?
小なり(<)の場合
→ 0に近い範囲を探すので、はさまれた形になる
大なり(>)の場合
→ 0から遠い範囲を探すので、2つに分かれる
この違いを数直線でイメージすると、理解しやすくなります。
絶対値不等式の応用パターン【右辺にxがある場合】
右辺に変数xが含まれている場合は、場合分けが必要になります。
なぜなら、右辺の値が正になるか負になるか分からないからです。
場合分けの手順
ステップ1:絶対値の中身が0になる点を見つける
絶対値の中身 = 0 となるxの値を求めます。
ステップ2:その点を境界として場合分けする
中身が0以上の場合と、負の場合に分けて考えます。
ステップ3:それぞれの場合で不等式を解く
絶対値記号を外して、普通の不等式として解きます。
ステップ4:場合分けの条件を確認する
求めた解が、場合分けの範囲内に含まれているか確認します。
具体例で理解しよう
問題:|x – 1| > 2x + 3 を解け
ステップ1:境界点を見つける
x – 1 = 0
x = 1
ステップ2:場合分けする
(i) x ≥ 1 のとき(中身が0以上)
(ii) x < 1 のとき(中身が負)
ステップ3:それぞれ解く
(i) x ≥ 1 のとき
中身が0以上なので、絶対値記号はそのまま外せます。
x - 1 > 2x + 3
-1 - 3 > 2x - x
-4 > x
x < -4
しかし、これは「x ≥ 1」という条件と矛盾します。
したがって、この場合の解はありません。
(ii) x < 1 のとき
中身が負なので、マイナスをつけて外します。
-(x - 1) > 2x + 3
-x + 1 > 2x + 3
1 - 3 > 2x + x
-2 > 3x
x < -2/3
これは「x < 1」の範囲内にあるので、条件を満たします。
答え:x < -2/3
注意点:右辺が負になる可能性
絶対値は常に0以上なので、もし不等式を解いた結果、右辺が負の値になってしまう場合は、その解は不適切です。
たとえば、|x – 1| = 2x + 2 という方程式で、x = -3 が出たとします。
このとき右辺は 2(-3) + 2 = -4 となり、負の値になります。
しかし絶対値は負にならないので、この解は不適切となります。
複数の絶対値がある場合の解き方
絶対値記号が2つ以上ある場合は、すべての境界点で場合分けを行います。
解き方の流れ
問題:|x – 1| + |x + 3| < 8 を解け
ステップ1:境界点を見つける
x – 1 = 0 → x = 1
x + 3 = 0 → x = -3
ステップ2:数直線を3つの区間に分ける
① x < -3
② -3 ≤ x < 1
③ x ≥ 1
ステップ3:各区間で絶対値を外して解く
(i) x < -3 のとき
両方とも中身が負なので:
-(x - 1) + (-(x + 3)) < 8
-x + 1 - x - 3 < 8
-2x - 2 < 8
-2x < 10
x > -5
x < -3 との共通範囲は:-5 < x < -3
(ii) -3 ≤ x < 1 のとき
x + 3 は0以上、x – 1 は負なので:
-(x - 1) + (x + 3) < 8
-x + 1 + x + 3 < 8
4 < 8
これは常に成り立つので、-3 ≤ x < 1 全体が解。
(iii) x ≥ 1 のとき
両方とも中身が0以上なので:
(x - 1) + (x + 3) < 8
2x + 2 < 8
2x < 6
x < 3
x ≥ 1 との共通範囲は:1 ≤ x < 3
答え:-5 < x < 3
ポイント
複数の絶対値がある場合は、境界点を見落とさないことが大切です。
各区間で正確に絶対値を外して計算しましょう。
よくある間違いと注意点
絶対値不等式を解くときに、多くの人が陥りやすい間違いをまとめました。
間違い1:場合分けの条件を確認しない
場合分けをして解を求めたら、必ずその解が場合分けの条件を満たしているか確認しましょう。
悪い例
x ≥ 2 の場合で x = -1 を得た
→ そのまま答えにしてしまう(×)
良い例
x ≥ 2 の場合で x = -1 を得た
→ -1 は x ≥ 2 を満たさないので不適切(○)
間違い2:絶対値が負になると勘違い
絶対値は常に0以上です。負の値にはなりません。
|x| < -2 のような問題は解なし
|x| > -2 のような問題はすべての実数が解
間違い3:不等号の向きを間違える
不等式の両辺に負の数をかけたり割ったりするときは、不等号の向きが逆になることを忘れずに。
-2x > 4
↓ 両辺を-2で割る
x < -2 (不等号が逆になる)
実践問題で理解を深めよう
ここまでの内容を踏まえて、実際に問題を解いてみましょう。
問題1:基本問題
|x + 1| ≤ 4 を解け
解答
右辺が定数なので、公式を使います。
|x + 1| ≤ 4
↓
-4 ≤ x + 1 ≤ 4
↓ 両辺から1を引く
-5 ≤ x ≤ 3
答え:-5 ≤ x ≤ 3
問題2:応用問題
|2x – 3| ≥ 7 を解け
解答
右辺が定数なので、公式を使います。
|2x - 3| ≥ 7
↓
2x - 3 ≤ -7 または 2x - 3 ≥ 7
↓ 左側を解く
2x ≤ -4
x ≤ -2
↓ 右側を解く
2x ≥ 10
x ≥ 5
答え:x ≤ -2 または x ≥ 5
問題3:発展問題
|x – 2| < 3x を解け
解答
右辺にxがあるので、場合分けが必要です。
境界点:x – 2 = 0 → x = 2
(i) x ≥ 2 のとき
x - 2 < 3x
-2 < 2x
x > -1
x ≥ 2 との共通範囲:x ≥ 2
(ii) x < 2 のとき
-(x - 2) < 3x
-x + 2 < 3x
2 < 4x
x > 1/2
x < 2 との共通範囲:1/2 < x < 2
全体の解:x > 1/2
まとめ:絶対値不等式を攻略するコツ
絶対値不等式の解き方をマスターするためのポイントをまとめます。
ポイント1:絶対値の意味を理解する
絶対値は「0からの距離」です。
この基本を理解すれば、不等式の意味がイメージしやすくなります。
ポイント2:右辺が定数か変数かで判断する
- 右辺が定数 → 公式を使って機械的に解く
- 右辺に変数 → 場合分けをして解く
ポイント3:小なり(<)と大なり(>)の違いを理解する
- |x| < a → 0に近い範囲(はさまれる形)
- |x| > a → 0から遠い範囲(2つに分かれる)
ポイント4:場合分けの条件を必ず確認する
解を求めたら、その解が場合分けの条件内にあるか確認しましょう。
ポイント5:数直線で考える習慣をつける
視覚的に考えることで、解の範囲がイメージしやすくなります。
絶対値不等式は、最初は難しく感じるかもしれません。
しかし、パターンを覚えて練習を重ねれば、必ず解けるようになります。
この記事で学んだ解き方を使って、たくさん問題を解いてみてください。
きっと絶対値不等式への苦手意識がなくなるはずです!

コメント